スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    人工人魚物語 ~楓~ (3/3)

    13.
    目を開けるとあたしはベッドで寝ていた。
    ・・ここ、あたしが泊まってる部屋。
    「お目覚めになりましたか」
    低いバリトンの声。桑原さんが枕元に座っていた。
    「ご、ごめんなさい! 迷惑をおかけして」
    あたしはベッドの上で身を起そうとする。
    「あぁっ。まだそのまま、お休みでいた方が」
    「もう平気ですから」
    桑原さんが片手で自分の目を隠しながら、顔を反らした。
    あたしは全裸で何も着ていなかった。
    「きゃんっ」
    慌てて毛布で胸を隠す。
    「あの、もうお隠しになりましたか?」
    桑原さんが顔を背けたままで言った。クソをつけたいくらいに真面目な言い方だった。
    「その、近藤様の下着は、ただいま乾燥中でございまして」
    ふふふ。・・いい人なんだ。
    私は首まで毛布に包まって笑った。
    「はいっ。もう大丈夫です!」
    ・・
    紫紺さんは、別室で絵の製作の準備をしているという。
    「近藤様がお目覚めになったとお知らせすれば、すぐにおいでになられますが、その前に、」
    「はい?」
    桑原さんは少し言いよどんだ。
    何だろう?
    「・・その前に、私めからお話ししたいことがございます。ぼっちゃまには、ご内密に願いたいのですが」
    内密にって、紫紺さんには話すなって意味よね。
    「何ですか」
    「近藤様。どうか今すぐお帰り下さいませ」
    「へ?」
    「理由はお話しできませんが、ぼっちゃまの言われる通りにして、よいことはごさいません」
    そんな、説明できないけど帰れって言われても。
    あたしは絵のモデルを約束してる。
    それに、紫紺さんにまであんな迷惑かけて、黙って帰るなんてできない。
    「あたし、帰りません」
    「・・」
    「どんな理由でそう言うのか知らないけれど、あたし、紫紺さんのモデルをします」
    その瞬間、桑原さんの目がとても冷たくなったような気がした。
    「そうですか。では無理は申しますまい。・・ぼっちゃまをお呼びして参ります」
    桑原さんはぷいと部屋を出て行ってしまった。
    ・・
    「楓ちゃんっ。何ともありませんか?」
    替わりにやってきた紫紺さんは、今までと変わらずに優しかった。
    「ごめんなさい! もう大丈夫です」
    「あのとき、どうして急に転んだんですか?」
    「信じてもらえないかもしれませんけど・・」「信じますよ」
    「足を掴まれたんです。誰かに」
    「誰かに?」「はい」
    「それは人の手でしたか?」「はい」
    紫紺さんはしばらく黙って何かを考えてから言った。
    「この神沼には、昔から人魚の伝説があります」
    「人魚?」
    頭の中にあの光景が蘇った。
    水面に浮かんだ女の子の顔。大きな魚の尻尾!
    「あ、あ、・・あたし、見ました! あれ絶対、人魚!!」
    「本当に?」
    「すごいですかっ。すごいですか?」
    「はい。すごいことです」
    きゃ~い!!
    あたし、人魚に会ったんだ!!
    「・・人魚にはいろんな噂があります。昔、神沼で工事をするとき人柱にされた娘の変わり果てた姿だとか、」
    「え」
    「五穀豊穣を願う生贄として投げ込まれた娘を食べて育ったソウギョだとか」
    「・・」
    「全然ロマンチックじゃないでしょう」
    「はい。何だか可哀想」
    「そうですね。神沼の人魚はどれも可哀想なんです。どれも人間の娘が望まずに変わった姿なんです」
    じゃあ、あの女の子も?
    あの女の子も、人間から変えられてしまった人魚なの?
    あたしは、あの女の子が人間だった姿をちょっと想像した。そして人魚になって下半身が魚になった姿も。
    胸がどきどきした。

