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    アネモネ女学院高校文化祭マジック研究会公演記

    1.
    「えーっ、どうして講堂はダメなの?」 井沢月路(いざわつきじ)が聞いた。
    「もう空きがないそうです。中庭のテラスでやれって」 毛塚純(けづかじゅん)が答える。
    「弱小同好会の悲哀ですねー」 出水仁衣那(でみずにいな)が言った。

    三人はアネモネ女学院高校のマジック研究会のメンバーである。
    月路は3年生。後輩二人を引っ張る苦労性の研究会長。
    純は2年生。マジックの技術は一番の副会長。
    そして仁衣那は1年生。可愛いけれどどこか能天気な会計担当。

    わずか三人のマジック研究会は正式なクラブとは認められず、同好会の扱いであった。
    例年、文化祭では講堂でマジックの発表会をしているが、今年は講堂の出演希望が多いので、人数の少ないマジ研はサブステージの中庭に押し出されてしまったのである。

    「中庭って屋外よね。風吹くし、後ろからも見られるし」
    「マジックには向かないねぇ」
    「センパイ、持ちネタの種類も少ないですしねー」
    「アンタは何できるっていうのよっ、にんにん!」

    三人の背後に人影が現れた。
    「ふふふ、困ってるようね。マジ研の諸君!!」
    「!?」
    振り返ると、長い髪をポニーテールに括った美少女が腕組みをして立っていた。

    「そ、そこにいるのは、御手洗優莉(みたらいゆうり)生徒会会長!」
    「いや別に、フルネームに役職まで付けて紹介してくれなくてもいいんだけど」
    「どうして生徒会長がここに!?」
    「だって生徒会室の前で騒いでるだもん、あなたたち」
    「!!」
    そこは校舎の廊下で、目の前の部屋には『生徒会執行部』の看板がかかっているのであった。

    「聞いてたんなら助けてよ。何とか講堂で出れるようにならない?」 月路が優莉に聞く。
    「無理ね。講堂の出場枠はいっぱいよ。マジ研を入れたらどこかが溢れてモメるわ」
    「そんなぁ、お代官様~ぁ!」
    「あきらめて中庭で頑張んなさい。どうせならド派手にやったら? 文化祭は何やってもOKなんだしね」
    「ううっ~」
    その場に崩れ落ちて悲観にくれる月路の背中から優莉が抱きしめた。

    「応援してるわ。・・月ちゃんなら、きっとできる」
    「ああ、っ」
    月路がびくっと震えた。
    優莉が月路の耳にキスをしたのである。
    「・・いいなぁ」 仁衣那がぽつりと呟く。

    「では皆さん、ごきげんよう♥」
    優莉は妖しい微笑みを浮かべながら生徒会室に消えていった。

    「生徒会長さん、素敵ーっ。美人で頭もよくて、皆の憧れですよー」仁衣那が言った。
    「月さん、会長とどんな関係なの?」 純が聞いた。
    「はあ、はあ・・、何もないわ。去年まで同じクラスだっただけ」
    「それにしては親密というか、妙に生々しいモノを感じましたけど」
    「あいつは、誰に対してもああなのよ!」

    月路は壁に手をついて、よろよろと立ち上がった。

    「決めたっ。イリュージョンやる!」
    「イリュージョンですか!?」
    「思いきり目立って、生徒会長の鼻を明かしてやるわ」
    「でも、イリュージョンなんて、道具もないし、お金もないし」
    マジック雑誌などに載っているイリュージョン機材は何十万円もするのが普通なのだ。

    「自分で作るのよ!」「ええ~っ?」
    「どんなネタするんですか?」 仁衣那が聞いた。
    「それはこれから考えるわ、にんにん」
    「ならちょっとセクシーなの、やりませんか」「セクシー?」
    「はいっ。色っぽいコスチュームにして、脱衣系のイリュージョンなんてのもいいかも」仁衣那はそう言ってにたりと笑った。
    「脱衣? うふふ、やだぁ~」 純も笑った。
    「そうね。ウチの発表いつも真面目だし、ばーんとエロいの、やろうか」 月路も賛成した。

    それから三人は、自分たちでもできるセクシーなイリュージョンの相談をした。

    2.
    そして舞台はあっという間に文化祭。
    校舎と校舎に挟まれた中庭には小さな屋根のついたテラスがあって、少人数のイベントステージに割り当てられていた。
    今、そこでマジ研の発表が始まろうとしていた。
    講堂ほどではないにせよ、何十人かのお客が来てくれている。
    校外からのお客はわずかで、ほとんどがセーラー服の制服を着た女生徒たちだった。

    アシスタント役の仁衣那がテラスの中央に一本足の小さなテーブルと小箱を運んできて置いた。
    仁衣那も制服姿である。

    軽快な音楽な流れ始め、マジシャン役の純が登場した。
    フリルがいっぱいついた赤いワンピースのミニドレスを着用している。
    テーブルの小箱を取り上げ、その中から箱よりも大きなフラワーアートを取り出した。
    テラスをぐるぐる歩きながら、ピンクや黄色、水色のフラワーアートを次々出しては振り撒いた。
    地味なコンクリートのテラスが一気に華やいだ。

    続いて仁衣那が膨らませた風船を持ってきて純に渡した。
    直径10センチ、長さ1メートルほどの細長い風船である。
    純はそれをしばらく眺め、やがてその風船の先端を咥えた。
    口を大きく開けて、目を白黒させながら、自分で口の中にぐいぐい押し込む。
    ・・え~っ?
    皆が驚いてみている中、長さ1メートルほどの風船は割れることなく純の口の中に入ってしまった。
    口を開けて中に何も入っていないことを示す純。
    一斉に起こる拍手。

    仁衣那が再び同じ風船を二本持ってきた。
    純はもう無理というように首を振るが、仁衣那は強引に押し付けてしまう。
    すると純は引き返そうとした仁衣那を後ろから羽交い絞めにした。
    暴れる仁衣那を押さえつけて、その口に風船を押し込み始めた。

    仁衣那は自分の腰をぱんぱん叩きながら首を振って抵抗するが逃れられない。
    うぐうぐと風船を呑まされている
    純が呑んだのと同じく、細長い風船が割れることも萎むこともなく、仁衣那の口の中に入ってしまった。

    一本目を全部呑ませると、純は二本目も仁衣那の口に押し込んだ。
    仁衣那はますます激しく自分の腰を叩く。
    と、そのスカートの前が妊婦のように膨らみ始めた。
    何のことはない。仁衣那が自分で空気ポンプを叩いて膨らませているのだ。
    黄色いチューブがちらりと見えたりしてバレバレだが、それでも観客は笑っている。

    二本目の風船を全部食べさせる頃、仁衣那の大きく膨れたお腹が 「ぱん!」 という音とともに割れた。
    仁衣那は仰向けに倒れてぴくぴく動いている。
    その隣でお辞儀をする純。
    観客は爆笑して大拍手である。

    3.
    ・・マジ研?
    ・・面白いんだって!!
    中庭に集まる女生徒の数が増えていた。

    音楽が重々しいものに変わり、ステージに月路が登場した。
    黒いフードを頭から被り、首から下にも地面まで届く黒マントを着けている。
    足元はハイヒール。手には長い木の杖。
    まるで魔法使いのような雰囲気である。

    月路は紫色のシルク布を出し、それに杖で魔力を込めるようなしぐさをした。
    杖を置き、両手の中に布を揉み込む。するとその中からウサギのぬいぐるみが出てきた。
    一つ、二つ、三つもぬいぐるみを出して見せた。

    観客が拍手をする間に、純と仁衣那がイリュージョンの道具を運び込んだ。
    教室にある生徒机の上に、高さ1メートルほど大きなダンボール箱をガムテープで固定したものである。
    ダンボール箱の表面には模造紙を貼り、トランプのマークがポスターカラーで描かれていた。
    箱の下の机の部分には目隠しの白い布が巻かれている。

    箱の後ろの扉を開き、靴を脱いだ純が中に入った。
    月路は扉を閉めて、ガムテープを貼って固定する。
    仁衣那がサーベル(剣)を入れた籠を運んできた。
    このサーベルもダンボールから切り出して細工したものにアルミホイルを巻いた手作りである。

    月路はその一本を取り上げると、先端を箱の側面の小穴に突き当てた。
    箱にはサーベルの断面の形に細長く抜いた小穴がいくつも開いているのだ。
    その穴の縁にサーベルの柄(つか)が当たって止まるまで、ゆっくり慎重に押し込んだ。

    箱の四面から2本ずつ、合計8本のサーベルを突き刺した。
    それから箱の下に巻いた目隠しの白布を取り外し、机の下を見せた。
    そこは当然のように空っぽで、純が箱から出て隠れているようには見えなかった。

    やがて箱の上面に丸い穴が開き、そこから純が頭を出して笑った。
    おお~っ、ぱちぱちぱち!! 一斉に拍手が起こる。
    一流マジシャンのスピード感には及ぶべくもないが、それでも立派な箱詰め美女の剣刺しである。
    サーベルの長さが箱の寸法よりも短いので、その先端は箱の反対側に抜けていない。
    でも純の体には多数のサーベルが突き刺さっているはずである。

    月路は箱の上面にもう一つ別の穴を開け、腕を突っ込んで中をまさぐった。
    純が目を白黒させ 「あぁん」 とか 「いやん」 とか声を上げる。
    やがて、引き抜いた月路の手には赤い布地が握られていた。
    客に向かって広げて見せると純が着ていた赤いワンピースのドレスだった。

    そのドレスを仁衣那に渡し、替りに黒い布を受け取る。
    広げて見せるとそれはレオタードだった。
    サーキット場でコンパニオンが着けるようなチューブトップで、脚ぐりの切れ込みが大きいハイレグデザインである。
    それを穴に入れ、純の頭も箱の中に押し込んだ。

    BGMが軽快な音楽に戻った。
    月路は箱に刺さっったサーベルを一本ずつ引き抜いた。
    全部抜いて箱の上面をノックすると、そこから純が立ち上がった。

    きゃあっ!! 観客の女生徒たちが喜んだ。
    純の衣装は黒のレオタードに変化していたのである。

    まさにレースクイーンだった。
    一見バニーガールのようにも見えるが、ウサ耳とタイ、カフスをつけておらす、お尻に尻尾もない点がバニーとは違っていた。
    何より、網タイツを穿かない生足の太ももがハイレグの下半身にむっちりと生えていた。

    純は月路に手をとられて箱から降り、仁衣那が置いたハイヒールを履いた。
    月路の隣に立つと、恥ずかしそうにポーズをとって微笑んだ。

    すると、それを見た月路が自分のフードとマントを解いてはらりと落とした。
    現れたのは、これまた黒いハイレグ生足のレオタード。
    月路もマントの下に純と同じレオタードを着用していたのである。
    大きく露出した色白の肌がうっすらピンク色に染まっていた。

    ピーピーっ。きゃ~んっ、色っぽ~いっ!!
    観客はさらに大騒ぎである。
    中庭には生徒たちが集まり続け、その数は100人をはるかに越えていた。

    4.
    仁衣那がそ知らぬ顔で道具を片付け始めた。
    と、月路がその仁衣那を指差してにらんだ。
    純が駆け寄って仁衣那の肩を押さえる。仁衣那はびくりと直立して動けなくなってしまった。
    月路がその顔の前で手をひらひらと振ると、仁衣那はすぐに目を閉じて首を垂らした。
    催眠術にかかったのである。
    直立したままで固まるのは不自然だが、お約束なので許されるのだ。

    仁衣那が運ぼうとしていた道具は純が片付け、新たに白布の衝立(ついたて)が持ち込まれた。
    保健室の遊休品を借りてきたのである。その数は4枚。
    さらに仁衣那の身長より少し高いくらいの細長い板が運び込まれた。
    三人が『戸板』と呼ぶそれは、ダンボールの周囲を細角材で補強し、さらに表面に白布を張った、これまた手作りの品である。
    足元には小さなスタンドがついていて、自立できるようになっていた。

    月路は目を閉じたままの仁衣那を戸板の前に立たせ、両手を開いて小さくバンザイするようなポーズをとらせた。
    頭の丸いピン状の画鋲を出して、セーラー服の肩と袖、スカートの腰と裾を戸板に留めた。
    小さなピンだから少し力を入れれば簡単に外れるとはいえ、仁衣那は昆虫標本のようにピン留めされたのである。

    純が戸板の周りに衝立を置いた。手前に2枚、後ろに2枚。
    ひし形の形に並べて仁衣那の姿を隠した。

    月路は衝立の陰から長い杖を取り出すと、正面に立った。
    何やら呪文らしきものを唱えながら杖を振る。
    やーっ!!
    叫びながら杖を振り下ろした。

    純が衝立を開けて中を見せる。
    そこには先ほどと変わらずピン留めで固定された仁衣那の姿があった。
    ・・あれ?
    観客の笑いを受けながら首をかしげる月路。

    もう一回っ。今度は純と一緒だ。
    並んで密着して互いの腰に手を回し、揃えて出した手に杖を持った。
    ぐっと妖艶な雰囲気になった。
    唱える呪文もどこか色っぽく聞こえた。
    本来であればドライアイスの白煙など使って盛り上げたいところであるが、そんなお金や人手はない。
    代わりに衝立の反対側で明るい閃光が何度か光った。カメラのストロボを取り付けたのだ。

    はあぁ~んっ!!
    どこか喘ぎ声のようにも聞こえる掛け声を出して杖を振り下ろす二人。
    しばらくそのまま動かない。

    衝立を外すと、そこにいたはずの仁衣那の姿が消えていた。
    ただし、着用していた制服の上下はそのままピン留めされていた。足元にはソックスと制靴のローファーも残っていた。
    魔法の呪文で、少女の肉体だけが消失したのである。
    固定しなかったはずのソックスまでピンで留まっているのはご愛嬌といえよう。

    美少女消失?

    月路がスカートの裾を摘んで捲ってみせた。
    スカートの中にはしっかりショーツがあった。
    セーラー服の上をめくると、そこにはブラジャーもあった。
    わーっ! やあだぁっ!! きゃははは。
    観客は大喜びである。
    さっきの子、裸で消えちゃったの!?

    月路は戸板からセーラー服とスカートを外し、中のブラとショーツだけを出して元の場所にピンで留めた。
    ブラはスポーツブラ、ショーツは水色の水玉模様。いかにも女子高生の下着である。
    月路は下着を指差し、杖を振る仕草をしてから、腕組みをして考え込み、それから手を叩いて喜んだ。
    なるほど!
    観客にも伝わった。
    さっきの女の子を復元して、下着だけの格好にするのね♥

    すると純が後ろから月路の肩をつつく。
    月路が振り返ると、純は別の下着を出して見せた。
    極小の三角ブラとTバックのショーツである、
    どちらもほとんど紐ばかり。布地で覆う部分がほとんどない。
    きらきら光る飾りがたくさんついていて、まるでサンバカーニバルの踊り子の衣装だった。

    月路と純はきゃっきゃっと喜びながら、戸板に留めていたスポーツブラと水玉ショーツをサンバ風のブラとTバックに交換した。
    再び衝立で戸板を隠し、二人は杖を構える。
    唱える呪文はさっきとまったく同じに聞こえたが、もちろん誰も気にするところではない。

    ・・抱き合ってーっ
    客から声がかかった。
    二人は苦笑いしながら、向かい合って抱き合う。

    ・・足絡めてーっ
    ・・おっぱい重ねてーっ!
    次々と注文が飛ぶ。
    二人のポーズは次第にエロくなって行く。

    ・・キスして~っ!!
    え?
    月路と純は驚いたように声の方を見る。
    そこには、生徒会長の御手洗優莉が笑って手を振っていた。
    もうっ!!
    二人は顔を寄せて唇を合わせた。背の低い純が踵を少し上げている。

    きゃあああ~!!
    いいわステキー!!

    5.
    衝立の向こう側でストロボが光った。何度も繰り返して光る。
    いい加減に先に進みなさいと誰か催促しているかのようだった。
    抱き合っていた月路と純はようやく離れた。
    はぁはぁとしばらく息をついてから、体勢を整え直して「たぁっ」と杖を振った。

    衝立を開くと、戸板の前に仁衣那が消滅したときと同じポーズで立っていた。
    ちゃんとソックスとローファーを履いていて、体にはサンバ風の極小ビキニとTバックを着けていた。
    きゃ~あっ! やったー! 観客が叫ぶ。

    月路と純が仁衣那の手を取った。
    仁衣那は両目をぱっちり開け、それから自分の体を見下ろして悲鳴を上げた。
    「きゃあぁ~~んっ!!」
    胸を手で押さえながら大袈裟に身をよじらせる。練習に練習を重ねた悲鳴である。

    可愛いーっ!! きゃんきゃんきゃんっ
    予定調和ともいえる仁衣那の悲鳴に観客は大喜び。
    拍手と歓声はいつまでも鳴り止まないのであった。

    6.
    その日の午後。
    ステージが済んで一息ついたマジ研メンバーは校庭にやってきた。三人とも制服に着替えている。

    「あそこですーっ」仁衣那が指差して先に走っていった。
    後から月路と純が続く。
    並んで歩きながら純が月路の腕に自分の腕を絡めてきた。
    「?」
    「えへへ、いいでしょ? お姉さま♥」

    ・・しかたないなぁ。
    月路は純のしたいようにさせる。
    まだ胸がどきどき鳴っていた。
    人前であんなに露出したのは初めてである。
    月路は昨夜はお風呂で何度も何度も体を洗った。無駄毛の処理もやりすぎてひりひりするくらいである。
    多分、純と仁衣那も似たようなものだろう。

    ぎゅうっ。
    純の腕に力が入って、強く密着されてしまった。
    可愛すぎるぞ、純。
    ステージで抱き合ったときの感触が蘇る。
    二人はレオタードで足を絡めあい、キスまでしたのだ。
    あのときの純は、とても柔らかくって、いい匂いがして・・。

    「もう、センパイたちっ、何くっついてるんですかー!」 仁衣那が戻ってきて言った。
    「うふふ」
    「女子高だなー!」
    「あんたが言ってどうするの、純っ」

    三人が校庭に来たのは、そこで生徒会執行部がイベントをやっていると聞いたからである。
    確かに、朝礼台の前に100人以上の女生徒が集まっていた。
    立看板があって『会長受難! 大声を出してうっぷんをはらそう!』と書かれていた。

    「あそこにいるの、生徒会長さんじゃないですか?」 仁衣那が指差して言った。

    朝礼台の上のパイプ椅子に生徒会長の御手洗優莉が座っていた。
    どうも後ろ手に縛り付けられているようである。
    優莉の回りには、レインコートを着た生徒が数人立っている。
    パイプ椅子の後ろには脚立があって、そこにもレインコートの生徒が跨っていた。
    足元にはバケツが並んでいて、どれも水が入っているようだ。

    少し離れた校庭には100人以上の女生徒たちが集まっていた。
    集まった女生徒たちの中から10人ほどのグループが出てきて、スタンドマイクに向かって一斉に叫んだ。
    「オ・ト・コがいなーーーーい!!」
    測定器を持った女生徒が出てきて、数値を読む。
    「音量は、・・120ホン!」
    きゃ~ぃ!!!
    大声を出したグループが飛び跳ねて喜んだ。
    さばっ。
    それと同時に、朝礼台の優莉の頭の上にバケツの水がざぶりとかけられた。

    「会長、今の声に一言!」
    「うむ、男の子を掴まえるには一に愛嬌、二に笑顔、三四がなくて五に色気。順番に気をつけて頑張りなさい!」
    「ありがとうございましたーっ」
    髪から水滴を垂らしながら優莉が答え、それに女生徒たちが頭を下げて礼をした。

    「あれ、何」口をぽかんと開けて見ていた純がつぶやいた。
    「100ホン以上の声を出したら、生徒会長さんが水をかぶるみたいです」 仁衣那が看板を読んで説明する。
    「生徒会長も大変ねぇ」
    「でも御手洗さん、何か楽しそうですけどー」

    確かに優莉は嫌がっているようには見えなかった。
    椅子に縛り付けられ、次々と水をかぶらされる。
    制服はおろか下着までずぶ濡れにされて、それでもなお明るく笑いながら生徒たちに応対する。

    「皆のために、自分を犠牲にして頑張ってるんだよ」
    「尊敬しちゃいますよー」

    ・・違うわ。あの優莉がそんな聖人のはずない。
    月路はあのときのことを思い出す。
    去年の春、同好会の手続きで訪ねた生徒会室だった。
    その当時生徒会副会長の優莉は、窓に向ってスマホを見ていた。
    ノックして入ってきた月路に気付いていないようだった。

    声をかけようとして、月路は固まってしまった。
    後ろから見えたスマホの画面には、縄でぎちぎちに縛られた女の子が映っていた。
    自分たちと同じくらいの歳の子に見えた。
    「はぁ・・、」
    優莉は小さな溜息をつきながら、画面を指ではじいて次の画像を表示させた。
    制服の少女を縛って天井から吊るした写真だった、
    優莉は生徒会室で緊縛写真集を見ていたのである。

    がたん。
    無意識に一歩下がった足が机に当たって音がした。
    優莉は初めて振り返り、そこにいる月路を見た。

    「・・井沢月路、さん?」
    「あのあたし、その別に黙って見た訳じゃ・・」
    「あ、これ?」
    月路はそのときの優莉をはっきり覚えている。
    優莉はスマホの画面を隠さないどころか、月路に向って示しながら言ったのだ。

    「不思議よね、緊縛って」
    「はい?」
    「こんなに惨めなのに、綺麗なんだもの。ぞくぞくするほど色っぽいんだもの。自分も同じ目にあいたいって思ってもいいでしょ?」
    「えっと・・、その・・」
    「うふふ、誰にも言わないでね。私は別に気にしないけど、生徒会役員にこんなマゾがいるって知れたら先生たちが困るでしょうから」
    そのときの優莉の微笑み。
    とても妖しくて、そのまま呑み込まれてしまいそうだった。

    月路は考える。
    このイベントも優莉が自分で言い出してやったのではないだろうか。
    そうだ。きっとそうだ。
    ホントにいいんですかー? と聞く周囲に、アイツは涼しい顔をして「皆が喜んでくれるなら構わないわ」なんて言ったに違いないのだ。

    さばっ!
    「・・はぁっ」
    またバケツの水をぶちまけられ、優莉が声を上げた。
    わざと上を向いて顔面に水を受けている。
    動けない体を確かめるように、ぶるぶる震えている。

    あいつめーっ。生徒会会長の特権を乱用しやがって・・!

    「よし、あたしらも出よう」月路は純と仁衣那に言った。
    「三人で大声出して、生徒会長に水をかけよう!」
    「はい!」「おーし、やりましょー!!」

    列に並び、スタンドマイクの前に立つと、朝礼台で縛られた優莉と目が合った。

    ・・来たわね、マジ研! ステージ大成功だったじゃない!
    優莉はにっこり笑って三人を見た。
    既にぐっしょり濡れそぼり、制服も下着も乾いている部分はない。
    ポニーテールはべたりとつぶれ、そこらじゅうから水滴がぽたぽた垂れる惨状である。

    さあ、次は、あなたたちが大声を出して水をかける番よ。
    私に惨めな思いを味わわせてちょうだい。
    ぞくぞく、ぞくぞく、させてちょうだい。

    ・・さ、せーのっ。
    三人は叫んだ。
    「来年もイリュージョンっ、やぁるぞぉーーーっ!!」



    ~登場人物紹介~
    井沢月路: アネモネ女学院高校3年 マジック研究会会長
    毛塚純: 同2年 マジック研究会副会長
    出水仁衣那(にいな): 同1年 マジック研究会会計
    御手洗優莉: アネモネ女学院高校3年 生徒会会長

    学園祭モノを連続投稿します。
    前回の「アネモネ女学院高校文化祭訪問記」でコメントをいただき、思い立って書き起こしました。
    セクシー系イリュージョンと名乗っていますが、高校生の演じるネタですし、それほど過激ではありません。
    あまり下品すぎないのが作者の好みでもありますしね。
    マジック、イリュージョンのネタはおそらくすべて現実にあるものです。
    女の子たちが楽しみながら演じているのが伝わればいいなと思います。

    そして最後の水かぶりゲームは、前回書いたネタが美味しすぎてもったいないので、少々濃ゆ目にして再登場させたものです。
    生徒会長の優莉さんは美貌と知性を兼ね備え、いつも凛としていて下級生女子たちの憧れの的。
    そしてもちろん、私の小説のお約束として真性のM女であります^^。
    きっと男に対しては厳しい人ですから、彼女にしてお付き合いするのは大変でしょうねー。

    ではまた。
    ありがとうございました!




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    真夜中のハンギング・マーメイド

    学園祭は深夜になっても続いていた。
    模擬店エリアにはこうこうと明かりが点り、テントの下で学生たちが宴会をしている。
    昼間来たときに心配した食中毒は、幸いにも発生していないようであった。

    「けけけけ」
    突然、目の前に汚いジャージを穿いて上半身裸の男が飛び出した。
    「うけけけけーっ!」
    奇声を発して穿いているものを全部下ろし、私に向かってフルチンの腰を振る。
    うわ。
    私は腰を抜かして、その場に尻餅をついた。

    そこら中のテントから学生たちの嘲笑が起こった。
    半裸の学生たちが4~5人出てきて、全裸の男と一緒に私の回りで踊り出した。
    その一人は女の子だった。
    ぶよぶよした肉体にブラとパンティだけという醜悪さ。
    まったく恥ずかしくないのだろうか。
    こんな品のない娘には、ナミちゃんの美しさを見習ってもらいたいものだ。

    私は憮然として立ち上がり、学生たちを押しのけると、その場から逃げるように歩み去った。
    これから素晴らしいイベントがあるというのに、こんな場所でうろうろするのが間違いだった。

    ・・
    ・・

    プールの前で水泳部主将の権田原(ごんだわら)と落ち合った。
    彼はイベントの主催者の一人なのだ。
    「では、行きましょう!」
    先に歩く権田原について行く。
    会場はプールではないのか?
    「こんな場所でやったら、野次馬が殺到して騒ぎになります」
    それもそうだ。

    やがて真っ暗な建物の前に来た。
    「ここは、廃止になった旧学生会館であります」
    「入ってもいいんですか」
    「わははははっ」
    「ごまかさないで下さい」

    懐中電灯を点けて、コンクリートの階段を降りる。
    やがて、がやがや騒ぐ声とエンジンの音が聞こえてきた。

    ・・

    そこは直径20メートルくらいの小さな円形のホールだった。
    ポータブルの発電機がエンジンを震わせながら、ライトを点灯させている。
    片隅には高さ3メートルほどの門形の櫓。
    昼間プールで見た櫓だ。
    そして中央で学生たちが車座になって酒を酌み交わしていた。その数は10人ほど。
    ほとんどが男で、女の子は一人だけだった。

    「記者さーんっ!」
    黄色い声で呼ばれた。
    おおっ、ナミちゃんっ。
    たった一人の女の子、そして今夜の主役、水泳部員の澤村奈美ちゃんが私に手を振ってくれた。

    「さ、記者どのも、どーぞ!」
    ビール飲料の缶が手渡された。
    「スペシャルゲストのお越しにカンパーイ!!」
    いきなりの乾杯である。私はスペシャルゲストらしい。
    特別イベントは? ハンギング・マーメイドは?
    まあ、いいか。
    3万円も払ったのだから、ビールくらい飲ませてもらってもいいだろう。

    「記者さんっ、こっち来て下さーいっ。一緒に飲みましょ!」
    ナミちゃんが横に詰めて、場所を作ってくれた。
    え? いいの?
    何たる幸運。私はナミちゃんの隣に座ることができたのだ。

    彼女はカーキ色の開襟シャツとジーンズで胡坐をかいて座っていた。
    おお・・、もう少し女の子らしい格好をしてはいかがですか、ナミちゃん。
    少し悲しくなったけれど、彼女の胸元を見てすぐに考えを改めた。
    ナミちゃんはシャツのボタンを上から二つも開けて、深い谷間を見せてくれていたのである。
    前言撤回します。
    ナミちゃん、やはりあなたは素敵です。

    ・・

    ナミちゃんはお酒が強かった。
    ビールでも日本酒でもぐいぐい空ける。
    私もすすめられるままに飲み、二人ともどんどんハイになった。

    「それでね、権田原さんったら、ものすごくえっちなんですよ!」
    「ええ~っ、あの主将氏が?」
    「そうっ、堅物に見えるでしょ? 実は記者さんと同じっ。きゃはは」
    「ボ、ボクは、えっちじゃ、ありません!」
    「ウソウソ、昼間あたしの胸、ずっと見てたじゃないですかぁ」

    ナミちゃんは笑いながら、私の背中をばーんと叩いた。
    さすがにアスリート、ハンパない力だった。
    これも彼女の隣に座る代償。

    「あれぇ? 記者さんっ。なあに神妙な顔してるんですかぁ」
    「あぁ、この痛みが快感って、いえ何でもありません!」
    「ほら、お酌しますから、もっと飲んで」
    グラスに日本酒が注がれた。
    「は~い、イッキ!」
    「あ、ポン酒の一気は・・」
    「イッキ!、イッキ!、イッキ!!」
    他の学生たちも一緒になってイッキコールされてしまった。
    仕方ない、私も男だ。彼女の前でみっともない真似はできない。
    グラスの酒を一気に飲んでみせた。
    ん、んぐ、んぐ、んぐっ、ぷわ~!!
    お~っ。ぱちぱちぱち。
    学生たちが拍手をした。

    ぐら。
    一瞬目眩がして、頭をまっすぐに保つのが難しくなった。
    しかし、こんなことで私は倒れるワケにはいかないのであるっ。

    「記者さんっ、さすがですー!」
    ナミちゃんが私の肩にしなだれかかってきた。
    「いやぁ、これくらい」
    そのとき、シャツのボタンが外れた彼女の胸元が、私に向かって開いていることに気づいた。
    お、お、お・・。

    彼女はこちらにもたれているから、私はほんの少し視線を下げるだけで、シャツの内側を見ることができる。
    こんなラッキーなポジションにいるのは私だけだ。
    これは、日頃、善行を心がける私に天から与えられた褒美だろうか。
    ならば、この機会を無為に過ごすのは神への冒涜といえよう。
    私はコンマ3秒で判断した。

    そぉーっと、可能な限り自然に、ゆっくりと視線を下げる。
    ナミちゃんの豊満な胸が見えた。
    美しい曲面。艶やかな肌。
    双丘の頂上に広がる、やや色の濃い領域。
    や、これは何だ?
    この、指で摘めば、いと心地よさ気なピンク色の突起は。
    ま、ま、まさか。

    ここに至って私は驚愕の事実を知った。
    ナミちゃんはノーブラだったのである
    私は彼女の乳首を、わずか30センチの至近距離から直視しているのであった。
    ナ、ナミちゅぁ~んっ!!!
    心臓の鼓動とズボンの前の圧力が急上昇した。

    「?」
    私の異変に気づいたのだろうか、ナミちゃんが不思議そうな顔で私を見上げた。
    「どうかしましたか?」
    「いや、あ、・・その、そのその、にゃんでも、ありません!」
    そのとき、私の頭はくらくら揺れていた。
    くらくらになっていても、私の視線はまったくブレることなく、彼女の乳首を差していた。
    奈美ちゃんはその視線を辿って、私が見つめるモノを知った。
    お酒を飲んで薄い桜色に染まっていた頬が、みるみる真赤に変わった。

    いかんっ、つい見つめてしまった!
    私はナミちゃんの平手打ちを覚悟した。
    偶然とはいえ、女性のナマ乳を凝視したのだ。弁解の余地はない。

    しかし、ナミちゃんの反応は違った。
    真赤になった顔のまま、ぐっと色っぽく微笑んでくれたのだ。

    「あらやだ。・・あたし、気づかないでサービスしてました?」
    「あ、いや、ボボ、ボクは、あなたのムネ胸ムネなんて見てましぇん!」
    「うふふふ♥」

    ナミちゃんは自分でシャツのボタンの三つ目を開いた。
    ああっ。そんなことをしたら、チョーきわどいところまで露出するではありませんか!!

    「あたし、自分で言うのも何ですけど、胸が大きすぎるの、ちょっと困ってるんです」
    「そうなんですか?」
    「はい。肩は凝るし、泳ぐのにも邪魔だし」
    「よ、よく言いますね」
    「でも、嬉しいこともあるんです。それはね、男の人が喜んでくれること」

    ナミちゃんは、四つ目のボタンまで外してしまった。
    他の学生たちも驚いたように見ている。
    もう、誰の目にも彼女の巨乳が丸見えであった。

    「よぉしっ」
    ナミちゃんはその場に立ち上がった。
    「文学部2年、澤村奈美っ。脱ぎまぁ~す!!」
    大きな声で叫ぶと、残りのボタン、といっても一つしか残っていないが、それを開けて、シャツをずばっと脱ぎ捨てた。
    え、え、えええ~!!!

    「じゃーん!!」
    両手を頭の後ろにあてて、その場で一回転した。
    大きなおっぱいが、ぷるりんと揺れた。
    おおお~。ぱちぱちぱち。
    学生たちが拍手した。

    「記者さんっ、あたしを受け止めてー!!」
    ナミちゃんは両手を広げ、私に向かってジャンプした。
    巨乳が見る見る迫り、顔面に押し付けられた。
    そのまま押し倒されて、一瞬気持ちいいと思ったが息ができなくなり、そして世界が真っ暗になった。

    ・・
    ・・

    気がつくと、私は毛布に包まって寝ていた。
    「おお、記者どのっ。目を覚ましましたか!」
    権田原の太い声がした。
    身体を起こすと、ホールにいた学生たちは誰もいなくなっていた。
    「い、今、何時」
    「午前5時であります」
    「え、じゃあ、マーメイドのイベントは」
    「はい。無事に終了いたしました。一応、記者どのにも何度か声はおかけしたのでありますが」

    このとき、私は世にも情けない顔をしたはずである。
    慙愧に堪えない、とは正にこのことだろう。
    無意識に右手を顔にやると、あのナミちゃんのおっぱいの感触が蘇った。
    あれは現実だったのか。それとも酒に酔った幻覚だったのか。

    「・・記者さん、大丈夫ですか?」
    別の声がした。
    そちらを向くと、ナミちゃんが私の後ろにいた。
    相変わらずカーキ色の開襟シャツとジーンズを着ていた。
    もう人魚のコスプレは終わったのね。

    「どうも、迷惑をおかけしまして」
    「いいえ、あたしこそ、お酒の勢いで恥ずかしいことしちゃって、済みません」
    はあ~。
    私は頭をぐじぐじと掻いた。

    そんな私をしばらく見ていたナミちゃんは、権田原に何かを告げた。
    権田原は半ば呆れた顔で分かったと言い、それからホールを出て行った。
    残されたのは、私とナミちゃんの二人だけ。

    ・・

    彼女は私の前に来て言った。
    「記者さん、立てますか?」
    「はい」
    私はその場に立ち上がる。
    少し頭痛がしたが、それ以外は大丈夫だった。

    彼女は私と向かい合って立ち、私の目を見て微笑んだ。
    彼女のシャツのボタンは上から三つまで開いていて、昨夜と同じく、豊満な胸の谷間が見えた。
    「お詫びの気持ちです」
    ナミちゃんは右手で私の左手首を取ると、そのままシャツの中に導いた。

    !!
    手のひらに大きなおっぱいが押し当たった。
    相変わらずノーブラだった。
    この、突き当たるモノは、やっぱり、ナミちゃんの乳首・・!!!
    慌てて手を引き抜こうとしたけど、彼女は私の手首を強く握って離してくれなかった。

    思わず揉んでしまいそうになるのを我慢する。
    私は記者。フシダラな行為は慎まなくてはっ。

    ん?
    この凸凹は何だろうか。
    ナミちゃんの胸に、横一直線に残る窪み。
    まるで、何か長い紐のようなものを押し付けた痕のような。

    「あ、それ・・」
    私の表情を見て分かったのだろう。ナミちゃんが少し恥ずかしそうに言った。
    「縄の痕です」
    ナワ?
    「撮影会のとき、緊縛されたものですから、縄目が残って」
    き、キンバクですかっ。
    このおっぱいに縄が!!

