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    Sisters 第9話・静夜思 ~深く、濃密に~

    マンションの玄関を入ったところで、高院絢(こういんあや)が振り返って聞いた。
    「何してるの?」
    ドアの外で姉の遥(はるか)がもじもじしている。
    「いや、なんていうか、ちょっと入りにくいかなぁ、って」
    「ハル姉の家なんだから、堂々と入ってきてよ」
    「じゃあ、お邪魔しまぁす」
    遥はそう言って靴を脱ぐと、泥棒のように爪先立ちで中に入ってきた。
    「・・変わってないんだ、家の中」
    リビングからダイニングを抜けてきょろきょろする。
    「父様と母様、今夜は帰ってこないから、心配しないで」
    「うん」
    「どっちにする? あたしの部屋? それともハル姉の部屋?」
    「そうねぇ」
    縄師を目指した遥がこの家を飛び出したのは2年と半年前。高校卒業と同時だった。
    遥はそれ以来初めて帰宅してきたのである。
    それは、絢との約束を果たすためだった。
    約束とは、遥が縄師になったら、絢のために二人きりの緊縛の時間を持つこと。
    「ここにしよっか」
    遥は応接間のドアを開けて妹に言った。
    ・・
    絢はソファに座り、緊張した面持ちで遥を見上げる。
    普段着のブラウスとミニスカート姿。揃えた膝の上で両手を合わせていた。
    「そんなに固くならないでいいから」
    「だって」
    「そうだ。これを父様と母様に」
    「?」
    遥は大きな封筒を出した。
    「私が持ってきたって言ったら驚くだろうから、郵便で届いたとか言ってくれる」
    「うん」
    封筒の中身は色紙だった。
    そこには、遥らしい丁寧な文字で漢文が記されていた。
    「ハル姉が書いたの? まだ習字やってたんだね」
    「書道って言ってよ。これは李白の漢詩だよ」
    「リハク?」
    絢は色紙をながめる。ぜんぜん読めなかった。
    「リンゼンカンゲッコウ?」
    「しょうぜんにげっこうをみる、って読むの」
    「あたし、古典ぜんぜん駄目なんだもん」
    「大丈夫。父様と母様ならきっと分かるから」
    「なら、渡すだけだよ」
    「いいよ。・・それから、これだったら興味あるでしょ?」
    「うわぁ♥」
    次に遥が鞄から取り出したのは、縄束だった。
    訪問緊縛の仕事で使っている麻縄である。それはよく使い込まれていて、柔らかそうだった。
    「綺麗な縄」
    「私の一番の財産だよ。いろんな女の人の汗や油をいっぱい吸い込んだ縄」
    「え」
    姉の言い方に絢の胸がどきんと鳴った。
    「あ、心配しなくて大丈夫だよ。ちゃんと汚れは落としてるし、密蝋クリームを塗りこんで綺麗にしてるから」
    そういう意味で驚いたんじゃないのにな。ハル姉、早とちりは変わってない。
    「どうしたの? 何笑ってるのよ」
    「何でもないよ。・・ね、これで何人くらい縛ったの?」
    「うーん、そうねぇ。延べで、120~30人くらいかな」
    「120人!?」
    ハル姉はそんなにたくさんの女性を縛ったのか。
    絢は縄に見入る。
    100人以上の女の肌に絡み付いて、自由を奪ってきた縄。
    そう思うと、ただの縄にものすごい妖力が秘められているような気がした。
    「ねぇ、ハル姉のお仕事、教えてよ」
    「私の仕事?」
    「うん。どこでどんな人を縛ってるの? ほら、この間は太ったおばさんを縛ってたじゃない」
    「ああ、あのご夫婦」
    それは、とあるマニア夫妻の家だった。
    夫から妻の緊縛を依頼されて訪問した遥と、被縛のアルバイトで訪れた絢が偶然出会ったのだった。
    2年ぶりの再会で絢はいきなり遥に縄を受けることになったのである。
    「私のお客様はね、夫婦のときもあるけど、一人暮らしの女性が多いの」
    「一人暮らし?」
    「そう。OLさんとか学生さん。・・パートナーがいない人、いても相手にその趣味がなくって縛ってもらえない人。一人でSMバーとかに行く勇気がない人」
    「へぇ、ハル姉にぴったりの仕事だね」
    「どうして?」
    「だって昔から言ってたじゃない。女性による女性のための仕事をしたいって」
    「うふふ。本当だ」
    「繁盛してる?」
    「まぁまぁね。でも毎月行って縛ってあげてる人もいるよ」
    「やっぱり。・・ねぇ、そういう人って、縛られたら綺麗? 色っぽい?」
    「うんっ、とっても」遥は力を込めて肯定する。
    「どの人もね、すごく可愛くて綺麗になるわ。目を閉じて感じるときの表情とか、とってもセクシーで、もう、こんな姿を私一人で見せてもらっていいのかって思うくらい」
    遥はそう言って笑った。絢も笑う。
    「その上、お金までもらってでしょ?」
    「そうそう!」
    「あはは」「うふふ」
    やがて遥は縄束を解き、応接セットのテーブルの上に並べた。
    「じゃ、今日は絢がお客様。代金はいただかないけどね」
    「うんっ」
    遥は絢の耳元に口を近づけて、ささやくように言った。
    「あーやを、綺麗に、セクシーに、してあげる」
    絢は顔を赤らめて、嬉しそうにうなずいた。
    ・・
    遥は絢に白布で目隠しをした。
    「あーや、目隠しされるの、好きだったよね」遥が楽しそうに言う。
    「いじわる」絢が答える。その声は決して目隠しを拒んでいなかった。
    「両手を前で揃えて」
    差し出された手首を合わせて縄で縛る。
    そしてソファに絢を仰向けに寝かせ、両手を頭の上に伸ばさせた。
    「腰、浮かして」
    「ん」
    スカートを脱がせた。
    続いてブラウスの胸元に遥の手がかかり、ボタンを上から順に外して行く。
    全部のボタンを外し終えると、ゆっくりと、じらすようにブラウスがはだけられた。
    「はぁ・・」
    目隠しをされているので姉のしていることは見えないけれど、それでも絢は自分がブラとショーツだけの下着姿にされたことは分かっていた。
    上に伸ばした手を無意識に動かそうとして「動いちゃ駄目」と怒られる。
    慌てて手を上げ直し、身を固くして姉の次の作業を待った。
    しばらく間が開いた。