    14.
    人魚のコスチュームをつけるとき、思い切って言った。
    「紫紺さんの絵が描けるまで、このままの格好でいます」
    「気遣いは嬉しいですけれども、長くかかりますよ? ひょっとしたら明日まで」
    「構いません」
    「楓ちゃん、さっきの話で興奮しましたか?」
    「いえ、興奮したなんて、そんなことは」
    「人間から人魚に変えられて、元に戻れない思いをしたいですか?」
    ぼ。
    あたしの顔が真っ赤になるのが分かった。
    耳まで赤くなってる。自分でそう思った。
    「図星ですか。・・そういうことでしたら、私の方こそ願ったり適ったりです」
    「あ、その。・・すみません」
    「本当に理想の素材だ」
    「?」
    ・・
    紫紺さんに指示されてトイレを済ませ、お風呂で全身を洗いなおした。
    特に両足の間を綺麗にと言われた。
    これって、あたしの全部を紫紺さんに晒すってこと?
    どき、どき。
    あたしは指で中まで綺麗に洗う。
    「綺麗になりましたね。何も着ないで仰向けに寝て下さい」
    ああ、やっぱり・・。
    言われた通りに寝転ぶと、紫紺さんはあたしをじっと見た。
    どき、どき。
    あそこの上を黙って手で撫でた。
    そして言われた。
    「少し剃ります」
    ・・
    あたしはシェービングクリームを塗られてアンダーヘアを剃られた。
    自分で処理したことはあるけれど、男の人に剃ってもらうなんて初めてだ。
    しかも紫紺さんが使っているのはシェーバーじゃなくて安全カミソリ。
    よく動かないでじっとしていられたと思う。
    ぞり、ぞりって剃られるたびに、乳首がつん、つんって立っていく気がした。
    ・・
    あたしの興奮はもちろんこれだけでは終わらなかった。
    紫紺さんはあたしをもう一度仰向けに寝かせると、膝と足首をゴムバンドで縛った。
    「これは、足が開かないようにするための仮ドメです」
    そして白い瓶に入った液体を、両足の間の密着した部分にハケで染み込ませるように塗った。
    爪先から足首、脛、膝、そして太ももの内側。それらの部分にこわばるような感覚が広がった。
    紫紺さんは腕時計で時間を計っている。
    「うん、OK」
    黙って膝と足首のゴムバンドを外した。
    「どうですか?」
    どうって・・、あ。
    右足と左足が密着したまま離れない。
    「今使ったものは人肌用の瞬間接着剤です。楓ちゃんに2本の足はもう必要ありませんから」
    きゅん。
    胸が痛いほどに鳴った。両足を接着してしまうなんて。
    「膝はちゃんと曲げられるはずです」
    そんな。そんな。
    ・・
    紫紺さんは、それから人魚の下半身を被せてくれた。
    この下半身はカメラ撮影のときとは違って極端なローライズだった。
    ものすごく刺激的なデザイン。正面なんて、恥骨のすぐ上までしかない。
    これで剃られた理由が分かった。これじゃ割れ目を隠すだけで精一杯だから。
    でもこんなに短いと、すぐに脱げて落ちてしまわないですか。
    「肌に接着してつけます」
    「!」
    あたしの素肌とコスチュームの合わせ目に瞬間接着剤が流し込まれる。
    あ、あ、あああ。
    そんなことされたら、あたし、もう元に戻れない・・!!
    「この接着剤はリムーバーという薬で剥がせます」
    そうか。元には戻れるんだ。
    「でも用意してません。絵が完成したら取り寄せましょう」
    な、何てこと!!
    「どうですか? 少しでも絶望的な気持ちを感じれますか?」
    「・・ものすごく絶望的です」
    「それはよかった」
    紫紺さんは楽しそうに笑った。
    あたしはうつむいて自分の胸を押さえた。
    その胸はまだ、きゅんきゅんと鳴り続けていた。

