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    若きH氏の反省(2/2)

    [Part.2]
    5.
    夏の日の夜。
    「わっはっはっ!」
    若きH氏が豪快に笑っておられました。

    ここはお屋敷で一番小さな晩餐ホール。
    小さいといっても百人は揃ってお食事ができる広さですが、そこにH氏とお客の男性がいました。
    お二人のために、10人以上のメイドさんがお酒やお料理を次々と運んでくるのでした。

    「どうですか、このワインは。ボルドーの100年物ですぞ」
    「お、美味しいと思いますが、よく分かりません」
    H氏の問いかけに男性はどうにか答えました。
    不慣れな場所に招かれて超高級なお酒を飲まされても、味など分かるはずがありません。
    そもそも、ワインのテイスティングすらどうやればよいか知らないのです。

    「正直でよろしい。実は儂にもさっぱり分からんのです。うわっはっは!」 H氏はそう言ってご自分でお笑いになりました。
    「所詮は金があれば手に入るものです。しかし貴方の作品は違います。これは芸術品ですぞ、崎村さん」
    「そんな、芸術と呼ぶようなものでは」
    「とんでもない。これほど躍動感のある標本を儂は見たことない」

    H氏が指差された方に、崎村さんと呼ばれた男性の作品が並べられていました。

    『眠るイヌ』。
    長毛種の大型犬が身を丸くして眠った姿でした。
    思わず撫でたくなるような造形です。

    『ボールと子ネコ』。
    転がるゴムボールにじゃれついて飛びつこうとする子ネコです。
    前肢を上げて身を伸ばした姿は今にも動き出しそうでした。

    『駿馬』。
    サラブレッドが全力で駆ける姿です。
    実物大のサイズで作られていますから、見上げるような高さがあって、大変な迫力でした。

    これらはどれも透明なアクリル成形で作られていて、内側にその動物の骨格が埋め込まれているのでした。
    崎村さんは、博物館で動物の剥製や標本を作る職人でした。
    これらの作品は、崎村さんが趣味で作ったものでした。

    「ただの標本が、どうしてこれほど真に迫ってくるのですかな?」
    「そ、そうですね・・、彼らが生きている姿を見てから、標本にしているからかもしれません」

    崎村さんは、標本にする動物を死骸ではなく、生きて元気な状態で入手していました。
    その動物と触れ合って理解してから、作品のイメージを決めるのです。
    先ほどのイヌは、ペットとして購入してしばらく飼ってから標本にしました。
    サラブレッドは何ヶ月も牧場に通って仲良くなった馬を標本にしたものでした。

    アクリル透明像の制作も手間がかかっていました。
    動物から取り出した骨格をアクリ樹脂に封入して専用の型で固めて作るのですが、特殊な形状の型は高価で個人では作れません。
    このため単純な四角い形で固化させた後、外形を手作業で削って作りました。
    それから表面を研磨しバフ仕上げで透明にするのです。
    とても時間がかかる作業です。
    とりわけサイズの大きいサラブレッドの透明像は完成まで1年以上要していました。

    「大変な熱意と情熱で作られたのですな」
    「い、いえ。それほどでは」
    崎村さんは先ほどから落ち着きません。
    額の汗をハンカチで何度も拭いては、できるだけ遠くを見ないようにしているのでした。

    「あれが気になりますかな?」
    H氏はホールの反対側を指差して聞かれました。
    そこには崎村さんのとは別の 『作品』 が飾られていました。

    「はい。いささか」 「ふははは!」

    それは緊縛された少女たちでした。
    もちろんマネキンなどではなく、すべて生きた人間を使った緊縛です。
    いったい何人縛られているのでしょうか。
    テーブルの上に置かれたり、壁に掛けられたり、天井から吊られたりしている少女たち。
    厳重に身動きを封じた上でさらに装飾や灯具をあしらって豪奢なインテリアに仕立てられた少女もいます。

    どれもお屋敷のメイドさんだとH氏はおっしゃいました。
    「幸い、こういうことに使っても、困らない程度の人数はおりますからな」
    「す、すごいですね」
    「いやいや、素人の趣味です。・・ま、ゆっくり見てやって下さい。客を退屈させん程度には躾ておりますからな」