    私の頭の中に、縄でぎちぎちに縛られて喘ぐナミちゃんの姿が浮かんだ。
    血圧が一気に上昇した。
    ぴく、ぴく。指先が動いた。

    「あ・・」
    ナミちゃんが小さな声を上げた。とても可愛い声だった。
    「す、す、すみませんっ」
    「いいえ」
    彼女は、にっこり笑った。天使のような微笑みだった。
    「今のキモチよかったです。我慢しないで、どうぞ、揉んで下さい♥」
    「は、はいっ!!」

    もう自制できなかった。
    おっぱいに押し当てた手を、もみもみと動かした。
    「んっ・・、あぁ・・」
    すかさず発せられる声。何とセクシーなのだろうか。
    私は、大きく、強く、ナミちゃんの胸を揉みしだいた。
    彼女の胸は大きいだけでなく、とても柔らかくて、沈み込んだ指の間から溢れて落ちそうだった。
    「あぁっ・・、はぁ・・」
    彼女は胸を揉まれて身を捩りながらも、私の手首は掴んだまま離してくれない。

    「あの・・、乳首も、触ってくれますか?」

    もう躊躇はなかった。
    人差し指と中指を開くと、その間にこりこりと硬くなった乳首が突き出した。
    そのまま指の間に挟んで締める。
    「はぁんっ」
    今度は親指と人差指で摘んで、きゅっと捻った。
    「やっ、・・あぁん、・・はぁっ、・・あぁぁあ!!」

    どのように刺激しても、ナミちゃんは反応してくれた。
    私は空いていた右手で彼女の腰を支えて、強く抱いた。
    「んんっ・・、あんっ」
    ナミちゃんは首を左右に振りながら、私に体を預けて身を反らせた。
    それでも私は彼女の乳首を刺激し続け、彼女は大きな声で喘ぎ続けてくれた。

    時間が過ぎた。
    はぁ、はぁ・・。
    奈美ちゃんは、ぐったりとして、私の腕の中で荒い呼吸を繰り返している。
    はぁ、はぁ・・。
    私も彼女を支えながら、息が落ち着かなかった。

    「はぁ、はぁ・・。記者さん、楽しんでもらえましたか?」
    「はぁ、はぁ・・。はい、とても」

    たまらない時間だった。
    胸を触むだけで、これほど興奮させてもらえるとは。

    「よかったっ♥」

    ナミちゃんは、にっこり笑うと、両手を私の肩に乗せた。
    顔を近づけてきて、唇を私の口に押し付けた。

    !!!

    ・・

    情けないことに私は再び気絶したらしい。
    気がつくと、プールの脇のベンチに寝ていた。
    キャンパスを照らす朝日が黄色く見えた。
    権田原がここまで運んでくれたのだろうか。

    ジャケットの前がこわばったので、触ってみると内ポケットに何か入っていた。
    出してみると、それはデジカメの画像をカラープリンタで印刷したカードだった。
    私はその画像を見て目を剥く。

    あの櫓から人魚のナミちゃんが逆さ吊りになっている。
    ブラは着けていなかった。
    たわわに膨らんだ胸が、隠すものもなくさらけ出されている。
    後ろに回した手は縛られているように見えた。
    ものすごく色っぽい顔でこちらを見ている。
    昨日の昼間、弾けるように笑っていたナミちゃんとは全然違っていた。

    ああ、何とおいしい姿であることか。
    前後不覚になって眠ってしまったことを改めて後悔した。
    でも、今はそれも我慢できると思った。
    何しろ私は、このおっぱいをモミモミしたのだ。
    乳首だって、ちゃんと摘ませてもらったのだ。
    その上、キスまで!

    む、ふ、ふ、ふ、ふ。

    昼間の清純なナミちゃん。
    そして深夜のちょっとエッチなナミちゃん。
    私は両方のナミちゃんを思い浮かべながら、誰もいない中庭で一人、笑い続けたのだった。

    ・・
    / これで終わりかとお嘆きの貴兄へ。 この下、おまけです /
    ・・

    「あーあ、寝ちゃったよ。記者さん」
    「澤村ぁ。お前、やりすぎ」
    「酒飲むと、すぐに男誘惑すんだから」
    「えへへ」
    学生たちに言われて、奈美はぺろりと舌を出した。
    上半身裸になって、こぼれそうな胸を両手で押さえている。

    「だって、この人、3万円も払ってくれてるんだもん。少しくらいサービスしてあげなきゃって思って」
    「3万! そんなにボッたのか? 権田原」
    「いやぁ、えらく澤村のこと気に入ってたみたいだから、多少ふっかけても大丈夫かなと」
    「ひでえな。俺ら、酒代しか出してないのに」

    学生たちは眠ってしまった記者を壁際へ運んで、毛布をかけた。

    「だいたい、このおっさん、澤村にどんな幻想描いたんだ?」
    「こいつ、すぐに脱ぎたがる露出狂で、その上ドが何個もついても足りないマゾ女だぜ?」
    「ああっ、村上ぃ。その言い方、ヒドイぞー」
    奈美がほっぺたを膨らませるふりをした。
    「違う?」
    「えっと・・」
    奈美は少し考えて、それから笑った。
    「ま、その通りだねっ。あっはっは」
    「あっはっは、じゃねーだろ」「少しは、恥じらい、ちゅーもんを持ちなさい」
    学生たちも笑った。

    「・・よっしゃ、始めよう。澤村は、着替えてくれるか」
    権田原が宣言すると、皆が立ち上がってホールの隅に置いてあった木製の櫓を中央に移動させた。
    いよいよハンギング・マーメイドの撮影鑑賞会の始まりである。

    「澤村っ。そんなド真ん中で堂々と全裸になるな」
    「だって、人魚に着替えるんだもん」
    「俺たちだって、女には夢持ちたいんだからさぁ。そのツイタテの陰で着替えてくれよ」
    「面倒くさいなぁ」

    奈美は文句を言いながら、衝立の反対側に着替えの荷物を持って行く。
    「あのね! あたしね、後でいいから、縄で縛って欲しいなぁ、なんて」
    「おうっ。一応、麻縄も持ってきたぞ」
    「きゃあ♥。ぎっちぎちに縛ってね。あたしが泣いちゃうくらい」
    「そういうことを、女の方から要求するなよ」
    「いいでしょー。・・ほら、人魚になったよ」
    「貝殻ブラは」
    「つけなきゃダメ?」
    「当たり前だろ。外す行為を楽しむんだから」

    やがて、学生たちは人魚の下半身を着けた奈美を担ぎ、櫓の下に逆さに吊り上げた。
    「だいぶ飲んでるけど、大丈夫か?」
    「平気。これくらい」
    「じゃあ手首縛るから、両手後ろに回せ」
    「うん」
    「うんじゃねえだろ。返事は、はい、だ」
    「あ、・・はい」

    しばらく賑やかだった奈美も、いざ吊るされて後ろ手に縛られると静かになった。
    はぁ~。
    ため息をつきながら、首を回して自分の下半身や拘束された手首を見ている。
    「これで、あたし、無抵抗ね」
    「そうだぜ。昼間みたいに3分なんてことはないから、覚悟しろよ、澤村」
    「・・うん、覚悟する」

    学生たちは、さっそくスマホやデジカメを構えて撮り始めた。

    「やっと、いい顔になったな」
    「おお~、もじもじする様子が可愛いぞ」
    「もう、ばか」
    「こいつ、まだ俺らにタメ口利いてるぞ。後でお仕置きだ」
    「あーん、ごめんなさいっ」
    「まあ、このまま放置したら、おとなしくなるだろ」

    「とりあえず乾杯しよう」
    「何回目の乾杯だ?」
    「いいじゃねーか。ハンギング・マーメイドの最初の乾杯だ」

    皆が奈美を囲んで乾杯した。
    ロープを捻り、逆さ吊りの奈美をゆっくり回して、その姿を楽しんだ。

    奈美は、逆らうことなく吊られていた。
    人魚の下半身を穿いた両足も、縄で縛られた両手も、自由に動かすことはできない。
    たまらない気持ちだった。
    こうして吊られて、男たちの酒の肴にされる。
    皆が満足するまで、絶対に許してもらえない。
    ハンギング・マーメイド。
    女を吊るして、楽しむハンギング・マーメイド。

    何度も繰り返して考えて、確かめる。
    自分の運命を思い知る。
    一歩、一歩。
    被虐の深みの中に進んで行く。

    ・・

    約30分経って、奈美は貝殻ブラをむしり取られた。
    それからさらに40分、意識を失いかけて下ろされた。
    学生たちから休憩を提案されたが即座に拒絶した。
    すぐ麻縄で緊縛されて、床に転がされた。
    全身を絞め上げる縄の感覚にとろけながら、男子学生も驚く体力と持久力で、延々と喘ぎ続けた。

    ハンギング・マーメイド鑑賞撮影会

    酔い潰れてしまった記者は、目を覚ましそうになかった。
    すぐそばで奈美がどんな目にあっているのか、まったく気付くことなくイビキをかいて眠っていた。



    ハンギング・マーメイド』 の続編です。
    超陽性で、男好きがして、お酒が強くて、露出症で、その上、とてつもなくマゾな女子大生。
    こういう女の子がいるサークルは退屈しないでしょうね。
    翻弄される男どもは大変かもしれませんが。

    挿絵は久しぶり(3年ぶり?)の乳首露出です。
    赤い丸をくりくり塗るだけなのに、いつものヘタ絵の何倍も恥ずかしいのはどうしてでしょうかね。

    ありがとうございました。




    ハンギング・マーメイド

    何も変わってないじゃないか。
    3年ぶりにやって来た大学の学園祭の感想である。
    混雑しているのは、焼き鳥や焼き蕎麦、クレープなどの模擬店ばかり。

    そこのお好み焼き屋。
    汚れたバケツの水で粉を溶くな。キャベツもホコリまれじゃないか。せめて洗ってから、切れ。
    隣のチョコバナナ屋。
    いつのバナナだ。皮が真っ黒。こら、客の前で落としたバナナを拾って使うな。
    行列ができている串焼き屋も酷かった。
    いつから外に出してあるのか分からない生肉を、汗まみれの汚い男どもが素手で串に刺している。もしかしてその竹串、一度客に出した串じゃないのか。
    まったく、学生たちの衛生観念のなさには呆れるばかりである。
    食中毒事故が起こる前に、これを記事にしたらどうだろう。
    一応、私だって記者のはしくれなのだ。

    でも、そんな記事は載せられないと分かっていた。
    ウチの地域コミュニティ誌はこの学園祭に協賛しているから、評判を落とすことはできないのだ。
    私は、入口でもらったパンフレットを見る。
    その裏表紙には、ウチの広告がどーんと全面掲載されていた。

    ・・

    模擬店のエリアを離れると人の数が減った。
    私は閑散としたキャンパスを歩いて、軽音ライブ、書画や写真の展示、鉄道模型や自主アニメの上映会などを巡った。
    どれもありきたりで、面白い記事にはなりそうになかった。
    困ったな。
    そう思って窓の外を見ると、グランドの方で学生たちが行列しているのが見えた。
    樹木の陰になってよく分からないが、木製の櫓(やぐら)のようなものが建っている。
    何かのイベントだろうか。
    私は、あまり期待しないで見に行くことにした。

    ・・
    ・・

    グランドに隣接してプールがあった。
    『水泳部 マーメイド・ハント』の看板。
    その下に学生たちが列を作って並んでいる。なかなか繁盛しているようだ。

    「らっしゃいませぇ。マーメイド・ハントへようこそー!」
    よく日に焼けたガタイのいい男が受付をしていた。
    もう11月になるというのに、水泳パンツの上にTシャツ1枚を着ただけである。
    逆三角形の上半身に隆々とした筋肉。真っ黒な顔に、真っ白な歯がきらりと光った。
    なかなかに暑苦しい、いや逞しい青年である。

    「ハッピーリビングですっ。取材させて下さい」
    「おー、記者どのですかっ。さぁ、どーぞっ。俺は主将の権田原(ごんだわら)であります!」
    柵を開けて中に入れてくれた。

    そこはごく普通の25メートル競泳プールだった。
    プールサイドのいちばん奥に、件の櫓が建っていた。
    左右2本の柱を立てた上に横梁が渡してあって、門の形になっている。
    高さは3メートルほどか。
    横枠の真ん中に滑車があり、そこから垂らしたロープにサメのハリボテが逆さに吊られていた。
    大阪の某テーマパークにあるジ○ーズを意識したと思われるそれは、残念ながらサメというよりウナギのような顔をしていた。

    そして、プールサイドを学生たちが走り回っていた。
    網の直径1メートルはあろうかという巨大な虫取り網を持ち、それを水面に向かって振っている。
    何かを捕ろうとしているようだ。
    いったい、何を?

    と、水面に女性の頭が浮かんだ。
    口をすぼめて短く呼吸すると、すぐに潜っていった。
    ぱしゃん!!
    次の瞬間、大きな魚の尾びれが水面を叩いた。

    水の中を覗き込んで分かった。
    プールの中を人魚が泳いでいた。
    一匹ではない。何匹も泳いでいる。
    もちろん本物の人魚ではない。人魚のコスプレをした女性が泳いでいるのだ。
    そして網を持って駈けずり回っている連中は、彼女たちを捕まえようとしているのだった。

    「どうですか! あれは我が水泳部の誇る女子選手陣でありますっ!」
    主将の権田原が隣に立って説明してくれた。
    「はぁ、なるほど」
    「あの、マーメイドのこすちゅーむは、ウェットスーツと同じ素材でできておりますっ。泳法は、ドルフィンキックであります! ドルフィンキックとは、両足を合わせて上下に振る泳法でありまして・・」
    ドルフィンキックくらい知ってるさ。
    それよりも、こいつの声は意味なく割れるように大きかった。
    たまらず私は横へ半歩離れる。

    「捕獲者は、あの網でマーメイドを捕獲するのですっ。知恵と体力とチームワームの勝負なのであります!」
    権田原は大声でしゃべりながら、ぐいっと半歩寄ってきた。
    やめてくれ。本当に暑い、いや熱い。
    私は再び半歩離れる。

    「逃げるマーメイド、それを追う捕獲者っ。プールの中と外の、いわば鬼ごっこなのであります!」
    再び、ぐいっと密着せんばかりに近寄られる。
    恐怖を覚えた。
    お前とは鬼ごっこしたくない!
    私はプールサイドを蟹のようにひたすら横移動しながら心の中で叫んだ。

    ・・

    マーメイド・ハントは、参加者が4人でチームを組み、網を使って時間内に人魚を捕まえるゲームである。
    捕まえるといっても、こんな網で人魚をすくい上げることはできないから、人魚の体の半分以上を網の中に入れたらOKというルールだった。
    お代は1ゲーム2千円。
    学園祭の出し物としては高価だが、この行列を見ると "当たった" のだろう。

    プールにいる人魚も4人。
    さすがに水泳選手だけあって、人魚の下半身を着けてドルフィンキックだけですいすいと泳いでいた。
    一度潜ればプールの底近くを息継ぎなしで端から端まで泳ぎ、思わぬ場所で水面から顔を出して挑発するように笑う。
    捕り手の学生がそっちへ走って行くと、またすぐに潜り、ひらりひらりと網をかわして逃げて行くのだった。

    捕獲者チームはだいぶ疲れているようだった。
    プールサイドを駆け回るだけでも大変なのに加え、大きな網を水中で振ると水の抵抗が半端なく重い。
    かと言って、人魚が顔を出すのを待ち構えていても、彼女たちはその近くに浮かび上がってくれない。
    そもそも、まるで本物の魚のように自由自在に泳ぐのだ。

    「こりゃ、勝てないわ」
    「ぶわっはっはっは!」
    私がつぶやくと、権田原が大声で笑った。
    「一名は高校総体のバタフライで全国ベストエイトっ。後のメンバーも地区大会の有力者揃い! 簡単に捕まるワケないのであります!!」
    私は、プールの照明塔の柱を権田原との間に挟んで立つことで、ようやくこいつの密着攻撃を免れていた。

    ざぶん!
    学生の一人がバランスを崩して水に落ちた。
    みっともない姿に、順番待ちのギャラリーたちが笑う。
    待機していた男子部員が飛び込んでそいつを助けた。
    人魚たちまで泳ぎ寄って救助を手伝っている。

    捕獲者チームは打ち手なしであった。
    権田原の言った通り、このゲームは知恵とチームワークが絶対に必要だ。
    よく作戦を立ててチーム全員で臨まないと、一匹だって捕まえるのは無理だろう。

    一名リタイアして3人になった捕獲者チームは、その後もばたばたと走り回ったが、人魚を捕まえることはできなかった。
    やがて、ぴーっとホイッスルが鳴る。
    「お時間でーす!」
    肩を落とした学生たちが退場し、プールの中では人魚たちが喜んでハイタッチしている。

    ・・

    人魚は交代要員を含めて7人いた。
    私はゲームを少し中断してもらって、人魚たちの写真撮影をお願いした。
    彼女たちは喜んでモデルになってくれた。

    皆に揃って泳いでもらう。
    タイミングを合わせ水面近くでくるりと回転。長く伸びた尾びれが優雅に広がって美しい。
    次に全員並んでプールサイドに腰掛けてもらう。
    笑ってポーズ。頼まなくても髪をかき上げるポーズなどしてくれる。
    ノリのいい女の子たちだった。
    誰が全国ベスト8なのかは分からなかったけど、7人の中に、飛び抜けて可愛いのが一人いた。
    その子は胸も大きくて、貝殻ブラが外れてポロリするのではないかと心配になるほどだった。

    本当は可愛い子だけ集中して撮りたかったが、記者の立場としてはそういう訳にいかない。
    こういうとき女性は敏感だから、全員を平等に撮影してあげないとクレームがつくのだ。
    後で写真を選ぶときに、気に入った子だけ選んで誌面に掲載することにする。

    ・・
    ・・

    「やった!!」
    何番目かの捕獲者グループが歓声を上げた。
    うまい!
    皆で一匹だけを集中的に狙って、網の中に追い込んだのだ。
    「パンパカパーン。おめでとーございます~!!」
    おぉっ、あれは目をつけていた子ではないか!

    男子部員が水に入り、尾びれが絡んで動けなくなった人魚をプールサイドに引き寄せた。
    網を外して終わりかと思ったら、引き上げて『えもの』と書かれた看板の下に座らせた。

    「再開しまーす。時間はあと95秒!」
    どうやら、制限時間いっぱいまでゲームを続けるらしい。
    チャンスだ!
    私は捕まった人魚の側に駆け寄った。
    彼女は、スポーツドリンクのボトルを手に、魚の下半身の膝を折って横座りしていた。
    私に気付いてにっこり笑ってくれる。
    いやぁ、本当に可愛い!

    「捕まっちゃいましたねー」
    「はい、残念っ。でも、面白かった!!」
    「お名前、教えてもらっていいですか?」
    「文学部2年、澤村奈美です。ただいま彼氏募集中♥っ。よろしくお願いしま~す」
    おお、ナミちゃんねっ。
    「疲れましたか?」
    「大丈夫ですっ」
    そう言いながらも、彼女は肩で息をしていた。実際のところはずいぶんキツイのだろう。
    「それでは、人魚になった感想を一言」
    「うふふ。恥ずかしいです。だいぶ慣れましたけど」
    「綺麗ですよ。とても色っぽくて」
    「えーっ、あたし、色っぽいですか? 嬉しい~!! 実はおキニなんです、このコスチュームっ」

    そう言いながら、ナミちゃんは自分で貝殻ブラを持ち上げるふりをしてくれた。
    わ、そんなことをしたら、ただでさえはみ出しそうなオッパイがこぼれるではありませんかっ。

    「これで泳ぐの、とっても楽しいんです~」
    私も楽しかったよ~。
    「ま、本当に楽しみなのは、この後の儀式ですけどねっ。うふふふ」
    「儀式ですか?」
    「あ」
    ナミちゃんは言い過ぎたかしらという顔をした。
    「っと・・、やだ、あたし別に儀式を受けたいってワケじゃ」
    は?
    「でも、期待してないって言ったらウソになるし」
    頬を赤くして、もじもじしている。
    何だ、一体?
    「あの、それは、いったいどんな儀式」

    ぴーっ。
    そのとき、終了のホイッスルが鳴った。

    ・・

    「はいっ。見事に人魚を一匹ゲットされました~!! それでは、ハンギング・マーメイドの儀式をしまーす!」
    よっしゃぁ~!!
    捕獲チームの4人がガッツポーズをして喜んだ。
    彼らだけでなく、ギャラリーたちまで歓声を上げていた。

    奥の櫓にぶら下がっていたウナギサメのハリボテが下ろされた。
    そして、そこへナミちゃんが担いで運ばれていった。
    いったい何が始まるのか?

    水泳部の男子部員たちが、ナミちゃんの手首をロープで後ろ手に縛った。
    それから、櫓の横梁の滑車からロープを下ろし、そのロープを尾びれの根元、ちょうどナミちゃんの足首の位置に巻きつけて強く縛った。
    そうしておいて、滑車の反対側のロープを3人で引いた。
    「せーの、ほいっ」
    「ひゃん!!」
    ナミちゃんが可愛い悲鳴を上げ、頭を下向きに、するすると吊り上がった。
    滑車から引いたロープを櫓の足元の金具に縛り付けて固定する。
    いとも簡単に人魚の逆さ吊りができあがった。
    よほど練習しているのか、とても手際がよかった。

    「はい。人魚さんの負担を考えて、お写真タイムは3分間です! 一応、お触りは遠慮して下さいねー」
    捕獲者チームの4人が、獲物の左右に誇らしげに並んで写真を撮った。
    それから一人ずつ人魚とツーショット。
    ああっ、お前ら、お触り禁止ではないのかっ。
    気安くナミちゃんの腰に手を回しおって~!

    当の学生たちだけでなく、皆がカメラを構えていた。
    並んでいるギャラリーたち、主将の権田原をはじめとする男子水泳部員たち。
    そして捕獲を免れた人魚たちまで、生贄になった仲間の写真をスマホで撮っていた。
    大変な盛り上がりである。

    ナミちゃんは、腰を抱かれたりお尻を触られたりするたびに「やん!」と身もだえしながら、ずっと嬉しそうに、恥ずかしそうに笑っていた。
    真っ赤な顔をしていたのは、恥ずかしさのせいか、上下逆に吊られて頭に血が上ったせいか。

    私も少し躊躇したが、仕事のカメラを置き、ポケットから自分のスマホを出して逆さ吊りの彼女を写真に撮った。

    写真タイム!

    ・・
    ・・

    水泳部では例年、学園祭で競泳水着喫茶をするのが恒例だった。(ちなみに水着になるのは女子部員ではなく男子部員であった)
    それがこのような企画に変わったのは、実際に着用して泳げる人魚の下半身を入手したことに始まる。
    興味深々の女子部員がそれを着けて泳いだところ、たちまち水泳部内でブームになり、学園祭も人魚で行こうという話になった。

    ハンギング・マーメイドは、ノリで決めた Hanging Shark のもじりである。
    海で捕獲した巨大なサメを港に帰ってクレーンなどに吊るし、その前で乾杯したり記念写真を撮ったりするとき、吊るされたサメを Hanging Shark という。
    某テーマパークで吊られたジ○ーズは、正にハンギング・シャークだ。
    これを人魚でやったらどうか。
    捕獲ゲームをやって、ゲットした人魚を吊るすのである。
    1ゲーム2千円、いや5千円取ったって、客が来るという主張に、吊られることになる女子部員たちを含めて誰も反対しなかったという。

    ・・
    ・・

    次の組のゲームでまた人魚が捕まった。
    連続で捕獲されるのは珍しい。
    観衆は再び色めきたったが、私はあまり興奮しなかった。
    捕まったのは、ナミちゃんではなく別の女の子だったのである。

    私はその子にもインタビューしたが、最後まで「悔しい悔しい」の繰り返しだった。
    自分が捕まるとは思っていなかったのだろう。
    きっと負けず嫌いで、水泳選手としては優秀なのかもしれない。
    彼女は後ろ手に縛られ櫓に吊られると、目にうっすら涙を浮かべながら捕獲した学生たちをにらみつけていて、それはそれで好きな人にはたまらないかも、と思った。

    いずれにせよ、今年の学園祭の記事はマーメイド・ハントで決まりだ。
    いい写真も撮れたことだし。
    私は深い満足を覚えながら、自分のスマホをポケットの上から撫でるのだった。

    ・・

    帰り支度をして権田原に挨拶する。
    「ありがとうございました。いい記事が書けそうです。では、これで」
    「こちらこそっ。我が水泳部の紹介、よろしくお願いします!・・あ、記者どのっ。ちょっとこちらへ」
    権田原は大声で応えて、それから私を物陰に連れていった。
    もう暑苦しいのは勘弁して欲しいのだが。

    「えっと、実は、でありますっ」
    「はい?」
    「記者どのは、ウチの澤村部員に、その、好意というか、まぁ、ぶっちゃけて言えば、げへへっ、姉ちゃん、色っぽくてエエやないか~、と、そのような感情を、お持ちでしょうか」
    「は! いったいどうして、そんなことをっ?」
    「澤村本人から申告がありましたっ。あんな好色な目で見られたら、すぐに分かるわ、と」
    ナミちゃん!
    キミは私のことを、そんなふうに?

    「それで、その、お話でありますが!」
    権田原の目がぎらりと光った。異様な空気が漂ってきた。

    「今夜12時っ。水泳部有志による非公開のイベントが開催されます」
    「非公開?」
    「はいっ。ハンギング・マーメイドの特別鑑賞会でありますっ。出演は、澤村奈美!」
    え?
    「人魚の姿で高々と吊るした上、ブラジャーを外し、手ブラ! といいますか ・・もしかしたら、トップレス! でモデルを務める予定であります!!」
    て、てぶら!?
    とっぷれす!!!
    ・・でありますかっ。

    「念のために申し上げますがっ、これは、決して、嫌がる女子部員を無理矢理! というイベントではありませんっ」
    はぁ、はぁ。知らず知らずの間に呼吸が荒くなっていた。
    何だろう。この興奮は。
    「澤村自身が希望して・・、いやっ、いやいや! これは言ってはならないことっ。本人の承諾を得ての鑑賞会であります!」
    「そ、そう、でありますかっ」
    「それで、澤村からあなたにも、是非っ、ぜひに! 来て欲しいと」
    うわ!!
    「わ、私に、でありますか!」
    「はいっ。・・記事に書かれては、困りますが」
    権田原は揉み手をしながら、暑苦しい顔でにやっと笑った。
    「チケットはわずか3万円でありますっ。いかがでしょうか!?」

    「・・あ、あの」
    「何でしょうか!?」
    「しゃ、写真を撮っても、よろしいですかっ」
    「もちろんですっ。もう、好きなだけ、ウブ毛の一本一本まで接写で撮影してもらって、OKであります!」
    な、な、ナミちゃんの、ウブ毛!!!
    「ちょ、ちょっと、待って」

    私はふらふらとプールサイドに戻った。
    ちょうど、人魚たちが捕り手に追われて逃げているところだった。
    と、水面に一匹の人魚が浮かび上がった。
    ナミちゃん!!
    彼女は私と目が合うとウインクをして、妖艶に笑いながら水中に消えた。

    私はすぐに考えた。
    財布に3万円入っていただろうか。
    いや、なかったら、近くのATMで引き出して。

    ハンギング・マーメイド ハンギング・マーメイド



    恒例の学園祭ネタもついに6回目になりました。
    今年の主人公は地域コミュニティ誌の記者さん。
    お読みになれば分かるように、3年前 『女の子、担げます』 に登場した記者さんです。

    釣り上げたサメやカジキマグロをクルーザーのマストや港のクレーンに吊るし、シャンパンで乾杯。
    格好いいですよねぇ。
    あれを人魚の女の子でやったら楽しいな、と考えたのは私だけではありますまい。
    (え、私だけ・・?)

    実は作者は、キョートサプライズの構想で、裏クラブ会員客向けに人魚狩りのイベントを考えたことがあります。
    どこかの無人島で、人魚コスの女の子をたくさん海に放ち、それを皆で狩るのです。
    そして夕方。捕獲した獲物をずらりと逆さ吊りにして、乾杯するという趣向。
    ごくりと唾を飲むようなシーンになりそうですが、人魚の狩り方で困りました。
    釣り針や手網では、絶対に捕まりません。
    かといって銛や水中銃を使うのは、女の子の命にかかわるのでNG。
    漁船から巻き網でも下ろせば捕まりそうですが、それではもはや漁業ww。

    結局よいアイディアが浮かばないうちに、KSはシリーズ終了。
    大々的な人魚狩りはあきらめ、何をやっても許される学園祭で鬼ごっこをすることにしました。
    女子水泳選手が扮する人魚は簡単には捕獲できませんが、ゲットできたらハンギング・マーメイド!
    さあ、知恵を絞り戦略を練って、チームワークで挑戦してみませんか?

    ところで世の中には、サメの代わりに人間を吊る(吊られる)ことができる場所もあります。
    giggling marlin というキーワードで画像検索してみて下さい。
    このレストランは場所柄アメリカ人の客が多そうですし、ノリで吊られる女性は(男も^^)珍しくないのでしょうね。
    こんな設備があるなら、日に何度か人魚コスプレの美女を吊るして、有料記念写真サービスをやったら大ウケするのに、と思った私は不純でしょうか?

    ありがとうございました。




    バースデイ・キッドナップ 2

    1.
    「これでいいですか?」
    「うん、大丈夫だね。後は縄尻を巻いて纏めましょう」
    「はいっ」
    天井のリングから下がる縄を取ろうとしたら、それはまるであたしの手から逃げるように揺れて掴めなかった。
    あたしはその場でバンザイしながら、ぴょんぴょん跳ねて縄を取ろうとする。
    「と、届かないですぅ~」(我ながら間の抜けた声!)
    一緒に縛ってくれていた男の人が笑いながら縄を取ってくれた。
    縛られているM女さんにまでくすくす笑われてしまった。
    あーん、背がが低いと損だなぁ。

    週末のフェティッシュバーはお客さんでいっぱいだった。
    フロアのあちこちで女の人が縛られている。
    あたしの前にも、たった今縛らせてもらった美人さんが吊られていた。
    (あたしが縛ったのは少しだけで、肝心なところはみんなこの男性が縛ってくれたんだけどね)
    この人と男性はご夫婦なんだって。
    奥様は30才くらいかな。ほっそりしたボディにはブラとショーツの下着だけ。
    麻縄で高手小手に縛られた腕、腰から足首まで10センチ間隔に縛られた下半身。
    どこも自由になるところはなかった。
    そのまま頭を斜め下に向けて、棒みたいになって吊られている。
    床から頭までの距離はほんの10センチほどしかない。
    ほとんど逆さ吊りだよ。
    血が上って苦しいだろうな。

    と、旦那さまが奥様の肌に指を当て、そのまま、す、と撫でながら辿った。
    太ももの内側から、脇腹、お腹、そして胸の谷間へ。
    「あぁ・・ん」たまらずに上げた声。
    ものすごく色っぽくてぞくぞくした。
    身を震わせながら必死に逃れようとするけれど、それで許してもらえるはずがない。
    奥様の弱点を知り尽くした指が、敏感な箇所を執拗に刺激する。
    「は・・、やぁ・・っ」
    体中の筋肉に力を入れて、ぷるぷると顔を振りながら、なす術もなく耐えている。
    まだ10分ほどしか経ってないのに、綺麗な顔はもう真っ赤だ。
    あぁ、辛いよね。恥ずかしいよね。切ないよね。
    たまらないよね。
    ・・女を責めるなら、かくあるべし。
    あたしは自分も女のくせに、酷いことを考える。

    「はぅ!!」
    顎が持ち上がり、がんじがらめに縛られた体がきゅうっと逆海老に反り返った。
    うわぁ。柔らかいっ。
    女の体って、こんなにぎちぎちになっても、柔肌に縄を食い込ませて、たおやかに撓(しな)るんだ。
    あたしは感動して眺め続けた。
    (後でミズキさんに、マコトちゃんヨダレ垂らしながら見てたでしょ♥、って言われちゃった)

    「マコトちゃ~ん、こっち来てぇ」ミズキさんの声がした。
    「ニコちゃんが縛って欲しいって言ってるよ~!!」
    「早く来ないとオレたちで縛っちゃうよ~」
    セイさんとキタさんの声もした。
    「あっ、待ってぇ~!!」
    あたしはご夫婦にお礼を言ってから、そちらの方へ飛んでいった。
    「あは。マコトさん、お願いします」
    ニコちゃんがあたしに向かって頭を下げた。
    準備よくトレーナーを脱いでTシャツ姿になっている。下はデニムのショートパンツに生足。
    うん、可愛いよ!
    あたしは笑いながらミズキさんから赤い縄束を受け取った。
    「よぁーしっ。縄師マコトの腕を見よ!」

    2.
    あたし、マコトはもうすぐ二十歳になる女好きの女だ。
    女の子の裸や緊縛が大好物。
    高校を出て勤めるようになってから、ストリップや緊縛撮影会に行って楽しんでいる。
    キタさん、セイさん、ミズキさんはあたしと同じ趣味の仲間だ。
    キタさんは28才で自営業のお兄さん。
    セイさんは中年の銀行員。
    そしてミズキさんは女装趣味のサラリーマン。
    仲間といっても、それ以上のことは何も知らない。
    一昨年ネットで知り合って、月に何度か一緒に遊ぶだけの関係なんだ。

    男性3人と女の子1人の仲間だけど、いつも一番過激なエロトークをするのはあたしだ。
    あたしの前世は腹上死したエロオヤジじゃないか、なんてよく言われる。
    キタさんたちはそんなあたしに最初は驚いたみたいだったけれど、今ではすっかり慣れてあたしのエロトークを面白がってくれている。
    そして、去年仲間になったニコちゃんは19才の看護学校生。(学年はあたしより一つ下だよ)
    被虐願望の強い子で、女性の緊縛を見るときは自分が縛られている姿に置き換えて楽しむんだって。

    最近あたしたちがよく遊ぶのは、このフェティッシュバーだった。
    広いフロアは一度に何人も縛ったり吊るしたりできて、ベテランの緊縛マニアさんの縛りを見学したり、教えてもらったりするのにぴったりだ。
    あたしたちは、緊縛の世界にもっと迫りたいと思っていた。
    キタさんとあたしは、別の緊縛講習会にも通って自分で縛れるように勉強してる。

    3.
    「・・縄師マコトの腕を見よ!」
    ニコちゃんが背中で組んだ腕に、あたしは縄を掛けた。
    あれ、ニコちゃんノーブラ?
    「えへへ。マコトさん喜んでくれるかなって思って、トイレで外してきたんですぅ」
    「うわぁ、嬉しいよ~」
    あたしは彼女の柔らかい胸をTシャツの上から揉んであげる。
    「あぁ♥」「うふふ」
    「はぁん」「はぁ・・」
    しばらく、二人だけの時間になった。
    「・・あの、そろそろ続き、縛ってくれる」キタさんに呆れた口調で言われた。
    「あ、ごめんなさい」
    「いや。いつものことだし」
    あたしは、顔を赤らめて緊縛の続きにかかる。
    縄は練習用の赤い綿ロープ。
    偉そうなことを言っても、あたしは縛る側としてはまだまだヒヨっ子だ。
    キタさんに手伝ってもらいながら、どうにかニコちゃんを後ろ手に縛った。
    「どう?」
    「マコトさん、上手ですぅ」
    ニコちゃんがうっとりした声で答えてくれたので、ほっとした。
    「あの、足も縛って欲しいな、なんて」
    「いいよっ」うはは、リクエスト。
    彼女は足が綺麗なんだ。
    すっと長くて足首はきゅっと締まってるのに、太ももはばーんって張ってる。
    (あたし好みの足!)
    本人もよく分かってるから、どんなに寒い日にもミニスカやショーパンで生足を出してやって来る。
    あたしはニコちゃんの柔らかい太ももをすりすりして楽しみながら、膝の上下と足首を縛った。
    そのまま床に転がしてあげる。
    「あぁ・・、いいです、すごく」
    緊縛された体をもぞもぞ動かして、縄の具合を確かめている。

    えへへ、可愛いなぁ。愛おしいなぁ。
    あたしが縛った女の子♥。
    もう思いのままだぞ。
    ・・好きにしても、いいかな?
    あたしは、キタさんたちの顔を見る。
    キタさんも、ミズキさんも、セイさんも笑っていた。
    ・・いいよいいよ、好きにやって。
    みんな、あたしの趣味を分かってくれている。

    あたしはニコちゃんの脇に膝をつく。
    これから手術に臨む外科医みたいに両方の手のひらを自分に向けると、10本の指をうぞうぞと動かした。
    うっほほーいっ。
    Tシャツの裾をめくって、おへその回りと脇腹を撫でた。
    「やぁ~んっ」
    こんもり盛り上がったバストの頂上に突き出したぽっちを指で摘んだ。
    「きゃん!!」
    ショートパンツの前のボタンを外して、指を入れる。
    「な・・。ひゃ! やぁ!」
    え~いっ、もう止まらないよー。
    ショートパンツをずいっと膝まで下げさせた。
    クマの◯ーさんの絵が入った可愛いショーツが現われる。
    「や、止め・・。マ、マコトさ・・」
    左手でバストを揉みながら、右手で股間を押さえる。
    「あぁんっ。ああ・・!!」

