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    アンバードール第6話・僕の計画(3/3)

    18.
    2学期に入ってすぐの模擬試験で、斎藤さんは偏差値を挽回したらしい。
    これで、彼女の成績を大幅ダウンさせてノイローゼになってもらう作戦はNGだ。
    ほかにも夏休み限定で考えていたプランがいくつか消えた。
    ・・そろそろ計画を進めないといけない。
    ぼくは内心焦りながらも、ずるずると斎藤さんとの関係を続けていた。

    ある晴れた日の夕方、学校の帰り。
    僕たちは公園のベンチに並んで座っていた。
    目の前は広い芝生になっていて、野球をする人たち、自転車に乗る人、犬の散歩をする人などが見えた。
    夕日が僕たちを照らしている。
    二人の手が自然と重なった。

    「・・変な夢、見ちゃった」斎藤さんがぽつりと言った。
    「どんな夢?」
    「言わない。船田くんが怒るもん」
    「怒らないよ」
    「じゃあ言うわ。船田くんがわたしを殺そうとする夢」
    「え」
    「怒った?」
    「全然。馬鹿馬鹿し過ぎて笑っちゃうよ」
    「そうよね。わたしも目が覚めてから笑ったもの」
    「詳しく教えてよ」

    「・・二人でハイキングに行くの。富士山の近くの樹海へ」
    「樹海だって?」
    「うん。それでね、わたしたちは迷子になる。どれだけ歩いても出られないの。・・どうしたの? 船田くん」

    僕は黙って固まっていた。
    斎藤さんの夢は僕のプランの一つと同じだった。
    彼女を樹海の中に置き去りにして僕だけ助かる。そして数日後、衰弱死した斎藤さんを捜索隊が発見する。
    斎藤さんはどうして、それを。

    「ううん、何でもないよ。・・それでどうなるの?」
    「いつの間にかわたし一人になっていて、疲れて倒れてしまうの。意識が遠くなる直前、木陰からわたしを見ている船田くんに気がつくの」
    「僕は何をしていたの?」
    「多分、わたしが死ぬのを待ってる。わたしは死んだらアンバードールになるでしょ? 船田くんはそれを狙って樹海へ誘ったの」
    「僕、大悪人だね」
    「そうかもしれないけど、そのとき、夢の中のわたしは思ったの。・・今まで、待たせてゴメンって」
    !!!

    「僕に腹を立てなかったの?」
    「どうしてわたしが船田くんのこと怒るのよ。こんなに感謝してるのに」
    「?」
    「わたしね、本当言うと、船田くんは下心があって、わたしに告白したのかなって思ってた。もしかしたら、わたしを本気でアンバードールにしたいとか」
    「怒るよー」
    「あ~っ、ごめんなさい!」
    僕がおどけて怒ったふりをすると、斎藤さんも笑って両手を前で合わせて謝るふりをした。

    「でも聞いて。これは冗談じゃないから。・・船田くん、やっぱり本気で考えてると思う。わたしを殺してでもアンバードールにしたい。わたしを小さくしてガラスに閉じ込めて、机に飾りたいって思ってる。・・違う?」
    ああ、見抜かれてしまった。
    僕はどう答えたらいいのか分からず、目をぱちぱちさせる。

    斎藤さんは僕の顔を微笑みながらしばらく眺めて、それから言った。
    「あのね、わたし、そんな船田くんのこと、ぜんぜん拒んでないんだよ」
    え?
    じゃ、じゃあ。
    「じゃあ、つまりこういうこと? ・・斎藤さんも本気で思ってる。僕のために死んでもいい。アンバードールになって、ガラスに閉じ込められて、僕の机に飾られたっていい」
    斎藤さんはにっこり笑った。
    「ずっと、そう思ってたんだよ。この鈍感っ」

    胸がいっぱいになった。
    僕は今まで、斎藤さんをだます計画ばかり考えていた。
    なのに、彼女は。

    19.
    「見せつけるねー」
    「昼間っから堂々とイチャつきやがって」

    後ろかから声を掛けられた。
    振り返ると、同じ中学の悪タレ連中が3人立っていた。

    「教室じゃ偉そうな顔してるくせに、女とは乳繰り合うのか」
    「僕たちは何もふしだらなことはしていない!」僕は立ち上がりそいつらに向かって言った。
    「すっかり夫婦きどりかよ」

    「船田くん、こんなの相手にしちゃ駄目」斎藤さんも立ち上がった。
    「行きましょっ」
    先に立って歩き出した。僕もついて歩いた。

    「おい、待て!」
    そいつらが追いかけてきた。

    「走るわよっ」「え」
    斎藤さんが駆け出した。僕も駆けた。

    斎藤さんはテニス部にいただけあって足が速かった。
    僕はついて行くのが精一杯だった。
    たちまち悪タレ連中を引き離した。
    そいつらはすぐに追いかけるのを諦めたようだ。