    「・・絢、すっかり女の身体になったね」
    「やだ、あたしを見てるの?」
    「そうだよ。絢も知ってるでしょ? お姉ちゃん、美少女を観察するのが大好きだって」
    「あたし、美少女なんかじゃないよ」
    「何言ってるの。絢はときびりの美少女だよ」
    ぷち。
    「!」
    ブラのフロントホックが外された。
    「あーやのおっぱい♥」
    「やだ・・」
    絢は見られていることを意識した。
    「そんなとこ見ないでよぉ、お姉ちゃん」
    「こら、動くな!」
    「ひーん」
    乳首がつんと固くなるのが自分で感じられた。それはハル姉にもはっきり分かっているだろう。
    あぁ、何で。こんな。
    自分を見ているのは男性じゃない。女同士なのに。お姉ちゃんなのに。
    その乳首に突然柔らかいものが触れた。右側の乳首だった。
    「はぁん!」
    背中まで突き抜けるような衝撃に。絢は頭をのけ反らせる。
    「えへへ、あーやの乳首に初めてキス♥ しちゃった」
    胸が苦しい。下半身がじゅんっと音をたてたようだった。
    はぁ、はぁ。
    「次は」
    まさか。
    「はい、そのまさか、だよ」
    ショーツの左右に手がかかり、一気に引き下ろされた。
    「やあっ!!」
    「絢のすべてを見るからね」
    「やぁだぁ~っ」
    「毛深くなったんだね、中学の頃よりも」
    「イヤ! そんな・・」
    そんなふうに言わないで。
    言葉が続かなかった。
    絢は、何も言えずに、ただ姉に見られる場所を意識した。
    「あーやのあそこ、ピンク色に染まって綺麗」
    あ、あ・・。
    そこに遥の手がそっとかぶさるのが分かった。
    「中はもう濡れてるの?」
    あ、あ、あああ。
    何も抵抗できなかった。
    姉の手は、ただ、やさしくそこを押さえているだけだった。
    それでも絢は動けなかった。
    まだ手首を縛られただけなのに。目隠しをされただけなのに。どうして、こんな。
    も、もう、あたし。
    「お、お姉ちゃん、」
    「なあに?」
    「縛って。・・ぎゅっと、縛って」
    「え?」
    「い、いじわる、しないで。早く縛ってよぉっ」
    「うふふ」
    「!!」
    絢の唇に遥の唇が押しつけられた。その唇はしばらく離れなかった。
    思考が停止する。
    どれくらいの時間が過ぎたのかわからなかった。
    「この間のお返し」
    もう何も答えられなかった。
    身体の隅々までエクスタシーが満ちて、絢はもう、横たわっていることしかできなかった。
    両手の拘束が解かれた。
    「お望み通り、ぎゅうぎゅうに縛るね。あーやの綺麗で可愛い身体を」
    「あ・・」
    絢は小さな声を出すのが精一杯だった。
    ・・
    絢ちゃん

