スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    キョートサプライズ セカンド・第8話(4/4) 3年4組緊縛お化け屋敷

    9.文化祭
    瞳の案内でチケットを見せて正門から中に入った。
    立ち並ぶ立看板や教室の窓に張られたポスター類は、さすがに文化際の雰囲気を盛り上げていた。
    「ねぇ、屋台で焼きそばとか売ってないの?」洋子が聞いた。
    「屋台はないです。今日は学食でお弁当を売ってますけど」瞳が答える。
    「じゃ、ビールもそこで買えるー?」
    「んなもん、高校の文化祭で飲めるはずでないでしょおが」典子が突っ込んだ。
    「何よぉ、融通利かないわねぇ」
    「洋子さん、今日はお化け屋敷を見にきたんですよ」

    前を行く女性三人の後に男性二人がついて歩いていた。
    章と瀬戸である。
    ・・はぁ。
    瀬戸は溜息をついた。気が重い。
    自分が教えた生徒の緊縛は、もちろん見たかった。
    しかしその思いもかすむほどに瀬戸はお化け屋敷が苦手なのであった。
    子供の頃から肝試しや怪談、ホラー映画に心霊現象、そういったものに弱かった。
    「瀬戸くん、顔色がよくないみたいだけど」章が瀬戸に聞いた。
    「いえ、大丈夫っす」
    まあ、どうせ高校生の遊びだ。大して怖くはないだろう。
    出演する女の子だって、もう全員を知ってるんだし。

    『ハロウィン・ホラーハウス』と書かれた看板の前まで来ると、そこは大行列になっていた。
    入場までは1時間待ちだという。
    教室の入口にいた曽爾がこちらを見つけてやってきた。
    「ご覧の人気です。瀬戸さんのおかげですよ」
    話している間に教室の中から「きゃあっ」という悲鳴が聞こえ、瀬戸を震え上がらせた。

    曽爾は瀬戸たちを優先的に入場させてくれた。
    このお化け屋敷は二人ひと組で入り、どこかに置かれているカードを取ってくるルールである。
    まず、典子と瀬戸、続いて洋子と章が、それぞれペアで入ることになった。

    入口は二重の暗幕になっていた。
    外側の暗幕を開けてもらって、瀬戸は典子と並んで中に入った。
    「では無事に生還してくださいねぇ~」
    背後で暗幕が閉まると、隣の典子が瀬戸の左腕を掴んだ。
    え?
    「えへへ。これくらいは、楽しまないとね!」
    ぎゅっと、しがみつかれてしまった。
    これでは逃げられないではないか。
    「エスコートしてね、瀬戸くん♥」
    「は、はい」

    意を決して奥の暗幕をくぐった。
    中はほとんど真っ暗で、どちらに進んでいいのか分からない。
    「えっと・・」
    二人で立ちすくむ。
    目が慣れてくると、正面に左向きの矢印が見えた。
    「こっちみたいですね」
    矢印に従って歩き出した。

    ゾンビやで~

    数歩も進まないうちに、前の方に屈んでいた人影が立ち上がるのが見えた。
    うわ、来るなぁ。あっち行け。
    「・・うぅ」
    それはうめき声を上げながら、よろよろと近寄って来る。
    「・・ぁあ」
    背後でも声がしたので振り返ると、すぐ後ろにもう一体いた。
    「・・あ、・・・あぁ!」
    二体ともぼろぼろのセーラー服を着ていて、縄で後ろ手に縛られている。
    長い髪が顔にかかっていて、わずかに見える口元には赤い血が流れていた。

    瀬戸は黙って歩きだした。
    典子を左腕にしがみつかせたまま足早に進む。ぐんぐん進む。
    ぐんぐん進んで、正面の壁に衝突した。
    「瀬戸くんっ・・」
    典子の声が遠のいた。

    鼻がむずむずした。
    目を開けると、典子と、女子高生ゾンビが二体、並んで自分を見下ろしていた。
    むずむずしたのは、ゾンビの前髪が自分の鼻の下に触れているせいだった。
    う!!
    瀬戸は床に倒れたままで後ずさりする。
    「え、瀬戸さん?」右側のゾンビが小さな声で言った。江口真由の声だった。
    「ぷ、・・ぷぷっ」左側のゾンビがこらえきれずに笑い出した。凪元有咲の声だった。
    二体のゾンビは、後ろ手に縛られたまま、その場にしゃがみ込んで笑い出した。
    有咲がバランスを崩して後ろに転がり、そのまま起き上がれずに足を突き上げてバタバタした。
    暗闇の中に白いパンツがくっきり見えた。
    「やぁ~んっ。もぉ、瀬戸さんのえっちぃ」
    何で自分が叱られるのだ。