    15.
    絵を描くアトリエは、あのギャラリーだった。
    あたしは、絨毯の上に横たわってポーズをとっている。
    「疲れたら言って下さい」「・・はい」
    イーゼルの前で、紫紺さんは筆を走らせていた。
    「動かないで」「・・あ、はいっ」
    いったい、紫紺さんはどういうつもりであたしをこんな風にしたんだろう。
    接着した足を剥がす薬がないなんて、わざわざ教えて。
    あたしはじっとモデルを続けられる状態じゃなかった。
    息は、はぁはぁ、ひぃひぃ。
    心臓は、ばくばく、どっきん、どっきん。
    それでいて、あたしは絵を描く紫紺さんの視線をちくちくと肌に感じていた。
    顔、手、お腹、そしておっぱい。
    紫紺さんに見られてる。
    はぁ、はぁ、はぁ。
    どきん、どきん、どきん。
    あたしは下半身を拘束された人魚。人間に戻れない人魚。
    あ、ああぁ!
    ・・
    「休憩です」
    紫紺さんが筆を置いて、あたしを助け起してくれた。
    「おやおや。大丈夫ですか? 楓ちゃん」
    あたしは、全身の肌をピンク色にして、細かく震えていた。
    「やはり高まりを抑え切れないんでしょう?」
    「あぁ、もう、・・全部分かっているくせに」
    「何がですか?」
    「・・いじわる」
    紫紺さんは少し笑って、それからあたしを抱き上げた。
    「行きましょう」
    あ、またまた、お姫様抱っこ!
    「あの、どこへ・・?」
    「ベランダです」
    2階のベランダの前には桑原さんが待っていて、あたし達が行くと黙ってドアを開けてくれた。
    ベランダに出ると、ちょうど湖の向こう側の神沼岳に赤い夕陽が沈むところだった。
    「これを見せたかったんです。雄大でしょう?」
    「・・はい」
    あたしは紫紺さんに抱かれたままで夕陽を見つめた。
    頭を回して紫紺さんの顔を見上げると、紫紺さんも黙って同じ夕陽を見ていた。
    あたしは上半身裸だったけれど、興奮のせいか全然寒いと思わなかった。
    そのまま時間が過ぎる。
    「あ、、あたし、重いですよね?」
    「そんなことはありませんよ」
    紫紺さんの目があたしを見下ろして微笑んだ。
    くっきりした切れ長の目。
    あぁ、あたし・・。
    「あ、・・紫紺さん、」
    「はい」
    「その、」
    あーん、もうっ。
    「あの、その、・・あたし、紫紺さんのこと、」
    どうしてたったこれだけのことが言えないんだろう。
    「ふ」
    突然、紫紺さんが笑った。
    「一回だけしかしませんから、よく感じて下さいね」
    そうして、あたしの唇に自分の唇を寄せた。
    あ・・・。
    長いキスだった。
    下半身を拘束された人魚のあたしは、紫紺さんのキスを受け続けた。
    今まで味わったこともない感覚。
    心臓が破裂しそうになり、これ以上縮めそうにないくらいに子宮が収縮した。
    「ああ!!」
    ようやく唇が離れると、あたしは両手を紫紺さんの首に回して抱きついた。
    いっぱいいっぱい力を込めて抱きついた。
    ・・
    そのまま5分以上も抱きついて、あたしはようやく紫紺さんから離れた。
    紫紺さんの顔を見上げる。
    うるうるした顔をしてるのが自分で分かった。
    あたしは欲情しまくっていた。
    接着剤で封印された人魚コスチュームの内側がぐちょぐちょに濡れていた。
    紫紺さんに侵入して欲しかった。
    今すぐにも、ゴム製のコスチュームを引き裂いて、無茶苦茶に犯して欲しかった。
    でも、あたしが何も言葉に出して言わないうちに、紫紺さんは優しく言った。
    「・・駄目です、楓ちゃん。あなたは人ではないのだから、人にしか許されない行為はできません」
    駄目ですか? あたしが人でないから、駄目ですか?
    「あ、」
    涙が溢れた。
    「ああぁ、」
    ぼろぼろ溢れた。
    「ああああ~ぁん!」
    大声で泣いた。