    確かに、どの少女も厳しく縛られていましたが、品なく泣きわめいたり暴れたりする者はいませんでした。
    かといって、死んだように動かない者もいません。
    表情、呼吸、空を掴む手指の動き、そして動かせない手足に力を入れて精一杯もがく姿。
    少女たちは、苦しさ・恥ずかしさ・むなしさ・みじめさ、そして切なさを全身で表現していました。
    無駄な露出のひとつもない着衣の緊縛ばかりなのに、十分にセクシーな極上の『作品』ばかりでした。

    6.
    H氏はいろいろな人を招いてお話を聞かれるのがお好きでした。
    そのお相手は、著名な政治家や経済人、スポーツ選手や文化人のこともありますが、それよりも一芸に秀でた人や趣味を貫く人とお会いになるのを好まれました。
    どこからかそのような人を見つけてきては、夕食に招待なさるのです。

    たいていお客様はお一人かお二人。
    そうしたお客様はお屋敷に来ると、緊縛して飾られたメイドさんに度肝を抜かれます。
    ときにはお給仕のメイドさんがいきなり縛られてしまうこともあります。

    「どうですかな?ご自分で縛ってみては。そこのメイドから適当に選んでもらって結構ですぞ」
    H氏が楽しそうにお聞きになりました。
    「い、いいえ。とんでもありません」
    崎村さんは慌てて首を振りました。そんなことができるはずはありません。

    かちゃん。
    慌てた拍子にフォークを取り落としてしまいました。
    近くにいたメイドさんがさっと拾ってくれました。
    栗色の髪を後ろでくくり、大きな瞳も栗色の、とても可愛いメイドさんでした。

    「すみません」
    「いいえ。新しいフォークをお持ちいたします」
    そのメイドさんは微笑みながらフォークを持ってきてくれました。
    同僚のメイドさんが何人も緊縛されているのに、とても落ち着いてきびきびと動いているのが分かりました。

    「わっはっはっは!! 無理は申しますまい」
    H氏は笑っておっしゃいました。
    「それより、透明骨格標本の作り方をご教授願えますかな?」
    ああ、それなら。
    崎村さんは安心して喋り始めました。

    「元々、透明骨格標本とは動物の筋肉をトリプシンというタンパク質分解酵素で透明化して作ったものを指します」
    「ほう」
    「筋肉組織の構造がよく分かり学術的にも有効ですが、大型の生物では難しく・・」

    H氏は聞き上手でした。
    崎村さんは、問われるままに、動物の解剖の方法、骨格の取り出し方、アクリル削り出しの手順まで話していました。
    いつか、緊縛少女たちのことはあまり気にならなくなっていました。

    「・・なるほど、大変勉強になりました」
    H氏は満足したように言われました。

    「ところで、人間の骨格標本をお作りになったことはありますかな?」
    「ありません。倫理的な理由もあってヒトの標本は模型ばかりですね。以前は中国製などであったようですが」
    「本物の人体が手に入れば、それで作りたいとお思いですかな?」
    「是非やってみたいですね。・・でも難しいでしょう。献体の数は増えていると聞きますが、すべて医学用ですから」

    「ふむ」
    H氏は少し考えて、居並ぶメイドさんたちに聞こえないように小さな声でおっしゃたのです。
    「いかがですかな? ここにいる娘を使っては」

    7.
    その夜。
    お屋敷の客間に泊まった崎村さんは、寝付くことができませんでした。
    H氏の言葉は衝撃でした。
    メイドさんの身体で骨格標本を作るなんて。
    いくら何でも冗談だろうと思いました。

    あのとき驚いてメイドさんたちを見ていたら、一番端に立つ栗色の髪のメイドさんと目が会いました。
    落としたフォークを拾ってくれたメイドさんでした。
    主人が恐ろしいことを口にされたというのに、あろうことかそのメイドさんは崎村さんに微笑みかけてくれたのでした。
    隣のメイドさんが黙ってそのメイドさんの肘を突きました。
    彼女は、いけない、という顔をして笑うのを止め、元のすました表情に戻りました。

    H氏はその様子をにやにや笑いながら見ておられましたが、それ以上は何もおっしゃらず晩餐会の終了を告げられたのでした。

    ・・コンコン。
    客間の扉がノックされました。
    「もし」
    小さな声。そしてもう一度ノックの音が聞こえます。

    ベッドから出て扉を開けると、そこに一人のメイドさんが立っていました。
    あの栗色の髪のメイドさんでした。

    「伽に参りました」
    「トギ?」
    「はい。・・伽にございます」
    はっとした。それは夜伽のことか?

