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    Bondage Model その2・縄けっと

    1.
    同人誌イベントを明日に控えた深夜。
    伽耶(カヤ)、多美子(ターミ)、そして紅緒(ベニオ)の腐女子3人が、疲れ果てた顔で座り込んでいた。
    汚れたジャージ、化粧っ気のない顔にばらばらの髪、ベタと修正液にまみれた手。
    ここは3人の中で唯一人、親と同居していないターミのアパート。
    3人の前には、ミューズコットン紙にプリンタで印刷した表紙40枚、そして近所のコンビニ3軒で分けてコピーしてきた本文ページ1350枚が揃っていた。

    「修羅場も4日。ようやくここまでこぎ着けたか」カヤが眼鏡を外して拭きながら、感慨深げに言った。
    「あとは製本だけ。頑張ったねー」ターミが両方の目の下をごしごしこすりながら、眠そうに言った。
    「もうひと踏ん張りねっ」ベニオがショートパンツの足を手でさすりながら、嬉しそうに言った。

    それから表紙込みで40Pの同人誌150部を綴じた。
    搬入用のバッグに詰め、売り子衣装とイベント参加証、その他の準備物を確認したのは午前4時。
    皆で拍手する。

    「何時に行くのー?」
    「10時に会場入りぢゃから9時に出かければよかろう。朝餉(あさげ)はコンビニで仕入れて向こうで食すとしよう」
    「変な喋り方は止めなよ、カヤ」
    「むはは。テンション上がり過ぎて止まらんのぢゃ!」
    「ふにゃあ~、4時間寝れる」
    「こらターミっ、まだ寝こけるでない」
    「いいじゃない、カヤ。あたしも落ちるー」
    「では、わらわも」

    そうして全員の意識がなくなった。

    2.
    3人は、いわゆる同人誌仲間である。
    高校時代はそれぞれ個人で活動していたが、イベントで知り合い意気投合して合同誌を出すことになった。
    みんな同い年で、大学1年になったばかりだった。

    「・・なら、R18で出す?」
    「いいねー」
    「やった。夢に見たR18デビュ~ww」

    実は3人とも、高校生のときからエロイラストは描いていた。
    カヤはBL女体化とロリショタ、ターミは百合。ベニオはNL/GL/BL何でもOKの雑食。
    それぞれ嗜好は違うけれど、えっちなネタが大好きだった。

    そしてもう一つ、3人に共通の趣味があった。
    女体化キャラの緊縛、女同士のSM関係、そして美少女のピンチシーンなど、緊縛や拘束モノを描いていたことである。
    初のR18誌のテーマは女子高生の学園緊縛モノに決まった。
    各人が漫画8Pを描いて持ち寄り、それ以外に合同で漫画8Pとイラスト2Pを描く。

    実際に製作が始まると遅れが大きくなって合同漫画は8Pから4Pに減り、その分イラストでページを埋めたものの、イベントには何とか間に合わせることができたのだった。

    3.
    目を覚ますと10時半だった。

    「きゃー!!」
    「きゃー!!」「きゃー!!」
    一人が時計を見て叫び、他の二人も仲良く叫んだ。
    身だしなみを整える間もなく荷物を抱えて部屋を飛び出した。
    電車の中から主催者に電話して謝った。

    「12時半までに設営できたらOKですって」
    「ぎりぎりセーフかのう」
    「お腹空いたぁ」「我慢するのよターミ!」
    「それよりシャワーだけでも使いたかったなー」
    「匂うかしら、あたしたち」「心配無用。こういうときのために超強力デオドラントを持っておるぞ」
    「さすが、カヤ!」

    電車を2度乗り換え、会場の△△会館に着いたのは12時前だった。
    『縄けっと』
    と書かれた看板が立っていた。

    4.
    受付で出品者の手続きを済ませると、ホールの即売エリアに駆け込んだ。
    そこには、折りたたみ式テーブルがゆったりと間隔を開けて並べられていた。

    ちょっと変わっているのは、どのスペースも後方に高さ2メートルほどの柱が2本ずつ並んで立っていることである。
    柱の上端には、同じ太さの梁が水平に渡されていて、全体ではカタカナのコの字を立てたような形になっている。
    梁の中央には、金属のリング(環)がくくりつけられていた。
    何だこれ。
    ベニオが立ち止まって眺めかけたけれど、カヤとターミに急かされて準備を始める。
    割り当てられたスペースで、まず荷物を開いた。

