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    キョートサプライズ セカンド・第10話(2/3) 魅惑のミュージックビデオ

    6.YAYOI
    20分前。
    やはり気になって早めにスタジオに戻った。
    誰もいないスタジオは補助灯だけが点いていて薄暗かった。
    その中に YAYOI がいた。
    身動きの自由はないから休憩前とまったく同じ姿勢でぽつりと置かれていた。

    畔たちが近づくと YAYOI がこちらを見た。
    その目に大粒の涙がこぼれている。
    「YAYOI ちゃん!」
    「どうしたの?」「大丈夫?!」
    音々がポーチからハンカチを出して目元を拭ってあげる。
    ・・可哀想に。
    3人は黙って視線を交し合った。
    見ようと思わなくても彼女を縛る縄が目に入ってしまう。
    むき出しの腕に縄が食い込んでいた。
    親指まで縛る縄と捻り上げられた手首も痛々しい。
    縄を解いてあげたかったけれど、そんなことをしたら叱られるし、自分たちに解けるようにも見えなかった。

    「すみません、ちょっと高まってしまいました」
    3人が黙っていると YAYOI が言った。
    「すごく、嬉しい気持ちになって」
    「!!」
    「皆さん休憩されてるときに、あたしだけ縛られて。・・胸がいっぱいになって、たまらなくなって」
    ・・この子、やっぱり。
    うん、やっぱり。
    3人は再び視線を交わし合う。
    「あのね・・」意を決して畔が聞いた。
    「YAYOI ちゃんって、その、縛られたりするのが好き・・?」
    「はい。あたし、マゾですから」YAYOI はあっさり言った。
    「ご存知なかったですか?」
    「あ、いや。もしかしたら、そうかな、とは思ってたけど」
    「すみません。あたし、皆さん最初から知ってるかと」
    「あ、あはは」
    苦笑いするしかなかった。
    「あたし、こんなビデオのお仕事は初めてで不安だったんです。でも皆さん大事にして下さるし、こんなに綺麗に縛ってもらえるし、もう大丈夫って思ってるんです」
    「よ、よかったわね」
    「はい。水無月さんもあたしのこと、よく分かって下さってるみたいで」
    ・・確かに、水無月さんの気の使いよう。
    YAYOI ちゃん、本当に大事に縛られてる。
    畔は思った。
    自分は決してマゾではないつもりだけど、それでも縛られている YAYOI が羨ましいとすら感じるのだ。
    「うちの事務所、昔から水無月さんにはお世話になってるみたいで。心配しないで行ってきなさいって典子さんにも言われて」
    ここまで話して、YAYOI はようやく気がついたように回りを見た。
    「・・すみません。何だかあたしばかりべらべら喋って」
    「気にしないで。YAYOI ちゃんの話、面白いわ」
    「ありがとうございます。あたし、この後も頑張ります」
    「うん。お互いにね」
    「また吊られちゃうみたいだけど」想乃がすまなそうに言った。
    「いいんです」
    YAYOI は3人の顔を一人ずつ見ながら言った。
    「あたし、そういう扱いを受けるために来ました。生きてさえ帰れるなら、何をされても構いません」
    どきん。
    畔と、音々と、想乃の心臓が同時に鳴った。

    7.逆さ吊りの振り子
    YAYOI は再び目隠しをされて、上下逆に吊られた。
    全体を振り子のように揺らせて、デジタルメトロノームで振動の周期をチェックしながらロープの長さを調整した。
    サンプルCDを流して音楽のテンポと振り子の周期が近いことを確認した。
    さらに再生速度を調整し、音楽と振り子の揺れを完全に同期させた。
    畔たちはその速度で歌うことになる。
    後の編集で再び映像の速度を調整して音楽を乗せるという。

    先ほどの逆さ吊りシーンと同じポジションに3人が立った。
    スタッフが YAYOI の身体を横に大きく引いて構え、そして離した。
    タイミングを合わせて音楽がスタートし、畔たちがステップを踏み始める。
    音楽のスピードがいつもより早めなので違和感があった。
    それでも YAYOI を少しでも早く解放してあげるために、皆が頑張った。