    瀬戸は憮然とした顔で立ち上がった。
    「うっかりぶつかりました。・・もう、大丈夫です」
    典子の手を取って通路を先に進んだ。

    角を曲がると、右側にスポットライトが点き、両手を広げて十字架に掛けられた魔女が浮かび上がった。
    と、ぎぃ~っという音がして、十字架がこちらに倒れ掛かってきた。
    魔女が磔になったまま迫ってくる。その目がくわっと開いて瀬戸をにらんだ。
    心臓が止まるかと思った。

    慌てて後ろに下がると、今度は左側が明るくなった。
    そこにはギロチン台があって、ぼろぼろのメイド服を着た少女が首をはめ込まれてもがいていた。
    少女が首を回して瀬戸を見た。
    「助けて!!」
    少女が叫んだそのとき。
    がっしゃん!!
    大きな音がしてギロチンの刃が落ち、少女の首が飛んだ。

    灯りが消えて、周囲は再び暗くなった。
    目まいがしそうだった。
    膝に両手を当てて、倒れないように踏ん張る。
    「大丈夫? 瀬戸くん」典子が小声で聞いた。
    「あ、大丈夫、です」
    本当は、ぜんぜん大丈夫ではないのだが。

    前の壁に直径50センチほどの丸い穴が開いていて、矢印がその穴を示していた。
    穴の反対側が薄明るく見えた。
    どうやら、この中をトンネルのように抜けるらしい。
    「こ、ここを通るんですよ」
    手をついて穴に入った。
    狭いトンネルの中はつるつるして滑らかだった。
    向こう側までは1.5メートルほどだろうか。
    ・・案外、長いな。
    そう思った瞬間、目の前が明るくなり、下についた両手の先、ほんの2~30センチの至近距離にゾンビ女子高生が出現して歯をむいた。
    そこは透明なアクリルパイプの中だったのである。
    パイプは外から銀のスプレーを吹いてハーフミラー状にし、その直下にゾンビの入った棺桶を置いたのだ。
    棺桶の中の照明を点けると、仰向けになったゾンビの姿が四つんばいになった客の真下に浮かび上がる仕掛けである。
    ゾンビ役は富沢ほのかだった。ほのかは観客を驚かせるのが楽しくて仕方ないという顔で笑っていた。

    「わ」
    瀬戸は声を出して頭を上げ、トンネルの天井に後頭部を打った。
    痛、た、た、た。
    頭を手で押さえながら匍匐(ほふく)前進し、反対側に出て床に座り込んだ。
    はぁ、はぁ。
    息が苦しい。

    「瀬戸くん」
    後から這って出てきた典子が聞いた。
    「ひょっとして、瀬戸くん、お化け屋敷が怖いんじゃ」
    「いえ、そんなことありませんっ。・・ひぇ、」
    典子の肩越しにそれを見て、瀬戸は再び悲鳴を上げた。
    そこには、だらりと吊られた少女が揺れていた。
    青白い顔。後ろ手に縛られた腕も、長いスカートから垂れた素足も青白い。
    ぎぃ、ぎぃ。
    これは、首吊の縄が軋む音?
    「・・あ、・・あぁ」
    とても色っぽい喘ぎ声だった。
    しかしこの状況で瀬戸には、処刑された少女の断末魔の声に聞こえるのであった。

    「瀬戸くん、立って」
    瀬戸は典子に手を引かれて、吊られた少女の脇をへっぴり腰で通り抜けた。
    「す、すみません」
    「頑張って。もうすぐ出口だから」
    情けない。
    早く出口に着いて欲しかった。

    角を回ると、今度は椅子に座って縛られた女性がいた。
    大きく背中が露出した、豪華なドレスを着ていた。
    高手小手で縛られた手首の位置は高く、両足も爪先まで固く縛られ、さらに口元を猿轡で覆われている。
    「んっ、・・んんん!!」
    女性は眉の間にしわを寄せて、ぎしぎしと全身でもがいていた。
    「すごい、これ・・」
    典子がとつぶやく。
    確かにすごかった。他の緊縛とは違う厳しさである。
    本当に高校生が縛ったの?
    驚く典子の横で、瀬戸はぜんぜん違うことを考えていた。
    ・・よかった。この人はあんまり怖くない。
    もし、瀬戸が落ち着いて見ていれば気付いたはずである。
    ぎちぎちに縛られているこの女性は、今までの女子生徒とは違う大人で、全員集合の緊縛練習のときには、いなかった女性だということに。