    斎藤さんは止まらなかった。
    公園の芝生を走りながら僕の方に顔をむけて笑いかけた。
    夕日の中で斎藤さんの笑顔が輝いて見えた。
    制服のスカートがひるがえって、白いパンツがちらりと見えた。
    去年、学校の教室で見た、斎藤さんの太ももとお尻のイメージがかぶった。

    「・・・・あぶなーい!」
    叫び声が聞こえると同時に、斎藤さんがよろめいた。
    そのまま、もんどりうって倒れ、芝生の上で転がって動かなくなった。
    近くに野球の硬球が転がっていた。

    何が起こったのか分からなかった。
    人々が集まってきた。
    悪タレ3人も走ってきて、斎藤さんを助けるのを手伝ってくれた。
    斎藤さんは救急車で病院に運ばれ、翌朝、意識が戻らないまま息を引き取った。

    20.
    斎藤さんは野球のボールが頭に当たって死んだ。
    何て珍しい死に方だろう。
    あれだけいろいろ作戦を考えていたのに、彼女の方で勝手に死んでしまった。

    僕はまる二日学校を休んだ。
    それから斎藤さんの両親に迷惑をかけたことを謝りに行った。
    僕は本当に斎藤さんのことが好きだったのだ。
    斎藤さんの家に行くと、お葬式が済んで、斎藤さんの遺体はアンバードールの材料として引き取られた後だった。
    斎藤さんの両親は、アンバードールを愛して献体した娘の意志を尊重してくれたのだ。

    斎藤さんは、アンバードールになるのか。
    その瞬間、ぼくの中に斎藤さんの言葉が蘇った。
    ・・ずっと、そう思ってたんだよ。この鈍感っ。

    僕は急いで家に帰り、イスラエルのサイトにアクセスした。
    『AmberDoll Inspection Service』
    ここは、世界中のアンバードールの動きをチェックしてくれる。
    個人のプライバシーを侵す可能性があるから、一部の国では認められていないサービスだ。
    アンバードールの登録番号、献体者番号、そしてDNAの管理ID。
    あらゆる識別情報を基にアンバードールに関わるイベントを監視できるのだ。

    僕は斎藤さんの健康診断の合格証の写真から、献体者番号を拾い出した。
    サイトの設定画面にその番号を入力し、「イベント:公開広報」として設定した。
    これで、斎藤さんのドールが完成すれば、僕にメールが届くことになる。
    新しいアンバードールが市場に出るときは必ず管理局の公開広報に載るからだ。

    それから僕はアンバードール信用協会と売買代行サービスの会社に申し込んだ。
    信用協会は、破産や逮捕歴、国籍などの理由でアンバードール購入に必要な信用情報を持てない人に有償で信用を担保してくれるところ。
    そして代行サービスは、本人に代わってドールの売買やオークションを引き受けてくれる会社だ。
    どちらも僕のような中学生が使えるところじゃないけれど、それくらい詐称して申し込むことはいくらでも可能だ。

    最後に、アメリカのドール名義サービスにも申し込む。
    これはドール所有免許が失効したり、一時的に持てない人向けにドールの所有権を一定期間レンタルしてくれるサービスだ。
    これも日本では犯罪の温床になると批判されている。

    今回、僕は、信用協会で買った信用を使い、ドールを売買代行サービスを通じてアンバードールを買う。
    そうして高校生になってドール所有免許を取得するまでの間、ドール名義サービスの名義でドールを手元に置くのだ。
    これらの方法は『アンバードールを手に入れよう』のサイトや、ネットで集めた情報でわかったことだ。
    ただの中学生の僕でもここまでできるのだから、気楽な国だと思う。この国は。

    21.
    冬休みになり、僕の手元にアンバードールがやってきた。
    クリスタルガラスの中に、身長30センチの斎藤さんが浮かんでいた。
    生きていたときと何も変わらない斎藤さんだ。
    テニスのユニフォームを着て、右手にラケット、左手にテニスボールを持って、微笑んでいる。
    もちろん斜め下から見上げれば、短いスコートの下には綺麗な太ももとパンツもばっちり鑑賞することができる。

    僕が使った Amber Doll Inspection Service はとてもよくできていて、斎藤さんが公式の広報に掲載される前、献体者一覧に登録された段階で通知してきてくれたのだ。
    おかげで僕は売買代行サービスを通じて、他の誰よりも早く斎藤さんの身体を押さえ、希望の衣装でアンバードールに加工してもらうことができた。
    今まで貯めたお金はすっかり使い果たしたけれど、もちろん悔いはなかった。