    「あと何分?」「30分っ」
    一人ずつ更衣室に行って着替え、その間に他の者がスペースの準備をした。
    テーブルクロスの入った紙袋を忘れたことに気付いたけれど、仕方ないのでテーブルの上に直接置くことにする。
    完成したばかりの同人誌を並べて積む。ベニオが1枚だけ持ってきたカラーボードをPOP代わりに立てる。
    菓子缶に釣銭用のお金を準備する。

    時間ぎりぎりに設営が完了した。
    3人の売り子衣装は、それぞれの高校時代の制服である。

    「出たとこにコンビニがあったのう。おにぎりでも買ってこよう!」カヤがそう言って、自分のポーチを掴んだ。
    「私も行く」「じゃ、あたしも」
    「いかんっ、一人は留守番ぢゃ。ベニオ、頼むぞよ」「了解!」
    カヤとターミが制服のままで走って行く。

    残されたベニオは椅子に座って大きく息をついた。
    はぁ~。ホント、よく間に合ったなぁ。
    両手を上に伸びをしながら、初めて周囲を見渡した。

    スペースの数は、ひぃ、ふぅ、・・、18か。案外少ないね。
    女性サークル限定でSMモノオンリーだっていうから、こんなもんかなぁ。

    あらあの人、コスプレ?
    レザーのワンピース着てるっ。ボンデージ? 色っぽい!!
    あっちの人なんて、黒の下着だけ!!
    きゃ~っ。すごい、すごい!

    5.
    ピンポンパンポーン。
    場内放送が流れた。
    「開場30分前になりました。ただ今から縄師さんが各スペースを回りますから、モデルの準備をして下さい」

    へ? 縄師?
    縄師って、あの、女の子を縛る人?
    モデルって、何のこと?

    「縄師さんは3人です。それぞれ、A列、B列、C列を番号順に回ります。最初は、A-1、B-1、C-1からです。スムーズに作業が進行するよう、ご協力をお願いします」
    ベニオは自分のスペース番号を見た。A-2番だった。
    番号順って、A-1の次ってことかしら。

    隣のA-1のスペースに人だかりがした。
    紺の作務衣を着た男性が女性を縛っていた。
    あれ、縄師さんとモデルさん?
    人だかりは他のサークルから見物に集まってきた連中だった。

    モデルはさっき見た黒の下着の女性だった。
    プロポーション抜群のボディに小さなブラとショーツがよく似合ってとてもセクシーだった。

    縄師の男性はモデルを後ろ手に縛った。まるで魔法のような速さだった。
    そしてその背中から縄を伸ばし、頭上の梁のリングに掛けると軽く引いた。
    モデルの背筋がぴんと伸びた。
    はっきり見えなけれど、踵も浮き上がっているかもしれない。
    縄師はモデルの耳元で何かをささやいた。そのモデルはにっこり笑って応える。

    「ほい、出来上がり!」
    縄師が大きな声で宣言してモデルのお尻をぺちんと叩いた。
    一斉に起こる拍手。
    ほとんどの見物人がスマホやデジカメで写真を撮っている。

    すごい!!
    ベニオは驚くばかりだった。
    縄師の手際のよさ。縛られたモデルさんの美しさ、色っぽさ!
    緊縛写真や動画はネットで見ているけれど、実際の緊縛を見るのは初めてだった。

    6.
    縄師の男性がこちらに向かって歩いてきた。後からぞろぞろギャラリーが続く。
    ・・やっぱり。次はウチ?

    「ほう、セーラー服か。なかなか可愛いで」べたべたの関西弁で話しかけられた。
    「ここは、お嬢ちゃん一人か?」
    「あ、いえ。すぐに二人帰ってきます」
    「そうか。なら早速やらせてもらうで。まだぎょうさん縛らなあかんのや」
    え、あ、いや、ちょっと。

    「手ぇ後ろで組んで」
    そ、そんな。あたしが縛られるなんて。
    腕を掴まれた。手首に縄が絡みつく。
    その手首が吊り上がったと思うと、腕と胸の周りに縄が巻きついて、きゅっと締まった。
    あ、あ、あ。

    「お嬢ちゃん、緊縛は初めてやな。そないに緊張せんでもええ」
    「あ、はい・・」
    何が何やら分からなかった。
    気がつけば上半身が固められていた。

    「吊床、使うか?」
    「吊床って?」
    「後ろの柱や。初縄が『吊り』ちゅうんもオツなもんやな。うまいこと縛らんと長丁場はキツうなるけどな」
    つ、つ、吊りぃ?!
    長丁場って何。

    「よっしゃ。絶対に痛うないようにしたる。ええ思い出にし」
    腰のまわりに縄を掛けられているようだ。
    ミニスカートの足も上から順に何箇所も縛られた。

    え、え、え、え。

    腰と背中にぐいっと力がかかった。・・ぐらり。
    きゃ!