    「あった!」
    典子がテーブルの上に置かれたカードを見つけて取った。
    その奥に進んで暗幕をくぐると、急に明るくなって教室から廊下に出た。
    あ、終わった。
    「お帰りなさ~いっ。・・怖かったですか?」
    瞳が走り寄ってきて聞いた。
    典子がにやにや笑いながら瀬戸の顔を見る。
    瀬戸はむすっと前を見たまま何も言わない。
    「あれ? どうしましたか?」瞳が聞いた。
    「うふふ。瀬戸くんの名誉のために内緒」典子が言った。

    そのとき、教室の中から大きな声が聞こえた。
    「うんぎゃぁ~!!」
    え? 何!?
    廊下にいた高校生達が一斉に教室の方を見た。
    「やだ、やらぁ!! ・・きゃあっ、ひぎゃぁ~!!!」
    ただの悲鳴とは思えない、異様な叫び声である。
    ・・どうした?
    曽爾と何人かの生徒が心配して中に入っていった。

    「えっと、あれ、洋子さんよね」典子が小さな声で言った。
    「の、ようですね」瀬戸も言った。
    「先に行こうか」
    「行きましょう」
    「あたしも、行きます」瞳が同意した。

    アキラ、許して!
    黒川さん、スミマセン!
    章さん、ごめんなさい!
    三人は、一人で洋子の世話をしているはずの章に心の中で謝って、その場から逃げるように去っていくのであった。

    10.智佐子撹乱
    お化け屋敷で最後に登場するキャスト、ミカエル姫。
    そのミカエル姫役の智佐子は、がんじがらめに縛られていた。
    背中で捻り上げられた腕、きっちり合わせて固縛された足。口腔内いっぱいに押し込められた詰め布と口全体を覆う猿轡。
    このたまらない屈辱感と無力感。
    確かに緊縛については認めた。
    でも、こんな思いをするとは考えてもいなかった。

    驚いたのは、平然と自分を縛った曽爾である。
    これほど厳しく縛られているのに、少しも痛くないのだ。
    痛くないのに、何の自由もないのだ。
    いつも落ち着いていて、真面目で、成績も優秀な、クラス委員長の曽爾くん。
    なぜ、こんなことができるのだろう。

    不思議なことはもう一つあった。
    お化け屋敷では、自分だけでなく他に女子生徒が何人も縛られたり、十字架に架けられたりしていた。
    副委員長の渡辺さんなんて、縄で縛られて、その上吊られていた。
    なのに、どの子も、そんな扱いを受けて当たり前と思っているようだった。
    辛くないのだろうか。悔しくないのだろうか。
    それどころか、女の子達は緊縛されることを喜んでいるようにすら見えたのである。

    休憩時間になると、曽爾が来て智佐子の縄を解いてくれた。
    曽爾は痛いところがないか気を遣い、トイレや食事、飲み物などの世話をしてくれた。
    他の男子生徒も、同じようにそれぞれ担当の女子生徒の縄を解いていた。
    違うのは、休憩の後で女子生徒は交代して別の女子生徒が縛られるのに対し、智佐子に限っては次に縛られるのはやはり智佐子であることだった。
    なぜ自分だけ、こんな目にあうんだろうか。
    理不尽だったけれど、自分は担任だからと納得してそれを受け入れた。

    こうして智佐子は、二日にわたる文化祭の間じゅう縛られて過ごすことになった。
    「もがいて下さい。できるだけ激しく」
    曽爾に言われて、智佐子は観客が前を通る度にもがいて、無力な囚われのお姫様を演じた。
    いくらもがいて助けを求めても、それで誰かが助けてくれる訳ではない。
    観客はもがき続ける自分を見て驚いたり喜んだりするだけだ。

    「これ、篠田先生や!!」
    他のクラスの生徒達が来て自分を指差している。
    もう何人の生徒に知られただろうか。
    一度誰かに見られると、すぐに別の誰に伝わって見に来るので、もう全校じゅうに自分のことが知れ渡ったかもしれない。
    ついには、校長と教頭までやって来て「大したものですなあ、篠田先生」と言われたりもした。
    最初の頃は恥ずかしさと惨めさに耐えかねたけれど、今はずいぶん慣れてきた気がする。

    前にクラスで多数決をしたとき、女だけのお化けは客寄せ狙いが過ぎると生徒に言った。
    今、自分は客寄せになっている。
    まさに女だけにできる客寄せだと思った。
    こんな屈辱的な扱いも、女だから受けるのだろうか。
    惨めな思いも、女だから感じるのだろうか。
    ・・こんなにぞくぞくするのも、私が女だからだろうか?

