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    アンバードール第6話・僕の計画(2/3)

    10.
    次の日、上野の国立博物館にやって来た。
    ちょうど『帰ってきた日本人アンバードール』という特別展が開催されていた。
    日本人女性を使った最初のアンバードールがアメリカの博物館から貸し出されていたのだ。
    もちろん僕はそれを知った上で、斎藤さんを誘ったんだけど。

    特別展には長い行列ができていた。
    並んでいる間に僕は斎藤さんに最初のアンバードールについて説明した。
    江戸時代の終わり、ペリー来航のとき、将軍へのお土産にアメリカ人女性のアンバードールが贈られた。
    そのお返しとして将軍家に連なる名家の娘が選ばれ、アンバードールになってアメリカ大統領に届けられたのだった。

    「もちろん等身大のアンバードールだよ。そのときの日本はドールを作る技術がないから、アメリカまで渡って向こうでアンバードールになったんだ」
    「すごいわね。その娘さんって、すごく覚悟がいったでしょうね」
    「うん。でもおかげで何百年も変わらない美しい姿で残ってるんだ」
    「何歳だったの?」
    「15だって」
    「すごい・・」

    やがて僕らは展示室に入った。
    斎藤さんが息をのむのが分かった。口に手を当てたまま、動かない。

    そこには大きなガラスケースがあって、その中に最初の日本人アンバードールが飾られていた。
    スポットライトの光を浴びて、小柄な少女が琥珀の殻の中に浮かんでいる。
    薄い水色のドレスを着て、黒い髪は日本髪ではなく長く伸ばしていた。
    でもその顔立ちはまさしく日本人だった。
    大きな黒い瞳で正面を見つめている。
    それはとても生々しくて迫力があって、実は生きた女の子がそこでポーズをとっていると言われてたら信じてしまうくらいだった。

    「止まらないで下さーいっ。止まらないで、ゆっくり進んで下さーい!」係員が声を枯らして叫んでいる。
    でもどの観客もアンバードールの前で立ち止まって動けなくなるみたいだった。
    それくらい、そのドールはリアルで美しかったのだ。

    人波に押されて、ようやくその場を離れた。

    隣の展示室には、ペリーが日本に持ってきたアンバードールが展示されていた。
    こっちは、この博物館の常設品だ。
    この女性は17才のアメリカ人という以外、詳しいプロフィールは判っていない。
    レースの白いドレスとウェーブのかかった金髪、背がすらっと高くてプロポーションもよくて、さすがに西洋の美人だった。
    まさに人形のように、・・アンバードールだから人形に間違いないんだけど、さっきの日本人ドールと比べたら静かな印象だった。
    まるで琥珀の中で眠っているようだった。

    ・・ここで僕はようやく気がついた。
    このドールは目を閉じている。
    さっきの日本人のドールは両目をくっきり開けていた。

    この時代のアンバードールは、女性を生きたまま人形型に入れ、溶かした琥珀を流し込んで作る。
    女性は覚悟して型の中でポーズや表情を作り、そのまま琥珀と一緒に固まる。
    だから両目は閉じているのが普通だ。琥珀の中で目を開けてなんかいられるはずがない。
    でもあの15才の女の子はそれをしたというのか?
    途方もなく強い意志だ。

    僕はものすごく興奮していることに気がついた。
    隣の斎藤さんを見ると、両手を胸に当てて、じっとドールを見上げていた。
    さっきのアンバードールは目を開けてたねって、もし僕が教えたら、感激して喜んでくれるだろうか、それとも怖がるだろうか。
    僕はその話を持ち出すことができなかった。

    11.
    最後の展示室では、縮小加工で作られたアンバードールがたくさん飾られていた。
    きらきら輝くクリスタルガラスの中に身長約30センチの少女が浮かぶ、現代のアンバードールだ。

    それぞれのドールの前には元の女性の年齢が示されていた。どれも10代だった。
    ほとんどが日本人だったけれど、外国人のドールもいくつか混じっていた。
    いろいろな衣装。表情やポーズもみんな違う。
    ちょっと美少女フィギュアが並んでいるのに似ていると思った。
    フィギュアと違うのは、どれも本物の人間の女の子を使って作られていること。
    元は人間だった美術品。僕もしっかり目に焼き付けないと。

    「うわぁ~、すごい!」
    斎藤さんはようやく笑顔を浮かべた。
    「この衣装、すごく可愛いっ」
    「すごいっ」
    「足が長いなー。羨ましー」
    「この子、14才だってっ。わたしと同じ。すごーい!!」

    何度も「すごい」を繰り返しながら、ドールを一体一体見て行く。
    「すごいねー! 指とか、まつ毛とか、ものすごく細かいよね。肌も髪の毛も本当の女の子と同じ。ホントに綺麗ー」
    「そりゃ、本物の女の子を使ってるからね」
    「分かってるけど、こんなに綺麗だって思ってなかったもん。さっきの大きいのはちょっとびっくりしたけど」
    「さっきのは怖かった?」
    「んー、怖いというより、圧倒されちゃった。すごい迫力で」
    「実は僕も」
    「うふふふ」
    「?」
    「ね、船田くんだって初めてでしょ? 少なくとも等身大のアンバードール見たのは」
    「どうしてそう思ったの?」
    「さっき、口をぽかーんと開けて見とれてたもの」