    踊りながら後ろ向きになったとき、畔は YAYOI をちらりと見上げる。
    逆さに吊られた YAYOI が自分に向って揺れてきた。
    迫ってきたと思うと、反対側に遠ざかって行く。
    ・・サンドバッグだ。
    ボクシングのサンドバッグのイメージが浮かんだ。
    激しく打たれて揺れ続るサンドバッグを想像し、それから何に例えるんだろうと YAYOI に申し訳なく思った。

    収録はテイク5まで繰り返してもOKが出なかった。
    ほんの少し速度が変わっただけなのに、ステップのタイミングが合わないのだ。
    その上、最も映像を使いたい最後のサビのダンスで合わないから、安易に妥協することはできない。
    畔たちは唇を噛む。
    ・・YAYOI ちゃんが苦しいのに。
    振り返って見ると、水無月が YAYOI の顔にタオルを当てていた。
    目隠しをしていても顔面が赤くなっているのが分かった。
    彼女はずっと上下逆に吊られたままなのだ。
    その上振り子になって揺れて、頭に血が昇らないはずがない。
    「YAYOI ちゃん、ふがいなくてごめんなさい!」
    思わず謝罪の言葉が出た。
    YAYOI が小さな声で何かを言った。
    水無月が耳を近づけて頷き、畔たちを呼んだ。
    「"Shimmer" の3人と話したいそうだ」

    3人は YAYOI の下に走り寄る。
    「YAYOI ちゃん?」
    「・・皆さん」
    YAYOI が小さな声で言った。
    「さっき、生きて帰れるなら、何されてもいいって言いましたけど、・・訂正します」
    「へ?」
    「あ、あたし、このまま死んだっていい。だから、どうか、頑張って下さい」

    畔たちは元のポジションに戻ると円陣を組んだ。
    頭を寄せて互いに視線を交わす。
    ・・『まわるまわる』から『ゆれるゆれる』の間ね。
    そう、そこさえ気をつけたら大丈夫。
    これで決めようっ。
    よぉし!!
    畔が振り返って叫んだ。
    「お願いします!」

    再び YAYOI が振り子になって揺れ、3人は歌い始めた。
    イントロからAメロへ。サビから間奏へ。
    「回ってるぞっ」スタッフの一人が叫んだ。
    揺れる YAYOI の身体がコマのように回っていた。
    ロープが捩れてしまったらしい。
    「止めろっ」
    「いや、このまま続ける!」
    ディレクターが継続を指示した。
    今度の "Shimmer" のダンスは出来が違った。
    絶対に合わせる!
    表情に決意が表れていた。
    最後のサビに差し掛かっても、ステップが乱れることはなかった。
    後ろで YAYOI が大きく揺れていた。
    畔たちは気付かなかったけれど、目隠しされた彼女の口は少し開いていた。
    その口元から頬に涎が流れて光っていた。

    「シーン21、OK!」
    ディレクターが叫ぶと同時に、畔、音々、想乃は YAYOI の下に走って行く。
    「YAYOI ちゃん!」「YAYOI ちゃん!」
    いくら声を掛けても、YAYOI は何も反応しなかった。

    床に降ろされ、全身の縄からすべて解放されてから、YAYOI は意識を戻した。
    彼女は2時間近く連続して逆さ吊りになっていたことになる。
    いつ気絶したのか本人にも分からないという。
    「大したもんだよ。それでも少しも動かなかったんだから」
    ディレクターがしみじみと言って、皆が納得した。

    8.解散
    収録はこれで完了である。
    皆で一本締めをして解散になった。
    MVはこれから編集作業を行い、新曲の発売開始に合わせて公開されることになる。

    「YAYOI ちゃん!」
    畔たちが YAYOI に声を掛けた。
    「今から皆で打ち上げなの。一緒に行きましょ!」
    「すみません。今なら最終に間に合うので」
    「え? 最終電車ならまだまだ大丈夫でしょ」
    「いえ、新幹線の最終です。明日、大学に出るので、今日中に京都に帰らないと」
    「京都!?」
    「はい。せっかく誘って下さったのにすみません。じゃあ失礼します!」」
    YAYOI は小走りでスタジオを出て行ってしまった。
    残された3人は互いに視線を交わし合う。
    ・・京都の大学生?
    あの子、いったい何者なの?