    16.
    ようやく泣き止んだあたしは、人魚のコスチュームにガウンを羽織っただけの格好で、食堂でたった一人早めの夕食をもらった。
    通い女中の美佐江さんが、呆れた様子で給仕してくれた。
    メニューはまたもゆるいオートミールだった。
    この格好で固形物は食べない方がいい。
    紫紺さんも桑原さんも、最初からそのつもりだったんだ。
    人間でない人魚のあたし。
    その扱いがとても哀しくて、心がずきずきした。
    ・・
    製作の続きにまたアトリエに運ばれた。
    そこで紫紺さんにはっきり言われた。
    あたしは人魚だから人間の扱いはできないと。
    どうしてもエッチな気持ちになって苦しいのなら、その様子を見せて欲しい。
    もう人間に戻れない運命を十分に感じて、喘いで欲しい。
    そんなあたしの姿を絵に描きたい、と。
    ・・
    あたしは夜明け近くまでモデルをさせられた。
    どれだけ懇願しても、紫紺さんはあたしに指一本触れてくれなかった。
    あたしはアトリエの床を這いまわりながら、繰り返す波のように襲ってくる官能と闘った。
    なすすべもなく突き落とされる感覚が、マゾの感情を刺激してまた自分を高めた。
    分厚いコスチュームの上から絶対に開かない股間をぎゅっと押さえて、物足りなさに身もだえした。
    我慢できずに自分で胸を揉んで慰めた。乳首に爪をたてて傷つけた。
    何度かおしっこが溢れそうになり、そのまま垂れ流した。
    けれども接着剤で封印された下半身からは一滴もこぼれなかった。
    ・・
    「完成しました」
    紫紺さんが言った。
    その足元であたしは息も絶え絶えになっている。
    いったいあたしは何時間、喘ぎ続けたんだろうか。
    桑原さんが車椅子を持ってきてあたしを乗せてくれた。
    髪がぼろぼろに乱れているのが分かった。
    髪だけじゃない、顔も汗と涙でぐちょぐちょ。体中に自分で爪をたてた傷痕がついていた。
    「絵を見ますか?」
    紫紺さんがイーゼルを動かして、完成した絵をこちらに向けてくれた。
    そこには、一体の人魚が水辺に腰を下ろして笑っている姿が描かれていた。
    それは、あたしだった。とても明るく無邪気に笑っていた。
    紫紺さんは、苦しみ続けるあたしを見ながら、こんな絵を描いてた・・。
    見ているうちに、両方の目から涙がこぼれた。
    あたしはその涙を拭うこともせずに、黙って紫紺さんの絵を見つめ続けた。

    17.
    「楓ちゃん、本当によく協力してくれましたね」紫紺さんが言った。
    隣で桑原さんが何も言わずに立っている。
    「でも、これで終わりじゃないんですよ。これからが始まりなんです」
    「・・」
    あたしは呆然としていて、ちゃんと応える気力もなかった。
    だいぶ小さくなったけれど、あたしの中ではまだ性感の炎がちろちろと燃えている。
    「あなたのような『素材』にめぐり合えたことは僥倖でした。今までにない趣向で人魚の加工を楽しめそうです」
    ・・ギョーコーなんて、難しい言い方されても分からない。
    それに加工って?
    あたし、もう人魚になってるんだけど。
    「では、行きましょうか」紫紺さんが車椅子の後ろに立って言った。
    「あ、あの、これはどうなるんですか」
    あたしは自分の膝を指差して聞いた。
    そこは人魚の下半身が接着剤で固定されていて、もう自分で立って歩くこともできない。
    「大丈夫です。コスチュームをつけたまま加工するのは初めてですけど、できるだけ腰部が露出するように着せていますから。それにね、下半身の切断といっても骨を切る訳じゃなくて、大腿骨の関節を骨盤から外すだけなんです。両足は開かないようにしっかり固めてありますし、コスチュームごと綺麗に切り離せるはずですよ。・・新しい下半身には青色の魚体を用意しています。あなたの肌によく映えると思いますから、楽しみにして下さい」
    紫紺さんは長々と説明してくれた。
    何を言ってるのかさっぱり理解できないけれど、とても楽しそうだった。
    まるで人体実験の材料でも見るような目であたしを見ていた。
    「作業の前に、紹介しておきたい子がいるんです。・・人魚なんですが」
    「え!」
    「楓ちゃんとも、きっと仲良くなってくれると思いますよ」
    紫紺さんはにっこり笑って車椅子を押し始めた。
    後ろで桑原さんが深々とお辞儀をしている。
    アトリエの奥の壁に向って、紫紺さんは何かの操作をした。
    カチャ。鍵が開くような音がした。
    そのまま壁を押すと、それはゆっくり後ろに開いた。
    隠し扉!?
    紫紺さんとあたしは、その扉をくぐった。