    斎藤さんは、僕のためにガラスの中で永遠にポーズをとり続けてくれるだろう。
    思わぬ事故で命を失った斎藤さんは本当に残念だったけど、同級生のアンバードールを持つ中学生なんて、他には絶対にいないはずだ。
    この中に入っているのは、僕の恋人だった女の子。
    そう考えるだけでぞくぞくした。
    ・・一生大事にしてあげるよ。
    クリスタルガラスを撫でながら、僕は斎藤さんに声をかけるのだった。

    22.
    春になって、僕は志望の高校に入学した。
    県で一番賢い生徒が集まる学校のはずだけど、僕には脳みその足りない連中ばかりに思えた。
    特に女子生徒。
    極端に短いスカートにぶっとい生足をさらけ出す姿は醜悪で、自分のバカさ加減をアピールしているようにしか見えなかった。
    せめて斎藤さんみたいに綺麗な太ももだったら許せるのに。

    と、一人の女子に目が行った。
    名前は、駒井さやかさん。
    ブスばかり集まっておしゃべりする中、彼女だけが光って見えた。
    斎藤さんと同じポニーテールで、笑顔が可愛い。
    すらりと伸びた足は十分鑑賞に耐える。肌の色は斎藤さんよりも少し白い。
    駒井さんをアンバードールにして斎藤さんと並べて飾ったら、僕の部屋はいっそう楽しくなるだろう。

    ぼくの中で、むずむずと湧き起る感情があった。
    そうだ。
    次はあの子だ。駒井さんだ。

    高校を卒業するまでに、1億円貯めてやろう。
    それで駒井さんを僕のコレクションにする。
    僕ならできる。きっとできる。

    教室の隅の席で、僕はただ一人ほくそ笑み続けた。



    ~登場人物紹介~

    僕(船田): 主人公。月200万稼ぐ中学生ゲームプログラマー。同級生をアンバードールにしようと狙う。
    斎藤つかさ: 主人公に狙われたクラスメートの女生徒。
    駒井さやか: 主人公が高校に進学してから、次のターゲットに決めた女生徒。

    コレクターという外国映画をご存知でしょうか?
    蝶の採取が趣味だった男が、女子大生を誘拐して飼うお話です。
    本話はそれにインスパイアされたものです。
    アンバードールの構想を考えたときから、書こうと思っていた題材でした。

    偉そうな語り口の主人公は、お金も稼いでいますが、所詮は中学生。
    彼の立てた計画は本人が思っているほど大したものでなく、ただ相手の女の子に適性があったという幸運で事態は進みます。
    おそらく次のターゲット(駒井さん)ではひどい目に合うのではないでしょうか。

    そして博物館の日本女性初アンバードールは、アンバードール設定の『7.日本のアンバードール』に書いたエピソードを受けています。
    あのエピソードはそれだけでお話が一本書けるレベルですが、作者には時代物の小説を書く造詣がありません。
    残念ながら本話以外で登場することはないでしょう。

    最後に挿絵は今回も無しです。
    アンバードールのイラストは私がどう描いても同じようにしかならないので、少し悩んで諦めました。
    もっと上手な人なら、綺麗なイラストを掛けるのでしょうけどね。

    ではまた。
    ありがとうございました。




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    No title

    同級生のアンバードール化を目論む少年が痛い目見るストーリーかと思ったら、意外に相手とうまくいき、いい感じの所で彼女が事故で死ぬ。しかし次のターゲット見つけて・・・なんだかB級映画のラストみたいなオチですね。第三者視点から見たらいい感じのカップルなんでしょうけど、少年の思考が丸見えだと、印象が随分変わりますね(笑)

    イリュージョンも好きなんですが、私は物語自体面白ければハマってしまうので、他のシリーズも気に入ってます。管理人に質問なんですが、アンバードールシリーズも12話くらいで完結なんですかね?

    Re: No title

    ◎とうめいさん
    いつもコメントありがとうございます。
    そうです、B級映画みたいな雰囲気にしたかったんですね。
    全体にそういう雰囲気になりきれてないのは、作者が萌えだけで書いていて技術がないからです^^。

    このシリーズはいつまで続けるか迷っています。
    アイディアはまだまだあるんですけどね・・。
    もしかしたら8話くらいで終わるかも。

    No title

    アイディアより、話のネタで詰まる・・・小説の悩みどころですね。ということは次の更新ではアンバードールシリーズ以外の物ですかね?前のコメントでも書きましたが、管理人の書く小説は面白いので、無理に話しのネタを広げることはしなくてもいいのでは?アイディアと物語があってこその小説ですからね。

    Re: No title

    ◎とうめいさん
    拙小説を面白いと仰っていただきありがとうございます。
    迷っていると書いたのは、ネタがないというより、シリーズとして書きたいことは概ね書いたかなと思うからですね。
    次回更新ではアンバードール以外を上げるつもりです。

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    Author:82475
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