    「き、君が?」
    そのメイドさんは、ほんの少し頬を赤らめて答えたのでした。

    「当家から心ばかりのおもてなしにごさいます。お客様、どうぞ、わたくしめをお使い下さいませ」
    「し、しかし」
    「失礼いたします」
    そう言うと、メイドさんは唖然としている崎村さんの横を抜けて客間の中に入ってしまったのです。

    8.
    小柄なメイドさんでした。
    メイド服を脱ぐと、胸やお尻はまだ十分成熟していませんでしたが、とても柔らかくて抱き心地のいい身体をしていました。

    崎村さんは、標本好きが高じすぎて、40才近くになった今も独身でした。
    女性との経験もなく、このときが初めてのセックスでした。
    メイドさんは不慣れな崎村さんをよく導いてくれました。

    最初に放出したとき、控え目に声を出して震えながら、ちゃんと一緒に達してくれました。
    二度目のときは、自分から両足を開いて崎村さんを招き入れ、甘い声で鳴きながら絶頂を迎えてくれました。
    そして三度目は、バックから激しく胸を揉まれ、全身をがくがく揺らせながら、大きな声を上げてイッてくれました。

    その後、栗色の髪のメイドさんは崎村さんの胸に抱かれて眠りました。
    うっすら汗をかいていましたが、とてもいい匂いがしました。

    9.
    朝の光と香ばしい匂いに目が覚めました。
    きちんとメイド服を着たメイドさんが、ポットでコーヒーを淹れたところでした。

    「おはようございます、お客様。よくお休みいただけましたか?」
    「おはとう。よく眠れたよ」

    目をこすりながら起きようとして、シーツの汚れに気が付きました。
    昨夜、メイドさんと濃厚なセックスをした場所です。
    そこにははっきりと処女の痕跡が残っていました。

    「!!」
    「いかがなさいましたか?」
    メイドさんが寄ってきてシーツを見ました。
    「いけない! ・・これは見苦しいものを、申し訳ありませんっ。すぐにシーツを代えます」
    慌てて謝ります。

    「まさか、初めてだったのか?」
    「・・はい」
    「君はいくつなんだ?」
    「15、でございます」
    「15才!!」
    驚きました。
    何と若いメイドさんなのでしょうか。

    「15の女の子が、こんなサエないオヤジと初めてだなんて、そんな」
    「いいえ、お客様はとても素敵でございました」
    「見え透いたお世辞はいいよ」
    「お世辞なんかじゃありません!」
    メイドさんが叫ぶように言いました。初めて聞くメイドさんの大声でした。

    「・・」
    「あ、ごめんなさいっ」メイドさんの顔が赤くなりました。

    「その、昨夜はとってもよくしてもらって、初めてなのに、その、」
    「・・その?」
    「すごく感じて、エッチな気持ちになって、な、中に、いっぱい出してもらって、」
    ますます赤くなります。
    「・・ぞくぞくして、後ろからも、挿れてもらって、」
    「もう、いいよ」
    「・・嬉しくて、本当に、すごく嬉しくって」
    涙が流れました。ぽろぽろ流れました。
    「だから、あたし、あたしっ、・・えっ、・・えっ、」

    崎村さんは、上品なメイドさんの中にいる普通の15才の女の子を見ました。
    とても可愛いと思いました。
    彼女の手を持って引くと、メイドさんは崎村さんの胸の中に倒れ込みました。

    「・・・あぁぁん!!」

    栗色の髪のメイドさんは大声で泣き出しました。
    崎村さんはその背中を抱いてて、ゆっくりさすってあげました。
    さすりながら、いい肩甲骨だなと思いました。