    18.
    あたしが調教を終えて『市場』でオークションにかけられたのは、それから3ヶ月後だった。
    紫紺さまが手がけた人工人魚の中でも、とりわけ素直で従順だと喜んでもらえた。
    あたしが『市場』に出たとき、あたしの人間の姿のときの動画が一緒に公開されて評判になったそうだ。
    それは、紫紺さまが撮影した、あの神沼の畔ではしゃぐあたしの姿だった。裸で水に入ってこけるところまで映っているという。
    もしかして紫紺さまは、最初から狙ってあれを撮ったのかなと思う。
    何かに足をとられて転倒するハプニングまでは期待してなかっただろうけどね。
    ・・
    あたしの新しい飼い主、つまりご主人さまは、女医さんだった。
    まだ若いのに個人で大きな外科病院を経営している人。
    ご主人さまが男性の場合、人魚が『お相手』をして差し上げるのは、当前の作法だ。
    人工人魚の下半身には、その用に使う器官がちゃんと作られているのだ。
    あたしも楽しみにしてたんだけど、購入者が女性って知ってちょっと残念だった。
    でも、この方と過ごす時間は素敵だ。
    あたしは、ご主人さまのプライベートな部屋で熱帯魚みたいにディスプレイされている。
    水槽には定期的にバラの香水をさしてもらえるし、出かけた先で見つけた髪飾りなんかをよくプレゼントしてくれる。
    男の人の持ち物だったら、あり得ない楽しみだと思う。
    でもご主人さまは優しいばかりじゃなくて、あたしは大きな剣山の針に全身を貫かれて、そのまま何日も放置されることだってある。
    まあ、人間だったときからマゾのあたしにとっては、それもうれしいご褒美の一つなんだけどね。
    この間、うっかり昔みたいに「きゃはは」って笑ったら、ずいぶん喜ばれてしまった。
    それからはご主人さまのご機嫌のいいときには、盛大にきゃははと笑うようにしてる。
    だって、人工人魚はご主人さまの愛情で生きるものだからね。
    あたしも愛情を返してあげるべきだって思うもの。

    人工人魚 楓ちゃん イラスト:鴉子さん


    [エピローグ]
    灯りが点いた。
    水槽の正面に車椅子を押した男性がやってきた。
    車椅子の少女が、水槽を指差して叫んでいる。
    ・・なんて騒がしい方なんでしょう。
    水槽の人魚はその少女を見て眉をひそめる。
    昨日、紫紺さまに言われて、神沼でちょっと驚かしてあげた子ですね。
    もう人魚の格好までして、気の早い子。
    少女は自分で車椅子から転げ落ちると、自由の利かない下半身を引きずるようにして床を這おうとした。
    男性は苦笑して少女を床から拾い上げ、車椅子に乗せ直す。
    ガムテープを出し、車椅子ごとぐるぐる巻きつけて動けないようにしてしまった。
    くすくす。
    水槽の中で人魚が口に手をあてて笑っている。
    ねぇ、あなた。
    心配しなくても、紫紺さまにお任せすれば立派な人魚に生まれ替われますよ。
    そうしたら、また調教のときにでもお目にかかりましょう。
    ばしゃ。
    人魚は尻尾をあげて水面を軽く叩いた。
    男性は人魚に向かってウインクをすると、車椅子を押して出て行った。




    ~人工人魚の世界と登場人物~
    人工人魚は人の手で作られる人魚です。
    作るのは、山深い湖の畔に住む没落名士の若き跡取り。
    材料は、人間の女性と、養殖して育てた巨大な魚体。
    女性は下半身を切断されて命を失いますが、魚体を接合され、人魚として新たに命を得ます。
    そして調教を施された後、密かに高値で取引されるのです。
    人間と魚。異なる肉体を合成し生き永らえさせるのは、湖の湖底から抽出される反魂香という成分。
    反魂香を含有する水槽の中では、人工人魚の体は半永久的に朽ちることなく、養分(餌)も必要としません。
    (水槽から出してあげることも可能ですが、せいぜい2~3日のうちには戻してあげないと朽ち果てます)
    反魂香はまた、肉体(魚体)の損傷を回復させる効果があるので、様々な拷問的行為を楽しむことも可能です。
    様々な主人に売られ、その元で飼われることになる人魚達。
    彼女達には人間だったときの記憶や感情が残っています。
    それぞれが、満たされない思いや夢を抱き、鑑賞用/愛玩用あるいは嗜虐の玩具として、水槽の中で生きています。