    足が床を離れ、宙に浮かんだ。
    慌ててもがこうとしたら手も足も動かせなかった。

    「ほいよ、完成っ」男性の声。
    カシャ、カシャ、カシャ。一斉にカメラ音が聞こえた。

    ぎょえ~っ。あたし、吊られてるぅ!
    縛られて、吊られて、写真、撮られてるぅ~!!

    絵師緊縛
    絵師緊縛

    7.
    「おや、もう縛られたか」「縛られるとこ、見たかったぁ」
    カヤとターミの声に目を開けると、二人が前に立って自分を見ていた。

    「済まぬのぉ。コンビニが混雑して遅うなった」
    「そんなことより、何よこれ」
    「何って、ボンデージモデルでしょ」
    「は?」
    「縄けっと名物『絵師緊縛』ぢゃ。ベニオは知らぬのか?」
    「知らないよぉ」
    「ほれ、見よ。あちこちで女子が縛られておるであろう。あらかた、我らと同じ同人絵師ぢゃ」

    カヤに言われて見回すと、どのスペースでも女性が緊縛されていた。
    椅子に座って縛られている人。立ちポーズで縛られている人。ベニオのように吊られている人。
    数は少ないが男性が縛られているところもあるようだ。

    「ウチはイケメンモデルを頼む余裕などないからのう。オーソドックスに絵師緊縛ぢゃ」カヤが説明する。
    「これがオーソドックスぅ?」
    「うむ。美女が3人もおるからモデルには困らぬしの」
    「え、3人って」
    「自分だけ縛られると思っておったかベニオよ。一人だけ楽しむのは許さぬぞ。ベニオの後はターミとわらわも縄を受けるのぢゃ!」
    「私、すっごく楽しみにしてたんだから。縛られるの♥」横からターミが言った。
    「ターミは自他ともに認めるドMぢゃからのう」「カヤだって、わくわくしてるんでしょ?」
    「むはは。プロの縄師にタダで緊縛してもらえると聞いて心躍らぬ腐女子はおらぬわ」

    お気楽すぎるわよ、あんた達。
    妄想は現実と別なんだから。
    実際に縛られてみたら、どれだけ辛いか分かるわ、・・って、あれ? どこも痛くないぞ?
    こんなにぎちぎちに縛られてるのに。

    突然、さわさわと太ももを撫でられた。

    「きゃあ!!」「おお、可愛い反応ぢゃ」
    「カヤっ!」
    「じゃ私はおっぱい触る!」
    「タ、ターミっ!!」
    後ろから乳房をむにっと揉まれた。

    「ひゃん!!」
    「あれ? ブラしてるの、ベニオ」
    「ったり前でしょっ」「なーんだぁ、残念」
    ターミはベニオの胸を揉む手を止めなかった。
    ベニオは必死に逃れようとするが叶うはずもなく、ただ空中でうごめいて揺れるだけであった。

    「うーっ、あんたが縛られるときは、思い知らせてあげるからね!」
    「きゃあ、楽しみにしてるわん」
    「それで、あたしいつまで縛られてるの?」
    「1時間ぢゃ」
    えぇ、1時間もー?
    あの縄師さんが言ってた、長丁場って、そういうことか。

    「じゃあ、あたしお客さんの前で、このまま?」
    「当たり前じゃない」
    「写真撮影も自由であるから、いい顔で写るのぢゃぞ」
    そんなあ。

    8.
    午後1時。
    女性作者限定、SM系のR18同人誌/イラスト即売会『縄けっと』が開場した。
    このイベントは、各スペースごとに緊縛コーナーを設け、サークル側で用意したボンデージモデルを緊縛展示するのが特徴である。
    モデルは男女問わず誰もでもよい。
    女子受けするイケメンモデルを用意するところ、知り合いのコスプレイヤーに来てもらって縛るところ。
    そして一番多いのが、絵師緊縛と称して同人誌/イラストの作者自身が縛られるサークルだった。
    絵師の中には、自分の緊縛イメージをイラストに描いてきて、これと同じに縛って欲しいと縄師に頼む者までいた。

