スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    アネモネ女学院高校文化祭訪問記(1/3)

    1.
    10月の最初の土曜日。
    電車を降りて15分ほど歩くと、閑静な住宅街の中に目指すアネモネ女学院高等学校があった。
    ツタで覆われたレンガ造りの校舎はとても重厚で、県下一番の進学率を誇るお嬢様校の威厳を保っている。

    だが今日は雰囲気が違った。
    あちこちの窓に貼られたクラブや展示のポスター。漏れ聞こえてくる、華やいだ音楽。
    正門まで来ると大きなアーチが立てられていた。
    『アネモネ祭』
    そう。今日はこの女学院の文化祭。
    閉ざされた乙女の学園に我々外部のオトコが立ち入ることを許される、年に一度のイベントなのだ。

    受付で入場券を渡した。
    一部ではプラチナチケットとも呼ばれる入場券である。
    持ち物をチェックされ、スマホ、ケータイ、デジカメや録音装置の類はすべて預かられてしまった。
    校内で見るモノ聞くモノは一切記録するな、ということだ。
    さすがに厳しい。

    受付を過ぎると、そこは校内。
    俺たちのような外来客と迎えの女生徒たちで混雑していた。
    アネモネ女学院の制服は明るめのグレーに白線が入ったセーラー服である。
    スカートの丈はきっちり膝下で、短くしている生徒など一人もいない。
    しかし、このスカートにはサイドに深めのスリットが入っているのだ。
    椅子に座り足を組むなどすれば、かもし出される爽やかな色気。
    うむ。すばらしい。

    「おおっ?」
    隣にいた村田が嬉しそうな声を上げた。
    「ふむ!」
    熊井も眼鏡の縁を押さえて頷いた。

    大きなプラカードを掲げた女生徒が二人、並んで立っていた。
    ベレー帽にロングブーツ。金モール入り紺色のミニスカユニフォーム。
    プラカードには『吹奏楽部コンサート 午後2時開演 ~講堂にて~』と書かれていた。
    二人とも大きな瞳をしていて、髪をサイドテールにくくっている。
    揃って美少女である。

    「おお~おぉっ!」
    村田が再び歓声を上げた。
    「ふむふむ!」
    熊井も力強く頷く。

    今度は、赤いレオタードを着けた女の子だ。
    「体操部の喫茶店です。来て下さいね~!」と呼びかけながらメニューらしきチラシを配っている。
    この子も可愛かった。
    何よりボディラインがくっきり分かるレオタード。
    下品すぎない程度にハイレグの生足。そのハイレグの前に小さな白いエプロンをつけている。
    これは、行かねばなるまい。
    我々三人は互いにうなずきあって、わざわざ一人ずつメニューを受け取りに行ったのだった。

    それにしても見回せば見回すほどそこかしこに美少女がいる。
    どの子も可憐で実に可愛らしい。
    我が凡高の女子どもと、どうしてこんなに違うのだ?
    一流のお嬢様学校と、二流の公立校の違いなのか。

    「いた。あそこだ」
    熊井が前方の木立を指差した。
    その下で水色の着物を着た女の子が手を振っていた。
    熊井の妹で、この女学院1年生の美咲ちゃんである。
    考えてみれば、美咲ちゃんが高校に上がってから会うのは俺も村田も初めてだった。

    2.
    我々は高校3年生の三人連れである。
    先ほどから目尻を下げっぱなしの村田。
    落ち着きなく眼鏡の縁ばかり押さえている熊井。
    そして俺、山東。
    小学校のときから腐れ縁のトリオだ。

    俺たちはよく互いの家に行って遊んだ。
    熊井の二つ違いの妹の美咲ちゃんとも、よく遊んであげたものだった。
    元気で明るい美咲ちゃんは、小学校から中学へ上がるに従ってどんどん綺麗になった。
    俺も村田も、熊井の家に行くときは美咲ちゃんを意識するようになった。
    ただ熊井から「美咲に手を出したら許さんぞ」と言われていたので、勝手なことはしないでいた。
    俺たちが揃って同じ高校に上がると、外で遊ぶことが多くなって互いの家を訪ねることは減った。
    それでもたまに熊井の家に行けば、俺と村田は美咲ちゃんがいないかきょろきょろ見回し「お前ら俺はどうでもいいんか」と熊井に呆れられる始末だった。