    ・・この子の骨格を調べてみたいな。

    10.
    しばらくして落ち着くと、メイドさんは崎村さんから離れました。

    「申し訳ございません。大変な粗相をいたしました。・・お客様の前で感情を爆発させるなんて、メイド失格です」
    「気にしなくていい」
    「いいえ。わたくし、告解して罰を受けなければなりません」
    「言わなければいじゃないか」
    「それは許されません」
    「こういうことを言うと怒るかもしれないけど、僕には君が泣いてくれたことが最高に嬉しかったよ」
    「?」
    「君はとても素敵な方法でお客を満足させたから、いいことをしたんだ。罰を受ける必要はない。・・屁理屈かな?」
    「ぷっ、もうっ」

    メイドさんは小さく吹き出して笑ってくれました。
    栗色の髪が揺れて朝日に輝いてとても綺麗でした。

    崎村さんは服を着て、メイドさんの出してくれたコーヒーをゆっくり味わいました。
    それから、メイドさんに頼んだのです。

    「君の身体をもう一度見せて欲しい」
    メイドさんはすぐに頭を下げてお応えしました。
    「はい、お客様。お望みのままに」

    メイドさんはメイド服と下着を脱いで全裸になってくれました。
    崎村さんはそれをまぶしそうに見つめます。
    明るい光の中で見るメイドさんの身体は、昨夜以上に綺麗でした。
    崎村さんの片手の中に納まりそうな乳房の乳首や、控えめな陰毛の下の性器は、美しいピンク色をしていました。

    「身体に触っていいかい?」
    「どうぞ、ご随意に」
    崎村さんはメイドさんの肩から鎖骨、胸骨を確かめました。
    頭蓋骨の形から背骨のラインまで確かめました。上腕骨や大腿骨も強く押さえて確かめました。
    最後にベッドに寝かせて骨盤を調べ、指を淹れて尾骨や恥骨まで確認しました。

    小柄ですが、健康で綺麗な骨格でした。
    将来、献体の人体を使えたとしても、これほど若くて良い骨は望めないでしょう。

    ・・この骨格を標本にしたい。
    そう思いましたが、さすがに口にはしませんでした。

    「ありがとう。いい骨だった」
    お礼を言ってメイドさんから離れました。

    「お客様、本当に骨格がお好きでいらっしゃるのですね」
    「ああ。好きだね」
    「うふふ」メイドさんはおかしそうに笑いました。
    「どうしたんだい?」
    「だって、難しい顔をなさって触っておいでだから」
    「?」

    彼女は両足の間に自分の中指を差し入れて、それから出して見せました。
    「わたくし、こんな風になって震えておりましたのに、気にもして下さらなくて」
    「あ・・」

    初めて気付きました。
    その指は、ねっとりとした液体に覆われておりました。
    透明な糸がつぅっと伸びていました。
    メイドさんはとても色っぽい顔をして笑っていました。

    「ごめん。君に恥をかかせるつもりは、」
    「いいえ。15の小娘に恥も何もございません。・・それよりも、」
    メイドさんは、一旦息をついでから言いました。

    「どうぞ、この骨をお使い下さいませ」
    え?

    「わたくしを骨格標本になさって下さいませ」
    「・・知っていたのか?」
    「直接は言われておりませんが、旦那様のお考えは承知しております」

    あのとき、晩餐の場にいたメイドは全員がH氏の意向を察したといいます。
    そして、もし命じられれば、すべてを捧げて標本になることも覚悟したのでした。

    「お客様がわたくしをお気に召して下ったのでしたら、それはわたくしが骨格標本になる、ということです」

    11.
    それからの話は、とても早く決まりました。
    報告を受けて、H氏は栗色の髪のメイドさんの提供をお決めになりました。
    社会的に絶大な力を持つH氏ですから、お屋敷で何があっても当局が立ち入ることはありません。
    メイドさんが生まれ育った実家の両親もあらゆる事態を覚悟して娘をお屋敷に出しているのです。
    何の問題もありませんでした。
    あとは崎村さん自身が了承するだけです。

    その崎村さんはなかなか決められないでいました。
    ヒトの骨格標本を作るのは崎村さんの夢です。
    そして素晴らしい骨格を持つ少女が、使って欲しいと言っているのです。
    でもそんなことを神様が許してくれるだろうか。
    人間の少女をイヌやウマと同じように標本にすることを。
    わずか15才の少女の命を、自分のために使うことを。