    ニコちゃんの悲鳴はとてもキュートで、あたしの責めによく反応してくれた。
    さっきの奥様も素敵だったけど、やっぱり若いって素晴らしい。
    あたしは興奮して、ますます過激に彼女を責める。
    ショーツの上からあそこの位置を探り当てると、そのまま中指を突きたてた。
    「き・・・!!!」
    激しくのけぞるニコちゃん。
    いくら暗黙の了解があるといっても、男性だったら、ここまでの責めはできないと思う。
    彼女も相手が女だから、安心して身を任せているんだ。
    あたしは自分が女であることを幸せに感じながら、彼女を苛めた。
    (ショーツの中にまで直接指入れちゃった!)
    いつの間にか◯ーさんのショーツがぐっしょり濡れていた。
    「あ、あ、あ、あ・・」
    今までと違う声を上げると、ニコちゃんの体がびくびく揺れて、そして動かなくなった。
    あ、イッた。 

    ぱちぱちぱち。
    拍手が聞こえて顔を上げたら、たくさんのギャラリーに囲まれていた。
    「お疲れ様! ものすごく興奮したわよ!」
    ミズキさんがおしぼりを手渡してくれた。
    それを受け取る自分の指がぬるぬるしているのにようやく気付いた。

    4.
    ふぅ~。
    ソファに腰を下ろしてグラスのコーラを一気飲みした。美味しい~。
    隣に座ったニコちゃんは、当人の希望で後ろ手に縛られたままだ。
    あたしの方にもたれかかり、とろんとした表情をしている。
    その肩に右手を乗せて強く引き寄せると、左手の中指でで乳首を軽く弾いてあげた。
    ニコちゃんはびくんと震えると、あたしを見上げて恥ずかしそうに笑ってくれた。
    ぐはははは。初い子じゃのぉ~、
    あたしは目尻を下げてオヤジみたいに笑う。
    すっかりハイになっていた。
    本当に縄師になって、可愛い女の子を縛りまくってあげたいと思った。
    美女を狂わす女縄師マコト。
    げへへへ。

    「あっちのパイプのスペースが空いたんだ。行かない?」キタさんとセイさんがやって来て言った。
    キタさんが指差す場所は、天井近くにパイプで吊床が組んであって、そこに縄を掛ければ吊りができるようになっている。
    「行く!」
    あたしは立ち上がった。
    「元気ねぇ」ミズキさんが笑う。
    「だって、あたし縄師になるんだもん」
    「え?」「縄師?」「本当?」
    「あ・・、いや、縄師になれたらいいなぁ、って。・・あはは、まぁいいじゃないっすか」
    思わず口走ってしまった願望を笑ってごまかす。
    「って、それより誰にモデルしてもらうんですか? ニコちゃんはしばらく無理ですよ」
    「あ、それは決まってるでしょ」
    キタさんが当たり前みたいに言った。
    「マコトちゃんさ、次に縄を受けるのは」
    え。

    「あの、あたし、まだ縛るつもりだったんですけど」
    「却下。縄師もいいけどね、女の子なんだから縛られる方の義務も務めてもらわないと」
    「あ、・・その」
    「確か、誰でも美少女には緊縛される義務があるって言ったの、マコトちゃんだよね」
    セイさんが言った。ミズキさんもうんうんと首を縦に振ってる。
    そうだ。
    正しくは『誰でも』じゃなくて『すべからく』。
    去年行った撮影会の緊縛モデルさんがものすごい美少女で、あたしは興奮しまくって言ったんだ。
    ・・美少女って、すべからく緊縛される義務がありますよねっ。
    ・・知ってますか? 『すべからく』って『すべての』の意味じゃないんですよ。『当然のこととして』なんですよぉ。
    どこかで聞いた知識を偉そうに喋ったっけ。

    「皆さん、あたしのこと、美少女って認めてるんですか?」
    「もちろん!」「当たり前でしょ」「マコトちゃんは僕らのアイドルだもん」
    皆が一斉に頷いた。
    あはは。お世辞でも嬉しい。
    なら仕方ないね。美少女の義務を果たさなきゃ。

    あたしは胸に手を当てて目を閉じた。
    ・・さあ覚悟しなさい。あたし。
    目を開けると、やおらセーターを脱いだ。
    その下に着ていたブラウスのボタンを一つずつ外す。
    別にまるまる着衣でもいいんだけど、こういうとき、女の子が肌を見せるのは男の人に対してマナーだと思うんだ。
    皆があたしを見ている。これから縄を受ける女の子を見ている。
    ぎゅぎゅぎゅ~ん。
    心が切り替わる。縄師モードからマゾのモードに。

    「お、いい顔になったねぇ」「色っぽいよ~」
    「もう、ばか」
    上半身ブラだけの格好になると、脱いだ上着を丁寧に畳んで置いた。
    下はジーンズを穿いたまま。
    「あれ、上だけ?」
    「ごめんなさい。今日は可愛いパンツ穿いてこなかったから、このままで許して」
    「僕ら、下着なんて拘らないけど」
    「ダメ! 女の子にとっては大事なことなのっ」
    可愛いパンツを忘れたというのはウソだった。
    ジーンズの下には、とっておきのショーツをちゃんと穿いている。
    でもさっき綺麗な足を見せてくれたニコちゃんの後で、自分の足を出すのは恥ずかしかった。
    キタさんたちはそんなことで笑ったりしない。それは分かってる。
    でも、自分の太い足を私自身が見たくなかったんだ。
    もっと痩せなきゃ、と思う。これでも去年より4キロは体重減らしたんだけどね。

    元々あたしは太っちょ、かつタヌキみないな丸顔で、自分が綺麗になるなんて考えたこともなかった。
    でも去年の誕生日、キタさんたちがあたしを捕らわれの美少女にしてくれた。
    鏡に映った自分を見て、初めて自分のことを綺麗って思えたんだ。
    それから、あたしは相変わらず女の子の裸や緊縛を愛でながら、ときどきはあたし自身の裸や緊縛も愛でてもらうようになった。
    全然する気もなかったダイエットだって始めたんだ。

    5.
    キタさんたちとパイプのスペースに行くと、またぞろぞろ人が集まってきた。
    ・・さっき縛ってた女の子が、今度は縛られるらしいぞー。
    えー、こんなにたくさんの前で縛られるの?
    恥ずかし~。でも、みんな喜んでくれるなら頑張って縛られる。
    美少女の義務だもんね。
    紅潮した顔が一層赤くなるが自分で分かった。

    キタさんが綿ロープではなく麻縄であたしを縛り始めた。
    あたしの緊縛よりもずっと上手だった。
    両手がかっちり固定される。バストの上下も縄で締めつけられる。
    あたしの自由、少しずつ失われて行く。
    「えっと、この縄はこっちに掛けるね」
    「ミズキさん、そっち頼みます」「まかせて」
    いつの間にか、セイさんとミズキさんも一緒にあたしを縛っていた。
    どこで練習したんだろう。みんな、すごく手際がいい。

    ・・あっ。
    左足が頭よりも高く持ち上げられた。そのまま膝で折って、太ももと脛をまとめて縛られる。
    腰から下が反り返った。
    あたしの意志と関係なくあたしの体はみんなの思いのままなんだ。
    目を閉じて身を任せる。
    ・・弄ばれる、快感。
    ぼうっとして、とろとろになりそうだった。
    心も、体も、命すら、任せる、幸せ。

    マコトちゃん 横吊り

    いつか、あたしは空中に浮かんで揺れていた。
    上を向いているのか下を向いているのかよく分からなかった。
    うっすら目を開けると、たくさんのデジカメやスマホのカメラがこっちを向いていた。
    ほわらぁ。
    いやだぁって言ったら、口に縄を噛まされていてすごく変な声になった。
    あたし、どうなってるんだろ。・・逆海老で、横吊り?
    ものすごくきついポーズじゃないかな。
    でも、ぜんぜん辛くなかった。それどころかものすごい快感だった。
    何もできない。動けない。
    ただ、吊られて揺れている。ゆらゆら揺れる。
    意識が朦朧(もうろう)となるのすら、気持ちいい。
    みじめだよ。たまらないよ。


    フェティッシュバーの帰り道。
    ニコちゃんがあたしに寄り添って歩いてくれた。
    「マコトさん、綺麗でしたぁ」
    あたしはきちんと返事もできずに、ただぼんやり笑うだけ。
    ニコちゃんが縛られたときと逆だ。
    あたしは、ずっとマゾモードのまま戻ってこれないでいる。
    (実はまだ、とろとろなんだ)

    「マコトちゃん、苛めてごめん。実は・・」
    キタさんたちは、あたしが二十歳になる記念に、3人で縛る準備をしていたのだと教えてくれた。
    セイさんも、ミズキさんも、縄師さんに教えてもらったんだって。
    あたしのために、こんなにしてくれるキタさん、セイさん、ミズキさん。
    苛めてごめんなんて、逆にあたしは嬉しくて感謝したいくらいなのに。
    ああ、どう感謝したらいいだろう。

    あたしの二十歳の誕生日は、もう再来週に迫っていた。
    あたしには、去年のうちから、みんなに約束していたことがある。
    それは、あたしが二十歳になったら、あたしの初めてを3人の誰かにあげるってこと。
    勢いで言ったことじゃない。あたしの本当の気持ちだった。
    そろそろ、実行しないと。誕生日、過ぎてしまうよ。
    「あ、あの・・」
    あたしは恐る恐る言い出した。
    「何?」前を歩くキタさんたちがこっちを見る。
    「・・あ、いえ。何もないです」
    あーっ、もう。
    いつものあたしだったら、エロトークしながらもっと軽く話せるのに。

    キタさんたちは互いに目配せして頷き合った。
    「あのね、マコトちゃん」ミズキさんが言った。
    「・・あの約束のことなら、気にしなくてもいいのよ」
    「マコトちゃんがあれを言ってくれただけで嬉しく思ってるんだからね」キタさんが言った。
    「私らよりも、本当にマコトちゃんにとって大事な人が現れたときのために、取っておけばいいんですよ」セイさんも言った。
    もう、3人とも相変わらず優しいんだから。
    「でも、あたし、みんなに応えたい。あたしの何もかも、みんなに捧げたい」
    「本当にそう思ってるの」
    「はい」
    3人はもう一度頷き合い、そしてキタさんが言った。
    「えっと、真剣にそう思ってくれるなら、僕らから提案がないこともないけど」

    7.
    あたしの二十歳の誕生日。
    そこは以前に来たことのある撮影会のスタジオだった。
    あたし、キタさん、セイさん、ミズキさん、ニコちゃん。そして、知り合いの縄師さんが集まっている。
    キタさん、セイさん、ミズキさんはいつものカジュアルじゃなくて、きちんとスーツとネクタイをしていた。
    ミズキさんの男装なんて初めて見るよ。ものすごくイケメンだった。

    セイさんが白い封筒を3通、テーブルに並べた。
    「この中には軽貨物便の伝票が入っています。宛先はそれぞれ私ら3人の住所」
    そう言いながら、封筒の順番をシャッフルした。続いてミズキさん、そしてキタさんもシャッフルする。
    「さあ、これでどれが誰宛なのか、分かりません。・・マコトちゃん、この中から一つ引いて下さい」
    あたしは深呼吸をして、1通の封筒を取った。
    「皆さん、いいね。これで公平だ」
    「しっかり見ましたよ」「うん、誰が選ばれても恨みっこなし」
    あたしの前で3人が笑った。
    「僕ら、これから帰ってマコトちゃんを待ってる」
    「うん、本当にありがとう」
    あたしは一人ずつ抱きついて、頬にキスをした。
    本当にみんな、大好き。

    3人がスタジオを出ていってから、縄師さんが言った。
    「では準備しましょうか」
    「はい、お願いします」
    あたしはそう言って頭を下げた。
    目の前には、大きな木箱が置いてあった。
    あたしは、この箱に梱包されて3人の誰かにトラックで配達されるんだ。
    どき、どき。

    ニコちゃんが服を脱ぐのを手伝ってくれた。
    (どんな服装がいいか二人で相談した結果、男性に喜んでもらえるし女の子の覚悟も伝わるから、やっぱり全裸でお届けされるべきって一致したの)
    「マコトさんが羨ましいです」ニコちゃんが言った。
    「こんな目にあえるんなら、あたしも処女でいたらよかったな」
    「そうね、19才だと経験済が普通だものね」
    「どうやって失くすかが大切ですよ。あたしなんてロストバージンなんて当たり前過ぎたから」
    ニコちゃんはあたしの手を握った。
    「素敵な体験して下さいね、マコトさん」「ありがとう」

    縄師さんは、麻縄を使ってとても優しく縛ってくれた。
    向こうまで何時間かかるか分からないから手足の血行を妨げないように細心の注意を払ってくれた。
    でも、どれだけもがいても絶対に緩まないから安心して、とも言われた。
    どき、どき、どき。

    箱の底にスポンジを敷いて、縛られた体を入れてもらう。
    お尻をついて座り、両方の肩が後ろの壁に当たるようにしたら、ちょうどの広さだった。
    隙間にスポンジ片をいっぱいに詰めてもらった。
    ばたんと蓋が閉じて、あたしは暗闇の中に閉じ込められた。
    女の子の梱包、できあがり。
    手足は、もちろん動かせない。ぎっしり詰まったスポンジの中で、ほんの少し体を動かすこともできない。
    どき、どき、どき、どき。

    いつものあたしだったらヨダレもののシチュエーションだけど、今のあたしにそんな余裕はなかった。
    あたし、プレゼントだよ。たった一人の男性のためのプレゼント。
    胸の中がもどかしさでいっぱいになった。
    はぁ~。大きく深呼吸。
    体中の筋肉にぎゅうっと力を入れた。
    きゅい~ん!
    あたしを包む縄が全身を締め上げて、あたしの子宮を刺激した。
    何度も力を入れてはその度に、じゅん、と濡れた。

    ・・大好きなキタさん、セイさん、ミズキさん。
    あたし、皆さんの誰かが受け取ってくれるまで、ずっとこのままです。
    プレゼントが届いたら、美味しく食べて下さいね。

    8.
    永遠の時間が過ぎた。
    蓋をこじ開ける音。
    次の瞬間、まぶしい光に包まれた。
    そこにいる男性に向って明るく微笑みかけようと思ったけど、ほんの少し口元をゆがめるのが精一杯だった。
    涙を一杯に浮かべた目で、あたしはその人を見上げた。



    ~登場人物紹介~
    マコト: 20才。本話主人公。女の子が大好き。やや太めのボディはダイエット中。
    キタ: 28才。マコトが高校を出て働くようになったとき、ネットの掲示板で知り合った男性。
    セイ: 42才。同上。
    ミズキ: 26才。同上。女装趣味の会社員。
    ニコ: 19才。新しく仲間になった少女。

    本年最初のSSは、昨年掲載した バースディ・キッドナップ の約1年後です。
    マコトちゃんとその仲間のオフ会は順調に続いて、新しいM少女の仲間も増えたようです。
    このお話では、仲間で繰り出したフェティッシュバーとマコトちゃんの二十歳の誕生日のイベントを描くことにしました。
    女の子大好きで緊縛勉強中のマコトちゃんと、Mっ気が満ちてとろとろになったマコトちゃん。
    それぞれお楽しみいただけたら幸いです。

    セクシーな女の子が大好きだけど、自分自身も女であることをちゃんと意識した女性。
    作者がひとつの理想とするタイプです。
    でも、そんな女性は男に対する目も厳しいのでしょうね。
    このお話のマコトちゃんは、処女ということもあるのか、男性に惚れっぽすぎる気もします。
    彼女はバージンを3人の誰かにあげましたけど、他の2人とも絶対にしちゃうだろうなと思います。

    なお、マコトちゃんの輸送には宅配便ではなく軽貨物便を使うことにしました。
    軽トラ1台を貸しきる形式ですから、大きな木箱などでも搭載し易いだろうという理由です。
    決して生きた人間の配達まで請け負ってくれる訳ではありませんから、ここはファンタジーとして理解して下さいね。
    (まあ、個人事業者が多い業態なので、キタさんかセイさんあたりと懇意にしてる業者なら・・。あわわ)

    では皆様、2014年もよろしくお願いいたします。
    ありがとうございました。




    たてセタ大作戦

    1.
    「たてセタ? 哲男がそう言(ゆ)うたんか?」
    大坪理子(おおつぼりこ)が聞いた。
    「うん。首元はタートルでもVネックでもいいけど、袖はノースリーブにこだわりたいって」
    高野小町(たかのこまち)が答えた。
    ここは理子の部屋である。
    二人とも学校帰りの制服のままで、ベッドに座って話している。
    「"セタ" はセーターのことって分かったけど、"たて" って何やの?」
    「ああ、ちょっと待って。・・たてセタっちゅうのはな、」
    理子はパソコンのスイッチを入れて、イラストSNSの画面を表示させた。
    たてセタは、縦セーターともいい、縦リブ(縦方向の織り目)の入ったセーターを着用した女性を指す。
    「ほら、これも見い。『一部の紳士淑女の間では女性が縦セタを着ている姿にときめくという萌え要素、フェティシズムの一種としての地位が確立されている』(抜粋・ニコニコ大百科)」
    「ほぇ~」
    小町は眼鏡に指をあて、画面に顔を近づけて見た。
    「最近、人気のキーワードなんや。この先、"彼シャツ" と比べてもええとこ行くんやないかと言われとる」
    「さすが理子っ。詳し~い」
    「それにしても哲雄のヤツ。いつの間にこんな嗜好を身につけたんや」
    「それは理子と付き合ってるせいとちゃうの?」
    「まるでウチがオタクみたいやない、その言い方」
    「えー、違うの?」

    小町と理子は高校2年生。同じクラスの親友である。
    理子の彼氏で3年生の木村哲雄の誕生日が近いので、どうやってお祝いするか相談しているのだった。
    理子と哲雄は付き合って1年。
    最初のデートでキス、1ヶ月で早くもホテルに行った関係である。
    まだまだラブラブだけど、そろそろ新しい刺激が欲しいところ。
    「そやけどなぁ。たてセタとか、そういうんはウチはあんまり。・・せっかく哲雄の好みを聞いてきてくれたのに悪いけど」
    「何言うてるの。理子、あたしのときはノリノリで裸リボンさせたくせに」
    「あれは小町のためにやったげたんや。あんたら二人とも、あれでぐっと仲良うなったんやろ?」
    「それはそうやけど」
    裸リボンとは、小町の彼氏、守口健(もりぐちたけし)の誕生日のときのことである。
    健との関係がいっこうに進展しないことに悩む小町に、理子がしゃしゃり出て、小町を裸リボンにして健にプレゼントするという奇策に出たのだった。
    これで小町と健は、ただの彼氏彼女の関係から一段と進展した関係になれたのである。
    ただし "一段と進展した関係" とは、いわゆる "えっち" の意味ではなかった。
    どうやら小町はちょっと変わった趣味に目覚めてしまったらしいのである。

    「なぁ小町、もしかして小町の方がやりたなったんと違うんか、たてセタ」
    「えへへ。可愛いもん。・・ね、スカートとか穿かないで足見せるんでしょ?」
    「そ、そういうんもあるな」
    「ブラは? ブラは?」
    「やっぱり、ノーブラ、かな?」
    「きゃあ~っ。じゃあ、いつ脱がされてもOKやねっ。セーターの上から触ってもらってもいいし♥」
    小町ては両手を握り合わせて喜ぶ。
    「ね、リっコ! あたしも一緒にしたげるからっ。やろぉやろぉ~」
    「そやけど・・」
    小町はついに立ち上がり、理子に向いて両手を腰にあてた。
    「もうっ。今までずっと言う通りにしてもらってたんでしょ? たまには彼の言うこと聞いてあげて、可愛いとこ見せるの!」
    「・・」
    「ねーえっ。リッコ!!」
    「・・わかった」
    理子が小さな声で言った。
    「え?」
    「ヤル。・・あきらめて、可愛いこと、ヤル」
    「やった! そうよね、人間あきらめが肝心っ」
    小町は飛び上がって喜ぶ。
    「可愛いリボン、頭に付けようね!!」
    「うぅ」
    はしゃぎまわる小町の横で、能面のような顔になった理子であった。

    2.
    二日後。
    「買(こ)おて来たよ~」
    小町がピンクのセーターを二着買ってきた。
    「ほらっ。リクエストの通り、ノースリーブ!!」
    首元はゆったりしたタートルネック、縦リブが等間隔で入ったセーターである。
    とりあえず二人でショーツ一枚の裸になってセーターを試着する。
    「ちくちくする~っ」「センパイのためっ。我慢我慢!」
    並んで鏡の前に立った。
    「うっ」リコがうめいた。
    「あら♥」小町が喜んだ。
    「・・ウチら、同じサイズ着てるんやな?」
    「うんっ。同じサイズやで」
    小町が両手を上げた。セーターの裾から下着が覗いた。
    両手を下ろす。下着がかろうじて隠れた。
    「きゃんっ。絶妙の丈(たけ)! 健くん、喜んでくれるかなぁ」
    「丈はええんや。丈は」理子が言う。
    「上の違いは何や」
    「え? あはは」
    「笑うなっ。・・ブラ着けへんのに、あんたは何でそないに突き出てるねん」
    「理子は、」
    「言わんでええっ、その先は!」

    小町が着たセーターの胸元は大きく盛り上がっていた。
    縦リブのラインが左右のバストに沿って美しいカーブを描いている。
    それに対して理子の胸元は平らであった。
    正確にはわずかな隆起が確認できるものの、縦リブのラインはほとんど曲がることなくまっすぐなのであった。
    「ウチとしたことが、忘れとったぁっ。たてセタは胸がないと話にならんのやぁ~!!」
    「理子~」
    「だいたい小町、いつの間にそんな巨乳になったんや! ブラのサイズはなんぼや?」
    「んー、90のDかな」
    「ええ~!?」
    「この半年、健くんと付き合ってるうちに大きなったみたいで」
    「あの裸リボン以来か」
    「うんっ。二人きりのときは、だいたい服着てへんし」
    「あ、あんたらは、どれだけ乳(ちち)くり合(お)うてるんや!!」

    理子は小町の胸をセーターの上からむんずと押さえた。
    「きゃ!!」
    膝をついて崩れる小町の胸を揉む。揉みまくる!
    「おお~っ。柔らかっ!」
    「や、やめぇ・・っ。ああぁ~!!」「くのくのくの~!!」
    「あ、・・あぁん」
    「はぁ、はぁ・・」「はぁ、はぁ・・」

    閑話休題。

    「え~っ、まだエッチしてない!?」理子が驚いて聞いた。
    「してへんもんっ。あたしはね、彼との初夜まで純潔を守るの!」
    「そやかて、全裸でいるって言うたやん」
    「それは、あたしだけ。彼はきちんと服着てるから」
    「・・それ、いつか言うてた裸サービスってやつか?」
    「うんっ。理子はぜんぜん付き合うてくれへんし、あたしだけ健くんにサービスしてるの」
    「守口は手ぇ出さへんのか。全裸の小町がそばにいて」
    「彼は紳士やもん。・・でも、キスして、そのあと胸とか触ってくれる」
    「我慢の代償やな。激しいやろ」
    「何よ、それ。まあ、ときどき強く揉まれることもあるかな」
    「下も触られるんか」
    「えっと、それは、」
    「触らせとるんか。それで純潔やなんてよお言うわ」
    「ゆ、指は入れてないもんっ」
    「なら、何やっとるんや?」
    「・・えっと、手のひらで押さえてくれたり、舐めてくれたり」
    「ペ、ペッティングか! ウチかてしたことあらへんのにっ」
    「勝ったっ」
    「ええんか? なぁ、気持ち、ええんか?」
    「うふふ」
    「ぐわぁ~っ」
    理子は両手で頭をかきむしる。
    「理子もセンパイにしてもらったらいいのに」
    「そやけどアイツ、そぉゆうことはウチが言わんと・・、よおーし!」
    理子は立ち上がった。
    「決めた! ウチも巨乳になって哲雄をユーワクするっ」
    「別にあたしは誘惑なんて」
    「目指せ、Dカップや」
    「え、理子もセンパイに揉んでもらうの?」
    「今からそれやって、誕生日までに大きゅうなるかいな。ウチがするんは盛乳や」
    「モリチチって何?」

    3.
    理子は物置からガムテープを持ってきた。
    「一番効果があるんはガムテープやねん」
    「それでどうするの?」
    「寄せて上げる!」
    セーターを脱ぎ、左右の胸を手で寄せて持ち上げた。
    「・・こう、ぐっと寄せたところで、」ガムテープを顎で指す。
    「アンダーバストを跨いで貼ってくれる」
    「わかった」
    小町がガムテープをびりりと引き出し適当な長さに切った。
    「えっと、この辺?」
    「もうちょっと上」
    「ここ?」
    「よっしゃ。そのまま押さえて」
    小町は理子の胸の下にガムテープをぺたりと押しつけた。
    「どや?」
    「わぁっ、すごい!」
    平らだった理子の胸にくっきりと谷間が刻まれていた。
    「おおーっ!、これがウチの胸か?!」
    理子も自分の胸を鏡に映して喜ぶ。
    「ちょっと乳首の位置が変やけど、まあええわ」
    「あ、あ、あたしも、やっていい?」
    小町もセーターを脱ぎ、自分の胸の下にガムテープを貼った。
    「きゃあ、不思議な感じ♥」
    「小町、あんた」理子が小町の胸を見てうめく。
    「・・でか過ぎ」
    小町の胸はドッジボールのように突き出していた。

    二人でセーターを着た。
    「うん、なかなかやな」理子が鏡の前で満足気に言う。
    「あたしも、どう?」
    小町が両手を頭の後ろにあてて身をくねらした。
    ぶるんぶるん。ドッジボールおっぱいが左右に揺れた。
    「あはは。それは異常やで。ホンマにやったらあかんで」
    笑いながら理子は自分の胸を撫でて、縦リブのカーブを確認した。
    うんっ、ええやんか。Dカップは無理でもCはいったな。
    よーし、待っとれよ哲雄!

    ・・

    次の日の朝、学校。
    「小町ぃ~」理子が情けない声で小町に言った。
    「どうしたの? 理子」
    「腫れたぁ~」
    「え」
    トイレに一緒に入って、理子の胸を見た。
    理子は制服の下にブラを着けず、乳首にニフレスだけを貼っていた。
    ガムテープで持ち上げていた跡が赤くなっていた。
    「うわ、痛そう」「痛いよぉ」
    「どうしてこんなになったの」
    「嬉しゅうて、そのまま寝たらこうなった」
    「朝まで貼ったままでいたの? そら腫れるよ」
    「・・小町ぃ、今日ヌーブラ買いに行くの付き合って」
    「ヌーブラ? 何するの?」
    「ネットで調べたんやけど、ヌーブラ使(つこ)て胸を盛る技術があるねん」
    「えー、まだするのぉ」
    「テープの角(かど)も立たへんし、肌に刺激も少ないんや」
    「ねぇ理子。テープとかヌーブラとか使って胸作るの、止めへん?」
    「イヤやっ。ウチも巨乳になりたい」
    「でもね、木村センパイの前でセーター脱いで見せるでしょ? そしたらセンパイきっとびっくりする」
    「・・」
    「そやから、ね。悪いことは言わへんから、偽乳(にせちち)は止めよ?」
    「・・うっ、・・えっ」
    「理子ぉ、」
    「え、えっ、ええ~んっ」
    理子は小町に抱きついて泣き出した。
    「そんなに声出して泣いたら、トイレの外に聞こえるよぉ」
    そんなに胸が欲しかったの?
    小町は泣き続ける理子の背中をさすりながら思った。
    理子が小町の前で泣いたのは、高校に入って出会ってから初めてのことだった。

    その日の昼休み。
    屋上で小町と守口健が話し込んでいた。
    健がOKというふうに親指を立てて頷き、小町がその手を握って喜んだ。

    4.
    再び理子の部屋。小町が理子に言った。
    「あのね、健くんがいい方法があるって」
    「守口に話したんか?」
    「理子のために相談してるんやから、文句言わないの」「はい」
    「それでね、もうすぐ持ってきてくれるから」
    「何を?」
    「えへへ。今度あたし達も使おって用意してあったもの」
    「?」

    ピンポーン。
    「健くん!」
    2階の部屋の窓から門の外に立つ守口健が見えた。
    小町が降りていって、紙袋を受け取った。
    「これ」
    「ありがとー♥」
    「ボクは手伝わなくて大丈夫?」
    「うん。これは女の問題やから」
    「そうか。ならこれ、縛り方の説明。何箇所かのサイトで印刷してきた」
    「うわあっ、サンキュ!」
    小町が健に飛びついてキスをした。
    「んっ」「んー」
    二人は案外長い時間、唇を合わせ、それから健は手を振りながら去っていった。

    「人の家の玄関先で、何恥ずかしことしとるんや」
    「あら♥ 見てたの?」
    「見えるわっ。・・で、それ何」
    「うふふ」
    にやぁ~と笑って、小町が紙袋から出したのは赤い縄束である。
    「それ・・」
    「さあ、たてセタに着替えましょ。練習するよぉ」
    「何でそんなに楽しそうやねん」
    「うふふ。覚悟しなさいっ」
    「うわ! わ、分かったっ、分かったから、馬乗りになって服を脱がすなぁ~」
    「ほれほれ、さっさと裸になりぃ」
    「あれぇ~~!!」

    5.
    そして日は巡り、今日は木村哲雄の18才の誕生日。
    「お待たせしましたー。プレゼントのお出まし~!」
    襖を開けて小町と理子が登場した。
    理子は頭に大きなリボンをつけている。
    おお~っ。
    待っていた哲雄と健が歓声を上げた。

    小町と理子は、下着1枚だけ穿いて、その上からセーターを着ていた。
    哲雄指定のノースリーブのたてセタである。すらりと生えた素足とちらちら見えるショーツが生々しい。
    小町の胸は縦リブの下からどーんと盛り上がっていた。
    そして、理子の胸も小ぶりながら美しく盛り上がっていた。
    理子の胸の上下に縄が掛かり、それで締め上がった胸が突き出しているのである。
    小町は理子を縛って連れてきたのだ。

    「はぁいっ。こちらのプレゼントは亀甲縛りで仕上げてございまぁす♥」
    亀甲ではなく正しくは菱縄だが、誰もそんなことは気にしていない。
    おおっ~、ぱちぱちぱち。男性陣が大喜びで拍手をする。
    「はい、木村センパイにプレゼントからご挨拶」
    「あ、お、」
    理子は口の中でもごもごと言いかける。
    「頑張れ!」小声で応援する小町。
    「哲雄、ハッピー・バースディ。・・その、ウ、ウチを、お好きに、召し上がって、下さい!」
    真っ赤な顔である。
    うんっ、うんっ。
    哲雄は感動して何度も肯いている。
    この1年、常に理子に主導権をとられ、言われ通りに従ってきた。
    その理子が自分の望んだ格好をして、しかもこんなに殊勝なセリフを言ってくれたのである。
    哲雄の眼には熱く光るモノすら流れているのであった。

    「さ、どーぞ、これをっ」
    小町が後ろ手に縛った理子の縄尻を哲雄に渡した。
    哲雄は立ってそれを受け取り、理子を抱きしめた。
    そのまま、深く、長いキス。
    縄で縛られた理子の身体が細かく震えていた。

    おお~。理子やったー!
    小町と健は並んで二人のキスを見守る。
    自分達もキスはするが、これほど刺激的なキスはしたことがない。
    やがて理子の膝から力が抜けて崩れ落ちそうになるのを哲雄が支えて床に座らせた。
    そして再び深いキス。
    「は、・・はぁん」
    哲雄の膝でぐったりした理子は、頭から爪先まで赤く染まっていた。
    ぞくぞくするような色っぽさだった。

    「あ、そやっ、ケーキ! ・・ケーキ運ぶねっ」
    急に思い出したように立ち上がった小町を健が止めた。
    「二人だけにしてあげよ」
    「え? ・・あ、そっか」
    二人を残して部屋を出た。
    「どうするの?」
    「ボクの家に行こか。そこで、またその格好してよ」
    「・・うんっ」

    理子・たてセタ緊縛!

    6.
    「おはよー」
    始業ぎりぎりの時刻になって理子が教室に入ってきた。
    赤い目をしている。
    「理子、大丈夫ー?」
    「ん、朝まで寝かせてもらわれへんかったぁ」
    「まさか、センパイの家からそのまま来たの?」
    「一応帰って、シャワーだけ浴びて来た」
    「センパイは?」
    「寝てる。今日はフケるって」
    「うわぁ~」

    理子は午前中の授業をほとんど寝て過ごし、お昼になってようやく元気になった。
    「・・あんたはどうしてたんよ。小町」
    「健くんの家に行ってた」
    「そっか。それでやったんか? えっち」
    「しないよー。たてセタの上から触ってもらってただけ」
    「あんたらもある意味すごいわ、ホンマに」
    「何言うんよ。朝までずっとえっちしてた人が」
    理子と小町は揃ってにやっと笑った。
    互いに相手を認める笑いだった。

    「・・それで理子、あたしまだ、聞いてへんねんけど」
    「聞いてへんって、何を?」
    「お礼」
    「あ、」
    「・・彼の前で裸でセーター着るのは素敵でした」
    「え、」
    「・・縛られてプレゼントになるのもよかったです」
    「あぁ、」
    「・・男の人に身をまかせて、思いのままにされるの、最高でした」
    「はぁ・・ん」
    「もう、全部あたしに言わせてどうするんよっ」
    「にゃはは! おおきに。小町にはホンマに感謝や」
    「いいよ。親友やない」

    「よぉしっ、来年の守口の誕生日もウチがプロデュースしたげるからな」
    「え? また」
    小町の顔が一瞬で赤くなった。
    「今度は小町の身体にクリーム塗って、女体盛りケーキとか、どうやろ」
    「あ、」
    「守口が舐めても暴れへんように、小町は縄でぎちぎちに縛っとく」
    「ああっ」
    「ローソクも立てなあかんな。全部で18本。乳首の周りとお腹の上と、あそこにも挿して、」
    「はぁ・・ん」
    「小町ぃ。何で想像だけでそこまで赤(あこ)うなれんねん!」
    「・・」
    「・・ぷっ」「・・うふふ」
    「あははっ」



    ~登場人物紹介~
    大坪理子(りこ): 17才 高校2年生。彼氏の誕生日のお祝いに悩む女子高生。
    高野小町(こまち): 16才 高校2年生。かつて理子に裸リボンにされた女子高生。
    木村哲雄: もうすぐ18才 高校3年生。理子の彼氏。
    守口健 (たけし): 17才 高校2年生。小町の彼氏。


    (中編)『はだかリボン大作戦』の続編です。
    おっとりした小町とちゃきちゃきの理子。
    今回は立場が入れ替わって、おもちゃにされるのは理子の方。
    二人の掛け合いがちょっとしつこくなりましたが、お許しを。

    前回のお話では、小町が男の子に裸サービスをしようと言って終わりました。
    しかしお話を書こうとすると、全裸や裸エプロンは当たり前過ぎて萌えません。
    そこで、最近その存在を知って萌えた『たてセタ』を使うことにしました。
    これを考えた方はなかなかのテクニシャンだと思います。
    女の子に着せたセーターの縦リブが描く曲線は確かに美しい。
    しかし、たてセタは巨乳少女が着るものというお約束があるのか、ネットのたてセタ画像はセーターの下にゴム風船でも詰めたかのような絵が目につきます。
    そこで、巨乳でなくても十分可愛いぞという意図をこめて、貧乳の理子にたてセタを着てもらいました。
    さらに胸の上下を縄で締めて乳を盛り上げる、という名目の下、お約束の着衣緊縛を施したのでした。

    それにしても挿絵のイラストでは縄で締めてもこの程度の盛り上がり。
    ・・さすがに可哀想かな?
    ごめんね、理子ちゃん。

    ありがとうございました!