    美咲ちゃんは中学を卒業して俺たちと同じ高校に来るのかと思えば、何と私立のお嬢様進学高校に入学したので驚いた。
    俺たちの知らない世界に行ってしまったようで、ちょっと寂しい思いをしたのも本当だ。

    そんな美咲ちゃんが、俺たちをアネモネ女学院の文化祭に招待してくれた。
    生徒あたり5枚しか配られないという入場券を我々にプレゼントしてくれたのだ。
    「山東と村田を呼ぶなど、もったいなさ過ぎると俺は言ったんだけどな。本人はお前らに来て欲しいらしい」
    熊井の言葉に俺と村田は狂喜した。
    これは、もしかして俺たち二人のどちらかに気があるのか?

    3.
    「やあ、美咲ちゃん」
    「おはようございます!」
    「会うのは春休み以来だね」
    久しぶりに見る美咲ちゃんは相変わらず綺麗だった。
    中学のときには短めだった髪が肩の下くらいまで長くなっていた。

    「ホント久しぶりっ。村田くんも山東くんも、受験勉強がんばってる?」
    ゴ、ゴホゴホ。
    美咲ちゃんからの思いもよらない攻撃に俺と村田は咳払いをした。
    「あはは。まぁ、勉強ダメでも行ける大学、たくさんあるものね」
    ゲ、ゲホゲホ。
    俺と村田はもういちど咳をした。

    そうだった。
    美咲ちゃんは、あまり遠慮しないというか、思ったことを素直に口にするというか、そういうタイプの子だった。
    俺たちが成績は大したことないくせに進学志望であることは、兄貴から聞いて知っているのだろう。

    「ま、こいつらでも、どこか入れる大学はあるだろう」
    その兄の熊井が眼鏡の縁に指を当てて、さらりと言った。
    三人の中で熊井だけはそこそこ勉強ができるのだ。

    「村田など、それ以前に卒業できるかどうかが問題だがな」
    「え~、村田くん、卒業できないの!?」
    美咲ちゃんは俺たちのことを『くん』付けで呼ぶ。二歳年上の権威は認められないらしい。
    この最後の攻撃で村田は撃沈である。

    「そんなことより、美咲。今日はずっとその着物でいるのか?」熊井が聞いた。
    「そうそう、気になってたんだけど、どうして和服なの?」俺も横から聞いた。
    「あたし、茶道部なんだよ」
    「へぇ~、茶道部」
    「誰も言ってくれないから自分で聞くけど、結構可愛いと思わない? この格好のあたしも」
    美咲ちゃんは着物の袖を内側から握ってパタパタ振ってみせた。

    「おおっ、可愛い可愛い!」「似合ってる!」
    「ありがとーっ」
    美咲ちゃんはにっこり笑って、それから言った。
    「それでは皆さんを茶道部のお茶席にご招待します!」

    4.
    お茶席と聞いて俺たちはしり込みしたが、美咲ちゃんの言うことには逆らえなかった。
    どうやら校外の客を茶席に連れて来るノルマがあるらしい。
    「もしかして、俺らに入場券くれたの、ノルマのせい?」
    「えへへ。もしかしたら、そうかな?」
    「・・ガーン」
    「ごめんなさいっ。でもお茶席だって楽しいよっ」
    「本当?」
    「うんっ。サービスするもの。・・きっと男の人は喜ぶよ」
    「?」

    茶道部の茶室は校舎の奥のひっそりした場所にあって、美咲ちゃんと同じように着物姿の茶道部員が何人かいて迎えてくれた。
    入口で靴を脱いで上がると、衝立(ついたて)の反対側に畳敷きの四角い部屋があって、そこが茶室だった。
    中央に炉、その向こうに先客らしい制服姿の女生徒が二人並んで座っている。
    俺たちもその隣に少し離れて座らされた。

    やがて眼鏡をかけた茶道部員が炉の脇に正座して挨拶した。この子がお点前してくれるのか。
    「部長のハタです。お茶席といっても緊張なさらず、ゆったりくつろいで下さい」
    俺たちはどうにか頷いた。緊張するなという方が無理だ。