    いつか、惨めな気持ちでいることに慣れてくる。
    下げずまれ、好奇の眼で見られることが当たり前になる。
    心が麻痺しているのではない。ただ、その状態を受け入れただけと思った。
    「・・いい顔になりましたね」
    曽爾が言った。
    え?
    私、何をしたっけ。
    ただ、お客の前で、惨めな姿を晒してもがいているだけなのに。
    ・・ぞく、ぞく、ぞく。

    ああ、この気持ち。・・被虐感。
    私は、被虐感に浸りながら興奮している。とても性的な興奮。
    智佐子は自分の性癖を認識した。
    もしかして女の子達も、被虐感を感じて喜んでいるのかしら。

    智佐子は、休憩時間になっても、特に必要がない限り縄を解かれることを求めなくなった。
    「ありがとう。でもこのままでいい」
    そう答えると、曽爾は目を妖しく光らせて、自分を緊縛したままで放置してくれた。
    他の女生徒がみんな自由を与えられる中で、自分だけが惨めな奴隷でいる。
    そう考えるだけで、興奮が増すのだった。
    もし曽爾くんがいなかったら、私はこの気持ちを知らないままだったのかもしれない。

    11.後夜祭
    グランドに集められた、展示の資材や看板類に火が点けられた。
    明るく燃える炎の回りにフォークダンスの輪ができる。
    文化祭の締めくくり、洛上高伝統の後夜祭である。

    津田が真由の手を取った。
    真由が笑って津田に応え、腰に回された手をぴしゃりと叩く。
    あほ! 他の子もいるのに、何するのっ。
    その後ろでは、志賀と聡美が並んで踊っていた。
    さりげなく志賀が聡美に身を寄せ、二人はパートナーを交代するまで密着して踊った。
    新井も、ほのかも、有咲も瞳も、フォークダンスの輪の中で仲良くステップを踏んでいる。

    3年4組のお化け屋敷は校内トップの入場者数を達成して大成功だった。
    女子生徒の緊縛という過激な展示を行ったが、一人ひとりはごく普通の高校生である。
    みんな、自分の役目を精一杯頑張った。
    お互いに信頼できる仲間だと実感していた。
    クラスの結束は以前とは比べものにならないくらいに高まっていた。

    ・・

    智佐子は目を覚ました。
    まだ緊縛されているような気がした。
    見世物にされた、囚われのお姫様。

    「先生、起きましたか」
    近くに座っていた生徒から声をかけられた。
    「曽爾くん?」
    「よくお休みだったので僕がここに運んできました」、

    智佐子は身を起こした。
    そこは司書室で、智佐子はソファに寝かされていたのだった。
    身体にかかっていた毛布が落ちる。
    自分の肩がむき出しになっているのに気付き、ミカエル姫の衣装を着たままだと知った。
    暗い司書室には他に誰もいなかった。

    「実はお詫びすることがあります」
    曽爾が言った。
    「僕は先生を縛りたくて緊縛担当に立候補しました」
    「え?」
    「先生も出演するって決まってから、先生を一番厳しく縛ろうってキャラデザの富沢さんに提案したのも僕です。・・僕は、」
    曽爾は大きく息を継いだ。
    「僕は、先生を縛れたら、どんなに素敵かとずっと思ってました」
    !!
    智佐子は無意識に毛布で胸元を隠した。
    この子、普通じゃない。普通じゃない、けど・・。
    「こんなことをして、本当に申し訳ないと思ってます。でも、先生ご自身がそれを悦んでくれた。惨めさを味わう中で、嬉しいと表現して下さった」
    「それが分かったの?」
    「はい。先生を見ていて理解しました。苦しんでいる先生はとても綺麗でした」

