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    アンバードール第1話(1/2)・メグと聖羅

    1.
    物心ついたときからアンバードールに憧れていた。
    クリスタルの中に浮ぶ身長2~30センチほどの美少女。
    3Dホログラムみたいに精巧で今にも動き出しそうだけど、虚構のものではなく現実の人形なのだ。
    私はアンバードールの絵本や写真集を眺めては溜息をついた。

    その透き通るような肌。つやつやした唇。さらさらの髪。
    彼女たちが纏う衣装も素敵だった
    お姫様のようにきらびやかなイブニングドレス。
    ふわっと広がるフリルいっぱいのスカートとパニエ。
    脚線美を強調するセクシーなタイトミニスカート。
    一体一体の雰囲気に合わせた衣装が着せられていて、ドール素体の美しさを引き立てていた。

    私は両親にアンバードールを買って欲しいと何度お願いしたことだろう。
    でも父様と母様はその度に必ず「子供が持つ物ではありません」と言って許してくれないのだった。
    確かにアンバードールはとても高価で貴重だった。
    どうしてかと言うと、それは本物の人間の女の子を小さく縮めてクリスタルの中に封印したものだからだ。
    生きていたときとそっくり同じ姿だから、とても精巧なのは当たり前だった。

    2.
    ドールを持つためには免許が必要だった。免許は16才以上にならないと取れない。
    「聖羅(せいら)が16になるまで、いい子でいたら持たせてあげる」
    そう言われたのは小学1年生のときだった。
    16才なんて、まだ10年も先じゃないの。
    あまりの未来で気が遠くなりそうだったけど、私はいい子になるように頑張った。
    学校の勉強も、水泳教室も頑張った。
    お部屋のお掃除だって、お手伝いさんにばかりまかせないで、自分でするように努めた。
    お本もたくさん読んだし、退屈なクラシックの音楽だって両親と一緒に聞いた。

    中学校に上がると、私は男の子からお手紙をもらうようになった。
    どうやら、私は学校の女の子の中でかなり可愛い方らしい。
    お手紙には友達になって下さいとか、付き合って下さいとか書いてあった。
    母様に見せると笑って「聖羅が綺麗だからよ。素敵な男の子がいたら家に連れてきなさいな」と言われた。
    私に興味があるのはアンバードールだけだった。
    男の子なんてどうでもよかったけれど、無視して苛められたりしたら嫌だから、お手紙にはどれも返事を書いて返した
    そのせいか男の子からの誘いは少しも減ることはなかった。
    中でも同じクラスの墨田くんからは直接告白されて、断りきれずに一度だけデートした。
    でも一緒に歩いていても何を話していいのか分からず、私は途中で墨田くんを置いて逃げ出してしまった。
    それから私は男の子と話すのがすっかり苦手になった。

    3.
    私は学年トップの成績で中学を卒業して、県下一番と言われる私立の進学女子高に進んだ。
    高校では私以外にもアンバードール好きな子がいて、友達がたくさんできた。
    クラブはもちろんアンバードール研究会。
    その研究会で1年生がまず目指すのが、ドール所有免許の取得だった。
    合格率は2割くらいらしいけれど、私は頑張って1回で合格するつもりだった。
    仲間たちとあれこれドールの話をしながら受験勉強をするのはとても楽しかった。

    ちょっと驚いたのは、お家の人にアンバードール購入を約束してもらっているのは自分だけだったこと。
    免許を取ったら、当然みんなドールを持つものと思っていたのに。
    「・・聖羅さんの家はお金持ちだからよ」友人の一人が言った。
    確かに、アンバードールは高価だった。高級自動車が何台も買えるくらいに。
    「あたしたちは、いつかドールを持てるようにお金を貯めるわ」
    「そうなの? じゃあ、私がドールを持てたら皆に見せてあげる!」私は調子にのって要らない約束をした。
    「ええ? 本当!」「じゃあ、見せてね!」
    本当は『ドールはむやみに人に見せたり自慢しないこと』とされていて、免許の教則本にもちゃんと書いてあったのに。

    1学期の間、16才の誕生日を迎えた仲間が二人受験してどちらも合格しなかった。
    私の誕生日は9月。
    次は私の番だ。絶対に合格するわよ!