    それからしばらく YAYOI の正体が畔たちの話題になった。
    不思議な女の子だった。
    縛られても下品でなくて綺麗で、同じ女から見てもどきどきする感じがあった。
    マネージャーに聞いたところ、YAYOI はプロデューサーの烏丸が地方テレビ局に勤めていたころの知人を通じて来てもらったという。
    「烏丸さんって、テレビ局にいたんですか」
    「そう、京都のMMテレビ。もう10何年も昔のことらしいけどね」
    ・・京都。
    YAYOI ちゃんのいる街。
    「詳しい事情は教えてもらえないんだ。いろいろあったらしいよ」

    "Shimmer" の新曲MVは過激らしい。
    芸能雑誌やインターネット上で囁かれ始めた噂は、もちろん事務所がリークしたものである。
    噂は噂を呼び、ついには3人がヌードになるという情報まで流れ、本人がブログで否定するはめになった。
    こうして世間の注目がピークになって、新曲『ポゼッション』が発売された。

    9.『ポゼッション』MV
    荒れたモノクロ画像。赤外線カメラで暗闇を撮ったイメージ。
    大きな木箱が運び込まれた。
    蓋を開けて横倒しになる箱。そして中から転がり出た白いドレスの少女。
    少女は縄で後ろ手に縛られていて、白布で目隠しをされていた。
    画面に『POSSESSION』のタイトルが流れる。

    [イントロ]

    コンクリート張りの地下室。
    カメラがパンして、木製の椅子に縛り付けられた少女を映す。
    捻り上げられた手首のアップ。そして揃えて縛られた足首のアップ。

    しなやかだね キミの身体
    かたくなだね ボクの心
    暖かいね キミの涙
    凍りつくね ボクの吐息


    "Shimmer" が歌いながら踊る。
    その後方には椅子に縛り付けられた目隠しの少女。
    まるで人形のように動かない。
    と、少女の肩と顔の下半分がアップになり、その顎を男の手が掴んでぐいと持ち上げた。

    求め続ける この時間
    キミの気持ちが少しでも ボクに伝わればいいね
    いつかきっと キミを受け入れる
    そんなときが くると思うから


    歌い続ける "Shimmer" と少女の緊縛イメージが交互にフラッシュする。
    横倒しにした木箱から転がり出る少女。
    高手小手に縛られ、縄を引かれて歩く少女。
    椅子に縛り付けられた少女。
    床に転がった少女。その片方の足首を男の手が握って持ち上げる。

    しなやかだね キミの身体
    かたくなだね ボクの心
    暖かいね キミの涙
    凍りつくね ボクの吐息


    頭を下に吊り上げられた少女。
    その姿が前後左右から映し出される。
    逆さ吊りになった少女の手前で一列に並んで歌う "Shimmer"。
    畔、音々、想乃が順番にアップになる。
    再び、一列に並んだ3人とバックに吊られた少女。
    カメラは少女の足首の縄に一気にズームインする。

    [間奏]

    逆さ吊りで振り子のように揺れる少女。その手前で踊る "Shimmer"。
    振り子の揺れは音楽と完全に同期していた。
    床を這ってもがく少女と、その横で踊る "Shimmer"。
    椅子に縛り付けられた少女。
    逆さに吊り上げられる少女。
    吊縄が捻れて回転する少女。
    カメラに向かって迫ったり離れたりしながら揺れ続ける。