    崎村さんの心を決めさせたのは、栗色の髪のメイドさん本人でした。
    彼女は自分の顔面に焼きゴテを当てたのです。
    無残に焼けただれた顔では、もはやメイドとしてお役に立つことはできません。
    崎村さんはその覚悟に心を打たれて、標本作成を決心しました。

    12.
    崎村さんはお仕事を辞めてH氏邸にやってきました。
    敷地内に作業室が建てられて、そこには解剖のための設備やアクリル成形に使う大型オートクレーブまで設けられました。

    崎村さんは、そこにメイドさんと一緒に住んで準備を始めました。
    メイドさんのいろいろな姿を記録し、スケッチを描いて作品のイメージを決めるのです。
    約一ヶ月の間、二人は濃密な時間を過ごしました。
    崎村さんはメイドさんを愛し、メイドさんも崎村さんを愛しました。
    その姿はまるで夫婦だったといいます。

    やがて作品のポーズが決まり、メイドさん本人も了承しました。
    それはモップを持って立つ、ごくシンプルなポーズでした。
    一番メイドらしいと二人の意見が合ったポーズだったのです。

    栗色の髪のメイドさんは、仲間のメイドさんたちから贈れた花に囲まれ、崎村さんの薬品注射で天国に旅立ちました。
    そして崎村さんはその身体を解剖しました。
    体毛を剃り、皮を剥いて内臓と筋肉を除去します。
    胴体と四肢を切り離し、部位ごとに骨を取り出して炭酸ナトリウム溶液に漬けて弱火で煮詰めます。
    骨表面についた筋肉組織をこそげ落とし、脱脂、漂白してよく乾燥させます。

    作業中の崎村さんは鬼気迫る様子でした。
    ほとんど食事もとらず、睡眠もとらず、わずかに休むときはメイドさんの骨の側で過ごしました。

    骨格のパーツが完成したら、ポーズを組み立ててアクリル型に設置します。
    お屋敷のエンジニアからは人体形状の型で作る提案もありましたが、崎村さんは手馴れた削り出しで作ると決めました。
    骨格を収めた型に溶融アクリル樹脂を流し込み、クレーブのチャンバーに入れて真空処理と熱処理を行います。

    骨格入りの無垢のアクリル塊が出来上がると、削り出しの工程です。
    骨格のポーズと完成図面をチェックしながらグラインダーで荒削りします。
    さらにヤスリとナイフで細かい造形を施すのです。
    気の遠くなるような作業でした。
    少しでも削りすぎたり、内部の骨格と位置がずれたりすると終わりです。
    崎村さんは驚くべき集中力で、少女の外観を浮かび上がらせてゆきます。
    アクリルの粉まみれになりながら、まる1日働き、まる1日眠る生活を繰り返しました。

    秋が終わり、冬も終わろうとする頃、骨格標本が完成しました。
    モップを持って立つ透明なメイドさんの中に、人体骨格が浮かんでいました。

    13.
    完成した骨格標本としばらく一緒に過ごした後、崎村さんは屋敷で引き取って欲しいと書いた手紙を残し姿を消しました。
    しばらく行方不明になった後、残雪の山中で首を括って死んでいるのが見つかりました。
    若い少女の命を奪った自責の念か、愛する彼女の後を追ったのか、誰にも分かりませんでした。

    14.
    お屋敷の執務室。
    若きH氏は椅子に座って、じっと人体骨格標本を眺めておられました。
    片手にモップを持って立つ透明な美少女。
    目を閉じると、あの栗色の髪のメイドさんが同じポーズで微笑んでいる姿が浮かぶのでした。

    「まさに逸品だな。・・しかし、残ったのはこれだけだ」
    力なくつぶやかれました。

    「どうやら儂は調子に乗りすぎたようだ」
    一人だけ同席させたベテランのメイドさんに向って自嘲するようにおっしゃいました。

    このメイドさんはH氏のお気に入りでした。
    H氏は、このメイドさんにだけは他の使用人の前では決して見せない本音もお話しになるのでした。

    「メイドの骨格をダシに甘言をささやいた結果、貴重な才能を失ってしまった」

    ・・おやおや、あのお客様を惜しまれるだけで、死んでしまったメイドのことはお気になさらずですか?
    そのメイドさんは思いましたが、もちろん口に出しては言いませんでした。