    あぁ、この子は。いいえ、この男性(ひと)は。

    「僕は先生が来られてから、ずっと先生が好きでした。・・今度のことで、もっと好きになりました」
    曽爾が話を続ける。
    「先生の生徒でいる間は無理ですが、来年僕が大学に行ったらお付き合いして欲しいと思っています。その、僕のことが、嫌い、でなければですが」
    「あなたには、私が普通じゃないって分かったはずよ。こんな女を好きにならなくても、他にいい子はたくさんいるのに」
    「いいえ、先生は変じゃありません。4組のみんなと同じです。江口さんは津田に縛られて喜んでいるし、渡辺さんもドMです。凪元さんも、富沢さんも、他の女子もみんな縛られるのが好きです。・・それで、僕も先生の緊縛を見て興奮する男です。だから」
    喋っていた曽爾が急に黙った。
    智佐子が曽爾の口に人差し指を当てたのである。
    「ありがとう、もう十分よ」
    「・・」
    「私もあなたのことが好きです。生徒、ではなく男性として」
    「先生!」
    「慌てないで。今は好きだけど来年まで好きかどうかわからないわ。だから、あなたが大学生になったとき、堂々と交際を申し込みに来てくれるかな」
    「はいっ」
    曽爾はぺこりと頭を下げた。

    「お願いついでに、もう一つ、お願いがあります」曽爾が頭をかきながら言った。
    「何?」
    「今、ここで、あなたを抱きしめてもいいですか」
    智佐子は笑った。
    「曽爾くん、本当に真面目なのね。・・そういうことは、黙ってするものよ」

    曽爾は両手を智佐子の背中に回して抱いた。
    大きく露出した智佐子の背中はすべすべして綺麗だった。
    智佐子も曽爾の背に手をかけて応える。

    フォークダンスの音楽がBGMのように聞こえた。
    グランドで燃える炎が4階の司書室の天井を照らして揺れている。

    ・・あぁ、縄の痕。
    智佐子は自分の手首と二の腕に残る痕を見て思った。
    それは、素肌に赤く、残酷に刻まれた緊縛の残滓だった。
    でもこれは私が彼に縛られた証。
    ふと、曽爾が自分を見下ろしているのに気がついた。
    智佐子は目を閉じた。
    二人はゆっくり顔を近づけて、キスをした。

    12.みたび、KS事務所
    文化祭が終わった次の週末。
    有咲と瞳が賞状を持ってきて、洋子に渡した。
    「『どえら~く大声だったで賞』? 何よそれ」
    「洋子さんの悲鳴があんまりすごかったから、贈呈することになったんです」
    「失礼しちゃうわねぇ。・・あんたら、そこで何笑ってるのっ」
    横で典子と瀬戸がくすくす笑っていた。
    典子の隣には章もいたが、章は笑っていない。あまり楽しくない記憶があるらしい。
    「ま、くれるモンはもらわないと悪いわね」
    洋子も笑って賞状を受け取った。

    「・・それから、クラスの曽爾くんに頼まれたんですけど」
    有咲と瞳が話を続けた
    「高校を卒業したら、改めて緊縛を習いたいって」
    「曽爾って、たった一日で縛れるようになったクラス委員だね」章が思い出したように言った。
    「そうですー。章さん、よく覚えてましたねー」
    「珍しい苗字だからね。・・まだ習いたいって、プロの縄師にでもなるつもりかな」
    「まさかぁ。曽爾くんって、国立大学志望ですよー」
    「へぇ、すごい」
    「わかった、きっと縛りたい彼女がいるのね」典子が楽しそうに言う。
    えー? 曽爾くんに彼女なんていたやろか?
    瞳と有咲は顔を見合わせて不思議がった。

    「そうね」洋子がぽんと手を打った。
    「その男の子の教育、瀬戸くんにやってもらおうかしら」
    え? 自分が?
    「あの、この間は、自分は人に教えるには一人前やないって・・」瀬戸は恐る恐る洋子に聞く。
    「うふふ」
    洋子は笑って典子と章を見た。
    典子と章も笑いながら頷く。
    「あのときの緊縛、すごく良かったわよ」
    「?」
    「ゾンビちゃん達の縄はぜんぜん緩んでなかったし、首吊りの女の子はハーネスの上から自然に縛れてたわ。最後のお姫様なんて、あれだけもがいてどこも鬱血してないし、すごく迫力があったわよ」
    洋子さん、あんな大きな悲鳴を上げながら、チェックしてたんですか?
    「一番よかったのはね、女の子がどの子も気持ちよさそうだったこと。ものすごく思いやって縛ったって分かったわ。・・あんた達もそう思わなかった?」
    洋子はそう言って、有咲と瞳に聞いた。
    「はいっ、ウチも気持ちよかったです」
    「男の子達、みんなすごく丁寧に縛ってたよね」「そうそう」
    「縛られて嫌だった女の子は一人もいないと思います」「別の意味で狂いそうになった子はいるけどね」「有咲、ここでそれ言っちゃダメ」「きゃはは」
    「ホントに瀬戸さんが教えてくれたおかげです」「うん! 瀬戸さん、すごい!!」