    「ふた組おいでです。お盆を運んで下さい」
    「はい」
    衝立の陰から女の子が現れた。
    髪をきちんとアップにしていて足袋まで履いているが、緑色の水着を着けていた。
    背中が大きく開いた競泳水着だった。
    「きゃ~♥」先客の女生徒が両手を合わせて歓声を上げた。
    続いてもう一人女の子が登場する。こっちも同じ格好だ。
    いったい何が始まるというのか。
    水着の女の子たちは揃ってぺこりとお辞儀をすると、女生徒と俺たちの前にそれぞれうつ伏せに寝転んだ。
    左右の足を爪先まで揃えて伸ばし、重ねた手の甲に顎を乗せる。

    ごくり。無意識に唾を飲み込んだ。
    女の子の首筋の後れ毛。すべすべした背中、ぷりんとした尻えくぼと柔らかそうな太もも。
    それらすべてが、ほんの少し手を伸ばせば触れるところにあった。
    こ、これは拷問か。
    女子高の文化祭に遊びに来たら、いきなり正座させられて、間近にこんなモノを見せつけられるとは。

    続いて別の茶道部員が漆(うるし)盆を3枚運んできた。
    裏面の剥離紙をはがし、寝転んだ女の子の背中とお尻、膝裏の上に乗せて押さえ、ズレないことを確認する。
    両面テープで貼ったのか!?

    「心ばかりのおもてなしとしまして女体盆をご用意しました。お茶と一緒にお楽しみ下さい」
    にょ、にょたいボン~!?
    当惑してきょろきょろしていると、部屋の隅に座った美咲ちゃんと目が合った。
    面白くてたまらないという顔で笑っていた。

    お点前が始まった。
    一椀ずつ点てた抹茶が女体盆に置かれた。
    それを両手に持って飲んだ。
    お茶菓子が女体盆に並べられた。
    それを口に運んで食べた。

    違和感がありまくりだった。
    お茶の味もお菓子の味も分からなかった。
    女の子の上にこぼしてしまわないか、そればかり気になった。

    「け、結構なお点前でした」「ケッコーでしたっ」
    俺たちは、口の中でもごもご言って頭を下げた。
    部長さんはにっこり笑って応えてくれた。

    立ち上がろうとしたら、三人とも正座していた足が痺れてしばらく動けなかった。
    お茶の間は、痺れなんて、気にもしなかったのに。

    5.
    美咲ちゃんに連れられて茶室の外に出る。
    「面白かった! 皆あんなに神妙な顔して」
    当たり前だろ。あの場でへらへら笑えるか。
    「山東くんなんて、もっとデレ~ってすると思ってたんだけどなぁ」
    美咲ちゃん、俺のこと、そんな風に思ってたの?

    「それで、さっきのはいったい何だよ」
    熊井が聞いた。兄貴でも知らなかったらしい。
    「お茶席ってあまり男の人は来てくれないでしょ? だから男性のお客様が来たら、ああやってサービス♥」
    「女の客もいたじゃないか」
    「うん。男性限定のつもりだったけど、女の子にもウケちゃって。あはは」

    「あの水着の子も茶道部員なの?」
    「もちろんっ」
    「じゃあ美咲ちゃんも女体盛するの」村田が質問した。
    「やだあ、女体盛じゃないよ女体盆っ。あんなエッチなものじゃないもん」
    そうか? そうなのか?
    「それで、美咲ちゃんはするの? その女体盆」
    「あたしはできないんだ。じゃんけんに負けちゃったから」
    「勝ったら、やったのか」熊井がぼそっと言った。

    「次はウチのクラスに案内するわ! 他愛無いゲームだけどね~」
    着物のままでぐんぐん先に歩いて、俺たちを連れていってくれたのだった。

    6.
    美咲ちゃんのクラスの教室の前には
    『1-7 Balloon Girl Catchcer』
    という看板が立っていた。
    長い行列ができていて、茶道部の静けさとは大違いだった。