    拒み続ける この時間
    ボクの心が少しでも 柔らかくなればいいね


    歌う "Shimmer"。
    後方に少女の姿がぼやけて写っている。
    椅子に縛り付けられた少女。もがきながら這う少女。そして逆さ吊りの少女。

    明日はきっと キミを受け入れる
    ただ所有物 それまでキミは


    3人は自分達が拘束されているようなポーズをとる。
    両手を上げ、頭の上で手首を合わせる畔。
    十字架に架けられたように両手を左右に広げ、首をうなだれる音々。
    そして後ろを向いて、背中で腕を組む想乃。
    畔、音々、想乃の顔が大写しで交互にフラッシュする。
    それぞれ、片方の瞳から大粒の涙をこぼす "Shimmer"。
    音楽が止まって無音になる。一瞬の後、再び鳴り始める。

    包み込むね キミの想い
    突き放すね ボクの言葉

    まわるまわるまわる
    ゆれるゆれるゆれる
    おちるおちるおちる


    コマのように回りながら揺れ続ける少女。
    その下で歌い続ける "Shimmer"。

    愛情のない POSSESSION

    少女の姿が次第にぼやける。

    (アウトロ)

    斜め横吊りになった少女。
    少女の目隠しが解けて落ちる。
    カメラは床に落ちる目隠しを追い、少女の顔を映さない。
    画面は黒くなって、エンドロールが流れる。
    スタッフの名前と "Shimmer" のロゴ。
    最後に『POSSESSION』のタイトル。
    緊縛された少女の名前はどこにも表示されなかった。


    POSSESSION MV

    10.評判
    ネットの動画サイトに公開されたMVは初日だけで10万PVを越えた。
    『ポゼッション』はヒットチャートを駆け上がり、"Shimmer" の元には取材や出演依頼が殺到した。
    テレビへの露出は最小限にして『◯ステ』や『◯SIC JAPAN』などのメジャーな音楽番組への出演も断ったから、かえって話題となりますます注目を集めた。

    「私たちも知らないんです。あのモデルさんのことは」
    音楽雑誌のインタビューで、畔は答えた。
    「一般の大学生、とは聞いてますが、歳も名前も」
    実は年齢は分かっているし、YAYOI という芸名も知っているが、あえて何も知らない戦略で押し通すことになっていた。
    彼女の本名や、京都で何をしているのか、実際の詳しいことはまったく分からないままでであるが。

    ・・またあの子に会いたい。
    3人とも同じ想いだった。
    MVのお礼も言ってないのだ。
    YAYOI に会って、ゆっくり話をしたい。
    どうして緊縛モデルをしてるいのか、聞いてみたい。
    それにできれば、縛られるのはどんな気持ちなのか、聞いてみたい。

    11.京都の夜
    まもなく初夏を迎える頃。
    2日続きのライブが京都であった初日の夜。
    終演後に楽屋に戻ると、珍しい客が待っていた。
    「よおっ。元気かい?」
    「きゃあっ」「水無月さん~!!」
    水無月と会うのも、あのMVの撮影以来である。
    「どうしたんですか!?」
    「いや、会いたいだろうと思ってさ」
    「水無月さんに? やだぁ」
    「そんなにはっきり言うな。落ち込むじゃねぇか」
    「ふふふ」「ごめんなさい。冗談です」
    「いいよ。君らが会いたいだろうって思ったのは、あの子の方さ」
    ・・え、あの子?
    畔たちは視線を交わし合う。
    「前も思ったけど、君ら、テレパシーで話せるみたいだな」
    「分かります?」
    「まあな。・・それで、どうだい? せっかくの京都の夜だ。大人しか入れない場所だけど、あの子に会いに行くかい?」
    「あの子って、YAYOI ちゃんですよね!?」
    水無月は笑っている。

    「マネージャー! いいですか!?」
    息せききって聞いたマネージャーも笑って許してくれた。
    プロデューサーも了解しているという。
    「ただし、"Shimmer" ってばれないようにして行くんだよ」
    「はいっ」

    続き





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