    夏休みの前の日。
    研究会の部長が1年生部員を集めて『アンバードール同意書』という書類を配った。
    「これは強制ではありません。でもドールを愛する人なら、是非登録してほしいと思います」
    それは、もし自分が脳死状態などになったら、ドールとして身体を提供してもよい、という意志表明書だった。
    法律上、アンバードールの材料になるのは14才から19才までの女の子だけだ。
    今まで意識していなかったけれど、私はドールになれるんだ。
    「・・同意してくれる人は、夏休みの間に保護者のサインを、それから健康診断を受けてきて下さい」
    部長が説明していた。

    4.
    父様と母様は『アンバードール同意書』を見て驚いたようだった。
    「すぐにドールになりたいって意味じゃありません。万一、何かあって、そのときに私の身体が綺麗で残っていたら、ドールを愛する人たちのために献体したいってことなんです」
    私は一生懸命説明していた。
    「一時の気の迷いじゃありません。本当にアンバードールが好きだから、登録しておきたいの」
    両親はしばらく黙っていたが、やがて顔を見合わせて笑った。
    「これは仕方ないなぁ、母さん」
    「ええ。学校でも家でも本当にいい子にしてるから、これくらいは聞いてあげてもいいわね」
    私は両親のサインをもらえた。

    次の週、私は県の保健センターへ健康診断を受けに行った。
    優しそうな女医さんが検査をしてくれた。
    「・・健康上の問題はまったくありません。あなたなら、きっと素敵なアンバードールになれるわ」
    「ありがとうございます」
    「いいこと? ドールの価値は肌のツヤとハリで決まるのよ。日頃から睡眠を十分に、食事は栄養バランスを考えて。無理なダイエットなんて禁物だからね」
    「はいっ」
    私は元気に返事した。
    まるで私がすぐにでもドールになるみたいな言い方がちょっとおかしかった。

    『合格』の診断をもらうと、隣接するスタジオで写真を撮った。
    そこでは衣装を着替え、まるでモデルさんみたいにメイクをして本格的なポートレート写真を撮ってもらった。
    健康診断そのものよりも時間がかかった。
    この写真は、もし私がドールになることがあれば、その資料になるのだという。
    健康診断書とポートレート写真の有効期限は1年間だった。
    つまり、健康診断と写真撮影は毎年行わないと、同意書のサインも無効になってしまうということだ。

    夏休みの間は免許試験の勉強、そして学校の復習と予習をきっちりやった。
    将来、大学に行くための勉強も始めていた。
    もちろん、家事のお手伝いも。
    もうすぐドールを持てる。そう思うと何をするのも楽しかった。

    5.
    9月の終わり。
    「免許が取れたわよ!」
    私はアンバードール研究会の1年生で最初にドール保有免許を取得した。
    わぁ!!
    仲間たちが集まって祝福してくれる。
    「聖羅さん、いよいよドールを買うの?」
    「ええっ。もう胸が破裂しそうだわ!」

    父様がアンバードール販売店の人を家に呼んでくれた。
    お店に行って選ぶんじゃないのね?
    「とても貴重なものだからね。カタログから候補を選んで、それから店で準備してもらうんだ」
    「・・これは、年内にご提供可能なドールのカタログです。もしお気に召したものがなければ、次は12月にお選びいただくことになります」
    12月ですって? そんなに待てないわ。

    分厚いカタログには、女の子一人一人の全身写真とバストアップの写真が載っていた。
    どの子も、衣装もメイクもばっちり決めて、明るく笑っていた。
    ・・そうか。これ、健康診断のときに撮ったポートレート写真だ。
    みんな元気に生きていたときの姿。
    少しだけ胸の動悸が大きくなった。

    あたしは迷いに迷ったあげく、3人の女の子を選んだ。
    一人はショートヘアで、足が長くてスタイルのいい子。
    一人は大きな目で、さらさらロングヘアの、少し小柄な子。
    そしてもう一人は、ゆるいくせ毛で、眼鏡をかけた、ちょっと知的な雰囲気の子。
    カタログの写真には撮影時の年齢だけが載っていた。
    それ以外の個人情報は、一切公開されないのだという。
    「・・名前もないんですか?」
    「名前は、持ち主のあなたが自由につけて下さい」
    ええ? いいの!?
    私が選んだ子たちは、みんな16才だった。
    年齢を見て決めた訳ではないけれど、偶然同い年ばかりになって少し嬉しかった。

    6.
    私は両親と一緒に東京へ行った。
    大きなビルの一番上のフロアにそのお店はあった。
    シャンデリアの灯る豪華な応接室で、私は3体のアンバードールと対面した。
    アンバードールをこの目で直接見るのは初めてだった。
    いったい何と表現したらいいだろう。
    透明なクリスタルガラスのキューブの中にドールたちが浮んでいた。
    とても精緻で綺麗だった。

    ショートヘアの女の子は、テニスラケットを持って立っていた。
    ショートパンツを穿いた足には短ソックスとテニスシューズ。
    スコートじゃなくてショートパンツというのが、綺麗な足によく似合っていた。

    二人目の、目の大きな女の子は、白いキャミソールドレスを着ていた。
    黒髪だと思っていたロングヘアは濃い目の栗色で、そよ風にそよぐようにふわっと広がっていた。
    口元は優しく微笑んでいて、少し頬を赤らめているように見えるのがとても可愛らしい。