    カランコローン。
    「はーいっ! 2番さん景品ゲットでーす!」
    鐘の音と女の子の声が聞こえ、やがてアベックの男女が教室から出てきた。
    女は、大きな白い布を風呂上りのバスタオルみたいに体に巻きつけていた。満面の笑みで男の手を掴んでいる。
    男は、俺たちと同じくらいの高校生か大学生に見えた。こっちは緊張してガチガチである。

    「あの子は『景品』。可愛いでしょ?」美咲ちゃんが言った。
    「景品って?」
    「こっちの廊下の窓から見たら分かるよ」

    そちらにも野次馬がたくさん集っていたが、何とか窓から中をのぞくことができた。
    教室にはクレーンゲームの機械が4台も並んでいた。
    ゲームセンターでぬいぐるみなんかを吊り上げるアレだ。

    「はいっ、先ほどゲットが出ましたよーっ。皆さんもがんばって下さいね!!」
    ゲーム機のそばにはバニーガールがいて、マイクを持って喋っていた。
    ショートの頭に大きなウサ耳、スレンダーなボディに網タイツも決まっている。
    「お? おぉお~?」
    「村田くん! そっちじゃなくて、ゲームの機械を見るの!!」
    鼻の下を伸ばしかけた村田が美咲ちゃんに叱られた。

    ゲーム機は、上半分のガラスケースの部分、つまり本来はぬいぐるみなどを入れる場所に女の子が入っていた。
    正確には女の子の肩から上が入っていた。
    あれが『景品』か?
    機械の下半分に入って、ガラスケースの底から頭を出しているんだな。

    女の子の頭の上にゴム風船が乗っていた。
    クレーンのアームで風船を掴むのか? 違う、このゲーム機のクレーンにはアームがなかった。
    その代わりに長い針が下向きについていた。
    ふむ、あの針で風船を割るのか。
    針のついたクレーンを風船に向かって降下させ、うまく割れれば女の子が悲鳴を上げる。
    ある意味、単純だな。

    「なんだ簡単じゃねえか」村田が言った。
    「あんな大きな風船、すぐ割れるだろう?」
    「そう簡単じゃないの。見てたら分かるよ」

    確かに、4人もプレイしているのに、誰も割れないようだった。
    風船の真上までクレーンを移動させても、下に降ろすとクレーンが傾いて停まってしまうのだ。

    「どうなってるの?」
    「ここからじゃ見えにくいけど、障害物があるんだよ」
    「障害物って?」
    「風船の上に透明な板が渡してあってね、それに小さな穴が開いてるの。そこに針を通さないと割れないよ」
    「なるほど。そりゃ難しい」
    「でも風船が割れたら、女の子をデート権付でゲットできるよ。・・どう?」

    クレーンゲーム ← 改造ゲーム機はこんな感じ

    クレーンゲームで風船を割るアイディアは、古いゲーム機の廃棄品がたくさんあると聞いたことから始まった。
    4台無料でもらってきて、それをお父さんたちのグループが改造してくれた。
    プレイは100円で3回。
    クラスの女の子が回り持ちで景品になり、もし風船を割ることができたら、その女の子と30分間校内デートできる。
    景品の衣装は裁縫が得意な女生徒が集まって手作り。さっき教室の外で見た白い布の衣装だ。
    企画は大成功だった。
    教室の前には順番待ちの大行列ができた。

    「ウチのクラスは可愛い子が多いからね! それにね、千円払ったら誰でも指名OKなんだよ」
    「千円払ってまで指名する奴いるの?」
    「いないけど、景気づけのネタだよ」「ははは」

    「・・女の客も多いな」
    熊井が眼鏡の縁を押さえて言った。
    「うん、半分は女の子。他のクラスの子や上級生もたくさん来てるよ」
    「景品ゲットしたら女同士でもデートするのか?」
    「お兄ちゃん、ここは女子高だよ? んなこと当たり前じゃない」
    「そ、そうなのか」
    「女だって可愛い女の子が好きなんだよ。共学の子は男の目があるから我慢してるだけだよ」
    「・・知らなかった」

    景品の女の子 ←景品の衣装はこんな感じ

    7.
    景品とデートできると聞けば挑戦しない訳にはいかない。俺たちも行列に並んだ。
    20分ほど並び、受付で100円払うとメダルを3枚くれた。
    それを握って、ゲーム機が空くのを待つ。