    近藤楓(かえで): 17才。本話主人公。明るくノリのいい高校2年生。
        援助交際で知り合ったおじさんと人魚コスプレの約束をして・・。。
    神沼紫紺(かみぬましこん): 30才。3年間に死亡した父親の跡を継いで神沼家当主となった。
        当主となる前は東京で人魚絵専門の売れない画家をしていた。
        人魚への思いに取り付かれ、人工人魚を作り続ける。
    桑原正造: 75才。先代当主の時代から仕える執事。人工人魚の秘密を知っている。
        紫紺の行為を手伝っているが、内心では改心させたいと思っている。
    竹井美佐江: 21才。通いの女中。
    山田: 50才くらい。『素材』を収集するために紫紺が使っているエージェント。
    まゆ: 紫紺に飼われている人工人魚。元は屋敷の使用人。


    人工人魚は、ネット絵師で創作家でもある鴉子さんが考案されたファンタジーです。
    pixiv で鴉子さんのイラストとその設定に興奮し、サイドストーリーを書かせていただきました。
    舞台環境や、紫紺さんとまゆさん以外の登場人物は私が考案したものなので、もし設定に齟齬や矛盾があれば、それは鴉子さんではなく、私 82475 の責任です。
    また本来でしたら17章の後で、楓ちゃんは凄惨に下半身を切断されて人魚に加工され、さらに情け容赦のない調教を受けます。お好きな方にはたまらないシーンかと思いますが、それらはあっさりと省略し、皆様のご想像にお任せすることにしました。(作者の筆力の理由!もあります)
    18章は、彼女が自分の運命を受け入れ、前向きに生きる決意をしたということをお伝えするために書きました。

    掲載した挿絵は、鴉子さんが描いて下さったものです。
    とても可愛らしくて美乳の楓ちゃんに大変喜んでおります。
    ありがとうございました!
    pixiv のアカウントをお持ちの方は、どうぞ鴉子さんの素敵な人魚さんをご覧になって下さい。
    本話では狂言回しのように少しだけ登場してもらった人魚のまゆさんにも素晴らしい背景設定がありますよ。

    http://www.pixiv.net/member_illust.php?id=420150
    (R18権限でないと、美味しいイラストは見えません)




    関連記事
    スポンサーサイト
    [PR]

    [PR]

    コメントの投稿

    非公開コメント

    早速遊びに来てしまいました!

    こちらでのコメントでは始めまして!鴉子で御座います。
    創作にて考えていた人工人魚がこんな素敵な小説になったことを、人工人魚の絵を描いた身であると同時に82475様の文章に惹かれた者として大変嬉しく思います!!
    自分の考えた理想そのものが繊細な文章で現され、楓ちゃんという魅力的な女の子と出会えて、本当に本当に、なんと申したら宜しいのでしょう、言葉に出来ない喜びがあります・・!
    紫紺は大人ですが、愛しているのは人魚のみ。そして楓ちゃんの思いは伝わっていても、口付けより先は許されない…そこで彼女が流した涙は夕日に映える美しいものだったと思います(私にそれを描く画力があったなら!)
    もう何度も読み返してしまうくらいに、82475様の記す人工人魚に魅了されています。
    素敵なお話を本当に有難う御座いました!

    Re: 早速遊びに来てしまいました!

    ◎鴉子さん
    さっそくのご訪問ありがとうございます。
    夕日のベランダのシーン。
    お見立ての通り、紫紺は人にしか許されない行為はできないと言いながら、実は人である楓ちゃんを拒んだんですね。
    彼にこんな残酷なセリフを言わせることができて、楽しかったです^^。
    せめて楓ちゃんが、調教の終わり、従順な人魚になったとき、紫紺からやさしくしてもらえていればいいですね。
    こちらこそ本当に楽しくお話を書かせていただき、ありがとうございました。

    プロフィール

    82475

    Author:82475
    女性の拘束に関わる小説/SSと
    落書きを書いてます。

    更新案内と目次


    自己紹介
    メール送信/コメント投稿について

    カテゴリ
    最新記事
    最新コメント
    ブログ内記事検索
    (コメントの検索はできないみたいです)
    リンク

    ◎pixiv

    pixiv 82475のpixivページ
    R-18/R-18G 閲覧設定していないと見れません。

    ◎検索サイト

    駄文同盟.com
    駄文同盟.com


    ◎このブログへのリンクについて

    リンク、ブックマークは
     http://82475.blog15.fc2.com/
    へお願いします。
    「いつか感じたキモチ」 バナー
    メールフォーム

    名前:
    メールアドレス:
    タイトル:
    本文:

    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。