    ドアが開いて一般入場者が入ってきた。
    みるみる内にスペースの前は人で溢れる。

    「おおっ、JK斜め吊り!」「可愛い~」「写真撮らせて下さい!」
    どの客もまず目当ては緊縛展示だった。

    「モデルさん、視線こっち下さいーっ」
    「ちょっと困った顔してもらっていいですか」
    「あ、苦しそうな顔も!」

    ベニオは忙しかった。
    ひっきりなしにカメラを向けられ、話しかけられ、並んで写真を撮られたりした。
    ときどきスカートの中を撮ろうとする輩がいて、その度に悲鳴を上げるとカヤかターミが排除してくれた。

    全身を縛られて、ずっと吊られているのに、どこも痛くなかった。
    自由を奪われた姿を晒されるのは、ものすごく恥ずかしいけれど、それも刺激的で楽しかった。
    ・・絶対に痛くないようにしてやる。いい思い出にし。
    そう言ったあの縄師さん、ホントに凄腕だー。

    同人誌に描いた自分の作品を思い出した。
    ここ数日の修羅場は作品を完成させるだけで精一杯だったけど、今ならゆっくり感情移入できる。
    後輩に騙され生徒会室で縛られた美人生徒会長。
    学校の帰りに拉致され、暗い部屋に監禁された美少女たち。

    あたしも同じだ。緊縛された美少女。
    これからどんな責めをうけるのか、恐れおののき、震える女の子。
    悪くない。ううん、ちょっと嬉しい。この感じ。
    どき、どき、どき。

    絵師緊縛スペース

    9.
    1時間の緊縛展示はあっという間に終わった。
    あの関西弁の縄師がまたやってきて縄を解いてくれた。

    「どや、楽しんでくれたか?」
    「はい、とっても!」
    縄師はにやっと笑って、カヤとターミの方に向いた。

    「よっしゃ、次は誰や?」「ハイっ。私です!」
    ターミが右手を挙げた。

    新しいモデルが縛られるぞ。
    ギャラリーが集まってくる中、縄師がターミを縛り始めた。

    「あの、あの、もしかして鮫島照男さんでしょうか」カヤが縄師に聞いた。
    「ワシを知っとるのか、お嬢ちゃん」縄師は手を止めずに答える。
    「はいっ。後でサインを下さい!」
    「ええで。待っとり」
    「ありがとうございます!」

    喜んぶカヤを脇に見ながら、ベニオはそっと椅子に座った。
    全身に浮遊感が残っていた。
    ゆらゆら、ゆらゆら。まだ吊られているみたい。

    「ひゃ~んっ!」
    ターミの悲鳴が響いた。
    振り返ると縄師がターミを吊り上げたところだった。
    小柄なターミは吊床から真横に吊り下げられていた。

    「あ、あ・・っ。気持ちイイですー!!」再びターミの歓声が響く。
    うん、あたしも気持ちよかったよ。
    ベニオはターミの感覚を理解する。
    正直、縛られてあんなに素敵な気分になれるとは、想像もしていなかった。
    こんな体験させてもらったら、どんな女の子だって本物のマゾになっちゃう。
    この気持ち、次の原稿コンテ描くときまで忘れないようにしなきゃ。

    「ベニオちゃん、縄酔いかな?」カヤが戻ってきて、隣に座った。
    「な、縄酔いって何よ。あたし、知らない」
    「そのように真っ赤な顔になって、図星ぢゃな」
    え。

    「気にせずともよい。めくるめく被虐の快感に酔いしれた乙女であれば、当然のことぢゃ」
    「あんた、そんなセリフ、よく恥ずかしげもなく言えるわね」
    「ふははは。見よっ、このサインを!」
    同人誌の裏表紙に書いてもらった縄師のサインを見せられた。

    「あのおじさん、有名なの?」
    「縄師、鮫島照男と言えば、この世界うん十年の超ベテラン。あの、ヌメヌメの関西弁で責められて、あそこをヌメヌメにしたM女は数知れぬという」
    「聞いてるこっちが恥ずかしいわい」
    「ぶははは、は、は、は、はっ。・・げほ、げほ」

    カヤは一人で笑いまくり、少しむせてからベニオに言った。

    「それよりベニオは少し休むことぢゃ。何なら場内を見物してくるがよい」
    「カヤ一人でも大丈夫?」
    「うむ。我らが同人誌はすでに完売したから、むしろヒマなのぢゃ」
    「えぇ、すごい!」
    150部も作った同人誌が1時間たたずに売り切れたのか。