    12.
    新学期、僕たちは3年生になった。
    いよいよ受験生になったわけだけど、僕も斎藤さんも上位の成績だったから、先生や両親から煩く言われることはなかった。

    斎藤さんがつぶやく Poitter にアンバードールの話題が増えた。
    『初めて本物のアンバードールを見た。すごく輝いて見えた』
    『キュートなお人形になった女の子、思い浮かべるだけでドキドキする』
    『アンバードールのこと、好きな人の気持ちが分かる気がする』

    やったな。
    アンバードールのこと、気に入ってくれたようだ。

    斎藤さんは博物館で見た等身大ドールのことにも触れていた。
    『日本女性最初のアンバードールは両目を開けていた。当時のアンバードールの作り方を調べて愕然とした』
    『すごい女性だと思った。わたしには無理』
    『そのこと、一緒に見に行った人も知っているのかな?』

    え? 斎藤さんも気づいていたの?

    13.
    それからしばらく、僕らは会えばアンバードールの話をした。
    斎藤さんは3000円もするアンバードールの写真集を買ったと教えてくれた。
    僕は斎藤さんの家に行って、写真集を見せてもらった。
    彼女のお母さんも僕のことを優しく迎えてくれた。

    「どの子もすごく可愛いのよね~」
    斎藤さんは膝の上で写真集のページを繰って見せてくれる。
    「ほらこの子なんて、橋本半奈ちゃんとそっくりでしょ?」
    「本当だ~」
    小顔の美少女がアイドルのような衣装を着てクリスタルガラスの中に浮かんでいた。
    マイクを片手にダンスしているようなポーズで、長い髪がふわりと広がり、まるでコンサートライブの瞬間を切り取ったように見えた。

    「まさかクローン? いや、オリジナルって書いてある。よく似た子を使ったんだね」
    「半奈ちゃんのアンバードールがあったら、わたしも買おうかな」
    「いくらすると思うの」「分かってるよ」
    僕たちは揃って笑った。

    ・・斎藤さんをアンバードールのファンにする。
    それが僕の計画の中で、今のステージの目標だった。
    うまく行ってるじゃないか。予想以上に。
    これなら、そろそろ次のステージに進んでも大丈夫だな。

    14.
    「こんなのが届いたんだけど」
    斎藤さんが見せてくれたのは。一通のメールだった。

    『このたびは、お問い合わせありがとうございます。
    綺麗なアンバードールになりたい貴女へ、各種コースをご案内します。
    アンバードールになるまでに、足を細くしたい! 胸を大きくしたい!
    ダイエットしたい!
    いっそう美しくなってから、アンバードールになりたい!
    アンバードール・ビューティクリニックは、そんな女性を応援しています!!
    ただいま、同意書の書き方と健康診断の注意事項セミナー無料開催中!!!』

    「・・問い合わせなんてした覚えはないんだけど」
    「これ、スパムってやつだよ」僕は言った。
    「無差別に送りつけてくるんだ。返事しちゃ駄目だよ」
    「わかった」

    実はこのメールは、僕が斎藤さんのメアドを使って請求したものだ。
    このような業者はたくさんある。詐欺まがいの悪質な業者も多い。
    比較的評判のいいところを選んだから、万一斎藤さんが返信してもトラブルにはならないと思うけど。

    「実はわたしね、このメール見るまで、自分がアンバードールになるなんて思ったことなかった」
    斎藤さんはゆっくり考えるように喋った。
    「よく考えたら、わたしもドールになれる歳なのよね」
    「そうだね。14才から19才までの健康な女性なら、誰でも自分の身体を献体できる」
    「・・ドールになりたい人って多いのかな」
    「どうだろう。案外いるかもしれないね」
    「自分が死んじゃうてことでしょ? それでもなりたいのかしら」
    「献体したからって、必ず死んでドールになるわけなじゃないよ。その人に何かあったとき、もし身体が綺麗に残ってたらドールになるかもしれない。それだけだよ」
    「そうね。そうだよね」

    「こんな意見を見たことがあるよ」僕は言った。
    「アンバードールになれるのは女性の特権だって。自分が若くて死んだとき、綺麗な姿を残すチャンスがあるんだから、そのチャンスを生かさなきゃ損だって」
    「あ、そうか」
    「僕は、斎藤さんが美しい姿を残すことに反対しないよ」
    「わたし、そんなに美人じゃない」
    「僕にとっては十分に美人だよ」

    斎藤さんは驚いたような顔をして、それから笑って言ってくれた。
    「ありがとう。・・嬉しい」

    「あのさ。献体のことに興味があったら、こんな業者じゃなくて僕に相談してね。知っていることを教えてあげる」
    「うん」

    15.
    斎藤さんの Poitter はずいぶん活発になった。
    『ドールになった人を見ると、若いのに気の毒と思う自分と、羨ましいと思う自分がいる』
    『ある人からアンバードールになれるのは女の子の特権なんだと聞いた。反論できない』
    『もしわたしがもっと美人でセクシーだったら、・・どうしたいでしょうか?』