    [JK拷問倶楽部] 誘い

    1.
    ある日突然、椿ちゃんが言った。
    「ね、こなちゃんって、マゾでしょ?」
    あたしは飲みかけの抹茶ラテを吹き出しかける。
    「いきなり何聞くのよっ!」
    「だって、ほら、この間、囚われのお姫様っていいねって言ってたじゃない」
    ああ、それか。
    一緒に見た映画で、海賊にさらわれたヒロインの美女を見て思ったことね。
    女の子だったらそういうのに憧れるのは普通でしょ。
    それにね、椿ちゃん。囚われのお姫様になりたいって最初に言ったのはあんただよ。
    あたしは、うんいいねって同意しただけだから。

    「それで、何を頼みたいのよ。椿ちゃん」
    この子がいきなり突拍子もないことを言い出したら、それは何かを頼みたいときに決まってる。
    「さすが、こなちゃん! 分かってるぅ」
    椿ちゃんは手を伸ばしてあたしの頭を撫でて、自分のキャラメル・マキアートをずずーっと飲み干し、それから言った。
    「あのね、一緒にSMしない?」
    「え、えすえむ~ぅ!!??」
    「こら、ここでその単語を大声で叫ぶでない!」
    いけない。
    見渡すと、回りのテーブルのお客さん達がみんなあきれた顔でこちらを見ていた。

    あたし、反町琴々波(そりまちここな)は公立高校の1年生。
    『琴々波』なんて、誰にも読めないキラキラネームのくせに、本体は身長150センチのチビで貧乳なのがコンプレックス。
    そして、富山椿(とやまつばき)ちゃんは同じクラスの仲良し。
    背が高くてナイスバディ、性格も明るいから男子にモテる。中学のときにずいぶん遊んだらしいけど、ロストバージンはまだみたい。

    「いや、実はね、ナンパされたんだ、女の人に」
    「女の人?」
    「うん。あなた可愛いわ。ちょっとお話しません?、って言われて」
    「それナンパじゃなくて、変な団体の勧誘でしょ」
    「あたしもそう思ったけど、違ったのよ・・」

    椿ちゃんの説明によると、その人は高級ブランドの服を着こなしたお嬢様風だったという。
    女性中心のサークルでパーティをしていて、そこではちょっとしたSMプレイをしているらしい。
    SMプレイといっても、本人が望まない限り無理はしないし、体に傷が残るようなこともない。
    冒険してみたい女の子、彼との関係に物足りなさを感じる女の子。
    そんな女の子は誰でも自由に参加できる。

    「ちょっと椿ちゃん。信用できるの? そんな話」
    「信用するしかなかったのよ」
    「どうして?」
    「そのお姉さん、ペットを連れてたんだ」
    「ペット?」
    「うん。すごく可愛い女の子」
    「女の子?」

    その女の子は白いセーラー服を着ていて、首輪をつけていた。
    椿ちゃんは、写真も見せてもらったという。
    その女の子が縄で縛られている写真だった。
    目の前にいる本人の写真だったから、椿ちゃんは信用したという。
    そして、もう一度時間を取って会うことにした。

    実はあたしも、スマホでSMの写真や動画は見ている。
    全身を縛られて苦し気な表情のM女さんは、同性のあたしでも見とれてしまうくらいに色っぽくてステキだ。
    でも自分がするのは怖いし、痛そうだし、何よりあたしの貧相な体が縛られるなんて、想像するのもイヤだった。
    椿ちゃんだったら縛られても鑑賞に値するだろうけど。

    「ねぇっ、こなちゃん。一緒に行こうよっ。ね? ねっ?」
    「あたし、そういうのは」
    「大丈夫だよっ。それに、もう一人行くって言っちゃったし」
    「じゃ、じゃあ・・。一緒に話聞くだけだよ?」

    結局あたしは一緒に行くことになった。

    2.
    喫茶店のテーブル。椿ちゃんとあたしの向かい側に美人が座っていた。
    椿ちゃんよりもまだ背が高くって、長く伸ばしたストレートの黒髪が綺麗だった。
    セクシーで妖しくて、それでいて凛とした清々しさも兼ね備えた、不思議な雰囲気の人だった。

    「咲州舞子(さきしままいこ)です」その人は私を見てにっこり笑うと、自分の名前を言った。
    「はじめまして。・・あの、あたし」
    「反町ここなさんですよね? 富山さんから聞いてるわ」
    「はい。『ここな』は言いにくいみたいで、皆にはこなちゃんって呼ばれてます」
    「可愛い名前・・。私もこなちゃんって呼んでもいいかしら」
    「はい、どうぞ」
    咲州さんはあたしを正面から見てもう一度笑った。
    あたしの心の中まで見通すような、大きな黒い瞳だった。

    「あの、今日はペットさんは一緒じゃないんですか?」
    椿ちゃんが聞いた。
    「ああ、この間の彼女? 今日はちょっと他で使われてるの」
    「使われてるって?」
    「貸し出してるのよ。奴隷として」
    「ド、ドレイですかっ?」
    「ええ、今頃は酷い目に合ってるかもしれないわね」
    「きゃあっ、酷い目ですか!」
    「あなたも、酷いこと、されたい?」
    「はいっ、ちょっとされてみたいですぅ」
    椿ちゃんは、はしゃぎながら返事をする。
    まるで遊園地の絶叫アトラクションにでも挑戦するみたいなノリだった。

    「こなちゃんはどう?」
    咲州さんがあたしを見て聞いた。
    「え、あたしですか? えっと・・」
    「こう見えて、こなちゃんは隠れMなんですよー」椿ちゃんがちゃちゃを入れる。
    「つ、椿ちゃんっ。何言ってるの! あたし、そんな」
    「いいのよ。決して無理強いはしないわ。興味のある人にだけ、お誘いしているんだし」
    「駄目だよ、こなちゃんも一緒じゃないと。・・そうだ、写真っ。咲州さん、こなちゃんにもこの間の写真、見せてあげて下さい」
    「うふふ。いいわよ」

    咲州さんはバッグから小型のタブレットを出してテーブルに載せた。
    あたし達は身を乗り出して画面を見た。

    3.
    見せてもらったのは、予想通り、いろいろな女の子が縛られたり吊られたりしている写真だった。
    縄だけじゃなくて皮とか鉄?の拘束具を使われている写真もたくさんあった。
    「きゃ、綺麗~」「ドキドキしますよぉ」「やだぁっ、すごいポーズ!」
    椿ちゃんは画面に表示される写真を次々フリックして送りながら、一枚一枚にぎやかに反応している。
    あたしは椿ちゃんの横にいて、画面に視線を落としてはいるけれど、あまり真剣に見ないようにしていた。
    見るならじっくり見たかったし、仮にじっくり見てしまったら、椿ちゃんみたいに明るく声を出す自信がなかった。

    ・・咲州さんのサークルには椿ちゃんが行って楽しめばいい。
    あたしは椿ちゃんの付き添いで一緒に来ただけなんだし。

    「ねえ、この子、こなちゃんに似てない?」
    突然、椿ちゃんがあたしの方に向いて言った。
    え?
    彼女が指差す画面には、白いセーラー服の女の子が映っていた、
    木製のベンチみたいなテーブルにうつ伏せに拘束された女の子。
    高く突き上げたお尻に、スカートと下着は穿いていない。
    テーブルの穴?から頭を下に出し、手足はベルトで固定。
    つまりこの女の子は、ものすごく恥ずかしい姿勢のまま身動きできなくされている。
    顔とお尻が薄いピンク色に染まっているのが分かった。

    尻打(しりうち)台

    「え、こ、これ? やだ。全然違うじゃない」あたしは慌てて答えた。
    「そうかなー」
    「だって、ほら、この人すごく可愛いし、足も長いし」
    「似てると思ったけどなー」
    「・・これは、お尻を打つ拷問台よ」咲州さんが教えてくれた。
    「あなた達、スパンキングって知ってるかしら?」
    「聞いたことはありますけど・・」椿ちゃんが首をかしげながら返事をする。
    「罰を与えるためにお尻を叩くこと、よ」

    どきん。
    『罰』という言葉に、あたしの胸が鳴った。

    「手で直接叩くこともあるし、ムチとか棒とか道具を使うこともあるわ。これだけ赤くなってるのは、きっと道具で叩かれたわね」
    「痛そう~」
    「でもこの子、感じてるわよ。ほら、気持ちよさそうな顔」
    「ホントだぁ~。ね、すごいよねっ、こなちゃん。・・こなちゃん?」

    あたしは写真を見ながら固まっていた。
    スパンキング。
    お尻を叩かれて罰を受ける。こんなに赤くなるまで・・。
    可哀想に。

    「ね、こなちゃん?」
    「あ、ごめんなさい! ちょっとぼうっとして」
    「ああ~? もしかして、こなちゃんも叩かれたくなったんでしょ~」
    「違うよぉ、もうっ。椿ちゃんこそ、どうなのよ!」
    「んー、あたしは痛いのはちょっと。でもこのポーズ、羞恥心を煽られて、けっこういいな、って」
    「何言ってるのよ、もう」
    「きゃはは」

    あたし達はしばらくの間、1枚の写真をネタに盛り上がった。
    咲州さんはずっと微笑みながら、二人を見ていた。

    4.
    駅前で椿ちゃんと別れて、家に帰ってきた。
    はぁ~。
    あたしはTシャツとショートパンツの部屋着に着替えると、ベッドにどしんと転がって溜息をついた。

    頭の中にあの写真がくっきり浮んでいた。
    息が苦しいほどに胸が高まっている。
    あんな恥ずかしい姿勢で拘束されて、お尻を叩かれる。
    何の罰なんだろう。
    あたしも、悪いことをしたら罰を受けるのかしら。

    りんりんりん。
    突然、耳元に着信音が聞こえて、あたしは跳ね起きた。
    枕元のポーチからスマホを出して見る。
    そこには『咲州舞子さんからの友達申請』と表示されていた。
    ・・そうか、電話番号で。
    あたしと椿ちゃんは、咲州さんと別れる前にスマホの電話番号を交換していた。

    SNSで友人を承認すると、すぐに咲州さんからメッセージと写真が届いた。
    『今日はありがとう! とっても興味がありそうだった写真を送信します。富山さんには内緒にね!』
    写真は、あのお尻を打たれる女の子だった。
    あたしはスマホを胸に押し当てて、もう一度大きな溜息をついた。

    再び仰向けになってスマホの写真をじっと見る。
    こんなに頭を下にして、辛いよね。
    あたしは体を回してうつ伏せになった。
    ・・こう?
    お尻を突き上げて両手で膝を掴んだ。
    どき、どき。
    ・・あの女の子はどんな表情をしてったっけ?
    あたしはスマホを頭の横に置いて見る。
    あぁ、やっぱり、悲しそうな、苦しそうな、気持ちよさそうな顔。
    あたしも同じ表情をする。
    あ、スマホが倒れちゃった。何か支えるもの・・。
    枕を引き寄せてスマホを斜めに乗せた。
    タイソーで見かけたスマホのスタンド、こんど買おう。
    改めてうつ伏せになって、両手を膝の後ろにかける。
    みんなに見られて、恥ずかしいところ全部見られて。
    はぁ・・。

    腕を伸ばしてショートパンツとショーツを下した。
    もう一度同じ姿勢になる。
    これであたしのお尻、無防備だ。
    部屋の空気に触れるお尻が少しだけ涼しい。
    スマホの画面の中で、あの女の子が苦しんでいた。
    あたしも、同じ。
    囚われて、縛られて、動けない。
    何も悪いことをしてないのに、罰を受ける。
    ・・お尻を触られる。叩かれる。
    止めてっ、痛い!
    ぴしり。ぴしり。
    空想のムチがお尻を叩いた。
    びくっ。
    あぁ!! もしかして、指を入れられるの?
    くぅっ・・。

    無理な姿勢に息が辛くなってきた。
    それでもあたしはそのままの姿勢でいた。
    この写真みたいにベッドに穴が開いてたら、頭を差し込んで楽かもしれないな。
    でも、逆立ちだよ?
    もっと血が上って、真っ赤な顔になるんだよ?
    見てる人は、きっとそのほうを喜ぶんだ。

    限界まで我慢して、あたしはどさりと横倒しになった。
    はぁ、はぁ。
    無意識に指が股間に行った。
    そこはぐっしょり濡れていた。
    はぁ、はぁ、はぁ。
    あたしはベッドに横倒しに寝たままでオナニーをした。

    5.
    次の日の朝、学校で会うなり椿ちゃんから伝えられた。
    咲州さんから椿ちゃんに電話があって、サークルの話はなかったことにして欲しいと言われたという。
    高校生を参加させるのはやっぱり問題だから、ということらしい。
    「こなちゃんにも、ごめんなさいって」
    「そうなの」
    「仕方ないよねぇ~。・・また他に面白いこと探そうね!」
    椿ちゃんはさらりと言った。
    あれだけ咲州さんの前で騒いでいたのが嘘みたいだった。
    椿ちゃんには、咲州さんから写真が届かなかったのかな。

    そして、夜。
    咲州さんからSNSのメッセージが届いて、もう一回会いたいって言われた。
    あれ? 高校生はダメなんじゃ?
    『ごめんなさい。あれは、こなちゃんとだけ会うためのウソです』
    『あたしとだけ、ですか?』
    『こなちゃんには全部見てもらって、決めて欲しいから』
    あたしは少し迷って、そして咲州さんと会うことにした。

    6.
    あたしは、テレビか映画でしか見たことがないような車に乗っていた。
    バスみたいに長い、真っ黒な車。
    ガラスの壁で仕切られた運転席。向かい合わせの客席。
    これキャデラックっていうんですか。
    あたしの正面には、白いセーラー服を着た咲州さんが座って笑っている。
    この間はものすごく大人びて見えたのに、今はまるで高校生みたいに制服が似合っていた。
    そして不思議なのは、咲州さんが首に太い首輪を巻いていること。
    その首輪姿も、まるで何年もつけているように違和感なくしっくりと決まっているのだった。

    あたしが何も言えないでいると、咲州さんは脇の棚からグラスとボトルを出して聞いた。
    「アイスティーでよろしい?」
    「あ、はい。すみません。・・それ、冷蔵庫ですか? すごい車ですねぇ」
    「家の車なの。今日はこれしか空いてなくて」
    これしか? この人、もしかしてものすごいお金持ちのお嬢様なんだ。

    大きなお城みたいな家についた。
    外からドアを開けてもらって降りる。
    「ようこそ、私のお家へ。・・さあ、こちらへどうぞ」
    咲州さんに導かれるままに建物の中を歩いた。
    長い廊下を進み、階段を下り、何度も途中で折れ曲がって進んだ。
    もう一人で元の入口に戻るのは無理だと思った。
    「ここよ」
    そこは、コンクリートの床と壁に囲まれた殺風景な部屋だった。
    そして部屋の中央には・・。

    「いい子にしてた?」
    咲州さんがそれに近づいて聞いた。
    「お・・、おかえり、なさい。・・まい、こ、さま」
    「あら、たった2時間ほど留守にしただけなのに、もう真っ赤な顔。苦しい?」
    咲州さんはその子の顔を優しく撫で、それからむき出しのお尻に手を当てた。
    「もう乾いちゃったの? ダメな子ねぇ」
    両足の間に指を入れて弄った。
    「はぁ・・、くっ」
    「お客様に、気持ちいいってところをお見せしてあげるのよ」
    「あ、あ、あ、あ!」
    その子の体ががくがく震えた。一緒に白いセーラー服の裾が揺れる。
    「ふふふ」
    咲州さんはどこから出したのか、短いムチを持っていた。
    「息を止めなさい」
    その子は大きく息を吸うと、両目をぎゅっと閉じた。
    咲州さんはすかさずムチでお尻を打った。

    ぴしり。
    「んっ」
    ぴしり。
    「んん~っ!!」
    ぴしり。
    「ん!! ああっ!!」
    その子は、とうとう我慢できずに大きな声を出した。

    あたしは部屋の入口に立ち尽くして、その様子を見ていた。
    あの写真で見たのと同じ、拷問台のスパンキングが目の前で演じられていた。
    「こなちゃん、こっちへいらっしゃいな」
    「は、はい」
    あたしは恐る恐る拷問台に近づく。
    「構わないから、彼女に触ってあげて」
    その子のお尻をそっと撫でる。
    ムチに打たれて赤く腫れた肌は熱を持って熱くなっていた。
    「はうっ」
    あたしの指が股間にかかると、その子は声を出して身を震わせた。
    感じていると、はっきり分かった。
    「あなたも叩く?」
    「あたしが、ですか?」
    「ムチを使うのは練習がいるの。手のひらで思い切り叩いてあげて」
    「でも・・」
    「この子、きっと喜ぶわ」

    あたしは思い切って右手を振り上げ、それから目の前のお尻を叩いた。
    ぱち。
    「あぁ」
    「・・もっと強くっ」
    ぱちっ。
    「ああぁ!」
    ぱち!!
    「はぁああん!」

    あたしは次第に力を入れて叩いた。
    叩くたびに、女の子は可愛い声を上げて震えてくれた。
    あたしはそれがとても嬉しくて、さらに強く叩いた。
    右手がしびれてくると、左手で叩き、やがて両手で交互に叩いた。

    ぱちん!!
    「あああっ~!!」
    女の子の股間から透明な液体がじょぼじょぼとこぼれた。
    あたしは叩くのを止めて、それを両手で受けた。
    液体は周囲にはじけてあたしの顔や服にかかったけど、あたしはそれを少しも汚いと思わなかった。
    それどころか、あたしのスパンキングに感じて出してくれたおしっこが、とても尊いものに思えた。

    あたしは、下向きになった女の子の頭を濡れた手で抱きしめた。
    「ありがとう・・、あたしのために。・・本当に、ありがとう!」
    その子はあたしを見て少しだけ笑い、それから目を閉じて動かなくなった。
    あたしは彼女の頭を抱いて、しばらく動かなかった。
    両方の目から涙がぼろぼろ流れて、視界が潤んでいた。
    あれ? あたし泣いてる?
    あたしは苛めたほうなのに。苦しんだのはこの子のほうなのに。

    7.
    女の子を休ませてあげた後、咲州さんは『倶楽部』について教えてくれた。
    『倶楽部』はある私立校に属する非公開のクラブで、正式には『JK拷問倶楽部』という。
    そこには、その学校の生徒だけでなく、他校の生徒でも認められれば参加できる。
    咲州さんは『倶楽部』の主宰者で、あたしや椿ちゃんのようにSMに興味のある女の子に出会ったら『倶楽部』のメンバーとしてふさわしいかどうかを調査・審査している。
    その結果、椿ちゃんは選ばれず、あたしが選ばれたのだった。
    咲州さんによると、あの写真に見入るあたしを見て、すぐにあたしの適性に気付いたそうだ。

    あたしは自分の意志で、被虐または加虐、あるいは両方の立場で『倶楽部』に参加できる。
    さっき、目の前でお尻を叩かれたのは『倶楽部』で被虐専門の女の子、つまり奴隷だ。
    最初に椿ちゃんと会ったときに連れていた『ペット』も同じ子だった。
    そして、驚いたことに、咲州さん自身が責めを受ける奴隷なんだという。

    「こなちゃん、あなたが決めるのよ。どこにも口外しないことを条件に今すぐ帰るか、それとも、私達の仲間になるか」
    咲州さんが言った。
    「・・仲間になってくれるなら、この拷問台でこなちゃんのお尻を打ってあてあげる。それとも、こなちゃんが私を打ってくれてもいいわ」
    咲州さんの笑顔がぐっと妖艶になって、あたしは目まいがしそうになった。

    今、自分は二度と引き返せない道を選ぼうとしていると思った。
    それでもいい。あたしの答は決まっていた。
    ・・あたしも、あの子と同じ目に会いたい。
    ・・激しく叩かれて、涙を流したい。
    ・・罰を受けて、苦しみたい。

    「あ、あたしを、ムチで打って下さいっ。あたしを奴隷にして下さいっ。・・お願いします、咲洲さん」
    「あなたならそう言ってくれると信じてたわ。・・さあ、私のことは舞子さまと呼びなさい」
    「はい。舞子さま」
    舞子さまはにっこり笑って、そしてあたしの望む通りにしてくれた。



    ~登場人物紹介~
    反町琴々波(そりまちここな):『倶楽部』に誘われたM少女。言いにくい名前なので「こなちゃん」と呼ばれている。
    富山椿(とやまつばき): 琴々波のクラスメート。
    咲洲舞妓(さきしままいこ):JK拷問倶楽部主催の女性。

    本作は、pixiv のグループ『JK拷問倶楽部』に投稿した小説とイラストです。
    JK拷問倶楽部は、命にかかわらない・大怪我させない・やるほうもやられるほうも気持ちいい! をモットーに女の子の拷問を楽しもうという秘密の団体です。
    このSSはJK拷問倶楽部を特にご存知なくても楽しめるように書いておりますが、pixiv のR-18アカウントをお持ちの方は、ログインしてタグ "【JK拷問倶楽部】" で検索すれば、倶楽部の設定とたくさんのイラストを見ることができます。

    今回は、初めて pixiv の小説投稿機能を使いました。
    今後も pixiv に小説を投稿するか不明ですが、私のホームがこのブログであることは変わりありません。
    最後に、本作のこちらへの再掲をお許しいただいたグループ管理者のわーどなさんに感謝いたします。
    ありがとうございました。




    視界不良な生活

    1.
    彼が仕事に出ている間、アタシはすることがない。
    前に一度お部屋の片付けをしようとしたら、テーブルのマグカップをなぎ倒して割ってしまった。
    アタシは何も見えないんだ。
    ケータイはあるけれど見えないから操作できないし、音楽を聴く趣味もない。
    ラジオやテレビはつまらなくって聞くに堪えない。
    結局、アタシはお部屋を静かにして何もせず、敷きっ放しのお布団の上に座っているだけになった。

    目が見えないと耳が敏感になって、アタシはいろいろな物音に包まれる。
    窓の外で小鳥が鳴く声。木々が風にそよぐ音。
    前の道路を行く自動車の音。おばちゃん達の話し声。
    こんな安アパートのお部屋にいても、世界は音に満ちているって分かる。

    ときどき、アタシはお部屋の本棚の方を向いて手を振る。
    そこには彼が置いたWEBカメラがあって、彼はスマホでアタシを観察できるという。
    アタシは自分の手も見えないのに、遠くにいる彼にはアタシが見えるって、ちょっとステキだ。
    まあ、四六時中見ているはずはないけれど、アタシはいつも見られてると思うことにしている。

    夜になってもお部屋の灯りを点ける必要はない。
    以前は、暗くなるとWEBカメラの画面が真っ黒になるからと、昼間から電気を点けっぱなしにしていた。
    今は赤外線のカメラに替えたから闇の中でもアタシが何をしているのか見えるそうだ。

    カチャリ。ドアの鍵が開く音。
    彼だ!
    灯りを点けるスイッチの音。靴を脱ぐ音。歩み寄る足音。
    待ってたのよ。アタシ、ずっと待ってたのよ。
    アタシの目を覆っていたアイマスクが外された。
    まぶしさに目がくらんで、その中に彼の姿がシルエットになって映る。
    「ただいま」「お帰りなさい」
    もしアタシが犬だったら、きっと尻尾をぶんぶん振っていることだろう。
    アタシは爪先立ちになって彼にしがみついたまま離れない。

    2.
    アイマスクはいつでも外して構わないと彼は言う。
    トイレに行くとき、食事を作るとき、誰か例えば宅配便のお届けで人が来たとき。
    そんなときは目が見えないと困るだろうって。
    でも、もうアタシは決めたんだ。
    彼がつけてくれたアイマスクは絶対に外さないって。
    トイレは慣れたから大丈夫。食事は取らない。そして誰が来たって応対しない。
    アタシは、ひっそりと幽霊のように潜むんだ。
    彼がいない昼間、アタシはアタシじゃない。アタシはただそこにあるモノになるんだ。

    夜中彼が眠った後にアタシはがんばる。
    掃除、洗濯、明日のごはんの用意。
    全部の用事が片付いたら、アタシは彼のお布団の脇で身体を丸くして彼を見つめる。
    昼間見れなかった分を補って、おつりがくるほどに見つめる。
    アタシの目は彼を見るためにあるんだと思いながら。

    そして朝。
    彼はアタシにアイマスクをつけてから出かける。
    アタシは彼に視界を閉ざされるのがウレシイ。

    3.
    彼のお仕事は、カレンダーと関係なく3日の出勤と1日のお休みの繰り返し。
    明日はお休みという夜は二人の間で特別な儀式がある。
    それはアタシの目を完全に封印すること。
    彼は、アタシがアパートに一人でいるときはアタシ自身の安全のためにアイマスク以上の物を許してくれない。
    でも彼が一緒なら、アタシは何の心配もなく目を閉じていられる。
    だからお願いしたんだ。
    絶対に何も見えないようにして欲しい。『見る』手段を絶望的に奪って欲しいって。

    彼は人間の皮膚に使う瞬間接着剤を用意してくれた。
    それを綿棒でアタシの下のマブタに塗る。
    「いいよ」
    彼の合図でアタシは目を閉じる。
    上下のマブタがくっついて、アタシの目は開かなくなる。
    いくら涙をぼろぼろ流しても顔をごしごし洗っても、絶対に開かない。
    アタシは彼と一緒の時間を自分では抜け出ることのできない闇の中で過ごすんだ。

    目が見えなくなったアタシは彼とセックスをする。
    そのときのアタシはまるで動物みたいだと彼は言う。
    自分でも分かる。カラダじゅうがマゾの感覚で溢れて、何も考えられない。
    あそこがじゅくじゅくになって、大きな声を出す。
    アタシは何にでも激しく反応し、吼えて、暴れて、そして泣く。

    4.
    お休みの朝は時間がゆっくりぎる。
    アタシはお部屋の隅で、目を閉じたままお人形のように座っている。
    自分では動かず、喋らず、何も求めない。
    そして、音楽を聴いたりパソコンを触ったりして自由に過ごす彼を全身で感じている。

    彼はときどきアタシのそばに来て、アタシのカラダを触る。
    おっぱいも、お尻も、太ももも、あそこも、アタシのすべては彼の自由。
    アタシのすべては彼のために存在する。
    そう思うと、心が震えるほどにウレシイ。

    午後になると次の3日間に備えて買出しに出かける。
    アタシがアパートから外の世界に出るたった一回の機会。
    アタシは視覚障害の人が使う白い杖を持ち、彼の肘を掴んで一緒にアパートを出る。
    このアパートに越してきてから、いつもこのスタイルで出かけているから、近所の人はきっとアタシのことを全盲だと思っているだろう。
    街を歩くとき、彼はとても気を使ってくれる。
    ちょっとした段差とか、歩道に置かれた自転車とか、細かく教えてくれる。
    アタシはそれを全面的に信じて彼について歩くんだ。

    近所のスーパーで日用品と食料品をまとめ買いする。
    「キャベツが安いよ。買う?」
    以前はキャベツとレタスの区別もできなかった彼が、アタシの目の代わりをしてくれている。
    アタシは頷きながら、彼がショッピングカードに入れたものを手で触る。
    お店の中は混雑していて、たくさんの人の肩や荷物がぶつかる。
    そんなとき、いつもアタシは彼とはぐれてしまうことを想像する。
    もし、彼の肘を掴む手が離れたら、彼が気付かないで先に行ってしまったら、どうなるだろう。
    アタシは人ごみの中で転倒してしまうだろうか。
    そして、人々はアタシを踏みつけ、罵るだろうか。
    それはアタシの不安であり、期待だった。
    アタシはときどき破滅的な妄想をする。
    本当に起こったら困ることなのに、アタシの心の一部はそれを望んでいる。

    5.
    スーパーからの帰り、公園のベンチに座った。
    「ちょっと待ってて」
    彼はそう言うとどこかに行ってしまう。
    何も見えないアタシは、買い物のエコバックと杖を抱えて固まっているしかない。
    心の中に広がる不安。そして期待。
    ああ、アタシはまた妄想する。
    「・・こんなところで、あんた、一人かい?」しわがれた男性の声。
    いえっ。違います。
    アタシは答えようとするけれど、声が出ない。
    荷物を抱える手にますます力が入る。背中を丸めて顔を背ける。
    「返事できないのか」
    ごつごつした手に肩を掴まれた。
    ああっ!
    「いけないなぁ。見えない、喋れないのに、一人でやってくるなんて」
    荷物が払いのけられた。
    スカートから覗く左右の膝小僧に男の手が掛かった。
    いけないっ。アタシ、今日、生足だった。
    太ももの間に男の指が侵入する。ぞくぞくする感触。
    抵抗できない。
    何も見えない顔をぶんぶん左右に振った。
    強い力でベンチの上に押し倒された。
    あぁ!!

    「ほれ、たこ焼き」
    彼の声とソースの匂い。
    アタシの肩を抱く手は、彼のものだった。
    アタシは黙って身を震わせて、彼にしがみつく。
    くすり。彼が笑った。
    「マジでぶるぶる震えるてるんだからなぁ」
    「・・」
    「また何か妄想してたんだろ?」
    「・・悪かったわねぇ」
    「おいおい」
    「どうしようもないことばっかり考えてる、妄想女で」
    「・・」
    「アタシなんて、アタシなんて。いつもひどいことされたいって思ってる、マゾで変態で、・・アタシなんて、もう」
    彼は黙ってアタシを抱きしめた。
    強く、強く、アタシが喋れなくなるまで、強く抱きしめた。
    長い時間、そのままだった。
    「あ・・、ふ・・」
    アタシはようやく黙った。
    「しょーがないなぁ。いつも付き合わされる身になって欲しいもんだよ」
    「ごめん」
    「いーよ」
    「・・キライになった? アタシのこと」
    「はぁ?」
    「キライになって、アタシのこと捨てたいって思った?」
    「思わないよ」
    「うれしい」
    「ね、もしかして今、俺に捨てられる妄想した?」
    「・・うん」

    アタシの妄想は、いつもとんでもなく酷い妄想ばっかりだ。
    自分を徹底的に貶める妄想。マゾ女のどうしようもなく破滅的な妄想。
    彼と出会う前、アタシは何度も妄想を現実にしかけたことがある。
    あたしの左の手首にいくつもある傷跡が証拠だ。
    でも、今は違う。
    彼がマゾ女の想いを妄想だけに留めてくれている。
    アタシのマブタを封印することで救ってくれている。
    アタシは心の底から彼に感謝している。

    アパートに戻ると、もう明日からの日常の準備が待っている。
    彼はリムーバーという薬液であたしのマブタを剥がしてくれる。
    目が明るさに慣れると、アタシは彼と一回キスをして、それから家事にかかる。
    彼はお料理ができないから、アタシがご飯を作る。
    彼はお掃除や洗濯もしないから、アタシがする。
    こんなに尽くすことができるアタシは幸せだ。

    明日からはまた、アイマスクをして彼の帰りを待つ。
    単調だけど、心が落ち着く日常。

    6.
    それは彼からの提案だった。
    ネットで知り合った人から招待されたフェティッシュなイベント。
    アタシは視界を閉ざされたまま、人前に出さされるという。
    「行くかい?」
    「あなたが望むことなら」
    アタシは答えた。

    その日の夜。
    アタシはマブタを接着され、白い杖をついて、彼と電車に乗った。
    静か過ぎて不安になるほどひと気のない道を歩いて、そのお店に着いた。
    「やぁやぁ、ようこそ! ・・この人でっか?」関西弁の男性の声がした。
    「そう。目は開かないけれど、普通の健常者だよ」彼の声。
    「すばらしいっ。・・あの、僕の声、聞こえてまっか?」
    はい、と返事しようとしたら、彼が肩を押さえて止めた。
    「ちゃんと聞こえてるよ。それから、」
    彼はその人に言った。
    「彼女の意志を確認する必要はないよ。・・どんなことにも絶対に逆らわないから」
    え?
    アタシは何をされるのだろう?
    「そうですか。・・真性のM女なんやなぁ」
    「じゃ、準備してやって。・・くれぐれも本人には何も聞かないで、絶対に従うという前提で扱って下さい」
    そうか。アタシ、どんなことにも逆らわないのか。
    彼がそう言ったのなら、アタシは誰にだって絶対に従う。
    胸が少し苦しい気分がした。

    7.
    その人は黙ってアタシの手を引いて行き、腰掛に座らせた。
    「更衣室もあるんやけどね、フロアで着替えた方が安全やし。・・まあ、お客さんの前やけど、気にせんと」
    気にしないでってねぇ。どうせアタシには見えないけれど。
    「脱いで。下着も全部」
    あ、・・はい。
    アタシはブラウスのボタンを順に外した。後ろからブラウスを脱がせてくれたのはその男性だろう。
    「次スカートね」
    言われるままにスカートを脱いだ。
    ストッキングを手探りで下ろし、ブラとショーツも脱いだ。
    「・・この子ぉ? 地味なメイクしてるわね~」女性の声がした。
    「そう思うんやったら、見栄えがするよおに変身させたって」
    「おっけー!」
    髪留めのゴムが外され、頭全体をくしゃくしゃに揉まれた。
    えぇ~っ?
    顔面に冷たいモノが押し付けられてごしごし擦られた。メイク落としの洗顔剤だと気付いた。
    「はぁい。可愛くしてあげるからねぇ」
    アタシは全裸のままでお化粧された。

    「この人かぁ。ガッチーが言ってた女の子って」
    「そうそう。両目をつぶした人」
    あの、両目をつぶしたんじゃなくて、接着してるんですけど。
    「可愛い子じゃない」
    「おっぱい綺麗」
    「いくつなの?」
    「19だって」
    「へぇ~」
    いったい、アタシは何人の人に囲まれているんだろう。
    それに、彼はどこにいったんだろう?

    アタシは裸の上にごわごわした衣装を着つけられた。
    足にブーツを履かされる。これ、ずごいハイヒールだ。
    「口開けてぇ」
    口の中に太い筒のようなモノが押し込まれた。
    「しっかり噛んで」
    顎を下から押さえつけられた。筒のエッジ?に前歯がはまり込んで、咥えた筒が抜けなくなった。
    さらに顔の上に何本かベルトのようなものを掛けられて、首の後ろで留められた。
    「顔面拘束やで~。なかなかの締め付けやろ?」
    それから首に硬い輪っかが巻きついた、これは分かる。首輪だよ。

    「はい、ゆっくり立って。ゆっくりやでぇ」
    アタシは左右から腕を支えてもらって立ち上がった。同時に腰掛がのけられた。
    何、これ!
    このブーツ、ハイヒールなんてもんじゃない。アタシ、きっとバレリーナみたいに爪先立ちになっている。
    支え無しで立っているのは無理だと思った。
    背中がどんと固い壁に当たった。
    首輪がぐいと持ち上がり、そのまま動かなくなった。

    8.
    アタシはどうなっているんだろう?
    両手は後ろの壁に触れていた。その手を動かして自分のカラダを触った。
    ショートパンツ。へそ出しのお腹。レザーのブラ。
    そしてその上には首輪。
    首輪の両側には鎖が繋がっていて、斜め上にぴんと伸びていた。
    そうか。首輪で吊られているのか。

    首輪の上に手をやる。
    顔面には猿轡のようなベルトが掛かっていて、顎の下、鼻からおでこまでしっかりホールドしていた。
    顔面拘束ってこういうことかと理解した。
    目は何も覆ってないけれど、マブタを接着されてるから、もちろん開けることはできない。
    口に噛まされた筒の中には指を差し込むことができた。
    きっと、アタシの口の中、前から丸見えだ。
    このヌルヌルしたのは何?・・あ、ヨダレだぁ。

    アタシは自分をまさぐって、顔面と首輪以外はどこも拘束されていないと理解した。
    両足も自由だけど、爪先立ちのせいで半歩だって動かせない。
    首輪の鎖がなかったら、こうして自立していることすらできないだろう。
    アタシ、首輪で吊られて立ってられるんだ。

    顔面拘束

    カシャ。
    カシャ。
    スマホやデジカメのシャッター音が聞こえる。
    あぁ、写真撮られてる。
    アタシはどこか知らないお店で、顔面拘束の姿を晒している。
    いったいどんな人達が自分を見てるのかも分からない。
    股間が熱かった。じゅくじゅくに濡れていると感じた。
    両足の間に何でもいいから固いモノを押し当てたくて仕方なかった。
    両手で股間を押さえようとしたら届かなかった。屈むことも足を開くこともできない。
    ああ、きっと溢れてる。溢れて、こぼれてる。
    こぼれて太ももの内側に流れてる。

    取り囲む人々のざわめき。
    鳴り止まないカメラの音。
    何時間過ぎたんだろう。アタシ、どれだけ濡れてるんだろう。
    何も分からなかった。考えられなかった。
    これ、妄想じゃないよね? 現実だよね?