    10.
    ターミの世話をカヤに任せて、ベニオはしばらく場内を見て回ることにした。

    どのスペースも緊縛展示は刺激的だった。
    イケメンモデルやセクシーコスプレもよかったけれど、ベニオはごく普通の腐女子たちの緊縛に惹かれた。
    ちょっとぽっちゃりしていたり、チビだったり。それでも嬉しそうに恥ずかしそうに縛られている姿はとても可愛くて色っぽかった。
    ベニオは、またもや自分の緊縛中を思い出してぽうっとなってしまう。
    みんな、素敵な時間を過ごしてるんだね。

    あ、あの人!
    とあるサークルのスペースに目が行った。
    そこには、メイド服を着た女性が一人で何種類かの同人誌とイラストCDを売っていた。
    大人っぽい雰囲気でショートボブの黒髪がよく似合う美女だった。

    「・・あ、そっちは500円です。CDとセットで200円引きです。ありがとうございます。こっちに積んだのから取って下さい」
    「・・お金はこの箱にお願いします。お釣りも箱の中から取って下さい。すみませんねー、全部させちゃって」
    女性は椅子に座って受け答えするだけで、商品や代金の受け渡しは客に自分でさせていた。
    よく見ると、その人は背中で合わせた手首を縄で縛られているのだった。

    「ホーセンカさんっ、こんにちわ」ベニオは女性に声をかけた。
    「あらベニオちゃん。特大祭以来かしら」
    この女性はベニオより10歳以上年上の同人作家で、ベニオが高校生で個人活動を始めたときからの知り合いだった。

    「一人でスペースやってるんですか?」
    「ええ。売り子頼んでた子が熱出して来れなくなっちゃって。しかたないから、こんな風に縛ってもらって一人運営中」
    「そんな、縛られてて、お金のトラブルとか大丈夫ですか?」
    「大丈夫よ。お客さんのほうが気を遣ってくれるみたいで。・・それより、どうしてベニオちゃんが縄けっとにいるのかな?」
    「えへへ、あたしも大学生になったんですよ。初めてR18出したんです」
    「うふふ、そうかぁ。・・あ、写真ですか? はい、どうぞ♥」

    ホーセンカはすっと立ち上がると、写真を頼んだ客に向かって、縛られた手首がよく見えるようにポーズをとった。
    自然で美しい身のこなし。涼しげな笑顔。
    ベニオはその姿を見て、カッコいい人だなと思う。

    「・・それで、ベニオちゃんも縛られたのね」
    「分かりますか?」
    「分かるわよ。そんなステキな縄の痕、見せつけてくれるんだもの」
    「きゃ、やだ!」

    今まで気付いていなかった。
    ホーセンカが指差す自分の生足には、くっきりと縄目が刻まれていたのだ。

    「見たかったなぁ。ついこの間まで現役JKだった女の子の緊縛」
    「それならウチのスペースに来たら見れますよ。友達ですけど」
    「今はここ離れられないから、また写真ででも見せてもらうわ。・・それより、近くに来てくれる」
    「え、・・これでいいですか?」
    「もっと」
    「・・こう、ですか?」
    「もっと。息がかかるくらいに近くまで」
    「・・これで、いいですか?」

    ベニオは椅子に座ったホーセンカの近くに顔を寄せた。
    本当に吐息がかかりそうな距離だった。
    ホーセンカはにっこり笑うと、後ろ手に縛られたまま身を伸ばし、ベニオの唇にキスをした。

    「ひゃ!」
    ベニオはあわてて身を引く。

    「だって、ベニオちゃん。キスしたくなるくらいに可愛いんだもん」
    「ホ、ホーセンカさん!!」

    11.
    1時間が過ぎ、ターミが解放された。
    ターミはふらふらとベニオの脇にくると、床に尻をついて座り込んだ。

    「あー、幸せ♥」そう言いながらベニオの腰に手を絡める。
    「ターミ、椅子に座りなさいよぉ」
    「いーの。・・あ、そーだ。ベニオ。私を苛めるって言ったのに、どっか行っちゃったでしょ」
    「忘れてた」
    「今からでもいいから、私にキスしなさい。おっぱい揉みなさい。何でもいいから、苛めなさい~」
    ターミの手がベニオの尻を撫で始めた。
    太ももの間にまで手を入れられそうになって慌てて逃げる。