    そうか。みんな褒めてくれてるのか。
    自分が教えて、よかったのか。
    瀬戸はちょっと晴れがましい気分になった。

    「分かりました。その生徒、自分が教えます」
    「任せるわ! でもコーチ代取らないのなら、瀬戸くんも無給よ」
    瀬戸は苦笑する。
    もう無給でも何でもよかった。

    「ところであんた達、」典子が有咲と瞳に向って言った。
    「国立志望の曽爾くんはすごいけど、あんた達の進路はどうするの? そろそろはっきりしなさい」
    「あ、やば」「とばっちりやぁ!」
    「フリーターになります、なんて言ったら許さないわよ。キョートサプライズはぶらぶら遊んでる子に用はないからね!」
    「はいっ」「頑張ります!」
    「あ、ウチ、用事思い出した!」「あたしも!」
    二人は急にばたばたと自分の荷物を持つと、部屋を飛び出して行った。
    「失礼しますー!」「サヨナラー!!」

    残された四人はしばらく唖然としてから、ぷっと吹き出す。
    「逃げたね」「もう、あの子達ったら」
    「いいじゃないの、自分の道は自分で見つけるモノよ」
    「あはは」「ほほほ」

    「・・よぉーし!」
    突然、章が立ち上がって叫んだ。
    「瀬戸くん、久しぶりに稽古するか」
    「は? 何の稽古」
    「緊縛に決まってるだろう。君にも弟子ができるんだから、もっと腕を上げないと」
    あの、自分はもう一人前なんじゃ。
    「そうね! 瀬戸くんはもっと頑張らないとダメね」
    えぇ? 洋子さんまで、そんな。
    「よし、練習場へ行こう。典子、モデル頼む」
    「了解! ・・瀬戸くん、うちのダンナ、今日は燃えてるみたいやから、そのつもりでね」
    「何を言うか。俺は後輩のために稽古をつけてやるだけだぞ。典子こそ、覚悟しろよ」
    「はい、覚悟しますっ。アキラ以外に縛ってもらうの、久しぶりぃ~♥」
    「喜んでるだろ?」
    「そんなことないわよ~。・・行きましょ、瀬戸くん」
    「頑張ってねー」

    手を振る洋子を残し、瀬戸はわけのわからないまま典子と章に引っ張られて行くのであった。



    ~登場人物紹介~
    ★洛上高校3年4組メンバー
    凪元有咲(なぎもとありさ): 17才。KSのEA。ゾンビ役。
    丸尾瞳: 18才。KSのEA。衣装担当。
    津田昂輝: 17才。男子陸上部。緊縛担当。
    江口真由: 17才。女子陸上部。津田と相愛。ゾンビ役。
    曽爾則之(そにのりゆき): 18才。クラス委員長。緊縛担当。
    渡辺聡美: 17才。クラス副委員長。首吊娘役。
    富沢ほのか: 18才:お化けのキャラクタデザイン担当。トンネルゾンビ役。
    新井大輔、志賀雄二: 緊縛担当。
    篠田智佐子: 23才。クラス担任。教師になって2年目。ミカエル姫役。

    ★KSメンバー
    瀬戸宗弘: 21才。若手緊縛士。有咲と瞳に頼まれて3年4組の緊縛をコーチする。
    黒川典子: 29才。KS企画担当マネージャー。
    黒川章: 30才。KS技術担当マネージャー。ベテラン緊縛士で典子の夫。
    島洋子: KS代表。


    3年4組緊縛お化け屋敷。
    このタイトルだけで文化祭だと分かった皆様は『いつか感じたキモチ』のベテラン読者様です。
    今年もシーズン恒例、学園祭文化祭企画をやります。
    (これで5回目。我ながらよく続くものです)

    今回はKSの女子高生メンバーが通う、ごく普通の公立共学校の文化祭。そのクラス展示のお化け屋敷が舞台です。
    このお化け屋敷に登場するのは、作り物ではなく、すべて女子生徒が生身で演じる女のお化けです。
    その上、どのお化けもリアルに緊縛/拘束されており、お化け役の女子は緊縛担当の男子に縛ってもらってから、がんばってお客を驚かせるのです。
    当然のことながら、すべての女性はMっ気十分。(私の小説ですから^^)
    縛られることに羞恥は感じても、拒否することはありません。
    それどころか興味深々、ノリノリで縛られてくれる女の子がほとんどなのです。