    9.
    次の週、あのフェティッシュイベントでのアタシの姿がネットで出回っていると彼が教えてくれた。
    あのとき、彼は遠くからアタシを見ていたらしい。

    「すごいな。近くで見るとこんな色っぽい顔をしてたんだね」
    「・・・」
    「ちゃんと涙も流れてるよ。よかったね」
    「・・・」
    「うわ、太ももの内側が光ってる。ねえ、これってさ、」
    「・・・」
    彼はパソコンの画面を見てアタシに説明してくれる。
    アタシは何も返事をしなかった。
    したくてもできなかった。
    アタシの口は太い筒を噛まされて固定されていた。
    そう。アタシはあのときと同じ顔面拘束を施されていた。
    アタシの出演の謝礼として、彼はあの顔面拘束のセットをもらってきたのだった。
    アタシの両目は接着剤で封印されていて、首輪をアパートの天井から吊られていた。

    「ねぇ、提案なんだけど、」
    彼が言った。
    「ちゃんとスマホで見てるからさ。・・今度、俺が仕事に行くとき、その格好で過ごしてみようか」
    彼の中で、今までとは違う嗜好が芽生えたようだった。
    アタシは返事をしようとしたけど、変なうめき声しか出せなかった。
    とても嬉しくて、ほんの少しだけ哀しかった。



    タイトルを先に思いついて書いたSSです。
    両目を接着されて興奮する女性。
    こんな嗜好の女性は現実にいるのでしょうか。

    なお、まぶたを接着するプレイはファンタジーです。真に受けて本当にやらないで下さいね。
    また作者には、このSSで視覚障害の方々を差別するような意図はまったくありませんので、よろしくお願いいたします。
    ありがとうございました。




    バースデイ・キッドナップ

    1.
    あたしは女だけど、女の子が好きだ。
    街で綺麗な女の子を見かけたら、後をつけていってしまいそうなくらい好き。
    さらに言わせてもらえば、可愛い子もいいけどセクシーな女の子がいい。
    自分の魅力をちゃんと分かっていて、女の武器として使いこなせる子がいい。
    胸とか、足とか、綺麗に見せてくれる女の子はいつまでも愛でていたい。
    (スケベなおじさんみたいだね)

    念のためにつけ足すけど、あたしは女の子が好きだからといって、男になりたいわけじゃない。
    (ホントは男に生まれるハズじゃなかったのか、と思うことはあるけどね)
    女の子を愛でるには女の方が絶対に有利だ。
    高校では更衣室で同級生の裸をガン見して幸せだったし(すごくおっぱいの綺麗な子がいたの♥)、男性が女性の胸をじっと見たらそれだけでセクハラだけど、女だったらきゃあきゃあ言いながら胸を揉んだって許される。
    あたし自身はタヌキみたいな丸顔で、胴長短足かつ太めの体もぜんぜん鑑賞に堪えないけど、性格は明るくて愛嬌のある女になって同性に嫌われないようにしている。
    せっかく女に生まれたからには、それを生かして女好きを楽しまないと損だものね。
    まあ、風俗とか、男性でないと行けないところがあるのは残念だけど、それだっていつか行って楽しんでやるつもり。
    (ホントだぞ)

    それから、最後にあたしはちゃんと男も好きだ。
    恋愛の対象は男だし、将来は素敵な旦那様と結婚して普通のお母さんになりたい。
    こんな女好きの嫁をもらってくれる男性がいるのか、それだけは心配だけど。

    2.
    「よぉっ」「寒いねー」「元気してたぁ? マコトちゃん」
    金曜日の夜。駅前にいつもの4人が集った。
    インターネットで知り合ったメンバーで、今日は3回目のオフ会。
    キタさんは27才の自営業の人。
    セイさんは中年の(たぶん40超えてる)銀行員。
    ミズキさんは年齢不明で背の高い美人。
    そしてあたしは19才のバースデイを迎えたばかりのピチピチギャル。
    (自分で言ってどうする、こんな死語)

    「ミズキさん、今日も綺麗。ファンデ替えました?」
    あたしが聞くとミズキさんは嬉しそうに答えた。
    「分かる? コスメデコルテのリキッドファンデを試したのよ」
    「えぇ? あれ、すごく高いんじゃ」
    「自分のことにお金を惜しんじゃダメ」
    ミズキさんの薄いピンクのブラウスから下着のブラが透けていた。
    この人はいつも薄着だ。キュロットの下の膝も生足ね。
    「薄着は女を綺麗にする」がミズキさんの主張だ。
    その考えには大いに賛同するけれど、ミズキさんがそれを主張するのはちょっと的外れだと思う。
    「マコトちゃんも、もちょっと可愛い格好しなさいよ。今夜はあなたが主役なのよ?」
    「う~ん、何着てこよぉかなって考えたんですけどね、結局いつもの格好にしました。それにあたし、自分でお洒落するより、お洒落した女の子見る方が嬉しいですもん」
    そう言うあたしは、ほとんど素っぴんで色気も何もないセーターとジーンズ姿だった。
    「若いのに、もったいないなぁ」
    ミズキさんはちょっとごつごつした手で自分の髪を直しながら言った。
    この人のお化粧はいつも完璧で、剃り残しの髭なんて絶対にない。
    「ミズキさん、また駅のトイレで着替えたんですか?」
    「そうよ。ホントは会社で着替えてきたら楽だけど、みんなに引かれちゃうからね」
    サラリーマンのミズキさんの趣味は女装。
    週末はいつも可愛い服を着て原宿あたりを歩いているそうだ。

    「揃いましたね。じゃあ、行きますよ~」
    セイさんが折り畳みの傘をバスガイドさんみたいに頭の上で振って合図した。
    このおじさんはどんなに晴れた日にも、必ず折り畳み傘を持ってるんだ。

    3.
    高校を出て就職したとき、あたしは自分専用のパソコンを買ってネットの美少女あさりを楽しむようになった。
    (あたしの美少女画像コレクションはちょっと自慢よ)
    キタさん、セイさん、ミズキさんの3人はフリー掲示板で知り合った人たちだ。
    美少女トークやエロトークで気の合うメンバーが自然と固定されて、4人でオフ会を兼ねてストリップを見に行くことになった。
    (ある美少女系モデル出身のAV女優さんが出演するという情報があったの)
    集まった4人で女はあたしだけだった。
    ネットのプロフで自分の性別は公開していなかったし、皆あたしの「マコト」という名前で男だと思っていたみたい。
    (マコトは本名なんだけどね。・・ちなみにミズキさんは最初から女装者だって明かしてた )

    生まれて初めて見たストリップは、とっても綺麗でエロくてあたしは大興奮した。
    踊り娘さんが両足を開いて見せてくれたとき、あたしは思わず走り寄ってかぶりつきで見てしまった。
    (他のお客さんに白い目で見られたかも。でも誰からも文句言われなかったし、こういうとき女の子は得だよね)
    女性器の写真なんてネットでいくらでも見れるけれど、あんな上物(じょうもの)を見たのは初めてだった。
    全体に薄いピンク色。内側はしっとり濡れていて、みずみずしい果実みたいだった。
    もし二人きりだったら絶対に「指入れていいですか」って聞いたと思う。
    ちなみにあたし自身のあそこは、色素が濃い上に襞(ひだ)がびらびら張ってて下品。
    (まだ処女なのに・・泣)
    ただ、すごく濡れ易くって、それは自分でキライじゃない。
    そもそも女の子は、シーツがぐずぐずになるくらい濡れるのがいいと思う。
    それで恥ずかしがるのは可愛いし、男性も彼女が自分のために濡れてくれるのは嬉しいはずでしょ?
    体が勝手に反応して自分では止められない。愛液が溢れたあそこをぴくぴくさせて喘ぐ女の子!
    征服感っていうのかな。この女はオレのもんだって思いませんか♥。

    ものすごく興奮してしまったあたしは、帰り道でそんなことを喋りまくった。
    キタさんが笑いながら「マコトちゃんの中身は僕ら以上に男だね」と言った。
    みんな、それまで女のあたしに気遣いする雰囲気があったけど、それからは面と向かって普通にエロトークできるようになった。

    4.
    2回目のオフ会は、セイさんの知り合いの縄師さんが主催する緊縛撮影会だった。
    キンバク!
    緊縛はこの国の宝だって誰かが言ったらしいけど、あたしもそう思う。
    あたしは、たおやかな美少女の着衣緊縛も好きだし、M女の喘ぎ声が聞こえてきそうなエロエロの緊縛も好きだ。
    いつかは自分でも緊縛テクをマスターして、女の子を縛れるようになりたい。

    撮影会ではモデルさんが三人いた。
    どの人も綺麗で、ショーツ1枚の裸で縛られていた。
    あたしはその中で一番厳しく縛られている20代後半くらいのモデルさんが気になった。
    この人は休憩のとき以外ずっと吊られていた。
    その上、手首と足首を後ろで合わせて、そこに掛けた縄一本だけで逆海老にするとか、そんな吊られ方ばかりだった。
    (他の二人は床の上で縛られていて、吊られるにしてもせいぜい片足を引き上げられるだけなのに)
    縄師さんは三人を縛ってポーズが完成すると、そのまま放置してあたしたちが自由に写真を撮れるようにしてくれた。
    「はぁ・・」「あぁ、・・ぁん!」
    モデルさんたちが我慢できずに喘ぎ声をこぼし始めても、逆海老吊りのモデルさんは黙って耐えていた。
    細い腰が折れそうなくらいに反り返っていて、縄で体重を受ける手首と足首の先が紫色に変わっていた。
    よく見ると、その人は、ぎゅっと閉じた両目に涙を光らせながら嗚咽を押し殺していた。
    腕と太ももがびくびく震えている。(かわいそう!)
    あぁ、これって残酷美だ。
    綺麗な女性を苦しめて楽しむなんて、ものすごく贅沢だよね。
    あたしは感動して写真を撮り続けた。

    撮影会の後の歓談タイムで、あたしは吊られていたモデルさんと話をした。
    この人は澪(みお)さんといって、緊縛モデルを10年もしているベテランだった。
    澪さんの苦しむ姿が素敵でしたと言ったら、澪さんは少し驚いた顔をして、それから微笑みながら「苦しむのが仕事だから」と言った。
    そして他の人に聞こえないよう小さな声で
    「あなたも縛られたいの?」
    と聞かれた。
    ・・え?
    あたしだって自分が縛られることを想像することはある。
    世の中の女は誰だって一度は男性に縛られる経験をすべきと思っているから、そういう意味で、あたしも縛られてみたいと思う。
    でも、あたしみたいな女を縛ることは、あたしの中ではあり得なかった。
    こんなタヌキ顔で太っちょの女を縛っても、ぜんぜん美しくない。
    やっぱり縛るなら綺麗で可愛い人だ。あたしは美しい緊縛を見たい。
    そう考えて、澪さんに
    「いいえ。あたしは、見るのがいいです」
    と答えた。
    澪さんは「そう」と言って、もう一度微笑んでくれた。
    口の前にあてた澪さんの右手に縄の痕がくっきり残っていて、あたしの心臓がどきんって鳴った。

    この日の帰りも、あたしはキタさんたちに向かって女の子の発言とは思えないことを喋りまくった。
    縄が食い込んだ女体ってエロイですよねっ。
    ほら、全裸の女をヤキブタみたいに縛って吊るしたりするじゃないですか。
    そうそう、お肉屋さんの冷蔵庫で吊るされたお肉と一緒。
    ものすごく惨めで、辛くって苦しくって、それでも気持ちよくなってあんあん喘ぐ姿、最高って思いません?!
    最近は思い上がった女が多いから、そういうのはぎちぎちに縛ってこらしめるべきですね。
    え、あたしも思い上がってますか?
    きゃはは。じゃ、あたしも縛ってくれます?
    こんなの縛っても嬉しくないですよねぇ。
    ああ、あたし、やっぱり可愛い女子高生をさらってきて、がんじがらめに縛って飾りたいです~。
    どんな声で鳴くのかなって、考えるだけでドキドキしますよぉ。

    あたしは喋りながら、何でこんなにテンションが高いんだろうと思った。
    自分でも説明できない、うずうず、どきどきしたモノが、あたしを刺激していた。
    あの撮影会で、本物の緊縛を見たせいだろうか。
    それとも、澪さんに「縛られたいの?」と聞かれたせい?
    すごくえっちな気分で、下着がぐっしょり濡れているのが自分で分かった。

    5.
    緊縛撮影のオフ会のあと、キタさんがいつもの掲示板で、マコトちゃん1月誕生日なんだね、次のオフ会で誕生会しようって言いだした。
    (あたしはプロフに誕生日は載せてたんだ)
    皆が賛成して、あたしも喜んでお祝いしてもらうことにした。
    グループの中に女の子が一人だけだとやっぱり得だなって思った。
    誕生会は男性陣が企画してくれることになった。

    6.
    先頭で折り畳み傘を掲げたセイさんについて、あたしたちはぞろぞろと歩いて行く。
    誕生日のお祝いって、何だろう。
    もしかして、綺麗な女の人がサービスしてくれるお店とかだったりして。うぇっへっへ~。
    (本当に我ながらオヤジだ)
    キタさんに聞いたら「バースデーキッドナップ。あとは内緒」って言われた。
    キッドナップって何?
    繁華街を離れて静かな住宅街にやってきた。
    小さな公園に入り、奥まで進んで公衆トイレの陰で止まった。

    「さあ、これこそ、マコトちゃんお待ちかねのプレゼント~」セイさんが芝居がかった口調で言った。
    うす暗い蛍光灯の明かりの下に赤いスーツケースが置いてあった。
    それは女の子を一人押し込むのにちょうどくらいの大きさだった。
    あたしはスーツケースに詰められた美少女を想像した。
    「あ、あの、まさか、この中に女の子・・?」
    「はい。そのまさかです」
    きゃぁ~♥。
    わくわく、どきどき。
    「中に入るのはマコトちゃんだけどね」
    え?

    皆があたしを囲んだ。
    「じっとしてね」キタさんが言った。
    え? え?
    背中で両手を掴まれ、手首を縛られた。その後、足首も縛られた。
    「ごめんあそばせ!」ミズキさんがあたしの口にガムテープを貼った。
    「視界も奪います」セイさんが頭に黒い袋を被せて首のところで紐を締めた。
    「悪いね。僕らの腕じゃ、こんな拘束で精一杯なんだ。とりあえずマコトちゃんの自由を奪うには十分だろ?」
    え? え? え~!?
    あたしはスニーカーを脱がされ、担ぎ上げられた。
    狭い枠の中に横向きに押し込められる。
    あぁ、これはスーツケースだ。
    「できるだけ小さくなって。胸元に膝を引き寄せて。そうそう」
    あ~ん。どうしてあたし素直に従ってるんだろう。
    「ほう、やっぱり女の子は縛ると綺麗ですねぇ」
    「色っぽいね~」
    「マコトちゃんっ、可愛い! うらやましいな」
    もう、なに勝手なこと言ってるのよぉ。
    「じゃ、蓋閉めるよー」
    ばたん。
    かちゃかちゃ。
    あたし、スーツケースに詰められて、鍵をかけられたんだ。

    こんこん。
    外からスーツケースを叩かれた。
    「お~い、マコトちゃ~ん。聞こえる?」
    「ふぁーいっ」
    はぁいって返事しようとして、猿轡のせいで変な声になった。
    「声を出したら外にばれちゃうから、静かにしてるんだよ。いいかい?」
    はいっ。あたしは声に出さずに返事する。
    あ~、だからどうして素直に従うの?
    「マコトちゃんを素敵な女の子にしてあげる。それがあたしたちからのバースディプレゼントよ」
    「しばらく捕らわれの美少女の気分を楽しんで」
    がたん。
    きゃ。
    中に入ったあたしごと、スーツケースが立てられた。
    ごと、ごと、がたんっ。
    振動が伝わって、どこかに運ばれるのが分かった。
    思い出した。キッドナップって、誘拐だよ。

    バースディ・キッドナップ

    7.
    息が苦しかった。
    狭いところに、こんな、ぽっちゃり女を押し込むから苦しいんだよぉ。
    深呼吸を繰り返す。
    でも、ちゃんとスーツケースに詰めてもらえたのは嬉しかった。
    みんな、あたしを優しく誘拐してくれたし。
    あたし、捕らわれの美少女だって。
    うふふ。
    ・・え? あたし、どうして喜んでるのよ。
    何でこんなにほくほくしてるのよ?!
    誘拐されたのに。縛られたのに!

    少し落ち着いて考える。
    やっぱりあたし、この状況を嫌がってない。
    どんなに太っちょでも、スーツケースに入ってしまったら容姿なんて関係なかった。
    あたしの大好きな女の子たち。綺麗で可愛くてエロい女の子。
    あたしも同じ女の子。
    だから、縛られて、自由を奪われて、豚肉みたいに吊られて、みじめで、無力で。
    あたしの中であたしはどんどん理想の女の子になっていった。
    女の子。縛っても、吊るしても、どんな目にあっても綺麗で可愛い女の子。
    あぁ、あたし。
    ・・じゅんっ。
    あそこが洪水みたいに溢れる音がした。
    (本当に音が聞こえたの!)
    マゾの被虐感に満ちたあたしと、その姿を見て喜ぶあたしの両方がいた。
    あぁあああ・・・!!!
    あたしはスーツケースの中でイッた。
    縛られたままで、イッた。
    幸福感に包まれて、真っ白になった。

    8.
    気がつくと、明るい部屋にいた。
    頭を覆っていた袋とガムテープは外されていて、ミズキさんが髪を撫でてくれていた。
    「あら、気がついた?」
    顔をあげて回りを見回すと、正面に大きな鏡があった。
    鏡には、開いたスーツケースの中にはまり込んだ女の子が映っていた。
    乱れた髪、手足を縛られていて、少し震えていた。
    あたしは生まれて初めて自分のことを綺麗だと思った。

    そこはこの間の緊縛撮影のスタジオだった。
    あの縄師さんとモデルの澪さんもいて、あたしを見守っていてくれた。
    あたしは抱き起こされて、拘束を解いてもらった。
    汚した下着とジーンズは、ミズキさんが用意してくれていた新しい下着とスカートに穿き替えた。
    スカートの丈がすごく短くて恥ずかしいって訴えたら、女の子なんだから足くらいサービスしなさいって却下された。
    (それで納得して「はい」って答えたあたし、自分で嫌いじゃない)
    あたしは、暖かい紅茶を飲ませてもらって、手足をさすってもらって、ついでに肩も揉んでもらって、お姫様みたいにお世話してもらった。
    大きなバースデーケーキと、大好きなグラビアアイドルの写真集までプレゼントしてもらった。

    それから縄師さんが、あたしのために澪さんを縛ってくれた。
    澪さんは右足と左足を大きく開いて逆さに吊られ、股間に太いローソクを2本も刺されて人間燭台になった。
    溶けた蝋が澪さんの壺の中に溜まって、それから溢れてお腹に流れた。
    澪さんは身をよじらせながら、とても可愛い声で泣いてくれた。
    その姿があんまり綺麗でかわいそうで、あたしは一緒にぼろぼろ涙を流してしまった。
    あたしは自分も縛られている気持ちになっちゃったんだ。
    「マコトちゃんも、泣くんだ」
    キタさんがそう言って笑った。横でセイさんとミズキさんも笑っていた。
    みんな、とっても優しい笑顔だった。
    「あたしだって、たまには責められる方の気分になるんですっ。・・ほんとに、もう、」
    「ほんとに、何?」
    「・・ありがとう!」
    あたしは両手を伸ばしてキタさんの頬にキスをした。それから、セイさんとミズキさんの頬にもキスをした。
    (家族以外の男性にキスしたのは初めてだけど、マウスツーマウスじゃないしファーストキスにはならないよね?!)

    9.
    それから、春になり、夏になり、オフ会はずっと続いている。
    あたしは相変わらず女好きの変態女子で、美少女のヌードや緊縛を見ては興奮して男性相手にエロトークを繰り返している。
    最初の頃と違うのは、オフ会の何度かに一度、裸になったり縛られたりするのはあたし自身だってこと。
    女の子を愛でるのが生きがいのあたしだけど、そのときだけは男の人に愛でてもらっている。
    この間はとうとう澪さんと連縛してもらったんだ。
    厳しく責められたのは澪さんだけで、あたしは大した縛りじゃなかったけどね。
    それでも、あたし、澪さんに抱きついて泣いちゃった。
    キタさんも、セイさんも、もちろんミズキさんも、とっても優しくしてくれる。
    (みんな、大好き!)
    最近になって、3人に約束したことがある。
    それは、もし、あたしが二十歳の誕生日になってもバージンのままだったら、あたしの初めてを3人の誰かにあげるってこと。
    (本当はみんなにあげたいんだけど、こればかりはお一人様分しかサービスできないからね)
    そしたら、みんな、急にジャンケンしだしたりして。
    ミズキさんなんて、ピンクハウスのブラウスと吊スカートのままで「うぉ~」なんて叫んで、もう完全に男の人だったな。

    そうそう、それからあたし、今まで全然する気にならなかったダイエットを始めたんだ。
    みんな、あたしのことを大事にしてくれると思うと、もっと痩せて綺麗になりたいって思うようになっちゃった。
    せっかく女に生まれたからには、やっぱりエロくて可愛くならないと損だものね。
    今はまだちょっち体重過剰だけど、二十歳の誕生日までには大変身している予定。
    縛り頃のいい女になっているはずだから、みんな楽しみにしていてね。



    ~登場人物紹介~
    マコト: 19才。本話主人公。女の子大好きの女子。
    キタ: 27才。ネットの掲示板で知り合った男性。
    セイ: 41才。同上。
    ミズキ: 25才。同上。女装趣味の会社員。
    澪: 28才。ベテランの緊縛モデル。

    寒い日が続き、やや風邪ぎみの 82475 です。
    首都圏は大雪で大変だったようですが、皆さま元気にお過ごしでしょうか。

    2013年最初のSSは女の子好きの女子のお話です。
    前回が少々過激だったので^^、今回はほんわかしたお話を目指しました。
    女の子好きといっても、マコトちゃんは普通の百合とはちょっと違います。
    こんな女の子が身近にいたら楽しいでしょうね。
    太めのボディがコンプレックスのマコトちゃん。
    作者の私が疑うのも変ですが、きっと本人が思っているほどポッチャリでもないと思います。

    さて拙サイトで新年を迎えるのも4回目となりました。
    3周年のご挨拶でも書きましたが、ここまで細々ながら作品を書き続けられたことを感謝申し上げます。
    今後も変わらない雰囲気でブログを続けていければよいのですが、節目はいずれ必ず来るもの。
    さてさて、この先どうなるでしょうか。
    本年もどうぞよろしくお願いいたします。




    続・漆原博士の秘密の研究

    1.
    人里離れた漆原秘密基地。
    天才的な頭脳を誇る所長と優秀な助手が、日夜、秘密の研究と実験に明け暮れている。
    今、四輪駆動のジープが曲がりくねった山道を疾走していた。
    目的地は、そう、漆原秘密基地。
    漆原太郎博士の名前は、その筋では世界的に有名だった。
    この日も基地のエージェントがクライアントを連れてやってきたのである。
    ジープは基地の前庭に滑り込んでくると、ドリフトで1回転して停止した。
    「着きましたで」
    運転席から男が降りてきて後部座席のドアを開ける。
    「げー」
    黒いスーツにサングラスをかけた男がよろよろと降りてきた。
    「酔いマシタ」
    そのまま地面にげーげー吐いている。
    「大丈夫でっか?」
    「も少し、優しく運転してクダサイ」
    「これくらいで酔われたら困りまんなぁ」

    2.
    運転手は基地の玄関の呼び鈴を押した。
    しばらく待って、もう一回ボタンを押す。何も起こらない。
    「留守デスカ?」サングラスの男が心配そうに聞いた。
    「んな訳はおまへん。たぶん、壊れとるんでっしゃろ」
    運転手は玄関の引き戸をがらがらと開けた。
    「おーいっ、たろさぁ! 客、連れてきたでぇ!」奥にむかって叫ぶ。
    ばたばたと走ってくる音がして、白い割烹着の女が暖簾(のれん)から顔を出した。
    細い眼鏡をかけた20台半ばくらいの若い女性である。
    「まぁ、山岡さん、いつもどーもっ。・・こちらお客様?」
    「そや、商談やで。桃子はん。 たろさ、おるか?」
    「それはそれはっ。ちょっとお待ち下さい!。所長~っ、所長~!!」
    桃子と呼ばれた女性は奥に戻り、寝ぼけまなこの漆原博士を連れてきた。
    「・・だから夜中の番組は録画して見て下さいってお願いしたでしょ!」
    「しかし、待ちわびたアニメはリアルタイムで見たいものなのぢゃ」
    どうやら深夜アニメを見て夜更かししたせいで、まだ寝ていたらしい。
    「いけませんっ。今夜からはテレビのリモコンを取り上げます!」
    「おぉ、それだけは許してくれんか」
    「・・もしあなた、どくた・ゆるしはらデスカ?」
    サングラスの男が聞いた。
    「初めまシテ。あたくし、ドパイから来ました、ふさーむ・あむじゃど・いぶらひむ、略してふーちゃんデス」
    「おぉ、あなたが。私が漆原ですぢゃ!」
    「え?、ゆるしはら?」
    「いや、ウルシハラ」
    「ゆるしはら」
    「ウゥルシハラァ」
    「ゆぅるしはらぁ?」
    「いい加減にしなさい!」桃子が叱った。

    3.
    はるばるドパイからの客を連れてきた男は山岡といい、アダルトショップを経営している。
    山岡の店では漆原博士の発明品を独占的に扱っていて、そのいくつかは世界中に売れるヒット商品となっているのであった。
    ふーちゃんと名乗る男はドパイで商品を販売する現地ディーラーである。
    「どくた・ゆるしはらの時限手錠と時限南京錠。ドパイで自縛趣味のお客に大人気デス!」
    「そうかそうか」博士は褒められて機嫌がいい。
    「今日は新しい品物を見せてもらいに来まシタ。買い付けしたいデス」
    「よろしい! ではさっそく研究室へ行きましょう」
    「ア、その前に」
    ふーちゃんは玄関の脇に立つオブジェを指差した。
    それは透明な十字架の中にはめ込まれた等身大のウルトラセブンだった。
    「これも商品なのデスカ?」
    「ああ、これはわしが趣味で作らせたオブジェで、売り物ではないのぢゃ」
    「そうデスか。とてもよくできているので、さっきから気になっていたのデス」
    「おぉ、あんた。これが判るのか!?」
    「はい。がっつ星人のときの、ゆるとらせぶん、デスネ! あたくし、日本の特撮あにめ、大ふぁんデス!」
    「そうかそうか。ならば特別に、これの秘密をお見せするですぢゃ」
    博士は十字架の後ろに立つと、側面の穴から中に入れてウルトラセブンの脇腹を揉んだ。
    すると、どうしたことだろう。
    十字架に閉じ込められたウルトラセブンがイヤイヤをするように首を振ってもがいたのだ。
    「おーっ。コレはいったい」
    「うむ。このウルトラセブンはフィギュアではない。着ぐるみぢゃ」
    「着ぐるみ? では人間が入っているのデスカ?」
    「そうじゃ。この中にはアルバイトの女子大生が入っておる」
    「おーっ。女の子! あるばいとって何デスカ? メシツカイとかドレイと同じ意味デスカ?」
    「それはちょっと違いますぢゃ」
    「・・たろさ、まだこんなことしとるんか」山岡が口を挟む。
    「いや、やってみると、これが止めれんでなぁ。・・来月は帰りマンの逆さ磔を計画中ぢゃ」
    「どくた・ゆるしはら!!」
    ふーちゃんが叫んだ。
    「欲しいデス! 是非、売ってクダサイ!! 量産が難しいというナラ、この品だけ言い値で買いマス!」
    「いや、しかし」
    「ドレイの女の子も一緒に引き受けマス! こちらは羊40頭でどうデスカっ。50頭でもいいデス!!」
    博士と山岡はウルトラセブンも女子大生も売るつもりがないことをどうにか理解させて、研究室へ移動した。

    4.
    研究室では、白衣を羽織った白井桃子が待っていた。
    「まずは、これですぢゃ」
    博士が示したのは、鉄道の線路を敷いた正方形の台だった。
    実際の線路と同じで、ちゃんと砂利の上に木の枕木、その上に鉄のレールが2本敷かれている。
    ただし正方形の1辺が2メートルほどなので、線路の長さも2メートルだけだった。
    「これは、バーチャル・トラックペリルぢゃ。さっそく実演してお見せしまずぞ。・・白井くん」
    「はい」
    桃子が白衣を脱ぐ。その下は真っ赤なノースリーブのミニスカワンピースであった。
    「おぉ、美しいデス」ふーちゃんが声を上げた。
    「この人はどくた・ゆるしはらの第1夫人デスカ?」
    「うんにゃ。白井くんはわしの忠実な助手ぢゃ。ジャムおじさんに対するバタコさんのような関係なのぢゃ」
    「なるほーど、よく分かる例えデス」
    「何やねん、そら」山岡だけが理解できずに首をかしげている。
    そうしているうちに博士は縄束を取り出して、桃子を後ろ手に縛った。
    さらにそのまま線路に寝かせて、身動きできないように全身を縛りつけてしまった。
    「おーっ、素晴らしいろーぷわーくデス!!」
    「いやいや。研究に携わる者として、これくらいは常識ですぢゃ」博士はドヤ顔で答える。
    「このたびは縄で緊縛したが、鎖でも拘束衣でも、何でも好みの方法で構わないのぢゃ」
    ガムテープを切って桃子の口の上にぺたりと貼った。
    「もちろん猿轡も自由ぢゃ」
    博士は分厚いゴーグルのような装置を桃子の顔面に装着した。眼と耳が装置に覆われる。
    「さぁ、これが3Dサウンド立体視ゴーグルぢゃ。もう一つあるから、あんたも体験してみなされ」
    ふーちゃんにもゴーグルを着けさせた。
    「いきますぞ」
    ぶん。小さな音がしてゴーグルの電源が入った。
    ・・
    目の前に風景が浮かび上がった。荒地が広がる西部劇の舞台のような景色。
    ひゅうひゅうと風の吹く音も聞こえる。
    ぽぉぉぉぉぉ。遠くで汽笛が聞こえた。
    コトン、コトン。レールに列車のジョイント音が伝わる。
    やがて細い煙が見え、その姿が見る見る鮮明になった。
    巨大な蒸気機関車が迫ってきた。
    黒い煙と白い蒸気を吐きながら、こちらに向かって轟々と走ってくる。
    ぼぉおお~!! ぼぉおお~!!!
    汽笛が繰り返し鳴る。
    がたがたがた。がちゃんがちゃんがちゃん。激しい機械音に包まれた。
    ・・
    ふーちゃんは腰を抜かして床に座り込んだ。
    「どうですかな?」
    「おしっこチビるかと思いマシタ。ものすごい迫力デス」
    「あんたは映像とサウンドだけ体験したが、彼女は全身縛られてレールの振動付で体感したのぢゃぞ。そこらのテーマパークのアトラクションなぞ目ではないのぢゃ」
    「おー。・・では、この人は、どうなったのデスカ?」
    ふーちゃんは線路に縛られたままの桃子を指差した。
    博士が桃子のゴーグルと猿轡を外した。
    桃子は口から泡を吹き、白目をむいて気絶していた。スカートの裾から透明な液体が流れていた。

    7.
    「お見苦しい姿をお見せしました」
    汚れた服を着替えてきた桃子が顔を赤らめて頭を下げた。
    「白井くんは、いつも自ら犠牲になる覚悟で実験台を務めてれておるのぢゃ」
    「素晴らしいデス。それで実際に体験してどんな気分デスカ? えっちでぬれぬーれ?」
    「おほほほほ・・。それはもう」
    桃子は手の甲を口に当てて上品に笑うと、右手をグーに握ってぽかん!とふーちゃんの頭を殴った。
    「あイタ!!」
    「白井くんはいつも真面目ぢゃから、からかってはいかんぞ。・・それでどうぢゃな。この装置は」
    「とてもよくできた装置デス。でも、値段はいくらデスカ?」
    「ふむ。これは・・」博士は山岡に目配せをする。山岡が目を光らせて答えた。
    「そぉでんな、ほんの1500万円ほどですわ」
    「うーん、難しい値段デス。普通のマニアには買えマセン」
    「そうでっか? 金持ちでしたら安いもんでっしゃろ」
    「お金持ちなら、庭に線路敷いて、本物の機関車、走らせマス。そして、れいるろーど・ぺりる、りあるで楽しみマス」
    「ええっ?!!」
    「あらぶーのお金持ち、舐めてはいけマセン」ふーちゃんは真面目な顔で言った。
    「ばーちゃるは必要ないデス。・・もっと、すごい発明を見せてクダサイ」

    8.
    「仕方あるまい。最高に秘密の発明をお見せするですぢゃ」
    博士は別の装置の前に皆を連れて行った。
    その装置は、棺桶のような箱の周囲にたくさんのパイプが繋がって構成されていた。
    「これは、カーボナイトの冷凍装置ぢゃ」
    「え?! あの、えぴそーど・ふぁいぶの?!」ふーちゃんが驚いた。
    「そうですぢゃ」
    「あたくし、はん・そろの等身大ふぃぎゅあを2千ドルで買って持ってマス! 本当に人間を冷凍にできるのデスカ?」
    「できるのぢゃ。ただし、冷凍にできるのは女性だけぢゃ。男は染色体が相違するから無理なのぢゃ。念のために言っておくが、これは科学的な理由であって、決して作者の趣味などではないのぢゃ」
    「誰に向かって話しとるんや、たろさ」
    「お、女のヒトだけ。じぇんじぇん問題ありマセン!」
    「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。どうぢゃ、見たいかね?」
    「見たいっ。見せてクダサイ!!」
    「白井くん、よいか?」
    「はい! 博士の研究と科学の発展のためでしたら、いつでも覚悟はできていますわ!」
    「は、はぁ、はぁ。・・かーぼないと冷凍!」ふーちゃんは興奮して叫び続けた。

    9.
    全裸になった桃子が装置の中に横たわった。
    両手を上に上げたポーズをとったところで、上から分厚いガラスの蓋をはめ込んで固定した。
    「映画では着衣で冷凍にされとったようぢゃがの、実際は不純物を排するために何もつけてはいかん。これも純粋に科学的な理由であって、決して読者サービスなどではないのぢゃぞ」
    「そやから誰に向かって話しとるんや、たろさ」
    博士が全員に保安メガネを配ってかけさせた。
    「よいか? 一瞬ぢゃから、よく見ておくのぢゃ」
    しゅーっ!!
    装置の中に白い煙が噴出して、桃子の姿が隠れた。
    研究室の中にも煙が溢れて渦巻いた。
    しゅわしゅわしゅわ~!
    やがて煙は消えて、再び装置の中が見えるようになった。
    それは、きらきらと光る金属のような輝きに満ちていた。
    蓋を外して中身をチェーンで吊り上げる。
    「で、できタ!」
    「ふむ!」
    四角いプレートの中に、鮮やかなブロンズ色になった桃子がレリーフのように埋め込まれていた。
    両手で髪をかきあげるようなポーズ。目を閉じ、口は半開き。
    形のいい乳房も、斜め下に突き出した爪先も、固く微動だにしない。

    カーボナイト冷凍!