    そして、くせ毛の女の子は、ストレートパーマをかけたのか、ショートボブになっていた。
    チェックのブラウスと膝上丈のデニムのスカート。
    小さな眼鏡と左手に持った赤いノートもすごく精巧にできている。
    少し驚いたような顔で前を見ていた。

    私は白い手袋をはめて、一つ一つを持たせてもらった。
    クリスタルガラスのキューブはずっしりと重くて、きらきら輝いていた。
    三人とも私と同い年。
    今は微動だにしない姿でいるけれど、みんな何ヶ月か前まで普通の女の子だったんだ。
    どの子も魅力的だった。
    この中からたった一人に絞るなんて、どうしたらいいんだろう。

    1時間眺め続けても、私は決めることができなかった。
    両親もお店の人も、にこにこ笑っているだけで私に催促することはなかった。
    ついに私は言った。
    「どうしたら決められるんでしょうか」
    店の人が助けてくれた。
    「話しかけてみてはどうでしょう? 運命のドールならきっと答えてくれると言われてますよ」
    「話をするんですか?」
    「はい。声に出しても、出さなくても。お客様の想いを伝えて下さい」

    私はテニスラケットの子を手に持って話かけた。
    こんにちわ! あなた、スポーツが得意なの?
    私は運動は得意じゃないけど、あなたの好きなスポーツを教えてくれたら嬉しいな。

    ロングヘアの子を持って話かけた。
    ねえ、私と友達になってくれる?
    大きな目で何でも見通してくれるの?

    眼鏡の子を持って話しかけた。
    ねぇ、本が好きなの? 私も好きよ。
    あなたの好きなお話を教えてくれるかしら?

    しばらく話して、私は三体のうちの一つを指差して父様と母様に言った。
    「この子にします」
    それは長い髪が広がる、大きな目の子だった。

    メグ

    7.
    アンバードールがお部屋に来て、私の生活は一変した。
    私は彼女に『メグ』という名前をつけ、ベッド横のサイドテーブルに飾った。
    生活の中でメグは一番大事な存在になった。

    メグは私と話ができた。
    あのお店で話しかけたとき、メグだけが「お友達になりましょ」と応えてくれたのだった。
    クリスタルの中で彼女が生きているのか、それとも私の一人芝居なのか、そんなことは重要ではなかった。
    メグは私と会話ができる。それだけで十分だった。

    「おはよう!」毎朝声をかけると、メグも「おはよう。今日も元気そうね」と答えてくれた。
    学校から帰って一日の出来事を話すとメグは「よく頑張ったわね!」とか「それは失敗だったわね」とかコメントをくれた。
    ときには会話を止めて、じっとメグを見つめて過ごした。
    メグはいつも綺麗だった。
    彼女の美しさが永遠のものだと思うと、妬ましくすら思えた。
    見ているだけで我慢できなくなると、クリスタルのキューブを胸に抱いて一緒に寝た。
    手袋をしない手で直接触れたり、まして胸に抱いたりするのは、汚れやキズがつくからよくないのだけれど、私はそうしないではいられなかったのだ。

    メグは友人としてもいい子だった。
    たわいのない雑談にだって付き合ってくれた。
    好きな服の話、お菓子の話、男の子の話。
    中学生のときに申し込まれた交際を全部断ったと言うと「信じられないわ。私だったらお付き合いするのに」と言われた。
    「じゃあ、メグは生きてるときは男の子と付き合ったの?」
    「当たり前でしょ。私、こんな美少女だもん。えへへ」
    「そうか。そうだよねぇ。・・じゃあ、じゃあ、やったの?」
    「やったって、何を?」
    「そ、その、男の子と、キス、とか」
    「個人情報は秘密」
    「あーっ、いじわるぅ!」
    「ウソウソ。聖羅にだけ教えてあげる。私は最後までいったわ」
    「え、最後まで!?」
    「そう」
    「じゅーろくさいで、せ、せっくす」
    「えへん」
    「ど、どんな感じだったの?」
    「それはねぇ、痛いけど、とっても大切なものをもらった気持ち」
    「うわー!!」
    私は思わず、クリスタルを逆さに倒して、メグのスカートの中をのぞくのだった。
    メグは白いドレスの下にピンクのショーツを穿いている。
    ここに男の子のアレが・・?
    「こらぁ、どこを見てるのーっ。聖羅のえっち!」
    メグが叫んでいる。
    うふふ。キミは動けないんだから、私の思うがままになるんだよ。
    「仕方ないなぁ。・・いいわよ、聖羅なら好きなだけ見てくれて」

    8.
    ある日、母様に聞かれた。
    「お勉強はしてる?」
    「はい。やっています」
    「そう? ドールを買ったからといって、お勉強の手を抜いたら駄目よ」
    そういえば、この頃お勉強をサボりぎみだった。
    学校の復習、しなきゃ。
    机に向かって教科書とノートを開く。
    ぜんぜん熱が入らなかった。

    続き




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