    高手小手に組まれた腕と胸の上下に縄が掛かっている。
    縄で絞られた乳房が盛り上がり、淡いピンクに染まる。
    別の縄が下腹部から股間に割り込んで、絢の下半身も包み込んだ。
    遥の縄は、とても優しくて、そして絶対に許してくれなかった。
    絢は目隠しで視界を奪われたまま、縄の刺激に悶え続けた。
    17才の少女のココロとカラダが、きゅんきゅんと音をたてた。
    ・・
    目を開けると、前に遥が座って微笑んでいた。
    お姉ちゃん?
    「気がついた? あーやのイッちゃった顔、可愛くて色っぽかったよ」
    「やだ・・、もう、」
    無意識に手を上げようとして、自分がまだ縛られたままであることに気づいた。
    「あーや、綺麗」
    遥が絢の頬を両手で押さえて、再びキスをした。
    「ん・・、」
    絢は目を閉じて受け入れた。
    ・・
    縄を解かれた絢は黙って遥に抱きつき、しばらく泣いた。
    やがて落ち着くと、服を着て、それからお茶を入れた。
    長い時間をかけて、二人はお喋りをした。
    別々に暮らした2年間の出来事を語り合った。
    互いの思いと、相手への気持ちを語り合った。
    ときどき絢が涙を流し、ときどき遥が涙を流した。
    遥が帰っていったのは、深夜、ほとんど日付が変わる頃だった。
    ・・
    ・・
    翌日、帰宅した両親に絢は色紙を渡した。
    「遥さんから!?」「あの子はどこで何をしてるんだ!?」驚いた母親と父親が聞く。
    「分からないわ。手紙も何も入ってなかったし、封筒には姉さまの名前しか書いてなかったもの」絢が答える。
    「これは、・・『静夜思』だな」父親が色紙を見ながら言った。
    セイヤシっていうの?
    絢が思っていると、父親が朗じた。

    静夜思

      牀前(しょうぜん)月光を看る
      疑うらくは是れ地上の霜かと  
      頭(こうべ)を挙げて山月を望み
      頭を低(た)れて故郷を思う

    しばらく誰も何も言わなかった。
    部屋の中の空気が少し澄んだような気がした。
    やがて、母親がハンカチを出して目の下にあてた。
    「本当に、あの子ったら、どこでお月様を見てるのかしらね」
    「もう2年半になるか。・・長い旅をしているようだな」
    父親もどこか感慨深げだった。
    「母さん、心配しなくていいよ。遥はこの家のことは忘れていない」
    「そうですね。・・きっと帰ってきますよね。こんなものを書いてよこすんですから」
    絢にはさっぱり分からなかった。
    いったい、父様と母様はこれを読んで何を思ったんだろう?
    ハル姉はこの漢詩で何を伝えたかったんだろう?
    まったく理解できなかったが、絢には両親が安心したらしいことだけは分かった。

    ハル姉、うまくいったよ。
    よく分からないけど、お姉ちゃんの気持ちはちゃんと伝わったみたいだよ。

    この日から、この色紙は高院家のリビングに永く飾られることになった。



    ~登場人物紹介~
    高院絢(こういんあや):17才。高校2年生。遥から初めて縄を受けたのは中学1年生。
    高院遥(こういんはるか):21才。絢の姉。高校を卒業したとき縄師の修行のため家を出た。

    姉妹が久しぶりに二人だけの時間を過ごすお話です。
    本格的に縛る前の前戯(?)で絢ちゃんをトロトロにしたテクニック、遥さんはいったいどこで身につけたんでしょうね^^。

    遥さんが色紙に書いた『静夜思』は李白の五言絶句の超名作です。
    詩文の意味はネットのあちこちに解説がありますので、興味のある方は検索して調べてみて下さい。
    実は私は、この天空から降り注ぐ月光のイメージに緊縛された少女を重ね合わせて、『静夜思』をモチーフにしたSSを書こうとしたことがあります。
    しかし、私の力量ではこの詩のスケール感に適うストーリーを完成させることができませんでした。
    ちょっともったいない気もしますが、独立したSSはあきらめて、本話で遥さんから両親へのメッセージに使うことにした次第です。

    イラストは初めての全裸の緊縛絵です。
    通常なら着衣緊縛しか描かないのですが、本話では普通の着衣のシーンはないので、思い切って描いてみました。
    結果は・・・、まあ笑って許して下さい。

    さて、絢ちゃんと遥さんの物語も佳境にさしかかってきました。
    Sisters はあと2回で最終話にしようと思います。
    最後までお楽しみいただければ幸いです。

    ありがとうございました。




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    良いですね

    雰囲気が良いです。
    姉妹愛の表現が絶妙に思えます。
    SMは心の描写が肝心ですね。勉強になります。
    姉妹がやがて同じ屋根の下で暮らせるようになるなかな?
    続きも気になります。

    Re: 良いですね

    ◎わーどなさん
    お褒めいただき恐縮です。
    心の描写と構えたつもりはなく、私の萌えのキモチのおもむくままに書いているだけなんですけどね。
    二人の今後についても気にしていただきありがとうございます。
    わずか9話ですけれど、姉妹のいろいろな姿を描いてきたので、作者としてもこの二人には思い入れがあります。
    それなりにハッピーエンドで終わることは、お約束しますヨ!
    プロフィール

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    Author:82475
    女性の拘束に関わる小説/SSと
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