    「う、美しいデス!」「こらすごいわ」
    「我ながら完璧ぢゃ。これこそ半永久的に保存可能なカーボナイトのオブジェぢゃ!!」
    「か、か、買いマス」ふーちゃんが言った。
    「この機械、何百万ドルでも、買いマス!!」
    「慌てるでない」博士が諭す。
    「世界に1台だけの装置ぢゃ。量産して市販するためには、まだまだ改良が必要なのぢゃ」
    「で、では、そのときは中東で独占販売の契約を!」
    「それは無論。契約金はこちらの山岡と話して下され」
    「なあ、たろさ・・」
    山岡が桃子を指差して聞いた。
    「桃子はんはどうなっとんや。・・まさか、死んでしもたんやないやろな?」
    「ちゃんと生きとるぞい。カーボナイトの中で完全に固化して心臓も停止しておるから、その意味では死体と変わらんがの」
    博士はカーボンになった桃子の身体をぽんぽんと叩いた。
    「この中で意識はあるのぢゃ。白井くんが何を感じて、何を考えておるのか、それを知る手段がないだけぢゃ」
    「そうか。それで、どうやって元に戻すんや」
    「大丈夫ぢゃ。この装置はカーボナイト冷凍の復元も可能なのぢゃ」
    「ならよかった。てっきり、永久にこのままかと思おたで」
    「たった一人の助手を無くしたら、わしが困るわ。・・ぢゃが、しばらくうるさく言われんで済むのもよいかな」
    「こらこら」

    11.
    その夜。
    秘密基地ではカーボナイト冷凍の桃子を壁に飾り、その前で3人が祝杯を上げていた。
    ふーちゃんが自分のおごりで博士の研究の成功を祝わせてくれと申し出たのである。
    「わっはっはっは」
    博士がビールのジョッキを一気に空けた。他人の金で飲む酒はうまいのである。
    「この機械、お金持ちみんな欲しがりマス!! どくたは名声、あたくしは大もうけ!!」
    ふーちゃんが叫びながらビール瓶をシェイクしては中身をそこらじゅうに撒き散らかしていた。
    ときどき自分の頭からビールをかぶっては「うィ~!!」と奇声を上げる。
    「酒癖の悪い男やな。だいたい、こいつイ◯◯ム教徒やろ。アルコール飲んでもええんか」山岡が呆れたように言った。
    「ふむ。まあよかろうて」
    「それより、たろさ。桃子はんをちゃんと元に戻すんやで」
    「分かっておるわい。とりあえず明日まではわしを自由にさせてくれるか」
    「まったく」
    「おお、まギまドの時間ぢゃ! あの男の世話は頼むぞ」

    12.
    博士は次の日の午後になって起きてきた。
    酒まみれになって寝ていたふーちゃんも起されて、山岡とともに研究室に集まった。
    カーボナイト冷凍の桃子を元の人間に復元するのである。
    「心配は不要ぢゃ。まったく問題はない!」
    桃子が埋め込まれたプレートを装置の中に収めて蓋をする。
    しゅいーん。
    桃子の身体が赤く輝いた。
    しゅわしゅわしゅわ~!
    研究室の中に白い煙が溢れて渦巻いた。
    その量は、昨日よりもはるかに多かった。
    煙だけでななかった。装置全体がごとごとと激しく振動していた。
    「これは変ぢゃ。お前ら、何かしとらんか?」
    博士が振り返って聞く。
    「そういえば、この男が桃子はんに抱きついとったが」
    「お前、白井くんに何をしたのぢゃ!」
    「あ、あたくし、何もしてマセン!」
    「嘘をつくな。装置には問題ないはずぢゃ!」
    「え、え~ト、・・お酒を少しこぼしマシタ。けど、すぐに拭きとりマシタ」
    「何? その酒とは、もしや、ヤモリとスッポンを漬け込んだ夜の生活のためのスタミナ・リキュールか」
    「はい、そーデス」
    「何でそんなもんがあんねん」
    「それぢゃっ。カーボナイトはヤモリのうんちで変質するのぢゃ!」
    「ええっ、ほならどうなるんや?!」
    「危険ぢゃ、退避!!」
    わーっ。
    3人が先を争って研究室から逃げ出そうとした瞬間、装置が爆発した。
    ぼかーん!!
    研究室の天井が吹き飛んだ。

    13.
    全壊した基地の上空に、ぽよぽよぽよ~んと黒いドクロ雲が浮んでいた。
    瓦礫の中にウルトラセブンの磔だけが無傷でそびえている。
    その傍らに煤まみれの真っ黒になった3人が折り重なってのびていた。
    ひゅー。ぼかん。
    空から全裸の桃子が降ってきて、3人の上に落ちた。
    「ぎゃあ」「ぐぇ」「あイタ!」
    「いったい、何がありましたの?」ぺちゃんこになった3人の上に座った桃子が聞いた。
    「どうやら生きておるようぢゃの」博士が言った。
    「そうでんな」山岡も言った。
    「ごほ、ゲホ。もーいや! デス」ふーちゃんが叫んだ。
    ひゅー。ぼかん。
    空から全裸の桃子が降ってきて、4人の上に落ちた。
    「きゃん!」「ぎゃ、ぎゃあ」「ぐ、ぐぇ」「あイタタ!」
    「いったい、何がありましたの?」ぺちゃんこになった4人の上に座った桃子が聞いた。
    ひゅー。ぼかん。
    ひゅー。ぼかん。
    次々と全裸の桃子が降ってきた。
    「た、たろさ、これはどういうことや!」
    「わしにも分からん。復元の過程で白井くんの身体が分裂したとしか」
    ひゅー。ぼかん。
    ひゅー。ぼかん。
    「あんた、白井くんを何人か引き取ってくれんかね」博士がふーちゃんに聞いた。
    「いらないデス! 早くドパイに帰りタイ!!」
    ひゅー、ひゅー。
    ぼかん、ぼかん。
    全裸の桃子はそこらじゅうに降り積もって、まだまだ止みそうになかった。



    ~登場人物紹介~

    漆原太郎: 52才。天才的頭脳の漆原秘密基地所長。深夜アニメにはまっているらしい。
    白井桃子: 25才。優秀な助手。私、科学のためにこの身を捧げます!
    山岡 : 51才。漆原博士の友人でアダルトショップ経営。
    ふーちゃん: 年齢不詳。ドパイから来たアダルト商品のディーラー。特撮・アニメが好き。
    アルバイトの女子大生: ウルトラセブンの着ぐるみに入っている。

    調子にのって漆原博士の続編です。
    今回は『固め』です。
    スター◯ォーズでハ◯・ソロがカーボナイト冷凍されるシーンを見て、これが女性だったらと思ったのは私だけではないでしょう。
    博士にその妄想を実現してもらうことにしました。
    勢いだけで一気に書いたので、もっともらしい理屈はありません^^。
    突っ込みどころ満載ですが、とりあえずは楽しんでいただけたら幸いです。

    ありがとうございました。




    漆原博士の秘密の発明

    1.
    「全国100万人の秘密基地ファンの皆様、こんにちは! 『世界の秘密基地から』の時間です」
    画面に若い女性レポーターが登場した。
    背後には灰色の建物。その横には巨大なパラボラアンテナがそびえて、天をにらんでいる。
    「今週は『漆原(うるしはら)秘密基地』にやってきました。所長の漆原太郎博士です!」
    レポーターの隣で白衣を着た人物が会釈した。
    ごましお頭に丸眼鏡をかけた小柄な中年の男性である。
    「さっそくですが博士、あれは何のアンテナですか?」
    「おお、いいところに目をつけましたなっ。秘密基地と言えばパラボラアンテナ、忘れてはならないアイテムぢゃからな」
    「そうですね!」
    「あれは500万円もかけて建てたアンテナですぞ」
    「500万ですか? 案外安いというか、何億円もするものかと思ってましたが」
    「うむ。見た目を最大に優先して、それ以外はコストを大幅に削減した地球とお財布に優しいパラボラアンテナですぢゃ」
    「なるほど。で、何を受信するんですか?」
    「ん? 何も受信しませんぞ」
    「はぁ?」
    「ぢゃから、見た目を最大に優先したアンテナですのぢゃ」
    「じゃ、見かけだけ?」
    「ダミーと呼んでくだされ」
    「ただの飾りに500万・・」
    レポーターはしばらく沈黙した。博士は横で腕組みをして一人うんうんと頷いている。
    やがて二人は顔を見合わせて、笑った。
    「あははは。すごいですねぇ。500万円のパラボラアンテナ」
    「うははは。そうですぢゃ」
    空虚な空気が漂ったが、アホーと鳴くカラスは飛ばなかった。

    2.
    「それでは博士、基地の中を見学させて下さい!」
    「ふむ。一応念のためにお伝えしますが、ここは秘密基地であるからして内部は秘密ぢゃ。それを本日は、特別にほんの一部だけお見せしますぞ」
    「ありがとうございます!」
    秘密基地の建物はプレハブの平屋で、工事現場の飯場のような雰囲気であった。
    博士は入り口の木の引戸を片手で開けようとしたが、固くて開かなかった。
    「む」
    両手で持ち上げるようにして、一気にがたがたと開けた。
    「これは、近代科学の粋を結集した基地とは、とても思えない雰囲気。さすがのカモフラージュですね、博士!」女性レポーターがコメントする。
    「ま、一般人に見破られないという意味では、カモフラージュといえなくもない」
    「では、基地はこの地下に?」
    「うんにゃ。これが秘密基地の本体ぢゃ」
    一行は入口すぐ横の部屋に入った。
    「ここは当基地自慢のギャラリーですぢゃ」
    そこには、人の背丈よりも大きな十字架が立てられていて、等身大のウルトラマンが磔になっていた。
    「これぞ、宇宙の平和を愛する者には決して忘れることのできぬモニュメント。十字架に架けられたウルトラマンぢゃ!」
    博士は女性レポーターがきょとんとしているのに気づいて質問する。
    「もしかして、お嬢ちゃんは知らぬのか? あの伝説のゴルゴダ星における4兄弟の磔を」
    「すみません。平成生まれなもので」
    「・・そうか。昭和も遠くなったものぢゃのう。わしはこれを見る度に正義の血が熱く煮えたぎるというのに」
    博士は少しだけ遠くを見るような目をして、それからウルトラマンの胸に手をやった。
    すると、どうしたことだろう。
    磔のウルトラマンがイヤイヤをするように首を振ったのだ。
    「は、博士! これはいったい」
    「うむ。このウルトラマンは等身大フィギュアではない。着ぐるみぢゃ」
    「着ぐるみ? では中に人が」
    「そうぢゃ。この中にはアルバイトの女子大生が入っておる」
    「女の子なんですか?」
    「当然ぢゃろう。何で男を磔にして面白いのぢゃ。・・ほれ、この体のラインをよく見なさい」
    確かにこのウルトラマンには胸があった。腰のくびれといい、尻から太もものラインといい、まさしく女性だった。
    博士がウルトラマンの胸をわしわしと揉むと、それに合わせてウルトラマンは磔の体をよじらせてイヤイヤをするのだった。
    「あの、いつもこんな風に女の子を十字架に?」
    「いや。バイト代を払わねばならんから、土日だけぢゃ」
    博士はウルトラマンから離れると、入ってきたのと反対側の扉を指差した。
    「では次は研究室へ行きますぞっ」
    一行は、十字架の上で首を垂れて激しく肩を上下させているウルトラマンを残し、部屋を出て行った。

    3.
    研究室には大きなガラスの試験管が置かれていた。
    コルク栓で蓋をした試験管の中は透明な液体で満たされていて、そこには全裸の女性が目を閉じて眠るように漂っていた。
    やや童顔ながらも、なかなかの美女である。

    試験管の美女

    「試験管の美女ですぢゃ」
    「あの、もしかしてこちらも本当の人間」
    「当然ぢゃ! これこそがわしが心血を注いだ研究の成果ですぞ!」
    博士は試験管をコンコンとノックした。
    「よく見るのぢゃ。ちゃんと生きておる」
    すると、美女はゆっくり目を開けてこちらを見たのだった。
    「おぉ!」
    口元から泡がぽこぽこと出て浮かび上がっていく。
    「彼女は白井桃子くん。わしの忠実な助手で、自ら被検体となってくれておる。・・こりゃ、そんなに近う寄って写すでない!」
    博士は、試験管に貼り付いて舐めるように美女を撮影しているカメラを叱った。
    「博士っ。これはどのような実験なのですか?」レポーターが質問する。
    「よろしい。・・思い出すのぢゃ。悪の組織の実験室では大抵こんな透明な筒の中に美女が浮かんでおるであろう?」
    「はい。確かに」
    「これはそれを再現したモノなのぢゃ。・・こほん」
    博士はわざとらしく咳払いをした。
    「わしは長年、夢見てきた。生きた女性を液体の中に封印したいと! あぁ、かのエ◯ァのLCLは何と素晴らしい物質か。わしは綾◯が口から泡を吐くシーンだけで3回は抜くことができるのぢゃ!! ・・いや、そんなことはどうでもよかった。LCLはフィクションに過ぎぬ。問題は実際にそのような液体呼吸をいかに実現するか、ということなのぢゃ!!」
    試験管の回りをこつこつと歩きながら、唾を飛ばして長々と熱弁する。
    「苦難の道ぢゃった。・・わしは液体呼吸の可能性を求めてあらゆる溶液を試みた。海水、純水、炭酸水、ビール、ウィスキーから、焼酎、どぶろくに至るまで」
    「後半お酒ばかりじゃないですか」
    「そしてわしは一つの道を得た」
    「そ、それは!?」
    「液体呼吸はあきらめた」レポーターが少しコケる。
    「じゃあ、この液体は」
    「これはただの水道水ぢゃ。・・わしが見つけた道は、発想の転換なのぢゃ。呼吸が難しいというのであれば、呼吸を不要にすればよい!」
    「なるほどっ。でも博士、そんなことが可能なのでしょうか?」
    「ふぉ、ふぉ、ふぉ、ふぉっ」
    博士は体を揺らせてバルタン星人のように笑う。
    「もちろん、できるのぢゃ。・・どうかね。試験管の美女の作り方を見たいかね?」
    「はい! 是非見せてください!」
    「では、お譲ちゃん。準備したまえ」
    「は? 準備? 私ですか?」
    「そうぢゃ。今、ここに美女といえばあんたしかおらんではないか」
    「やぁだぁ。やっぱりあたし、いや私が美女ですかぁ? ・・でも、裸になるのは事務所通さないとマズいしぃ」
    女性レポーターは急にもじもじと困ったふりをした。
    ここで収録はいったん中断される。
    番組のプロデューサーが所属事務所と交渉して彼女が着るモノを決めた。

    4.
    「・・はい! そんな訳で、私、このような格好になってしまいました♥」
    再び画面に登場した女性レポーターは、ビキニの下だけを穿いて、右手にマイクを持ち、左手は豊満な胸を隠して手ブラのポーズをとった。
    彼女は元グラビアアイドルで、プロポーションは抜群。セミヌードの写真集なども出しているのであった。
    「博士! よろしくお願いします!」
    「よろしい。ではまずここに入るのぢゃ」
    博士は一人用サウナのようなボックスの中に女性レポーターを入れた。
    「中は純酸素で満たされておる。そこに腰掛けてしばらく過ごしなさい」
    「はい!」
    「・・さらにゆっくり深呼吸をしなさい。これでもう十分、二度と息をしたくないと思うまで繰り返すのぢゃ」
    「わかりました」彼女は素直に従う。
    「これで血中の酸素濃度は最大になり、このままでも30分は無呼吸で平気ぢゃ。しかし、それだけではまだ十分ではない。さらに安定して過ごすための発明がこれぢゃ!」
    博士が取り出したのは『ヘーデルA』と書かれた500mlのペットボトルだった。
    「このヘーデル・エースで余分な代謝を低下させて酸素の消費を10分の1に節約できるのぢゃ! 永遠にとはいかぬが、数時間は酸素なしで大丈夫なのぢゃ。後は不要な二酸化炭素を排出するだけでよい!」
    博士はボックスの窓からペットボトルを女性に渡した。
    「これを飲むんですか・・?」
    女性レポーターはボトルを手に持って心配そうな顔をする。
    ボトルの中にはドロドロした粘土水のようなモノが入っていた。
    「心配せずとも危険はない。何度もテスト済みぢゃ」
    「じゃあ、覚悟を決めて飲みます。うぇっ、くさい・・」
    女性は目を白黒させながらヘーデルAを飲み干した。
    「さあ、出てきなさい。慌てずにゆっくり動くのぢゃぞ」
    全裸の美女の入っている試験管のコルク栓が外される。
    「余分な試験管はないのぢゃ。狭いところにすまんが、白井くんと一緒に入ってくれたまえ」
    撮影スタッフが手伝って、レポーターの女性は試験管の中にざぶんと沈められた。
    溢れた水が周囲にこぼれる。待ち構えていた美女が彼女を優しく抱きしめた。
    博士は再びコルク栓をはめ込んで、試験管を封印した。

    5.
    それから画面には、試験管の中に浮ぶ二体の美女の映像がナレーターなしで映し出された。
    やや不安気な表情の美女を、もう一人の美女が心配ないというふうに抱きかかえている。
    やがて二人はゆっくり向かい合い、微笑み合って、それから唇を合わせた。
    口からこぽりと泡が出て浮かび上がる。
    二人はそのまま2時間以上も試験管の中に漂い続けた。

    6.
    試験管から出された二人の女性と漆原博士がソファに座っている。
    女性達は白いガウンを羽織っていた。
    ガウンの襟が微妙に開いて肩が見えているのは番組プロデューサーの指示である。
    「素晴らしい体験でした!」
    マイクを持った女性レポーターが話した。
    「博士、水中で呼吸しなくても過ごせるというのはすごい発明ですね!」
    「ふむ、わしもそう思っておりますぢゃ」
    「女性を水中に展示する、という用途以外にも、いろいろ有効に使えるのではないでしょうか?」
    「そうですな。今後もっと完成度を高めて、いろいろ考えていきたいと思っておるところですぢゃ」
    「げっぷ」
    助手の白井桃子が口に手をやって小さなげっぷをした。
    「博士、そろそろ」
    「おお、そうぢゃな、白井くん。・・それでは番組をご覧の諸君。今後のわしの研究に期待してくだされ! 今日は漆原秘密基地からのレポートぢゃった!」
    博士はそう言って頭を下げた。隣で桃子も頭を下げる。
    「ちょっ、どうして勝手に終わるんですか! げっぷ」
    女性レポーターが抗議する。
    「げっぷ。・・あれ?」
    「げっぷ」
    二人の女性がげっぷを繰り返した。
    「いや、実はヘーデル・エースはまだまだ研究中でしてな」博士が頭をかきながら説明した。
    「げっぷ」
    ぶぅ。
    「きゃ!」
    女性レポーターは自分の尻に手をやって悲鳴を上げた。
    「何よ、これ!」
    ぶ。ぷり。
    「げっぷ」
    ぶぶぶ。
    げっぷに混じって、二人の女性の尻から音がしていた。
    「普通の空気で呼吸をすると、ヘーデルの残留成分がガスになるのぢゃ」
    「えぇ~、そんな」
    「ガスは口と肛門から放出される。肛門から出るガスは、少々、匂いがきつい」
    ぶ~っ。ぶりぶり!
    撮影スタッフが鼻を押さえた。
    少々、どころではない、すさまじい臭気であった。
    「身体に危害はないが、いささか、刺激が」
    説明の途中で博士がその場に昏倒した。
    隣で桃子が静かに倒れる。
    「やぁだぁっ・・」
    叫びながら女性レポーターもひっくり返った。
    ぶりぶりぶり。すばっ。
    女性達の放屁は続き、意識のない二人の下半身がその度に大きく跳ねた。
    やがてカメラの映像もゆっくり傾き、そして動かなくなった。
    ぼん! ぼかん!
    誰も動く者のない映像の中で、小さな爆発音だけが響き続けていた。



    ~登場人物紹介~
    漆原太郎博士: 52才。漆原秘密基地所長。日夜、怪しい研究にはげんでいる。
    白井桃子: 25才。優秀な助手。私、科学のためなら脱ぎます!
    女性レポーター: 23才。番組レポーター兼司会。元グラビアアイドル。
    アルバイトの女子大生: ウルトラマンの着ぐるみに入っている。

    下品なオチにお付き合い下さいまして、ありがとうございますww。
    マッドサイエンティストっぽいネタでDIDをやってみようと書いたSSです。
    漆原秘密基地の使命はいったい何なんだとか、くれぐれも突っ込まないように。

    美女を水中に閉じ込める方法については、こんなしょうもないSSでもいろいろ考えました。
    アニメや小説で最も一般的なのは、博士も話していたLCLのような液体呼吸でしょう。
    そんな液体は動物実験では実現されているようです。
    しかし私は、博士がLCLの発明に失敗したことにしました。

    代わりに使ったのは、血液中に蓄積する酸素量を増やして呼吸を不要にする方法です。
    これは私のオリジナルではなく、大好きなSF作家の某短編小説からアイディアをいただいたものです。
    (申し訳ないので名前はあげないでおきます。分かる人だけ、ああ、あれか、と笑ってください)
    これだと無呼吸でいられる時間が短いので、酸素を節約する『ヘーデルA』を博士に発明してもらいました。
    (え? この方がすごいって? 気にしない気にしない)
    なお、純酸素を吸って水圧を長時間受けると酸素中毒症のリスクがあるらしいです。
    そこで浅いタンクに横たわる構成も考えましたが、やはり美しくない^^。
    酸素中毒のことは忘れることにしました。
    (気にしない気にしない)

    どうして無難な液体呼吸ではなく、体内に酸素を蓄積する方法にしたのか。
    それは、"時間" を有限にしたかったからです。
    数時間は大丈夫とはいえ、体内の酸素を使い果たしたら彼女には確実に終わりが来るのです。
    安定していつまでも酸素の供給を受け続けることができる液体呼吸との違いです。
    それを分かって、水中に美女を封印する、この愉悦。
    女性にとってはスリル、そして諦念。
    見る側にも、見られる側にも、最高に贅沢で濃厚な数時間・・。

    おっと。
    つい興奮して自分だけの世界に行ってしまうところでした。
    漆原博士の発明品のお話は、面白いのでまた書くかもしれません。
    それではまた。
    ありがとうございました。




    春、高楼

    1.
    遥かに高い青空と太陽。
    その下に広がる、新緑の山々、田園、川、道路、そして街。
    地上22階の廃ビルの屋上から望む風景は、ここがまだ豊かな自然に囲まれていることを実感させられる。
    この高度でも肌に感じる風は心地よくて、目の前のパノラマを眺めながらいつまでもここに座っていたいと思った。

    あたしは屋上の手すりに背中をつけて座っている。
    薄いキャミソールのワンピース1枚。
    ここに来たときにかぶっていた麦わら帽子は、たった1回の風で飛ばされてしまった。
    露出した肩と二の腕に日が照るのを感じる。
    日焼け止めクリームは塗ったけれど、焼けそうだな。
    自分の体を見下ろした。
    後ろ手に組んだ腕に巻きつく縄。揃えた膝の下にも縄。
    あいつの縄があたしの自由を奪っている。
    あぁ~っ、いけないっ。縄の跡が日焼けに残ったらどうしよう?
    でも、今さらどうしようもないな。

    空を見上げる。
    お日様の位置は、今がまだ午前の早い時間であることを示していた。
    さわやかな風がうなじを撫でる。
    んーっ。
    手足は伸ばせないから、代わりに首を回して伸びをした。
    あぁ、気持ちいい!

    春、高楼

    2.
    「次の水曜、◯◯ビルに行くよ。どうする?」
    「行く!」
    あいつの誘いにあたしは乗った。
    廃墟や洞窟の探検が趣味のあいつ。
    今までもあいつと一緒に、普通の人が行かない場所に行った。
    立ち入り禁止の場所に入り込んで、警察に叱られたことも1度や2度じゃない。
    それでも、あいつは探検を止めない。空虚な場所がたまらなく好きだと言う。

    夜明け前。
    あいつとあたしは、ビルの前にいた。
    『立入禁止』の看板の下をくぐり、板を打ち付けた塀の割れ目から侵入する。
    二人ともミリタリージャケットにカーゴパンツ、トレッキングシューズの探検スタイル。
    「行こう」
    あいつがヘルメットのランプを点けて、壊れて外れたドアから中に入った。
    あたしもその後に続いた。

    あいつの探検はいつも単独だ。
    他にはあたし一人が、最初と最後だけ同行する。
    あたしはあいつの探検には何の役にも立たないし、どちらかと言うと足手まといだと思う。
    それでも、あいつがあたしを連れて行ってくれるのは、無事に帰るためだと言ってくれた。
    あたしがいるから、無茶をしない。
    あたしが待っているから、戻れるところまでしか行かない。
    あいつにとって、あたしは探検の安全を守るお守りみたいなものなんだ。

    ビルの中を歩く。
    ところどころ水が溜まって滑りやすいところは、あいつが手を引いてフォローしてくれた。
    真っ暗な中を進んで階段にたどりついた。ここからは登りになる。
    階段はところどころコンクリートが剥がれて、鉄板が露出していた。
    うっかりそんな場所に乗ると朽ちた鉄板を踏み抜いてしまう。下手をすると転落して命に関わる。
    慎重に登り、そして危険だと判断すると別の階段に移動してそこから登った。
    目指すは屋上だ。
    まず、あたしを屋上に送り届けること。
    それが探検の最初のミッションだとあいつは言って笑った。

    屋上に出る踊り場の鉄扉は、錆びついていて簡単には開かなかった。
    二人で息を合わせて何回か体当たりすると、ようやく人が通れる隙間が開いた。
    そこから手を繋いで屋上に出た。
    真正面にまぶしい朝日が照っていて、あたし達は歓声を上げた。

    3.
    少しだけ水分と栄養を補給して、あたしは着替えた。
    「急がなくてもいいよ」
    あいつはそう言ってくれたけれど、貴重な探検の時間をあたしのために費やしてほしくなかった。
    分厚い探検服を脱いで、ワンピースに着替える。
    下着もスポーツタイプのブラとショーツから、可愛いランジェリーに替えた。ブラはつけない。
    足元は本当は裸足がいいんだけど、屋上にもコンクリートや金属の破片が散乱しているから、サンダルを履いた。

    「ここがいい」
    屋上の手すりの台座にあたしは腰を下ろした。
    とても見晴らしのいい場所だった。
    「寒くない?」
    「大丈夫」
    あいつはリュックから縄束を出し、あたしは自分の両手を背中に回した。

    元々、あいつはアウトドアのロープワークは得意だった。
    女の子を縛る趣味まではなかったみたいだけど、あたしと付き合うようになってすぐに緊縛のテクニックも上達した。

    「この手すりは丈夫だね。よほどの風が吹いても安全だよ」
    あいつは、あたしを縛った縄を確かめながら言う。
    金属の手すりに固定されて、あたしの体はびくともしない状態になった。
    「ありがとう。あなたが縛ってくれたんだから、心配してないわ」
    「一人で怖くない?」
    「あなたを信じて待つのが好きなの。だから、怖くない」
    「そうか。・・じゃあ」
    「気をつけて」
    あいつは、あたしにキスをすると離れていった。

    さあ、これであたしにできることは何もなくなった。
    あいつの縛りは強固で絶対に緩まない。
    だから、あたしはあいつが戻ってくるまで、いつまでもこのままだ。

    あいつの単独行の間、あたしが緊縛されるのはあたしから頼んだことだった。
    最初は危険だと渋っていたあいつが受け入れてくれたのは、その方があいつにとっても探検の刺激が増すと分かったからだ。
    探検中の緊縛はこれで3度目。
    今日のあいつは、あたしが何も言わなくても縄を持ってきてくれた。
    あたしはそんなあいつに感謝して、探検の無事を祈った。

    4.
    この屋上から見える世界。美しい自然と人々の生活のある街。
    すぐ近くに手に取るように見えるけれど、今のあたしからは隔離された、とても遠い世界だ。
    もし、あいつがこのまま戻ってこなかったら、あたしは誰にも知られずに、ここで終わりを迎える。
    あたしの死体は、骨になって、そしてその骨も粉になって、風に吹かれて飛んでいくだろうか。

    あいつに縛られて放置される間、あたしはいつも破滅的なことばかり考えている。
    自殺願望はないし、自分を傷つけたいなんて、これっぽっちも思わない。
    でもこうして縛られていると、自分の運命を他人に託している事実に、ぞくぞくするような興奮を感じてしまう。
    あいつはきっと戻ってきてくれる。あたしの理性はそう信じてる。
    でも、でも、探検は100%安全じゃない。もしあいつに何かあったら、そのときあたしは・・。
    ああ、あそこが、じゅんってなりそう。
    あたしは本当にひどい女だ。あいつの不幸を考えて感じてしまうなんて。
    死んだらきっと地獄に落とされて、そしてそこでも拷問を受けて、じゅんって濡れるんだろうか。

    どこからともなくチャイムの音が聞こえた。そしてサイレンの音。
    遠くから、近くから、いろいろな音が幾重にも重なって、鳴り続けた。
    これは、正午の合図。
    目の前に広がる世界は、お昼になったんだ。

    もちろん、あたしは何も変わりはない。
    喉、少し、乾いたかな?
    大丈夫。
    あいつが戻るまで、あたしはここで生き続けるんだから。
    もし、死ぬとしても、それまでは生き続けるんだから。
    あれ? 今のすごく当たり前だよね。あたしは自分で笑った。

    5.
    「よっ。気分はどうだい」
    「あれ? 戻ってきてくれたの?」
    あいつが目の前で笑っている。
    「青天井に放置してるからね。一応、様子を見にきた」
    「大丈夫だよ」
    「お昼にしよう。ラーメン食べるかい?」
    「うん、食べるっ。・・あ、解かないで!」
    「え、また?」
    あたしは縄を緩めようとしたあいつを止めた。
    ここにいる限り、あたしに自由を与えて欲しくなかった。
    前の洞窟でも、あたしは拘束を解かれるのを断ったんだった。
    「・・じゃ、ここで煮炊きは危ないし、踊り場で作ってくるから」
    「手伝えなくて、ごめんねー」
    「いいえ。わがままお姫様」

    あいつは、コッフェルに作ったインスタントラーメンをそのまま運んできた。
    あたしは縛られたまま、ラーメンを食べさせてもらって、スープまで飲み干した。
    その間、あいつはビルの中で見つけたものを楽しそうに話してくれた。
    このビルは昔はホテルで、客室を巡るといろいろなモノを発見できるらしい。
    でもあたしにとっては、あいつが喜んでるっていうだけでよかった。
    あたしはずっと縛られて自由を奪われていて、そして自由なあいつはあたしの世話をしてくれている。
    それを思うだけで、あたしは満足なんだ。

    食事が終わって、あたしは言った。
    「おしっこ」
    「え、俺がさせるの?」
    あたしが尿意を訴えると、あいつは必ず赤面する。それが可愛い。
    「当たり前でしょ。自分でできないんだから」
    「やっぱり縄を解くよ」
    「絶対駄目! あたしを自由にしないで」
    「はぁ~っ」
    あいつは赤い顔のまま、リュックから携帯トイレを出して組み立てた。
    「足だけ解くよ」
    「うん」
    あたしは腰を浮かせて、あいつが下着を下げるのに協力する。
    両足を広げて、あいつに携帯トイレをあてがわせた。
    「あのね。ずっと俺の顔見るの、やめてくれない」
    「だって下(しも)の世話してもらうんだもん。感謝の気持ちで見てるの」
    「恥ずかしくないの?」
    「気が狂うくらい、恥ずかしいわ。でも、あなただったら、いい」
    あいつの顔がますます赤くなった。
    うふふ。
    あいつはあたしの用が済むと、綺麗に拭いて下着を穿かせ、そしてもう一度あたしの両足を縛ってくれた。

    6.
    あいつは探検に戻り、あたしは再び一人きりになった。
    んーっ。
    あたしは動けない体の全部の筋肉に力を入れて伸びをする。
    あいつの縄は相変わらずしっかり締まっていて、あたしは手すりに固定されたままだった。
    うん。あたし、やっぱり囚われのままだ。
    お腹もふくらんで、満ち足りた幸せな気分だった。こんなことで嬉しいM女のあたし。
    この時間がいつまでも続けばいいのに。

    午後になっても、青空は広がり、風はさわやかだった。
    遠くの景色が少しぼやけてきたようだ。
    霞(かすみ)かな?
    雲が流れている。
    ああ、気持ちいい・・。

    7.
    頬に当たる風に目を覚ました。
    寝ていたらしい。
    今、何時だろう?
    見上げると、お日様は西に傾いていたけど、まだ日没には遠かった。

    後ろ手に縛られた両手を握ったり開いたりする。
    あいつの縄は強固だけど、縛られるあたしには優しい。
    あたしがよほど暴れたりもがいたりしない限り、血行を損なって肌に跡を残すようなことはない。
    この縄は、あたしを包んで、あたしの自由を奪うだけ。
    うん、やっぱり幸せ。
    繰り返すけど、あたしはドMのド変態だ。

    ごおっ!!
    突然の風にワンピースのスカートがひるがえった。
    驚いて周囲を見回す。
    空に太陽は出ていたけど、雲が増えていた。
    ごおっ!!
    もう一度強い風にあおられた。

    雲はぐんぐん増えて、お日様を覆った。
    吹きつける風も強くなって、風に顔を向けていると息が止まりそうになった。
    遠くの風景が、暗い灰色の影に隠れた。
    その影がこちらに迫ってくる。・・雨!
    これはどうやら覚悟しないといけないようだ。
    あたしは自分を縛る縄に目をやった。
    お願い。あたしを守ってね。

    8.
    あたしは横なぐりの雨と風の中で耐えていた。
    風が痛くて前を向いていられないから、顔を横に向けて両目をぎゅっと閉じていた。
    少しだけ目を開けてみると、あたしのまわりは一様に灰色のガスのようなものが流れていて何も見えなかった。
    強風が襲うたびに、あたしの体は浮かび上がって、前後左右に無茶苦茶に揺さぶられた。
    縄が食い込んで痛かった。
    でもこの縄がなかったら、あたしは絶対に飛ばされていると思った。
    あたしが無事なのは、こうして縛りつけられているから。
    あいつが縛ってくれたこの縄が、命綱。

    右足のサンダルが脱げて飛んでいった。
    薄いワンピースはぐちゃぐちゃになって、もう衣服の役を果たしていない。
    頭から足の先までずぶ濡れになって、それでもあたしは縛られたまま座っていた。

    不思議と恐怖感はなかった。
    もし縄が切れて屋上から落ちて死んでも、それで構わないと思った。
    それよりも、あいつが戻ってきやしないか、それが心配だった。
    あたしは固定されているから安全だけど、もしあいつが階段の踊り場からここまで歩いてこようとしたらその方が危険だった。
    踊り場の方に首を向けたけど、そっちも灰色の世界で何も見ることはできなかった。

    9.
    気がつくと、目の前に大きな夕日が見えた。
    あれほどに吹き荒れた嵐は夢だったのかしら。
    でも、あたしのワンピースはずぶ濡れだし、サンダルは両方ともなくなっていた。
    眼下には朝からずっと見てきた風景が広がっていた。
    ほんの短い嵐が通り過ぎだだけで、何も変わらない自然と街。
    はぁーっ。
    あたしは深呼吸をして、自分が生き延びたことを実感した。

    きらり。
    山の端にかかったお日様が輝いた。
    オレンジ色の光が広がり、それはどんどん赤みを増して雲の色を変えてゆく。
    空は赤から紫、そして薄紫へとグラデーションを描いて光っている。
    眼下の風景が鮮やかな茜(あかね)色に染まった。
    夕日に向かい合った街が光を反射して琥珀のように輝いている。
    ・・なんて素敵な夕焼けなんだろう。
    あたしは自分が縛られていることを忘れて、その情景に心を奪われていた。
    やがてお日様は最後のきらめきを残して山の向こうに消え、反対側から夜の緞帳(どんちょう)がするすると追いかけてきて、光のページェントは終了した。

    「くしゅん!」
    あたしは小さくくしゃみをした。
    濡れたワンピースが冷たかった。

    10.
    あいつが戻ってきたのは、すっかり暗くなってからだった。
    目の前の風景は夜景になって、街や自動車のヘッドライトが光っていた。
    「ごめん。雨が滝みたいに階段を流れて登れなかったんだ」
    あいつはそう言いながらあたしの縄を解いてくれた。
    もうあたしも、さすがに解かないでとは言わなかった。
    何しろ、寒くてしかたなかった。

    踊り場に戻ると、あいつはコンロで火を焚いて暖めてくれた。
    あたしはワンピースと下着を脱いで裸になって、あいつのポンチョをかぶり、あいつにもたれて熱いお茶を飲んだ。
    あたしの手足には縄に刻まれた跡と、うっすら縄の形が残る日焼けができていた。
    「M女の勲章だね」
    あいつはそう言って撫でてくれた。
    確かに嗜虐的で素敵と思った。しばらく半袖は着れないし、足も出せないけどね。
    すっかり温まると、あたし達はその場で抱き合った。
    あたしはすっかり高まってしまって、あいつを1回では許さなかった。

    深夜になって、あたし達は無事にビルから脱出した。
    本当はそのまま朝まで過ごしたかったけど、水も食料も足りなかった。

    11.
    「次は、夏だな」
    帰り道、あいつは次の探検の話をした。
    「△△県の無人島に廃坑があるんだ。テント担いで2~3日行きたい」
    「無人島? ・・なら痩せなくちゃ」
    「どうして?」
    「だって、水着になるんだもん。新しいビキニ、買うからねっ」
    「いいけど、誰も見てくれる人はいないよ」
    「あなたに見せるの」
    「え、俺?」
    あいつは少し黙った。暗くて見えないけど、きっと赤い顔をしてるはずだ。
    こういうときのあいつの反応は、いつも可愛い。
    「だ、だって、俺、・・もうお前の体なんて見慣れて」
    「駄目。あなたがめまいするくらいセクシーに変身して惚れ直させるんだから」
    「そうなの?」
    「ティアドロップっていってね、すごく布地の少ない水着があるの。ボトムなんて、幅3センチくらいしかないのよ」
    「Tバック?」
    「後ろじゃないのっ。前よ!」
    「すごい・・!」
    「あなたに存分に見せてあげるけど、エッチはしないの」
    「え」
    「その代わり、3日間、ずっと縛られてあげる。がんがらめに縛られてあたしが満足したら、最後の夜だけ、ちょっとだけエッチさせてあげてもいいかな」
    「お前が目の前で縛られてて、それじゃ、拷問だよ」
    「うふふ。何があっても、絶対に解いたら駄目だからね」

    まるであたしがサドみたいだ。
    でも、あいつもあたしも分かってる。
    我慢できなくなるのは、あたしの方だってこと。
    まる一日、緊縛放置されたあたしが、平静でいられるはずがないってこと。
    だから実は、これはあたしからあいつへのお願いなんだ。
    あたしがどんなに乱れても、あたしがどんなに懇願しても、最後の夜まではあたしに自由を与えないで欲しいって。
    あたしに徹底的にみじめな思いをさせて欲しいって。

    最後にあいつは言ってくれた。
    「分かったよ。やってみる。わがままなお姫様」
    「ありがと♥」
    「ひとつだけ、頼みがあるんだけど」
    「何?」
    「その、・・おしっこと、大きい方だけはさ、自分でしてくれないかな」
    「ああぁっ、まだ分かってなぁい!」
    「えーっ、やっぱり駄目?」
    「当たり前でしょぉ。あなた、あたしのご主人様なのよぉ? それくらい面倒見れなくてどうするの!」
    「ひえぇ! 俺、ご主人様?」
    「いいこと? いいご主人様ってものはねぇっ・・」
    あたしはあいつに、ご主人様の心得をこんこんと説くのだった。



    ~登場人物紹介~
    あたし: 20代前半。M女性。あいつ曰く「わがままお姫様」。
    あいつ: 20代前半。探検好きな男性。ご主人様修行中?