    こんな夢のような設定ww の下、生まれて初めての緊縛にドキドキする女子生徒、初々しいカップル、担任女教師など、好みのエピソードを盛り込みました。
    盛り込み過ぎて、全体のボリュームがかなり大きくなりました。
    本当はお化けの設定を含めまだまだネタがあるのですが、一度に更新できるボリュームはこれで限界。
    多少の燃え(萌え)残りは気にしないで、お楽しみいただければ幸いです。

    ここで、いつものご注意を。
    3年4組の曽爾くん達はあっという間に縛れるようになってしまいましたが、それはお話の中のことです。
    現実の世界は甘くありません。
    緊縛初心者の方は、決して焦ることなく、パートナーの安全を最優先にして、ゆっくり、確実に、緊縛技術を勉強して下さい。

    さて、今回一番楽しかったのはお化けの設定を考えることでした。
    本編内では書ききれなかった設定もあるので、以下に改めて説明します。
    できれば富沢ほのかちゃんが描いたキャラデザ風に絵を描いて紹介したいところですが、そんな余力はないで文章だけでご容赦;

    ・ゾンビJK
    セーラー服を着た女子高生ゾンビ。後ろ手に緊縛されている。
    お化け屋敷の入り口付近に二体いて、入場者を追いかけてくる。
    ときどき調子に乗りすぎて転ぶことがあり、両手が使えないので起き上がるのに苦労する。
    お化け屋敷内は写真撮影禁止だが、ゾンビJKだけはうまく頼めば一緒に記念写真を取らせてくれる。
    (そんな設定はなかったけれど、ゾンビ役の女生徒が勝手に始め、裏メニュー?として定着した)

    ・磔魔女
    十字架に磔になった魔女。
    十字架の柱は足元にヒンジ(蝶番)がついていて、手前に約45度くらいの角度まで傾けることができる。
    入場者が近づくと操演担当の男子が、磔の魔女ごと十字架を倒して驚かせる。
    なお、富沢ほのかの初稿設定では、十字架ではなく一本柱で上下逆に縛りつけられた美女の死体だった。
    これでは死体役の女子が耐えられないと議論になり、自分がやってもいいと言う女生徒もいたものの、「何かったら責任取れない」という委員長の判断で十字架の魔女に変更された。

    ・ギロチンメイド
    ギロチン台に首を固定されたメイド。
    メイドのコスチュームは、ロングスカート・長袖の清楚なタイプをぼろぼろに破いたもの。
    ギロチン台には、刃が落ちるとメイドの首が隠れるギミックがついている。
    操演担当者は、メイドが助けを求めるタイミングに合わせてギロチンの刃を落とし、その後ダミーの首を床に転がす。
    膝をつき首を突き出した姿勢で展示時間(50分)を過ごすので、ミカエル姫を除く一般女生徒の役では最も過酷。

    ・トンネルゾンビ
    アクリルパイプのトンネルの中に出現する女子高生ゾンビ。
    操演担当者がライトを点灯させると、本編で解説したようにハーフミラーの原理でゾンビの姿が浮かび上がる。
    アクリルパイプの下にセットする棺桶は、幅40センチ、高さ25センチほどで、側面の蓋を開けてゾンビを押し込む構造になっている。
    ゾンビ役は、緊縛などはないものの、ほとんど身動できず暗闇の中で過ごすことになる。
    配役を決めるにあたり、実際に棺桶に閉じ込められて平気だった女子生徒が選ばれた。

    ・首吊娘
    門形に組んだ首吊台から吊られた少女。
    教室天井高さの制限から、床から足を50センチほど浮かせた高さで吊られる。首吊の輪はダミー。
    人間くす玉用のハーネスとワイヤを使い、その上から縄で緊縛される。
    ハーネスが見えないように、ゆったりとしたロングドレスを着用している。
    通路の中央に吊るされ、さらに操演担当者が振り子のように揺らせるので、入場者はその脇をすり抜けて通らなければならない。

    ・ミカエル姫
    お化けではなく、学園のお姫様が囚われている設定。
    出口の手前で椅子に着座で緊縛されている。
    緊縛担当者の趣味で、最も厳しい縄掛けを全身に施されてもがいている。
    ミカエル姫役は、生徒ではなく担任の女性教師が交代要員なしで務めた。