    「二度と軽々しいことはせん」

    ・・そうです。先代の旦那様はとても思慮深い方でしたよ。
    しっかりお屋敷を導いて下さいませ。信じてついて参ります。
    メイドさんは優しい目を向けて願うのでした。

    ・・ああ、もちろん、これからも、メイドの命は旦那様のお心のままです
    十分に心得ております。
    そのように扱われるのがメイドです。女です。
    わたくしどもの喜びです。
    メイドさんは、H氏に気取られないようそっと自分の胸を押さえ、心の中で繰り返すのでした。


    [Part.3]
    15.
    物置部屋で発見された人体骨格標本。
    それは廃棄されるはずだったものを、当時のメイドさんたちがこっそり残していたものでした。
    棄てよと命じたものが残っていたと知っても、H氏はお怒りになりませんでした。
    「そうか、では大切に保管しなさい」
    短くそうおっしゃっただけでした。

    事情を聞いたメイドさんたちがメイド部屋に置かせて欲しいと願い出ました。
    その中には、この骨格標本を物置で見つけた栗色の髪のメイドさんも含まれていました。
    彼女は、標本になったメイドさんが他人には思えなかったのです。
    自分が生まれるずっと前、15才で命を捧げたメイドさん。
    もしかしたら、いつか自分も・・。
    それは、とても恐ろしく、そしてほんの少し憧れる未来でした。

    こうして人体骨格標本はメイド部屋の入口に置かれ、お屋敷のメイドさんたちに大事にされました。
    この年の新人メイドさんたちがお客様に処女を捧げたときも、数年後に一人が天国に召されたときも、さらに歳月が過ぎて皆ががお勤めをまっとうして辞めた後も、ずっとそこにいて、お勤めするメイドさんたちを見守ったのでした。



    年2回の執筆が恒例になったH氏邸シリーズです。
    今回は15才のメイドさんを人体骨格標本にするお話。
    もちろん私の小説ですから、嫌がる少女を無理矢理・・ という展開にはなりません。
    心なしかアンバードールシリーズのネタと被ってしまった気もしますが、まあいいでしょう~^^>。

    骨格標本とアクリル成形の手順に関してはネットの情報を参考にしました。
    挿絵の骸骨もネットの人体骨格図を参考に、肋骨の数など適宜省略して自己流で描いたものです。
    何か誤まりがあった場合はご容赦下さい。

    修道院に入った元メイド長とは、もちろん『桔梗の定期便』に登場したシスターです。
    Part.2 の最後のシーンでH氏の執務室にいたベテランメイドさんも同じ人。
    この頃から主人の相談役や、ベッドのお相手として務めていたのでしょうね。
    考えてみれば、若い頃のH氏と彼女の間にはいろいろな秘話がありそうです。
    いずれ書いてみたいですが、メイドさんが死ぬ話ばかりになりそうな気が・・(笑)。

    ありがとうございました。




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    No title

    たしかにアンバードールシリーズと被ってますね(笑)H氏がアンバードールシリーズの世界に行ったら、屋敷がドールで埋め尽くされるんでしょうかね?わずか15才で、人体骨格標本になった女の子が、屋敷のメイドを見守り続ける・・・オチはなんだか最終回みたいな話で切ないです。

    以前のコメントで、更新ペースをもうちょと上げる書き込みがあったのですが、私個人としては嬉しいですね。
    管理人の小説は、私の月一の楽しみになっていますからね。イリュージョン物もそろそろやりたいとのこと。楽しみです。

    Re: No title

    ◎とうめいさん
    いつもコメントありがとうございます。
    やっぱり似てましたね。確かにH氏はアンバードールにハマってしまいそう。
    切ないと感じていただけたのは、作者として嬉しいです。

    更新ペースの改善やイリュージョンネタはまだまだなので、ごめんなさい。
    次回アップ作も書きかけてはいるのですが・・。

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