    SはサービスのS。Mは身勝手のM。
    『シンデレラ・デート』でサービス精神にあふれたS男性を書いたら、今度は身勝手なM女性を書きたくなりました。
    身勝手も身勝手、わがまま極まりないM女になりましたが、この先、優しい彼に愛想をつかされないように祈るばかりです(笑)。

    彼女が一日過ごしたビルの屋上。
    拘束されて絶景を眺める気分はどんなものでしょうか。
    実は私も景色のよい高い場所が好きで、今回の舞台はこんな場所に行ってみたいという私の願望でもあります。
    誰もいない場所で、風景と向かいあってぼうっと過ごすのは最高の贅沢です。
    もちろん、隣に緊縛した女の子を転がしておけば、さらに至高の時間になりますね。(ただ転がしておくだけ、手も触れません^^)

    さて、次回はイリュージョン八景の第八景最終回です。
    まことに恐れ入りますが、今年もGWは家族サービスで旅行に出ますので、次の更新は5月の中旬頃になると思われます。
    どうぞご了承下さい。

    ありがとうございました。




    シンデレラ・デート

    約束の時刻までまだ半時間もあった。
    私は寒風吹きすさぶ歩道にたたずんで、首に巻いたマフラーが風で飛ばないよう手で押さえながら待っている。
    彼の車がやってくるはずの方向を見ながら、交差点の信号が青になる度にあれかしら、いいえその次かしらと数えていた。
    もちろん男性とお付き合いするのは初めてではない。
    以前なら男を待たせるのが女の甲斐性とばかりに何十分も遅刻してきては平気な顔をしていた。
    でも、今は違う。
    もう28才のアラサー女が、まるで初めて男の子と映画を見に行く女子中学生みたいにドキドキしながら待っているのだ。
    どうして私はこれほどまでにあの人が待ちどおしいんだろう。

    目の前に白いワゴン車が止まったのは約束の時刻ぴったりだった。
    運手席の男性が中から助手席側のドアを開けてくれる。
    背が高くて30代後半くらいに見える男性、それが啓輔(ケイスケ)さんだ。
    「こんばんわ、美冥(ミメイ)さん」
    「こんばんわ、啓輔さん」
    啓輔さんの隣に座る。車の中は暖かかった。
    「待ちましたか?」
    「いいえ、ついさっき来たところです」
    啓輔さんはいきなり両手で私の頬を挟むと顔を近づけてキスをした。
    「!」
    「うそですね。氷みたいに冷たい顔だ。ずいぶん長く外に立っていたでしょう?」
    「・・実は30分ほど待ってました」
    啓輔さんはくすりと笑って車をスタートさせた。
    「風邪を引かれたら困ります。僕は時間ちょうどに行くと知っているくせに」
    「啓輔さん、いつもどうして時間どおりに来れるんですか? こんなに渋滞しているのに」
    「ああ、それは、早めに来てるからです」
    「え?」
    「実は、手前のコンビニの駐車場で30分ほど待ってました」
    「じゃあ、二人とも30分待ってたんですか」
    私達は揃って笑った。
    いつも啓輔さんは几帳面で周到だ。
    私と会うときに時間に遅れたことはないし、レストランだってホテルだってちゃんと調べて予約してくれていて、行き当たりばったりで行動することは絶対にない。
    「あの、私、2ヶ月間、待ちどおしかったです」
    「そうですね。僕もあなた達と会うようになって、この日が楽しみになりました」
    私はワゴンの後部座席をちらりと見る。
    そこには誰もいなくて、啓輔さんの旅行用キャリーバッグが放り出してあるだけだった。
    どきりとしたが、いつものように平静を装う。
    あの中に、私。
    私は自分の胸に両手をあてて目を閉じた。
    今夜は、啓輔さんと食事をして、それからホテルに行って、その後は・・。
    「鈴(スズ)さんは元気でしたか?」私は彼に聞く。
    「ええ。いつものように、とても明るくて素敵な人でした」
    啓輔さんが他の女性を褒めても、それが鈴さんのことなら気分も悪くならない。
    鈴さんは私の大切な友人だ。
    本来なら彼女もここにいて、3人で過ごしてもいいくらいの人なんだけど、それはできない約束だった。

    やがて自動車は公営の地下駐車場に入って停まった。
    ここからは徒歩になる。
    啓輔さんは後部座席からキャリーバッグを出して降ろした。
    「それも持って行くんですか?」
    「はい。盗まれでもしたら大変ですから」
    「大げさですね」
    私がそう言うと、啓輔さんは黙ってにやりと笑った。
    エレベーターで地上に上がって歩き出す。
    啓輔さんの左手はキャリーバッグをごろごろ引いていて、右手は私が両手で掴んでいる。
    「今夜は牡蠣のお鍋にしました」
    「あら、和食ですか」
    「牡蠣、嫌いですか?」
    「いいえ。大好きです」
    風が吹いてコートが大きくはためいた。
    「きゃ」
    私は啓輔さんの右腕を抱え込むようにしてしがみつく。できるだけ自然に見えるように注意しながら。
    「もうすぐですから。・・温まりますよ。牡蠣鍋は」
    「そうですね。楽しみです」

    その料亭は、日本庭園の中を通り抜けて玄関に入るようになっていた。
    入口でコートを渡し、キャリーバッグは「大事な荷物なので」と預けずに部屋に持って入る。
    通された部屋は6畳ほどの和室で、雪見障子の向こうにライトアップされた庭が望めた。
    小さな床の間の前には火鉢があって、中で赤く焼けた炭がちちちと音をたてていた。
    「暖かい!」
    私は火鉢の前にぺたんと正座して、両手を火鉢にかざした。
    「それにしても、どうして女性は真冬にそんなに薄着でいられるんですか?」
    啓輔さんがキャリーバッグを障子の側に置きながら聞く。
    「おかしいですか?」
    「はい。いくらファッションとはいえ、僕ら男にはちょっと信じられないですね」
    コートを脱いだ私は、赤いノースリーブのワンピース姿だったのだ。
    「うふふ。こんな格好をするのは啓輔さんと一緒のときだけです」

    今日のデートはノースリワンピでキメましょと言ってきたのは鈴さんだった。
    『真冬でも肌見せは女子の務めだと思いません?』
    私は鈴さんの提案に一も二もなく賛成した。
    下着もスリップなどは着けずにブラとショーツだけ。
    膝上丈のスカートの下だって、ストッキングを穿かない素足だということに啓輔さんは気づいているだろうか。
    私も鈴さんも決して露出狂ではない。
    でも啓輔さんのためにコート1枚の下はあえて肌を出すコーデにすること。突き刺さるような寒さも啓輔さんのためと思って耐えることが幸せなのだ。

    「僕の前だけとは光栄ですが、もしかして美冥さんは男の前で肌を露出しなければならない立場でいることに興奮しているのではないですか」
    「あら、私がそんな女に見えます?」
    「はい。あなたも、鈴さんも、自分を貶めることで興奮を感じるタイプの女性だから」
    「啓輔さんったら、そんなにはっきりと」
    「違いますか?」
    啓輔さんにそう聞かれて、私は何も言い返せなくなってしまう。
    彼の言うことは、もちろん真実だ。
    「いじわる」
    私は一言だけ答えて、頬を膨らませるふりをした。

    最初のお皿が来た。とても芳ばしい香りがした。
    「この焼牡蠣は絶品ですよ。一個目は何もつけずに、そのまま食べて下さい」
    「・・美味しい!」
    「これは日生の牡蠣なんですよ」
    「ヒナセ、ですか?」
    「岡山県の備前、というところです。東京ではちょっと珍しいかもしれません」
    お料理は、牡蠣フライ、酢牡蠣、牡蠣鍋と続いた。
    最後の雑炊を食べた後は、お腹と心がほくほくと温まっていた。

    シンデレラ・デート

    「あ、雪です」
    お店を出ると小雪がちらついていた。気温も、かなり下がっているようだ。
    啓輔さんはまたキャリーバッグを引いていて、私はワンピースの上にコートを羽織っている。
    そうだ。
    「ちょっと、待ってもらえますか」
    私はコートを脱いで手に持ち、マフラーだけをワンピースの首に巻いた。
    「美冥さん、まったく、あなたという人は」
    啓輔さんが呆れたようにつぶやく。
    「大丈夫です。一度、こういうふうにしてみたかったんです。それに・・」
    私は啓輔さんに笑いかけると、そのまま啓輔さんの右側にぴたりと寄り添った。
    「こうしていたら、寒くないんですよ?」
    啓輔さんは苦笑いして、右手を私の肩に置いてくれた。
    そのまま並んで歩く。
    すれちがう人々の奇異の視線は気にならなかった。
    むき出しの二の腕には鳥肌が立ち、牡蠣鍋で温まった体が急激に冷えて行く。
    彼の手が私の肩と腕を守るように抱いてくれているのが嬉しい。
    肌に触れる啓輔さんの手はとても暖かかった。

    駐車場に戻り、車に乗る。
    啓輔さんは車内の暖房をめいっぱい入れて、私を暖めてくれた。
    予約したホテルには20分ほどで到着した。
    フロントで荷物とコートを預け部屋に運んでもらうように頼み、私達はそのまま地下のバーに行った。
    「2ヶ月ぶりの再会に乾杯」
    カウンターに並んで座って、グラスを合わせる。
    彼は褐色のロブロイ、私はピンクのコスモポリタン。
    ショートのカクテルを1杯だけ楽しむのは、二人の間で暗黙のうちに決まったルールだ。
    啓輔さんは、何も知らない、無作法な酒好き女だった私に、バーのお酒の飲み方を教えてくれた。
    最初のデートのときに頼んでもらったマティーニが美味しかったので続けて2杯お替りしたら、そんなに乱暴な飲み方は感心しないと説教されたのだ。それ以来、私は彼のペースに合わせて飲むようになった。
    そう。あれは去年の冬のことだった。
    啓輔さんと会うようになって、もう1年・・。
    「そうですね。出会って1年になりますね」
    いきなり言われてぎくりとした。この人は私の頭の中が読めるの?
    「そんなに驚かないで下さい。さっきみたいに遠くを見るような目をされたら誰でも判りますよ」
    「そうですか」
    「最初にメールをくれたのは鈴さんでしたね」
    「ええ」

    鈴さんはインターネットで文章や美少女のイラストを発表している女性だ。
    彼女が日々綴る文章はとてもエロくて刺激的だったし、イラストの女の子はキュートでセクシーだった。
    そんな鈴さんはブログのプロフィールに自分がM女であることを公開していた。
    私は鈴さんを知ってファンになり、応援のメッセージを送信した。鈴さんはすぐに返事をくれてお付き合いが始まった。
    私達は不思議とよく気が合った。お互いにドMな妄想や願望を語り合ったりした。
    鈴さん自身については、私よりひとつ年下だという以外、詳しいことは分からない。
    でも、彼女は私の知らない世界をよく知っていて、決まったご主人様はいないようだけど、かつては実際に縛られる生活もしていたらしかった。
    妄想M女に過ぎなかった私は、そんな鈴さんにいろいろ教えてもらいながら、メールの交流を重ねた。
    そして1年前、鈴さんがこんな申し出をしてきた。
    『とっても優しい素敵な紳士なんだけど、いざというときは女を徹底的にモノ扱いできる男性。そんな方とお付き合いしてみませんか。妄想じゃなくて現実の世界で』
    それが啓輔さんとの出会いになった。

    私の『美冥』がただのハンドルネームであるのと同じように、たぶん『啓輔』も本名ではないだろう。
    私は啓輔さんの歳も、奥さんがいるのかどうかも知らない。
    ただ、鈴さんからこの人は信頼できる男性だと紹介してもらっただけだった。
    では鈴さんと啓輔さんが特別な関係にあったのかと聞くと、それも違うみたいだった。
    啓輔さんによると、鈴さんとはネットで知り合って2~3度会っただけだという。
    鈴さんから突飛な依頼を受けて、それを承諾してくれただけの男性なのだ。
    鈴さんからの依頼。それは啓輔さんに、私と鈴さん、それぞれ交互にデートしてもらうことだった。

    客室に入ると私達のコートはクローゼットにきちんとかかっていて、荷物のキャリーバッグは窓際に置かれていた。
    私は窓に走り寄って外の景色を眺める。地上25階の窓の向こう側には大都会の夜景がきらめいていた。
    雪がもう止んだのかどうか、ここからは分からなかった。
    私は振り返って啓輔さんに微笑みかけ、その私を啓輔さんが抱きしめた。
    深く、長いキッス。
    「さて、美冥さんのお望みを承りましょうか」
    「あら、私の希望を聞いて下さるの?」
    「出会って1年の記念です。何なりとおっしゃって下さい」
    私は少しだけ考えて、答えた。
    「・・いつもと同じにしてもらえますか? 私が逆らえないように、縛って、陵辱して下さい」
    「わかりました」
    啓輔さんはにっこり笑ってくれた。
    もしこの首を死ぬまで絞めてと頼めば、ずっと笑いながら首を絞め続けてくれそうな笑顔だった。

    シャワーを浴びた後、私は全裸で啓輔さんの前に立った。
    肌に啓輔さんの視線を感じる。
    私はこの瞬間が嫌いではない。男の前に立ち、一糸まとわない姿を凝視される。
    あぁ、私はこの人の奴隷になるのだ。胸の中にぞくぞくした感情が湧き上がる。
    すでに乳首がつんつんに尖っているのが自分でも分かった。
    「綺麗ですよ」
    彼の言葉とともに、顔面がアイマスクで覆われた。
    啓輔さんはいつも最初に女の視界を奪ってから縛る。私は触覚だけを頼りに啓輔さんの縄を感じるのだ。
    両手を背中に回されて、その上から縄が巻きついた。
    啓輔さんの縄はまるで生き物のように私の体に絡みついて、私を締め上げて行く。
    左右の乳房が同時に強く揉み上げられた。痛みと快感が一瞬で全身に伝播する。
    「ああぁ!!」
    自然と声が出た。

    ベッドにうつぶせになって腰を上げた私を啓輔さんが後ろから貫いていた。
    目隠しをされて高手小手に縛られた私は、すべての意識を啓輔さんのそれに向けている。
    それは、深く、長く、私をかき乱し、翻弄させた。
    思考が停止する。
    私は被虐の嵐の中で絶頂に達した。

    気がつくと、私は目隠しと縄を解かれてベッドの中にいた。
    啓輔さんはもう服を着ていて、窓際に立って外を見ていた。
    「・・いま、何時ですか?」
    「あと10分ほどで12時です」
    「ああ、もうすぐですね」
    「はい。シンデレラの魔法が解ける時間です」
    私は身を起こして、シーツで裸の胸を隠した。
    こんなことができるのも、あと10分だ。
    「あの、キスしてくれますか?」
    「もちろん。12時までは美冥さんはお姫様なんですよ」
    啓輔さんに最後のキスをしてもらった後、私は急いでシャワーを浴び直した。
    髪を乾かす時間はないから、ボディだけを綺麗にする。
    新しいショーツを出して穿き、ブラをつけて、赤いワンピースを着る。
    クローゼットのコートとマフラーは・・、きっと鈴さんが着るだろう。

    「お待たせしました」
    啓輔さんに伝えると、啓輔さんは黙って窓際のキャリーバッグを持ち上げてベッドの上に倒して置いた。
    ダイヤルを回して暗証番号を合わせ、ポケットからキーを出して解錠した。
    かちゃり。蓋を開ける。
    中には女性が入っていた。
    「こんばんわ、鈴さん」
    私が挨拶すると、彼女は顔をこちらに向けて「ごきげんよう、美冥さん」と応えてくれた。
    鈴さんはベージュ色のノースリーブワンピースを着て、胸の前で両手を合わせるようにして丸くなっていた。
    「いいな。私も牡蠣鍋、食べたかったです」そう言って笑う。
    どうしてそんなに明るい顔ができるんだろう、8時間も詰められていたはずなのに。
    啓輔さんが鈴さんの背中に手を入れて、彼女をキャリーバッグから出してあげた。
    「鈴さんのワンピ、素敵ですね」私は鈴さんに言う。
    「美冥さんだって綺麗な色」
    「じゃあ、これで」
    「ええ。さようなら、美冥さん」
    私は鈴さんが出たばかりのキャリーバッグに入り、体を丸くして横になると胸の前で両手を合わせた。
    啓輔さんが私の位置を何度か調整して、それから隙間に私のハンドバッグとハイヒールを押し込んだ。
    バッグの蓋が覆いかぶさり、周囲が暗くなった。
    施錠の音がする。
    私はキャリーバッグの中に完全に閉じ込められたのだ。
    今からは啓輔さんと鈴さんが二人の時間を過ごすことになる。
    私が解放されるのは約8時間の後。
    二人がホテルのビュッフェで朝食を食べ、そして啓輔さんが鈴さんを送っていって、その後ようやくキャリーバッグから出してもらえるのだ。

    鈴さん、やっぱり綺麗な人。さっき見た鈴さんの姿を思い浮かべた。
    頻繁にメール交換しているくせに、私と鈴さんは二人で会ったことがない。
    私達が直接言葉を交わすのは、いつもキャリーバッグの閉じ込めを交代する何十秒かの間だけだ。
    キャリーバッグの中に交代で詰められることを考えたのは、私だった。
    M女二人で交互に啓輔さんに会うのだから、どうせなら一方は荷物になってモノ扱いされたらどうかしらと提案したのだ。
    鈴さんは驚き、同時にとても興奮して賛成してくれた。

    ゆらり。世界が回転して重力の方向が変わった。
    キャリーバッグが窓際に立てて置かれたのだ。
    啓輔さんと鈴さんの会話が聞こえる。
    「鈴さんには生牡蠣が待っていますよ。いいオイスターバーがあるんです」
    「嬉しい! お腹、ぺこぺこなんです」
    「もう歩けますか? ここからタクシーで10分くらいですが」
    「大丈夫です。・・でも、少し肩を抱いていただけますか?」
    「喜んで」
    がさごそと外出の準備をする音が聞こえる。
    その音が遠ざかり、がちゃりとドアが閉まった。
    私は静寂の中に取り残された。
    キャリーバッグの蓋の合わせ目からうっすら見えていた光も完全に消えた。
    真っ暗な部屋の窓際で、わずかに夜景に照らされているキャリーバッグの様子を思い浮かべた。
    何時間か後に二人が戻ってきたら、鈴さんは啓輔さんに緊縛されて、そしてセックスをする。
    鈴さんがどんなふうに縄を受けるのか、いつもキャリーバッグの中にいる私には分からない。
    でも縛られた鈴さんがとても可愛らしい声で喘ぎ続けることは知っている。
    私はバッグの中でその声を聞いて、羨望と嫉妬に狂うのだ。

    無限の時間が過ぎて行く。
    小さく体を折り曲げた状態では普通に呼吸することだって簡単ではない。
    できるだけゆっくり息を吸い、そして吐き出すことを繰り返す。
    キャリーバッグの中は、わずかに甘くて酸っぱい匂いがした。
    これは鈴さんが残した匂いだ。
    私と啓輔さんが二人で過ごしている間、鈴さんが濡らした匂いなのだ。
    あんなに綺麗な人なのに、あんなに明るい人なのに、こんなに生々しい女の匂いを出すんだ。
    あぁ、私も濡れている。ショーツ、せっかく新しいのに替えたのに。
    私の股間から溢れる匂い。それはきっと鈴さんとは別の、違う女の匂いだ。

    何もしないで、ただ待ち続けることは、とても切なく、もどかしい。
    私の胸はいっぱいになって張り裂けそうになる。
    でも魔法が解けたシンデレラにできることは、もう何もない。
    ただ、小さなキャリーバッグの中で、じゅくじゅくと濡れ続けて匂いを出すだけなのだ。
    次にバッグの蓋を開けるとき啓輔さんは気づいてくれるだろうか。
    二体のM女が分泌した匂いに。
    私達二人の、切なさの痕跡に。



    ~登場人物紹介~
    美冥(ミメイ):主人公の女性。28才。鈴と交互にキャリーバッグ詰めになることを望んだ。
    鈴(スズ):27才。イラストや文章をネットで発表している女性。啓輔とのデートを企画する。
    啓輔(ケイスケ):30代後半。二人とデートする男性。

    新年、おめでとうございます。
    2012年最初のSSは、ちょっと変わったデートをする女性二人と男性のお話です。
    ドがいくつついても不思議でないM女が二人、あなたのものになります。
    緊縛も自由。セックスも自由。
    ただし一晩のうちに二人と順に過ごして、どちらも心から満足させて下さい。
    もしあなたが緊縛経験豊富な男性で、女性の方からこんな依頼があったら、受けてあげますか?

    イラストはいつも時間がかかるのですが、今回は塗りを手抜きしてスピードアップしました。
    いつも今度は違う色にしようと思いながら、ノースリワンピの色は毎回赤にしてしまいます。
    飲み屋のお姉さんが店の外まで客を見送りにきたところではありません(笑)。

    さて次回の更新は Sisters 最終回の予定です。
    あいも変わらずスローペースの更新ですが、今年も『いつか感じたキモチ』をお楽しみいただければ幸いです。




    女の子、担げます

    大学の学園祭なんて、どこも同じだね。
    そう思いながらキャンパスを歩いた。
    地域コミュニティ誌の記者として取材を命じられて来たが、記事になりそうなネタが見つからない。
    模擬店のテントがずらりと並び、その前では学生達が呼び込みの声を上げている。
    『たこ焼き』『おでん』『クレープ』。ありきたりの食べ物屋ばかりだ。
    『青空寄席』。こんな騒がしい場所で落語を聞くのかよ。
    『あやしいビデオ』。テントの回りを囲って中で何をやってるんだか。
    『女の子担げます』。ん? 何だこれは。

    女の子担げます

    ミニスカートの女の子が一人、テーブルの上に座って足をぶらぶらさせていた。
    『10分 ¥500 手錠つき』と書いた札を首から下げている。
    背中にまわした手には確かに手錠が掛かっているようだ。
    離れたところからしばらく見ていたが、呼び込みの学生もいないし、客の出入りもない。
    ただ彼女がぽつんと座っているだけである。
    これはネタになるかも。
    意を決して、近づいて話しかけた。
    「・・あの、これは、何のお店かな?」
    彼女はじっと前を見ているだけで反応しない。
    「あのっ、もしもし」
    「え? あ、すみませんっ。ぼうっとしてて」女の子はようやく私の方を見た。
    「あたしは看板なんで担げません。整理券をもらってお待ち下さい。ただ今15分待ちですっ」
    機械的にそう言った。
    「いや、あの、私はハッピーリビングの記者なんだけど、お話を聞かせてもらえますか?」
    「あら、やだ。取材ですか? ちょっと待って下さい。・・うえのっ、うえの~っ。ちょっと来てぇ!!」
    彼女はテントの奥に向かって呼びかけた。
    エプロンをつけた学生が一人、頭を掻きながら出てきた。
    「はい、僕、代表の上野ですけど」

    彼らは特定のクラブやサークルに属する学生ではなく、ただのマージャン仲間だという。
    せっかくの学園祭だから面白いことをやろうという話になり、この模擬店を開いた。
    「テーブルに座ってるのは桑原エリカちゃんね」
    「エリカですぅっ♥ これいつ記事になるんですか?」
    えーっと、この店では何を売っているんですか?
    「この店ですか? ああ、看板の通りですよ」
    「?」
    「もうすぐ戻って来るはずですけど・・」
    上野の言う通り、まもなくそれは戻ってきた。

    大柄な男性が女の子を肩に担いで歩いてきた。
    女の子は真っ赤なミニスカートのワンピースを着ていて、エリカと同じく後ろ手錠を掛けられている。
    男性は肩に乗せた女の子の膝の後ろを左手で押さえて支え、空いた右手で女の子のお尻を軽く叩くように撫でていた。
    「お帰りなさ~いっ」エリカが叫ぶ。
    「ふぅ!」
    男性は女の子を下ろして立たせた。
    「ありがとうございましたぁっ」
    担がれていた女の子は、高潮した顔で笑いながらお辞儀をした。
    どうやらこの男性が客のようだ。私はすかさず話しかける。
    「ハッピーリビングです! どうでしたか?」
    「あ? いやぁ、結構大変でした。・・まあ面白かったけど」
    「ずっと彼女を担いでたんですか?」
    「はい。疲れたら下ろしていいんだけど、皆見てるし、みっともないじゃないですか。だからずっと担いでましたよ」
    「そうですか。ありがとうございました」
    テントの前では別の学生が、担がれていた子の髪をとかしていた。
    「大丈夫?」
    「うん、平気!」
    「次、15番のお客さまぁ~」
    「はい」
    テントの中で座っていたメガネの男性が立ち上がって出てきた。
    薄汚れたトレーナーに脂ぎった肌。ぼざぼさの髪には明らかにフケが浮いている。
    うっ。
    担がれ役の女の子は営業スマイルのまま、後ずさった。
    「上野~っ、除菌!!」
    エリカが叫ぶと、すぐに上野が大きなエチケットブラシと除菌クリーナーを持ってきた。
    そのままメガネ男の全身をブラシでこすり、クリーナーを吹きつけて、頭に野球帽をかぶらせた。
    「この帽子は外さないで下さいよ!」
    女の子がメガネ男の前に立つ。
    「はい、彼女の腰に肩を当てて」
    メガネ男が屈んで、左の肩を女の子の腰にあてた。
    「はい。手をここに、しっかり押さえて。そのまま立って下さーい」
    上野がメガネ男に女の子を抱えさせると、女の子はすかさず前屈みになって体重をあずけた。
    「ん~っ」
    メガネ男がよろよろと立ち上がる。
    「きゃぁ♥」
    女の子が上げた悲鳴は、明らかにサービスだった。
    「行けますか?」
    「い、行けます」
    「スカートの上から押さえるのはOK。それ以上の行為はNGですからねっ。いいですか?」
    「はい」
    「じゃあ、行ってらっしゃい!」
    男性は女の子を担いで、よろよろと歩いていった。

    この店のシステムが理解できた。
    ここは、肩に担げる女の子をレンタルする模擬店なのだ。
    上野によると、女の子はエリカを含めて5人で、この大学の学生でない子もいる。
    バイト代を払うと言うと、どの子も気軽に引き受けてくれたとのこと。
    エリカは店の前に看板娘で座っているが、他の女の子と交代して担がれ役もするという。
    「繁盛してますか?」
    「うーん、それほどでもないです。もっと行列ができると思ってたんだけど・・」
    上野はエリカに聞こえないように小声で教えてくれた。
    「いざ担いでみると重いんですよね。もっと小柄な子を集めたらよかったかな、と」
    ははぁ。なるほど。
    「ところで、」
    私は気になっていたことを質問した。
    「よく許可をもらえましたね」
    「許可って?」
    「大学の許可」
    「別に問題ありませんでしたけど」
    「だって、お金とって女性を貸すんでしょう? その上手錠まで掛けて、セクハラだとか女性差別だとか言われませんでしたか?」
    「言われてみればそうかなぁ。・・でも、僕らそういう意識はないし、学祭委でも面白がってくれましたけどねぇ」
    「そんなものかなぁ」
    「ねぇねぇ、エリカっ」
    上野はエリカに声をかけた。
    「この記者さん、この店はセクハラじゃないかって言うんだけど」
    「え~、セクハラぁ!? きゃはは」
    エリカが大きな声で笑ったので、私は面食らう。
    「あたし達、誰も嫌がってませんよぉ」
    「そ、そうなの?」
    「だいたい、女の子を担ぐから楽しいんでしょ? 男の人を担ぎたいなんて誰も思わないじゃないですかぁ」
    「そういう問題じゃないと思うけど。じゃあ、手錠をされるのは何とも思わないの?」
    「手錠? まあ、最初はちょっとドキドキしたけど、慣れちゃったなー」
    私はそれ以上反論するのを止めた。

    女の子担ぎ

    それから半時間ほど店の横で見物した。
    たまたま女の子が全員揃うタイミングがあったので、写真を撮らせてもらった。
    皆が後ろ手錠で笑いながらポーズをとってくれた。
    女の子達はTシャツやブラウス、ワンピースなどいろんな服装だったが、どの子もミニスカートで綺麗な足をしていた。
    その後、看板役を交代してエリカが担がれたので、私も一緒についてキャンパスを一周した。
    どの客も女の子を担いで出発するときは意気揚々と出て行くが、大抵疲れた顔で戻ってきた。
    面白いんだけど、一回で十分。
    皆、そう思っているのは明らかだった。

    私はそれから夕方まで学園祭の他の展示を取材した。
    帰りがけに『女の子担げます』の店の前を通りかかると、相変わらず看板の女の子がテーブルに座っていた。
    料金は500円から300円に値下げしていた。
    上野がぼやいた通り客が殺到する訳でもなく、それは方々の学園祭で見かける、ちょっと変わった模擬店に過ぎなかった。
    これ、記事に書いてもボツにされるんじゃないかなぁ。
    私は編集部のキャップの渋い顔を思い浮かべながら記事にするかどうか迷っていた。



    今年も学園祭ネタをやります。
    非日常の世界を平気でやってしまえるのが学園祭だと思ってますので、どんなに怪しい出し物でもウケれば何でもアリです。
    という訳で、今回は女の子担ぎ。

    もうずいぶん昔、学園祭でレンタルガールという時間貸しの女の子が流行ったことがあります。
    一緒に学内を歩いてくれるいわば臨時のガールフレンドです。
    (レンタルボーイってのもあったけど、そっちは黙殺^^)
    女の子担ぎは、女の子のレンタルという点でそれに近いかもしれません。
    本人が嫌がってなければOKということで、手錠も掛けさせていただくことにしました。

    この方向で発想を広けると、亀甲縛りで連れまわしとか、トランク詰めにしてトランクごと貸し出し(でもトランクのカギは渡さない)とか、いっそう変態的なネタに進みます(笑)。
    FetishCon とか BoundCon とかのアダルトイベントだと本当にやってるかもしれませんね。(やってたらイイナ)

    ありがとうございました。




    ヴィア・ドロローサ

    全国高等学校舞台芸術祭全国大会
    聖ペテロ女学院高校 『ヴィア・ドロローサ』

    - キャスト -
    イエス: 福原水絵(2年)
    ユダ:  伊澤かみや(1年)
    ピラト: 浜田由美子(3年)
    兵士A: 松山薫(2年)、   兵士B: 伊田美登里(3年)
    兵士C: 久保柚子(2年)、  兵士D: 伊豆冬美(1年)
    罪人A: 美山きなり(3年)、 罪人B: 久泉加奈(1年)
    マリヤ: 山岡多佳子(1年)

    - スタッフ -
    監督・指導: 市田祥子(顧問)
    脚本・演出: 島村莉子(1年)
    衣装・道具: 大久保ひさえ(3年)、石川久代(1年)
    緊縛担当:  川村麻衣(2年)
    舞台技術:  長谷川みずほ(OG)

    - 用語説明 -
    【受難劇】 キリストの受難と復活を主題とした宗教劇。(大辞林)
    【ヴィア・ドロローサ】 新約聖書の四つの福音書の記述やキリスト教の伝承などから想定されるイエスの最後の歩みのこと。(Wikipedia)


    1.
    まもまく開演だ。
    直前まで生徒達の準備を手伝って、ようやく客席に座ることができた。
    話題の受難劇を見ようと場内は満席で、立ち見も多数出ているようだ。
    県大会で初めて上演したときは、その過激さが物議を呼んだ我が演劇部の『ヴィア・ドロローサ』。
    体操服と制服で演じられるこの受難劇は、主人公イエスの受難のシーンが全体の半分以上を占める。
    しかもその拷問や磔刑の内容は、高校生の演劇とは思えない程、本格的である。
    さらにそれを演じているのが、ミッション系女子高校の生徒となれば、世間が放っておいてくれない。
    県大会で優勝したその日から、学校の電話はマスコミからの取材依頼で鳴り続けた。
    私は演劇部の顧問として対外的な対応を引き受けて、できるだけ生徒を世間の騒ぎから遠ざけるようにしてきた。
    だから全国大会に向けての稽古も、外のノイズに惑わされることなく集中できたはずだ。
    残酷、暴力的、嗜虐的・・・。
    そんな評価は、生徒達の思いを傷つけ、神聖な受難劇を下品なだけの代物に変えてしまう。
    「・・市田先生。舞芸祭、この本で臨みたいんです」
    生徒達が持ってきた台本を初めて読んだとき、私は驚いた。
    なんて、残酷で、暴力的で、嗜虐的。
    そう、今、世間で言われる評判は、最初に私が感じた感覚と同じなのだ。
    でも、現在の私は、生徒達はそんな気持ちで演じているのではないことを知っている。
    彼女達は、イエス様に近づきたい、イエス様と同じ体験をすることで、少しでもイエス様を身近に感じたい、と願っているのだ。
    この台本は、1年生の生徒が書いた原案を演劇部全員で話し合ってまとめ直したものだ。
    イエス役になった2年生の生徒は、苦しい役どころを嫌がるところか、心から望んで演じている。
    私はそう理解したから、この台本を認め、周囲の大人達の反対を押し切って、協力してきた。
    今日、こうして全国大会の本番を前に、この受難劇を生徒達と苦労して作り上げてきた日々を思うと、本当に感慨深い思いがする。
    皆が持てる最高の力を発揮してくれれば、それでいい。
    結果がどうあれ、私は生徒達とここまで来れたことを喜びたいと思う。

    2.
    開演のブザーが鳴った。
    場内が暗くなり、緞帳の前に垂らされた白幕にイエス・キリストの絵物語がスライドで映写された。
    何とこの受難劇では前後の状況説明をスライドだけで済ますのである。
    私自身、あちこちの教会や学校で受難劇を見てきたけれど、こんなに割り切った演出は見たことがない。
    ~ 旧約聖書に予言されたメシア、神の子イエス・キリストの誕生。
    ~ その宣教活動と数々の奇跡。
    ~ ホサナの声に迎えられてのエルサレム入城、そして最後の晩餐。
    ~ イスカリオのユダと呼ばれる弟子の裏切り。
    ~ イエスを捕らえるためにやってくるローマ兵たち。
    緊迫した状況が伝わったところで、いよいよ受難劇『ヴィア・ドロローサ』の幕が上がる。

    3.
    舞台中央に一人たたずむイエスの周りをローマ兵が取り囲んだ。
    その先頭に立つのはイスカリオデのユダである。
      イエス「ユダよ。こちらに来なさい」
      ユダ「あ、ああ。主よ・・」
      イエス「おまえが、しようとしていることを、しなさい」
    ユダはイエスに歩み寄ると、両手をイエスの頬に添えて口付けをする。
    イエスはユダの背に手を回して抱きしめる。
    ユダは恍惚の表情で、もだえるような仕草をする。

    劇の冒頭でいきなりイエス役の少女とユダ役の少女が見せる口付けに観客は驚かされる。
    ユダ役の伊澤さんは、イエス役の福原さんから受け入れられた気持ちを本当に感じて、こんなにセクシーになっているのだ。
    私はそれを稽古の早い段階で感じたが、あえてそのまま演じさせている。
    二千年前にイエスとユダが交わした口付けは男同士だけど、これに負けずにきっとセクシーだったはずだ。

    抱擁はそのまま数十秒続き、やがてユダは膝をついて倒れた。
    ローマ兵はイエスを連れ去る。
    その場に倒れたまま取り残されるユダ。
    暗転。

    4.
    総督ピラトによるイエスの裁判のシーン。
    中央にイエスがひざまづき、向かい合ってピラトと兵士達。そして背後に群集が並ぶ。
    イエスは後ろ手に縛られている。
    この緊縛は、手首のまわりに適当に縄を巻きつけるだけのような、いい加減なものではない。
    背中に捻り上げられた腕がまったく動かせない、高手小手という縛り方である。
    イエス役の福原さん自身が、ここはきちんと縛るべきだ、かわいそうに見えるくらい厳しく縛るべきだと主張したのだ。
    短い時間で福原さんを縛るために、2年生の川村さんが緊縛担当になった。
    川村さんは縛り方の資料をずいぶん探したらしい。私は川村さんから、演劇関係の書籍をいろいろ調べたが人を縛る方法が分からないと相談された。
    そこで私は書店で資料を探し、成人向け書籍コーナーで『女体緊縛入門』という参考書を見つけて購入した。
    いろいろな女性の縛り方が写真で解説されている本で、参考になると思ったが、なぜかモデルの女性がすべてヌードで、アンダーヘアまで鮮明に写っていた。
    教師が生徒に与える書籍として少し不適切かもしれないと迷ったが、受難劇の成功が大事だからと川村さんに渡した。
    その翌日、川村さんは一睡もしていないような真っ赤な目をしてやってきて、とても分かり易いと報告してくれた。
    イエス役の福原さんはいろいろと忙しいので、川村さんは体形の似たマリヤ役の山岡さんを練習台に緊縛の練習をしたらしい。
    その成果があって、最初の全体稽古で川村さんはみごとに福原さんを縛り上げた。
    生まれて初めて縛られた福原さんがしばらく陶然となって立てなかったのは、川村さんの真摯さに打たれたからだと思う。