    これ以外にボツになったネタもありまして、もう使わないだろうから羅列すると、
    ・心臓打ち抜きバンパイヤ(木の杭で胸を打たれ、そのまま壁に磔になった女吸血鬼)
    ・水中腐乱女子高生(女子高生の腐乱死体が水槽から這い出てきて、観客を追いかける)
    ・生き埋め女子高生(生き埋めになった女子高生が泥の中から這い出てきて、以下同じ)
    ・さ迷う欠損美少女(両方の腕と片足の膝から先がない少女がうろうろしている)
    ・さ迷う首なし美女(首のない美女がうろうろしている。タネ? さぁ?)
    ・獄門台(獄門台に並ぶ女の子の生首。観客は台の下をくぐり、首にも触れる。タネ? さぁ?)
    などがありました。

    本当にこういうアイディアは底が尽きません。
    全部やるには文化祭の規模では無理で、それこそ映画やテレビ、テーマパークのアトラクションなどでないとできないでしょうね。
    でもそういった環境では、女性達の「楽しんでやってる」感が薄れ「仕事でやってる」感になってしまうので、難しいところです。
    もともと、キョートサプライズを書いたのは、プロレベルの過酷な拘束/緊縛を普通の女性達が明るく楽しくやっている状況を描きたかった、が理由の一つにあるんですね。

    ・・後書きだけでもずいぶん長くなってしまいました。
    ちまちまと楽しみ過ぎたために、今回も更新が遅くなったことをお詫びします。
    次回も遅くなると思いますww。
    どうぞ気長にお待ち下さい。
    ありがとうございました。




    関連記事
    スポンサーサイト
    [PR]

    [PR]

    コメントの投稿

    非公開コメント

    No title

    緊縛でお化け屋敷ですか。発想が斜め過ぎて面白いですね。たしかに、縛られているゾンビがゆっくりこっちに近づいたら、想像以上に怖いかも知れませんね(笑)文化祭だからKS得意の緊縛や、イリュージョンを舞台で演じる展開だと思いました。

    Re: No title

    ◎とうめいさん
    コメントありがとうございました。
    洋風のお化けなので緊縛が意外に見えたのかもしれません。
    日本風の幽霊なら、責め殺された娘とか架刑のお姫様とかそれっぽい要素が多いですね。
    四谷怪談の戸板返しなんて、もし実演すればSMそのものですし。
    怖いかどうかは、正直、追求しませんでした。怖がる人は(瀬戸くんみたいに)何見ても怖がってくれる、ということでww。

    No title

    まさに緊縛ネタのオンパレードというところでしょうか。
    イリュージョンのネタと発想が同じですね。
    見せ方と、そこへの拘束の導入。
    その拘束時間や状況と、被拘束者の反応。
    この学園通いたいんですけど。
    これ、学祭終了後にクラス女子はみんなメロメロになっててヘンな日常になっちゃわないですかね。

    Re: No title

    ◎更科さん
    さすがに見る目が違いますね。
    お化け屋敷の緊縛は、緊縛そのものが目的ではなく、入場者を楽しませる演出手段としての扱いです。
    演出だからといって(テレビドラマなどでよく見る)手抜きをしないだけです。
    確かにイリュージョンと変わりません。
    実際にギロチンの女の子はイリュージョン的ギミックで首をはねられますし。

    女の子達が拘束される役どころを受け入れて、男の子と一緒に明るく頑張っている。
    もちろん女の子達にも個性があって、けろっとしている子もいれば、身も心も感じてしまう子もいる。
    互いの様子を見ながら、心の中で、あの子あんなにMだったのか、とか思ったりする。
    そんな状況に何かしら萌えを感じていただければ、嬉しく思います。

    学祭の後、女の子達がメロメロになった日常ですか。
    休み時間に女の子同士で手首を縛り合ったり、とろんと物欲しそうに男子を見たり。
    うわぁ、私もその学校に通いたいです。

    プロフィール

    82475

    Author:82475
    女性の拘束に関わる小説/SSと
    落書きを書いてます。

    更新案内と目次


    自己紹介
    メール送信/コメント投稿について

    カテゴリ
    最新記事
    最新コメント
    ブログ内記事検索
    (コメントの検索はできないみたいです)
    リンク

    ◎pixiv

    pixiv 82475のpixivページ
    R-18/R-18G 閲覧設定していないと見れません。

    ◎検索サイト

    駄文同盟.com
    駄文同盟.com


    ◎このブログへのリンクについて

    リンク、ブックマークは
     http://82475.blog15.fc2.com/
    へお願いします。
    「いつか感じたキモチ」 バナー
    メールフォーム

    名前:
    メールアドレス:
    タイトル:
    本文:

    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。