    「あや、や、や、や」
    カヤの声が聞こえた。
    変なクスリでもやったのではないかと心配したくなる声であった。

    「動けないよー。なすがままだよー。・・アタシアタシアタシ、もう、もう、・・びえーん!!」
    最後のぴえーんは泣き声ではなく、雄叫びである。
    縄を持つ鮫島が苦笑していた。

    「あいやい、やいやい、やい」
    「きぇ~っ、たまらん!」
    その後も、カヤは縛られたまま一定時間おきに奇声を発したり、白目をむいて暴れたりして、通報を受けたイベント事務局が様子を見にきたりした。
    後半はベニオとターミの方が恥ずかしくなって、カヤを放置して逃げ出したほどだった。

    12.
    カヤが解放されたとき、縄けっとの終了時刻まであと1時間を切っていた。
    次はベニオが緊縛される番だったけど、鮫島からは初縄ならこれ以上は無理しない方がいいと言われた。
    たしかに疲労が溜まっていた。皆で相談して、これで撤退することにした。

    13.
    「あー、心ん中はまだ縛られてるよー!!」
    帰りの電車の中でカヤがまくしたてていた。
    「うへへ~。鮫島さん、ステキぃ。ケッコンしたい。緊縛妻ー」
    よだれをぬぐいながら妄想を振りまく。

    「平常運転に戻ったね」ターミが言った。
    「うん。あの変な喋り方が続いてたらどうしようかと思ったけどね」ベニオが応える
    「あの喋り方も粋なのぢゃ! ・・ああぁ、あかん、ワテやっぱり縄の虜になったやで!」カヤが再び叫んだ。
    「はいはい。結局カヤが一番のMだったってことね」「そうだね」
    「認めますよ。もぉドマゾのカヤちゃんと呼んじゃってくんなはれ」
    「だから止めなさいってば、今度はその変な関西弁」

    3人で笑っていると、カヤのスマホに通知音が鳴った。

    「きゃぁ~!!」スマホを見たカヤが叫んだ。
    「どーしたの?」
    「鮫島さんから LIME!!」
    「あんた、いつの間に鮫島さんと」
    「いーから、ほらっ」

    カヤが見せたスマホの画面には、こんなメッセージが表示されていた。

    『お嬢ちゃんたち、今日は楽しかったわ。君らには緊縛モデルの素質があるな。
    一度3人で事務所のスタジオに遊びにおいで。思う存分縛ってあげます』

    3人は互いの顔を見合った。
    「き」「き」「き」・・「き」
    しばらく「き」を繰り返してから、揃って叫んだ。
    「きゃああぁぁ~~っ!!」
    込み合う電車の中で他の乗客の眉をひそませながら、腐女子3人組は何度も叫ぶのであった。



    ~登場人物紹介~
    紅緒(ベニオ):18才、大学1年生。同人腐女子。
    伽耶(カヤ):18才、大学1年生。同人腐女子。
    多美子(ターミ):18才、大学1年生。同人腐女子。
    鮫島照男(さめじまてるお): 54才。ベテラン縄師。
    ホーセンカ:29才、ベニオの知り合いの同人作家。

    最近知ったSM系/フェティッシュ系のイベントに、複数の女性クリエーターによるアート作品展で、作品と一緒に作者ご本人を縛って飾るものがありました。
    作者さんだけでなく一般来場の女性希望者も縛られているのですが、私は、作者の女性が自分もオブジェにされるシチュエーションに強く興奮させられたのでした。
    本話は、それをアマチュアの同人誌即売会でやったらという妄想です。

    すべてのスペースに吊床がついていて、プロ縄師が縛ってくれる豪華イベント。
    いくらM属性の女の子たちとはいえ緊縛初体験で1時間も吊るすなんてのはあり得ませんが、10分20分でモデル交代だと縄師が何人いても足りませんから、そこは気付かないふりで見過ごして下さいww。
    ベニオちゃんたちの緊縛を担当した鮫島さんは、前回登場したベテラン縄師さんです。
    この先3人組は洋子さんの事務所に誘われて、アルバイトをするかもしれません。

    挿絵は久しぶりに3人も描いたので小説本文よりも時間がかかりました。
    スペースにテーブルクロスを敷かなかったのは、カヤちゃんとターミちゃんの足を隠したくなかったため。
    同人誌表紙とカラーボードの絵は過去拙作の流用です。
    調子に乗ってPOPもたくさん描きましたが、さすがにやりすぎなので Pixiv でだけ掲載することにします。

    ではまた。
    ありがとうございました。




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