    ぱん!
    「きゃっ」
    風船が割れる音と女の子の悲鳴が同時に聞こえた。
    奥のゲーム機の前で男がガッツポーズをしている。

    カランコローン。
    「おめでとうございまーす!!」
    バニーガールがその男のところへ小走りでやってきた。
    「よろしければお名前をっ」「あ、コマツです」
    「コマツさん! 成功の秘訣はっ」「そうですね。絶対に捕るぞという執念ですかね」

    インタビューの間にゲーム機の中から景品の女の子が出てきた。
    小柄で色白の女の子だった。
    胸から下に白い布を巻いている。
    顔を赤くしてしきりにお腹を両手で隠しているので、よく見たら胸に巻いた布と腰に巻いた布が分かれているのだった。
    肩も足もどーんと露出しているのに、ちらちら見えるお腹の方が恥ずかしいのね。
    初々しいではないか!

    「はい! おめでとうございました~。素敵なデートを楽しんできて下さいね」
    皆の羨望のまなざしを受けながら、その男は女の子を連れて出て行った。

    「次の方、4番へどーぞ」
    俺の番だ。
    「よおし、見てなさい」
    俺は残って順番を待っている村田と熊井に親指を立てて見せてから、一番奥のゲーム機へと進んだ。

    さっきの子はゲットされてしまったから、ガラスケースの中は空っぽだった。
    前に立って覗き込むと、底に細長い穴が開いていた。
    ごそごそ音がして、その穴から女の子が頭を出した。
    次の『景品』の子だ。俺と目が合うとにっこり笑いかけてくれた。
    二重まぶたで眉が濃い女の子だった。
    おほほっ、俺好み!

    介助の女生徒が後ろにしゃがみ込んで、何かをくるくる回した。
    たぶん回転式の丸椅子だ。高さを調整しているんだろう。
    何回も回してその度に穴の縁に当たる部分が痛くないか、中の子に聞いている。
    見ていて面倒くさいが、女の子をセットするシーンが見れるのはラッキーだと思って我慢した。

    やがて調整が済み、女の子の肩まわりが楕円の穴にぴったりはめ込まれた。
    鎖骨くっきりだ。
    肩ヒモがない衣装だから、こうすると裸で入っているようで少しドキドキした。

    それから女の子の頭に風船のついたカチューシャをかぶらせ、さらに風船の上に透明なプラスチック板が固定された。
    プラスチック板には赤い三角形が描かれていて、三角の頂点に小さな穴が3個開いていた。
    ふむ、これが的(まと)の穴だな。直径4~5ミリというところか。
    この穴のどれかに針を通せば勝ちという訳だ。

    ゲーム機の周囲の扉がばたばたと閉まり、鍵が掛けられた。
    「お待たせしましたーっ。ゲットの秘訣は執念だそうですよぉっ。がんばって下さーい!」
    バニーガールに肩を叩かれ、俺は1枚目のメダルを投入した。

    ぎゅぎゅぎゅ~ん。エフェクト音が鳴り、イルミネーションが景品の女の子を照らした。
    1番のボタンを押す。
    タイミングを見計らって手を離し、次に2番のボタン。
    あ~、駄目だこりゃ。
    離れまくった位置になってしまった。クレーンはプラスチック板にかすりもしなかった。

    村田と熊井が腹を抱えて笑っている。
    くそ、次だ!
    2枚目のメダルを入れて、ボタンを押した。

    今度はだいぶ近くなったが、クレーンの針が板に当たってしまった。
    穴からだいぶ離れた場所だった。
    これはいけない。もっと落ち着かなくては駄目だ。

    俺は深呼吸を2回した。
    集中だ。執念だ。
    精神統一、一球入魂、唯我独尊、怨霊退散!
    よぉーし。俺は静かに最後のメダルを投入する。

    女の子がガラスケースの中から俺を見上げ、声に出さずに口だけで応援してくれた。
    ・・ガンバッテ!
    おおっ、がんばるぞ!