    斎藤さんは僕がフォローしていることを知っているから、これは僕へのメッセージだ。
    彼女の気持ちは確実にこっちに向きつつある。
    斎藤さんが少しずつ僕の思うとおりに変わっているのは、気分がよかった。

    でも学校やデートで話すとき、斎藤さんは献体の話はしなかった。
    ときどき斎藤さんの方から話したいという雰囲気は感じたけれど、その度に躊躇しているのが分かった。

    僕も自分から聞いたりしなかった。
    献体は本人の意志が絶対条件だから、斎藤さんが迷っている限り先へは進めないのだ。
    その代わり僕は自分の Poitter に、献体登録した女性のブログや、ドールになりたい女性が集まるSNSのアドレスを載せた。
    きっと斎藤さんは食い入るように見ているはずだ。

    僕はゆっくり待った。

    16.
    7月になって、斎藤さんはアンバードールへの献体を決心し、両親の了承をもらった。
    『アンバードール同意書』を提出して健康診断を受け、無事に合格した。
    斎藤さんは誰にもはばかることなくアンバードールになれることになった。
    僕はそれを聞いて心の中でガッツポーズをする。
    とうとう大きなハードルを越えたんだ。

    斎藤さんの部屋で、合格証を見せてもらった。
    「おめでとう!」
    「船田くん、わたしのこと美人って言ってくれたでしょ? 最後はそれで決心したんだよ」
    「そうか。僕も嬉しいよ」
    「わたしがアンバードールになったら、船田くんにあたしの持ち主になって欲しいな」
    「それは無理だよ。何千万円もするんだから、よほどお金持ちじゃないと」
    本当はお金を持っているんだけど。

    「わかってる。今のはちょっと願望を言っただけ」
    斎藤さんはそう言うなり僕に抱きついてきた。
    予想していなかったので、僕は驚いて息が止まりそうになった。

    「ちょ、斎藤さん!」
    「ごめんなさい。少しだけ、こうしていさせて」斎藤さんは僕に抱きついたまま言った。
    「う、うん」
    「すごく、すごく迷ったんだから。・・自分が人間じゃない何かになんて、なりたいと思わない」
    「・・」
    「でも、やっぱりわたしは女で、船田くんが美人だって言ってくれたから、綺麗でいたい。アンバードールになって、ずっと輝いていたい」

    人間でいるより、女でいる方を選んだってことか。
    「よく決心したね」
    「ん、・・わたし、すごいこと決めたって思う。もしわたしが死んだら、この身体、わたしの全部が、小さくなってドールになる。・・そう思うと、ぶるぶる震えて止まらないよ」

    僕に抱きついた斎藤さんは少し震えていた。
    その背中を抱きしめて、ゆっくりさすってあげた。
    初めて抱き合った女の子の身体はとても柔らかだった。
    斎藤さんのことを愛しいと思った。
    僕たちはそのまま自然にキスをした。

    「わたし、今の、ファーストキッスだよ」
    「僕も」

    計画にはなかったことだ。彼女を好きになるなんて。
    こんな感情は持つつもりはなかったのに。
    この先のシナリオに影響なければいいけど。

    そうだ。忘れないうちに。
    「合格証。そう、合格証」
    「?」
    「記念に、写真撮らせてもらっていい? 合格証の」
    「いいわよ」

    僕はスマホで斎藤さんの健康診断の合格証の写真を撮った。
    お礼を言ってそれを斎藤さんに返してから、もう一度キスをした。

    17.
    斎藤さんが合法的に献体できることになって、僕の計画は次のステージに進むことになった。
    いよいよ斎藤さんをアンバードールにするのだ。
    それはつまり、斎藤さんに死んでもらうという意味だ。
    彼女が死亡して、そして遺体に致命的な損傷がなければ、その身体はアンバードールになるのだ。

    斎藤さんの死に方にはいくつかのバリエーションが考えられる。
    一つは自殺。身体が傷つかないよう、薬による自殺がいい。
    一つは事故。食中毒とか、酸欠とか。
    最後に病気。急性の感染症など。
    要は彼女をうまくコントロールして、警察や世間に不審を抱かせることなく、自然にどれかのシチュエーションに繋げればいのだ。
    そのための具体的なイベントも計画していた。

    ただ、僕は、計画を推進する気分にならなかった。
    理由は分かっている。
    斎藤さんを好きになってしまったからだ。
    アンバードールの素材としての斎藤さんではなく、生きた女の子の斎藤さんが好きになってしまったからだ。

    夏休みの間、斎藤さんは1学期の成績が少し下がったからと夏期講習に通うことになった。
    彼女の志望校は僕と同じ、県下一番の進学高校だ。
    僕はもちろんそんな講習は受けないけれど、斎藤さんが講習に行っている間は彼女のことを考えて悶々と過ごすことになった。

    講習のない土曜と日曜だけ、僕たちはデートで出かけたりお互いの部屋に行ったり、そしてときどきキスしたりした。
    生まれて初めて女の子とつきあうのはとても楽しくて、あっという間に夏休みが終わった。

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