    最初のボタン。よおし、左右はぴったりだ!
    2番目のボタン。よし、よし、よし・・。
    割れると思ったのか、女の子が覚悟の表情で両目をぎゅっと閉じた。

    その瞬間、わずかに首を振った女の子の胸元が目に入った。
    楕円形の穴にはまったその部分に、くっきりと谷間が刻まれていた。
    この子、こんなに巨乳だったのか。

    かたん。
    降下したクレーンの針がプラスチック板に突き当たる音がした。

    「あらぁ4番さん、残念でした~」
    バニーガールが全然残念でなさそうに言った。

    8.
    結局、俺も村田も熊井も、風船を割ることはできなかった。
    悔しいのは、俺たちの後で次々と風船が割られたことだった。
    あの巨乳の女の子も、俺の次にプレイした女生徒にゲットされてしまったのである。
    ああ、あのとき邪念にとらわれさえしなければ。

    「まあ、初めてで取れる人はいないから」
    教室の外で待っていた美咲ちゃんが慰めてくれた。
    「今は混んでるし、リベンジするんだったらも少し後がいいかもねっ。・・じゃ、そろそろあたし茶道部に」

    「あ、いたいた! 熊井ちゃ~ん!」
    教室から女生徒が一人顔を出して、美咲ちゃんを呼んだ。
    「ゲットが続き過ぎで景品が足りないよーっ。熊井ちゃんもシフトに入って」
    「え~、あたし午前中はクラブが・・。分かったっ。部長にお願いしてくる!」
    「ありがとー!!」

    美咲ちゃんは俺たちに向いて言った。
    「そんな訳だから、また後で」
    「美咲、」熊井が聞いた。
    「お前も景品になるのか?」「うんっ、なるよ」
    「あの格好をするのか? お前にもあの衣装があるのか?」
    「衣装はちゃんとあるよ。クラス全員分作ってるし。・・それにね、ほら」

    美咲ちゃんは笑いながらその場でくるりと回った。
    細身の体に纏った着物の袖がふわりと広がって、思わず見とれてしまった。
    「あたしだって人並み以上には可愛いでしょ? こんな美少女を景品にもらえるなら、行列してくれてるお客様も喜んでくれると思わない?」
    「おー、大した自信だ」
    俺と村田は笑った。熊井は渋い顔をしたままだ。

    「あたしが景品してるときに風船割ったら、デートしてあげるよーっ。・・そうだ」
    美咲ちゃんは、何かいたずらを思いついたみたいな表情をした。

    「山東くんか村田くんがあたしをゲットしてくれたなら、本当に恋人になってあげてもいいかなー」
    「え」「え」
    俺と村田はその場で固まり、熊井だけが「おい美咲」と言った。

    「言っとくけどお兄ちゃんは駄目だよ」
    「え」
    「兄弟で恋人にはなれないじゃない。お兄ちゃんがシスコンでも、あたしはブラコンじゃないからね」
    「シ、シスコ・・」
    熊井の眼鏡がズレて傾いた。
    これは漫画などでよくあるショックを受けたときの表現だな。
    日頃難しいことを言う奴だが、こうときは分かり易い。

    「あはは、じゃあね!」
    「み、み、美咲ぃ~」
    美咲ちゃんは元気に走り去り、後には床に膝をついた熊井が残された。

    俺と村田には、妹にフラれた熊井を喜ぶ気持ちこそあれ、慰めてやろうという言葉はないのであった。
    結局、熊井がダメージから回復するまで約1時間、俺たちは生徒食堂でラーメンを食いながら過ごした。

    続き




    関連記事
    スポンサーサイト
    [PR]

    [PR]

    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    82475

    Author:82475
    女性の拘束に関わる小説/SSと
    落書きを書いてます。

    更新案内と目次


    自己紹介
    メール送信/コメント投稿について

    カテゴリ
    最新記事
    最新コメント
    ブログ内記事検索
    (コメントの検索はできないみたいです)
    リンク

    ◎pixiv

    pixiv 82475のpixivページ
    R-18/R-18G 閲覧設定していないと見れません。

    ◎検索サイト

    駄文同盟.com
    駄文同盟.com


    ◎このブログへのリンクについて

    リンク、ブックマークは
     http://82475.blog15.fc2.com/
    へお願いします。
    「いつか感じたキモチ」 バナー
    メールフォーム

    名前:
    メールアドレス:
    タイトル:
    本文:

    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。