    舞台ではイエスを十字架に架けよと騒ぐ群衆に負けて、ピラトがイエスを有罪にしているところだ。
    この後、イエスは兵士に鞭打ちの拷問を受けることになる。
    縛られたままで壁際に立たされたイエスの背に兵士が鞭を打つのだ。
    ぴしり。ぴしり。
    とても演技には見えない本気の鞭打ちに、イエスを演じる福原さんの体が痙攣するようにふるえている。
    この鞭打ちはかなり力を入れて稽古した場面だ。
    使っている鞭は、先が何本かの紐に分かれていて多少強めに打っても肌に傷がつきにくいバラ鞭という種類だが、打たれる福原さんには本当の痛みが伝わる。
    福原さんはイエス様が感じた痛みと同じ痛みを味わうことで、イエス様とより一体になった気持ちになれると言う。
    一方、兵士役の松山さんは親友の福原さんを鞭打つことに罪の意識を感じて相当悩んだらしい。
    でも福原さんから親友だからこそ本気で打ってほしいと頼まれて、心を鬼にして鞭打つことに決めたと話してくれた。
    生徒達がそれぞれ自分の役目を理解して、演じてくれている。
    私はそれを思うだけで感動して涙が流れそうになるのだ。

    鞭で打たれるイエス

    5.
    舞台は一転して、ユダの悩みのシーンになる。
    ユダはピラトにイエスを免罪するように頼んで相手にされないと分かると、首をくくって自殺するのである。
    舞台の下手には死刑台の階段のようなセットが登場し、ユダはそれを登って輪になったロープに首をかける。
      ユダ「罪を受けるのは俺だ。俺の魂よ。地獄の烈火に焼かれるがいい!」
    大きな声で叫んで死刑台から飛び降りると、ユダは首吊りになって空中に浮かぶのである。
    この部分は、演劇部OGの演劇技術の専門家の協力で実現できたシーンだ。
    ユダ役の伊澤さんは体操服の下にハーネスというベルトを着用していて、それにワイヤーをかけて吊られている。
    首吊りのロープも緩んで不自然に見えないようゴムで引いているので、伊澤さんは本当に首を吊られているように見えるのだ。
    こうしてユダはしばらく空中で苦しんで絶命する。
    彼女はその後、3メートル以上の高さまで上昇して、そのまま劇の終盤までオブジェのように吊られるのだ。
    伊澤さんは最初の稽古でいきなり3時間以上も吊られ続けて、ハーネスが体に食い込む痛みに泣いたようだ。
    今ではその役目は神様から自分に与えられたものと理解してくれている。
    スポットライトの中に浮かぶ伊澤ざんは、とても満ち足りたような顔をしている。
    死体だから笑ったりしたら変なのだが、それでも少し微笑んでいるように見えるのは、顧問教師のひいき目だろうか。

    自殺したユダ

    6.
    茨(いばら)の冠をかぶり十字架を背負わされたイエスが登場する。
    十字架の重みに何度も倒れ、その度に兵士に鞭で打たれて再び歩き出すのである。

    舞台中央までやってくると、イエスは横たえた十字架の上に寝かされて、手足を縄で縛り付けられる。
    4人の兵士が、それぞれイエスの手首と足に釘をあてがい、タイミングを合わせて大きな槌で打ち込む。
    槌が1回打たれる度に釘の頭が少しずつ沈み、赤い血が流れる。
    イエス役の福原さんは、首を左右に激しく振り、背中が高く反り返るほどにもがいて苦悶している。
    衝撃的なシーンに、息をのむ観客。
    福原さんの苦しみ方は真に迫っていて、流れ出した血の匂いまで漂ってくるように思われた。

    釘の打ち込みは、ユダの首吊りと同じ専門家に準備してもらったフェイクである。
    手品師が演じるマジックのひとつに、人間の体に刺した剣が体の中を貫通して反対側に突き抜けるというものがある。
    これは、硬そうに見える剣が実はゴムのような材料でできていて、人間の体の外側をぐにゃりと曲がって避けているのがタネである。
    イエスの磔の釘打ちも似たようになっていて、柔らかい釘が福原さんの手と足を避けているのだ。
    釘をそらせるタネは手足を縛る縄の陰に隠れている。
    槌を打つと、仕込まれた血糊が噴出する機構まで組み込まれている精巧なギミックである。

    「先生。最後の本番は、仕掛けなしでやってもいいでしょうか・・」
    福原さんが相談してきたのは、1週間前のことだ。
    イエス様と同じ本当に釘を打たれる苦しみを味わうべきではないかと考えたという。
    今まで本当に釘を打たれた経験はないので、それで磔に架けられて意識を保っていられるかどうか分からない、でも、仮に意識をなくしても劇は続けられるし、そのときは神様の思し召しでしょうと福原さんは話す。
    フェイクではなく、本当に釘を打つ?
    私はその申し出に一瞬心を奪われたことを告白しなければならない。
    それどころか、私自身が釘で打たれるような気がして、胸がきゅんと鳴ったのだ。
    ああ、そんなことができるのかしら。

    私は福原さんの希望を認めなかった。
    とても残念だけど、私は教師で、生徒の体に釘を打つようなことを許してはいけないと思ったのだ。
    福原さんは、却下されることを予想していたようで「わかりました」とだけ言って引き下がった。
    今にして思えば、そのとき彼女の目に決意が秘められていたことに気づくべきだったのだ。

    磔にされたイエス

    7.
    兵士達によって、イエスをはりつけた十字架がすっくと立てられる。
    同時にその後方に、二人の罪人を架けた十字架も立てられる。
    劇の進行上、罪人を十字架に縛り付けるシーンはないので、罪人役の美山さんと久泉さんは劇が始まる前から十字架に取り付けられてセットの陰で待機していたのである。

    両手を斜め上に広げて十字架に架けられた3人の場景は、宗教画で見るゴルゴダの丘と同じだ。
    実はこの十字架にも工夫が隠されている。
    手首と足首を十字架の前面で縛り付けた状態では、左右の手首だけに体重がかかることになるので役者はとても耐えられない。場合によっては、肩の関節を損傷してしまう。
    だからこの十字架には小さな足台がついていて、踵を乗せるようになっている。
    足首をしっかり縛って踵が外れないようにすることで、彼女達は足台に立つことができるのだ。
    足台は隠れて見えないので、3人は十字架に縛り付けられて高く浮かんでいるように見える。

    ゴルゴダの丘

    ゴルゴダの丘のシーンが続く。
    罪人がイエスを揶揄するシーン。
    ずっと吊られていたユダがフライング状態でイエスに近づいて、許しを求めるシーン。(その後ようやくユダ役の伊澤さんは上昇して天井のスノコに収納される)
    罪人の腹に兵士が槍を突き立てて、殺してしまうシーン。(罪人の二人は、お腹の部分が血に染まるように体操服の下にタネを仕込んでいる。その後、二人の十字架は後方に倒れて客席から見えなくなる)

    イエス役の福原さんは、十字架の上で苦しみながらもがいている。
    釘打たれた手足の筋肉に力を入れては弛緩し、断末魔を表現している。
    イエスの最期の瞬間が近づいているのだ。

    その瞬間、私は、福原さんの表情にエクスタシーを読み取った。
    フェイクとはいえ釘を打たれて、千人以上の観客の前で十字架に架けられた姿を晒している。
    私は確信した。・・彼女、やっぱり感じてるんだ。
    神聖な舞台を監督する責任者として、生徒を率いる教師として、そして神を信仰するキリスト者として、十字架のイエス様に扮して性的な興奮を感じるなど決して許すことはできない。
    でも、私は彼女を叱責する気持ちにはなれなかった。彼女を叱る資格がなかった。
    ・・本当に釘を打たれてイエス様を演じたいと福原さんに告白された日。
    その日以来、私は自分が釘を打たれて舞台に出る妄想を断ち切れないでいる。
    私は自分が十字架に架けられる情景を想像して、自慰をした。
    自分が殺される情景を想像して、自慰をした。
    そんな自分が、どうして福原さんを責めることができるだろうか。
    ここまできたら、すべてを告白する。
    私、市田祥子は顧問教師でありながら、福原さんが羨ましいのだ。
    若く美しい彼女が、イエス様を演じて十字架に架けられるのが羨ましいのだ。
    ああ、私は、何と罪深い女なのだろうか。
    私は、自分の胸を押さえながら、舞台の上の福原さんを見つめ続けた。
      イエス「エリ、エリ、・・レマ、・・サバク、タニ・・!!」
    福原さんがかすれた声で叫んだ。福音書に記されているイエスの最後の言葉である。
    舞台が真っ暗になり、稲光のフラッシュが何度も光った。
    群集と兵士が逃げ惑い、地に平伏する。

    8.
    イエスのお腹にも槍が突き立てられた後、イエスは十字架から引き下ろされる。
    マグダラのマリヤによるイエスの抱擁、宗教画でよく見られるいわゆるピエタのシーンとなる。
    マリヤ役の山岡さんの膝に抱かれて、福原さんはぐったりと動かない。
    イエスは死亡しているので当然である。当然だが、何か様子がおかしい。
    山岡さんが福原さんの肩をゆすっている。
    もしかして福原さんは本当に気絶しているのでは。
    はっとした。まさか、福原さん・・!?
    とっさに私は立ち上がり、舞台の下に駆け寄った。
    「続けて、そのままっ」
    山岡さんに指示して、すぐに裏から舞台の袖に走っていった。

    イエスを抱擁するマリア

    イエスを抱きしめて悲しむマリアの前に、白幕が降りてくる。
    物語のエピローグが再びスライドで上映されるのだ。
    ~ イエスの遺体が墓所からなくなってしまうこと。
    ~ 弟子達の前に現れるイエス、そして昇天。
    ~ 弟子達による伝道活動。世界に広まる神の福音。
    この間に、緞帳が下ろされて受難劇『ヴィア・ドロローサ』は終了した。
    劇場内に鳴り響く拍手と歓声は数分間続いたそうだ。
    でも出演者達がいつまでもカーテンコールに応えないので、何か起こったらしいと観客も初めて気づくことになった。

    「先輩っ、水絵先輩!」
    幕が下りた舞台では山岡さんが福原さんに呼びかけている。
    福原さんは気を失っているようだった。
    私は彼女の手をとって確認する。
    そこには血糊でない、本当の血にまみれた傷跡が手首を貫通していた。釘打ちの痕!!
    「救急車を呼んで!」
    私はそう叫ぶと、福原さんを抱きしめて座り込んだ。

    9.
    事故は、手首の釘をそらせるタネの部品が十字架から外れていたことで発生した。
    釘は柔らかい樹脂素材で作られているが先端は鋭いので、タネなしで打ち込めば簡単に手首を貫通してしまう。
    槌で釘を打ち込む感覚にはほとんど違いがないので、兵士役の生徒も気がつかなかったのだ。
    問題は、何故タネが脱落したのかである。
    そして釘を打ち込まれた福原さん自身は、何故それを訴えなかったのだろうか。
    部員達にそれとなく聞いてみたが、福原さんが本当に釘を打たれたいと願っていたことは、誰一人知らないようだった。
    やはり福原さん本人がタネを取り外したのだろうか。

    私はその可能性を誰にも言わなかった。
    警察の人にも聞かれたが、心当たりがないと答えた。
    1週間前に福原さんが相談に来たことも言わなかった。
    事故は、責任者である私の機材チェック不十分が原因、として扱われることになりそうだった。

    あんな事故があったのにもかかわらず、『ヴィア・ドロローサ』は舞芸祭全国大会の優秀賞を得た。
    これは聖ペテロ女学院高校演劇部40年の歴史の中でも初めての快挙である。
    私は事故の責任をとらされることなく引き続き演劇部の顧問を続けていけることになった。

    そんな訳で、私は今、病院にいる福原さんが回復して学校に戻ってくるのを待っている。
    福原さんが帰ってきたら、二人でゆっくり話そうと思う。
    イエス様と一緒になった気持ちはどうだったのか、聞いてみたかった。
    それから、どんな風にエクスタシーを感じたのか、聞いてみたかった。
    もし自分で十字架の仕掛けを細工したのなら、それで釘を打ち込まれたときの気持ちはどんなだったのか聞いてみたかった。
    貴女は、聖女なの? そうでなければ・・。
    そして私は彼女に告白するだろう。
    心から貴女が羨ましかったことを。
    私こそ、教師の皮を被ったこの私こそ、十字架に釘で打たれて罪を負うべき、女であることを。



    今回のSSは、磔と受難劇のファンで(おそらく)有名な某氏の要望に私が乗って実現したものです。
    少女達の衣装も氏の嗜好に合わせ、ハーフパンツ体操服とジャージを着用しています。
    このサイトにお越しの皆様であれば "十字架に架けられた少女" は受け入れてもらえると思いますが、馴染みのない宗教劇、しかもハーフパンツ姿となると極めてマニアックな世界なので奇異に感じられるかもしれません。
    私自身にとっても受難劇は難解な題材でしたが、キリストの受難(=十字架磔)を体現する宗教的自己犠牲の精神と、少女のM的な被虐への憧れのせめぎ合いという観点で私なりのストーリーを組み立ててみました。
    病院から戻った少女が顧問の先生にどんな想いを語るのか、後日談を想像して楽しんでいただければ嬉しく思います。

    このSSの舞台設定を考えるにあたり、「リアル釘打ち磔ができる合法的な受難劇とは」とか、「両手首と足首だけで拘束する十字架の隠し足台の構造」など、ディープで楽しい議論をすることができました。
    いささか細かすぎる私の主張にながながとお付き合い下さった氏に感謝したいと思います。
    ありがとうございました。

    なお、作者はキリスト受難劇に関して批判的・蔑視的な考えは一切持っていません。
    釘を打ち付ける磔などの残虐な行為は、あくまでファンタジーとして描いております。
    このような成人向けSSの題材に受難劇を取り上げたことで気分を害された関係の皆様がおいでの場合は、失礼のほどお詫びいたします。

    さて次の更新では、Sisters の第7話をアップします。
    通常よりも増量になりそうです。
    どうぞ楽しみにお待ち下さい。



    敗者は十字架

    <真実敗北編>
    「聞いてないぞぉっ、ハリツケなんて~!!」
    本田真実は大声で叫び、刑を拒否した。
    「ふん」
    レーザーまどかが手を振ると、B組の若手集団がリングに乱入してきた。
    そのまま逃げようとする真実を5人がかりで担ぎ上げる。
    「うぉ!?」
    真実は手足を振り回して暴れるが、もはやどうしようにもなかった。
    場内にビートのきいた音楽が鳴り響き、花道から大きな十字架が運び込まれてきた。
    こんなモノいつ準備したんだよ!?
    十字架はリングの中に横倒しに置かれ、真実はその上に運ばれた。
    何だよ、くそ!!
    真実はなおも暴れるが、十字架の上で手足を押さえつけられてしまった。
    手足に枷が掛けられる。
    左右の腕を斜め上に引き上げられる。
    「ぐっ・・」
    すっかり自由を奪われて、もはやどうにもならなかった。
    「・・それでは、敗者の磔セレモニーです」
    わ~っ!!
    アナウンスが流れると場内が歓声に沸き上がった。
    十字架はワイヤーに吊られてすっくと立ち上がった。
    真実はバンザイの姿勢のまま、激しくもがいている。
    小柄な真実は十字架の足台に爪先立ちとなり、その分、手首の枷が痛かった。
    いったい何だってんだっ。第1試合でも第2試合でもこんなアトラクションはなかったじゃねえか!
    真実は十字架の上で憤慨する。

    敗者 本田真実

    「くっくっくっ・・。真実よ、みじめだな」
    まどかが真実に近づいて言った。
    「っるせいや!」
    「やれ」
    まどかの合図でB組の若手が十字架の周囲に散ってバケツを構える。
    「うわ!」
    顔面を狙って一斉に冷たい水が浴びせられ、その瞬間呼吸が止まった。
    わ~~っっ!!!
    真実の頭の中に場内の歓声がこだまのように響いた。
    まどかが近づき、手を伸ばして真実の頬をぺたぺた叩く。
    ・・く、悔しい!
    まどかをにらみつける。
    「めったに見られない顔だな。ま、せっかくだから今の屈辱を楽しんだらいいぜ。くっくっ・・」
    まどかはそう言うと仲間とともに退場していった。
    楽しむだと!?
    一瞬、かっとなったが、次の瞬間に別のキモチが湧き上がった。
    ・・俺は、慰みモノにされる奴隷女。
    胸の鼓動が高まった。
    試合で乱れた息のせいではない。
    ああ・・、くそ!!
    やがて十字架は真実を拘束したまま、ゆっくりと吊り上げられた。
    大歓声の中、リングの上方3メートルにまで浮上すると、その高さでゆらゆらと揺れ続けた。
    両手を斜め上に伸ばしてうなだれる真実が見えた。
    真実は目をぎゅっと閉じて、じっと耐え続けた。

    <まどか敗北編>
    「ハリツケ? ・・ふん、好きにしろ」
    レーザーまどかは、腕組をしたままリングにどしりとあぐらをかいた。
    本田真実の頭突きを受けた額から流れる血はどうやら止まったようだ。
    「何ぃ? 負けた方は晒し者にされるだとぉ~?」
    真実が事情を聞いて憤慨していた。
    「試合前のパドックといい、てめえら、いい加減にしろぃ!!」
    そのままレフェリーにつかみかかろうとして、後方から引き止められている。
    本当にこいつは、一直線なバカ野郎だぜ。
    「・・真実よ」
    まどかが正面を向いたまま言った。
    「勝ったお前が怒る必要はないだろう?」
    「しかし、まどか・・」
    「あたいは真実に負けたんだからな。何だってするさ」
    まどかは平静だった。
    真実はしばらくその顔を見ていたが、やがて近づくと、まどかの肩を軽く叩いた。
    「わかった」
    そう言うと背を向けて退場して行った。
    大きな十字架が運び込まれて、リングに横倒しにされた。
    まどかは促されるて立ち上がり、十字架の上に横たわって手を伸ばした。
    その手足に手枷と足枷が掛かり、錠が掛けられた。
    「・・それでは、敗者の磔セレモニーです」
    わ~っ!!
    アナウンスが流れると場内が歓声に沸き上がった。
    十字架はワイヤーで吊られてすっくと立ち上がった。
    まどかは十字架の上で観念したようにじっと正面を見ている。
    体重は足台で支えてくれるが、それでも斜め上に伸ばした手首の手枷は少し痛かった。

    敗者 レーザーまどか

    ふう。くそっ。
    観客がリングにそびえる自分を見ている。
    いいさ。存分に馬鹿にしろよ。
    ヒールになって以来、蔑まされるのは慣れているつもりだった。
    しゃあない、これもお勤めだ。
    十字架の上からゆっくりと場内を見回し、ふてぶてしく笑ってみせた。
    「馬鹿ヤロ~!!」「ザマァみろーっ」
    会場から一斉に野次が浴びせられる。
    「がんばれぇ~!!」
    あん?
    「まどかさーん、キレイ~!!」「おお、色っぽいぞぉっ、まどかぁ」
    おいおい、あたいのことか?
    まどかはとまどう。こんな声援は初めてだった。
    止めろよ、こっ恥ずかしいじゃねぇか。冗談じゃないぜ。あたいが色っぽいだなんて。
    不思議な気分がした。
    生贄にされた自分を綺麗という客がいる。
    胸の鼓動が高まった。
    試合で乱れた息のせいではない。
    くそ!!
    やがて十字架はまどかを拘束したまま、ゆっくりと吊り上げられた。
    大歓声の中、リングの上方3メートルにまで浮上すると、その高さでゆらゆらと揺れ続けた。
    両手を斜め上に伸ばしてうなだれるまどかが見えた。
    まどかは目をぎゅっと閉じて、じっと耐え続けた。

    <打ち上げ編>
    「揃ったか? 行くぞー!」
    本田真実が先頭に立って歩き出した。
    後ろには、レーザーまどか、そしてA組の若手とB組の若手が3人ずつ続いている。
    「いいんですか、真実さん?」「っるっせー!! 俺が責任取るから文句言わずについて来い!」
    「まどかさん、自分らもA組と飲むなんて」「くっくっ。真実が責任取ると言ってるんだから、気にするな」
    トレーニングウェアの上に派手なジャンパー。半数以上が金髪にサングラス。
    女性とはいえ、体格のいいプロレスラーが集団で闊歩しているのだから、これは怖い。
    ネオン街ですれ違う人々は全員が道を譲って行く。
    「おっし。ここだぁ! ついて来いっ」
    この夜、犠牲になる気の毒な居酒屋を決めると、真実は暖簾(のれん)をくぐった。

    「カンパーイ!!」
    グラスがぶつかり合い、この時点で既に2~3個割れている。
    「・・先輩、最後まで主役でしたね」
    「そうそう。ファイナルマッチの間も、みんな上を見てましたもん」
    「けっ、いい迷惑だったよ」
    敗者の十字架はファイナルの第4試合の間も上空に吊られ続けていたのだった。
    「しかし、いったい誰だぁ? パドックだハリツケだなんて考えた奴は」
    「あ、自分知ってます。企画部の小谷っす」
    「あいつかよ。ぺーぺーの新入社員のくせに」
    「でも、客も入って、いい企画だったって会社は喜んでるみたいですよ?」
    「そうっすね。あんなに満員になったの、自分は初めて見ました」
    「それにしても、パドックの真実さんとまどかさん、可愛かったっす」
    ぶーっ。
    真実とまどかが揃ってビールを口から吹いた。
    「な、何だとぉ~!!」そのまま立ち上がる。
    「いや、あの。あんなに女っぽくって、か、可愛いお二人は、見たこと、ない、か、な、と」
    真実とまどかが、左右からその若手の耳をつまんで持ち上げた。
    「てめぇ、{俺|あたい}が可愛かっただとぉ!?」同時に叫ぶ。
    「あわわわ、気に障ったら、すいません!」
    「お前っ、その場でスクワット100回っ」
    「おっす!!」
    その若手はバネ仕掛けの人形のように立ち上がるとスクワットを始めた。
    「おーしっ、お前ら、一人ずつ何かやれ!」真実が言った。
    「おおっ。あたいらを面白がらせろ!」まどかも同調した。
    若手相手に有無を言わせない強権を発動する先輩二人であった。

    真実がテーブルの上に立ってビール瓶をシェイクしている。
    まどかが逃げまどう若手を一人捕まえると、その背中に冷奴を投入してマッサージした。
    真実が別の若手にラリアットをかました。「ぐわっ」派手に倒れて転がった上から馬乗りになって、顔面にビールを噴出させる。
    まどかは捕まえた若手に腕挫(うでひしぎ)十字固めをかけた。「ひぃっ」暴れる手足が周辺のテーブルを叩き、音を立てて皿がこぼれ落ちた。
    二人とも、何かの悪戯に夢中になっている少年のように目をきらきらさせて、笑っていた。

    深夜の河川敷。
    「よっこらしょっと」
    堤防を降りてきた真実が背中に担いでいたA組の若手3人を下ろして寝かせた。
    「どっせい、っと」
    まどかも担いでいたB組の3人を下ろして寝かせる。
    「お?」
    真実が自分の頭に手をやる。
    どこでくっついたのか、髪の毛の中に枝豆のさやが二つまぎれていた。
    ひとつをまどかに投げて、残りを口に入れた。
    「お前、汚ねえぞ」
    「お前だって食ってるじゃねえか」
    「くっくっくっ」
    「ふぁっはっはっはっ」
    二人は顔を見合わせて笑う。
    そのまま並んで堤防の斜面に寝転んだ。
    雲のない夜空には満月が浮かんで、世界を青白く照らしている。
    「・・まどか、本当はどうなんだ?」
    「・・ん?」
    「パドックで縛られること。それに磔にされること」
    「そのことか。・・くっくっくっ」まどかは笑った。
    「そうか。やっぱりお前も、な」真実が何かを察したように答えた。
    「あたいは何も答えてないぜ」
    「分かるさ。お前も俺と同じってことがな」
    「あたいが真実と同じだって? 気持ち悪いことを」
    「俺だって勘弁してほしいさ、まどかと同じだなんてな」
    「・・くっくっくっ」
    「・・はっはっはっ」
    月明かりの下、二人はいつまでも笑い続けていた。

    敗者は十字架



    ~登場人物紹介~
    本田真実: 女子プロレス選手。熱血ファイトが売りのベビーフェイス。酒を飲むと・・。
    レーザーまどか: 女子プロレス選手。冷血ファイトが売りのヒール。酒を飲むと・・。

    前作パドックタイムの続編です。
    元々、女子プロレスネタは前作だけのつもりでしたが、pixiv にイラストを投稿したら「敗者は十字架に」というコメントをいただいてイメージが膨らみました。
    真実とまどか、どちらの磔も捨てがたく、"真実敗北編" と "まどか敗北編" でそれぞれ十字架に架かってもらうことにしました。
    おまけの "打ち上げ編" は、堤防での会話を二人にさせたくて追加したものです。
    色気も何もありませんが、私は二人のキャラクターがはじけた打ち上げ編が一番好きです。
    二人は若手選手をそれぞれ3人ずつ背負って堤防までやってきましたが、いったいどうやって担いできたんでしょうか!?
    作者の私にも信じられませんが、これも真実とまどかのスゴイところと解釈して下さい(笑)。

    ところで、まどかの名前が某魔法少女アニメの主人公と同じなのはまったくの偶然です。
    前作を発表した後に世間の流行を知って、しまったと思いましたが、後の祭^^。
    深夜アニメなどは普段見ない人間なので気づきませんでした。
    『まどか』は、知り合いのお嬢さんのお名前を借りたものです。(あ、書いちゃった^^)

    # "いつも通り" を目指しての更新です。
    # 都道府県別アクセス解析では、東北各県からのアクセスもわずかに増加して喜んでいます。
    # 節電には配慮しつつ、これからもよろしくお願いします。

    ありがとうございました。




    パドックタイム

    満員の観衆が俺達を囲んでいる。
    こんなに会場がいっぱいになっているのを見るのは久しぶりだ。
    「本田ーっ!!」
    「いい格好だぞぉ~!!」
    「真実(まみ)さぁん、頑張ってぇ~!!」
    「顔、赤いぞぉっ」
    あらゆる声援、罵倒、冷やかしの声が聞こえてくる。
    まともな応援よりも、からかいの方が多そうだ。
    「くそっ」
    俺は背中のポールに繋がれた両手を握り締め、唇を噛みながら屈辱に耐える。

    パドック

    女子プロレスブームにのって続々と雨後の竹の子のように設立された団体は、今や次々と淘汰されつつある。
    うちの試合も客は減る一方だった。
    もし倒産・解散なんてことになったら何十人もいる選手と職員が路頭に迷う。
    生き残るためには何だってやらないといけない。俺だってそれくらい分かっている。

    『<通達> ファン投票に合わせて全試合でパドックを実施。選手各位には了承の程。興行企画部』

    会社からの通達が回ったのはつい先週のことだ。
    ファン投票とは、入場券と一緒に投票券を配って、客に各試合の勝敗を予想させる企画だ。
    勝者(または引き分け)を的中させた客には、抽選でタオルやステッカーなどのグッズが当たるという。
    これくらいの遊びならいくらでもやっていい。
    問題は次の『パドック』だ。
    会社の説明によると、パドックは試合前の選手のお披露目である。
    リングに特設する展示台に選手を並べて飾る。観客はじっくり眺めて、どっちに投票するのか決める。
    このとき、かつてのコロセウムで試合に臨む奴隷剣闘士を鎖で拘束して晒したのにならい、パドックでも選手は鎖で繋いで拘束される。
    おいおい、俺達は競馬の馬か? いや、馬以下の奴隷かよ。
    俺は一人で憤慨したが、他の選手達は概ねパドックを受け入れたようだった。
    まあ冷静に考えれば、確かに悪くないアイディアではある。
    金はかからないし(展示台だって、どうぜ企画部で手作りだ)、ファンも選手を間近で見れて喜ぶ。
    それに何といっても、若い女子選手を拘束して飾るんだ。
    男の客に受けるのは間違いない。マスコミだって注目するだろう。
    あとは生贄にされる俺達選手が我慢すれば、それでいい。
    仲間との和を乱してまで逆らいたくはないし、俺はこの企画を不承不承了解した。

    「えー、ただいま次の対戦の選手を展示中です。投票がまだのお客様、よくご覧になって、お手元の第3試合投票券を投票箱に入れてください。写真撮影はご自由にどうぞ・・」
    場内アナウンスが繰り返し流れている。
    目の前ではストロボの閃光が途切れることなく続いていて、目がちかちかするくらいだ。
    写真を撮られるのは慣れているが、こんな格好でモデルになるとは思ってもいなかった。
    「くっくっくっ・・」
    背中合わせのレーザーまどかが小馬鹿にしたように笑いながら話しかけてきた。
    「真実よぉ、試合の前にへろへろになるなよ」
    「ばっきゃろ。こんなことで参るかよ」
    「第1試合も第2試合も見たがな、お前が一番情けない顔をしてるぜ」
    「へん、お前だって一緒に縛られてるくせに」
    「くっくっくっ・・」
    まどかはまた笑った。気色悪い女だ。
    「あたいらB組は、みじめな目に会うのは慣れてるさ。・・A組で熱血一直線の真実さんには耐えられないことでもね」
    「うるさいっ」
    こいつと俺は同期の入団で、その上、高校ん時はクラスメートだった。
    ちなみにA組・B組はうちの団体の分け方で、A組がベビー(善玉)、B組がヒール(悪役)だ。
    『まどか』は本名で、ヒールなのにお嬢様みたいなリングネームはどうかと言われたようだったけど、彼女はその名で通して今では堂々B組の中堅を張っている。
    どうしようもなく性格が悪い上に、酒を飲めば半径2メートル以内は俺以外誰も近寄れなくなる凶暴女だが、性根は座っているし、俺はこいつを認めている。

    客席から白いものが飛んできて頭に当たって潰れた。この感触は、生卵だ。
    「くぉらぁ~、誰だぁ!!」
    俺は怒って客席を見回す。手枷の鎖ががちゃがちゃ鳴った。
    いつもだったら、こんな客はリングから飛び降りて追っかけ回すんだが。
    「・・くっくっ。興奮してるようだな、真実」
    「何だとぉ?」
    「ここだけの話だが、お前、マゾだろう?」
    「な・・、げほっ、げほ」
    いきなり言われて、少しむせてしまった。
    「こんな観客の前で『ここだけの話』って、丸聞こえじゃねぇか!!」
    まどかが軽くコケたのが分かった。
    「そこを突っ込むのかよ。・・大丈夫さ。何か話してるのは判るが、内容までは聞こえないさ」
    そうか。俺は少し安心する。って、そうじゃねぇっ!!
    「ま、まどかっ。お前、何の理由でそんなことっ」
    「見てりゃ分かるさ。お前、ここに立たされて手錠を掛けられるとき、感じてただろ?」
    「そ、そっ、・・そんなことはない!」
    「あたいは別に真実がマゾだからって、馬鹿にはしないぜ。くっくっくっ」
    その笑い方。思いっきり馬鹿にしてるだろ。
    「ふん。思いたいように思え」
    「・・まあ、ゴングが鳴るまでは、お互いここでカカシんぼの身だ。それまで喘ぎ声なんて出すなよ」
    「誰が出すかっ」
    俺は憮然と答えた。
    まあ、鎖で拘束されるとき、これから慰みモノにされる奴隷女みたいというか、そんな気分に浸ったのは確かだ。
    だからと言って大事な試合の前に乱れてたまるかよ。
    これはまどかの心理作戦だ。俺は黙って真正面をにらみつける。
    む。・・平常心、平常心、平常心。
    「本田ぁーっ。見られて喜んでるだろっ。このヘンタイ女ぁ!」
    品のない野次が聞こえて、胸がどきんと鳴った。
    俺は自分が晒されていることを意識した。
    皆が好奇の目で俺を見ている。身動きできない身体の隅々まで見られている。
    着慣れたピンクのリングコスチュームが妙に気恥ずかしい。
    俺、いつもこんなに露出して戦ってたのか。
    くそ、何で今さら・・。
    かぁっと顔面が熱くなったような気がした。

    「ただいまより、第3試合ぃ、レーザーまどか対本田真実ぃ、30分一本勝負を開始しまぁすっ」
    わぁ~っっ!!!
    耳に歓声が飛び込んできた。
    手足の枷が外された。俺達を拘束していた展示台がリングの外に搬出された。
    よしっ。
    俺は自由になった腕をぐるぐる回す。軽くジャンプして膝を屈伸する。
    「何だよ真実。お前の顔、やっぱり真っ赤じゃねぇか」
    「へん。お前こそトマトみたいだぜ、まどか」
    まどかの顔が紅潮しているのを見て安心した。へへっ、お前だって仲間じゃないか。
    胸の中に不思議な感覚があった。
    少し気だるく、暖かくて、どきどきするような興奮と満たされた感じ。
    そう、これはいいセックスをした後みたいな。
    そういえば目の前の対戦相手も不思議と色っぽく見える。
    おいまどか、もしかしてお前も俺と同じキモチなのか?
    カーン。
    ゴングが鳴った。
    俺達はがしりと組み合うと、互いに赤く上気した顔でにやりと笑い合った。



    ~登場人物紹介~
    本田真実(まみ): 女子プロレス選手。熱血ファイトが売りのベビーフェイス。パドックでまどかと共に拘束されて晒される。
    レーザーまどか: 女子プロレス選手。冷血ファイトが売りのヒール。真実と同期入団で高校時代は同じクラスだった。

    まだ pixiv がなかった時代、私は deviantART という海外のお絵かきSNSにROM専で出入りしていたことがあります。
    そこで見たアメリカ人の女性が投稿したイラストに、ボクシングのようなコスチュームの少女が二人で互いに背中合わせでポールに縛られている絵がありました。
    特にイラストの説明はありませんでしたが、私には、キャットファイトか地下格闘技の選手が試合前に観客に晒されている、そんな風に見えたのでした。
    今回の超短SSはその絵からイメージを広げたお話です。

    女子プロレスラーの二人。ベビーとヒールで仕事上は敵同士でも、実は親友です。
    会社からはあまり一緒に行動するな(人前で仲のよいところを見せるな)と言われてますが、そんなことはお構いなし、今夜はきっと一緒に酒を飲んで盛り上がって暴れるのでしょうね^^。
    なお、作者はプロレスの世界に特に詳しい訳ではありません。
    もしこのお話に基本的な誤りがあってもどうぞ笑ってお許し下さい。

    ありがとうございました。




    [中学生縄師映画製作発表会 外伝]あすか、頑張る

    ホテルのロビー。
    ソファに座って時計を見るとちょうど30分前だ。
    この仕事で遅刻は絶対にNGと叩き込まれている。
    手帳を出して開き、そこに挟まれたメモを見た。
    『×月×日12:30 ○○ホテル 映画製作発表 EvM、Bあり』
    小さな紙切れに何度も読み返した文字が躍っている。
    EvM とはイベントモデル。そしてBとは Bondage を示す事務所の隠語だ。
    Bondage、つまり "縛り" だ。
    私は溜息をついた。はぁ~、とうとうBだよぉ。
    タレントはどんな仕事でもこなさなければならないのは、弱小事務所の宿命だと理解していた。
    街でスカウトされたのが高2のとき。
    それからレッスンを受けながら半分タレント、半分学生の生活を続けて2年が過ぎた。
    その間テレビや雑誌の仕事は数えるほど、ほとんどが広告や企業イベントで水着になって微笑むような仕事だった。
    先月、久しぶりにテレビドラマのお仕事で喜んだら、何と死体の役だった。
    私は女子高生の制服で血まみれになって、青草の漂う冷たいプールに2時間も浮かんでいたのだ。
    18才になって短大に上がった今、ヌードとか、レイプされるような汚れ役の仕事も来るだろう。
    いっそ事務所を辞めて普通の学生に戻ろうかと思うこともある。
    それでも止められないのは、やはり有名になりたい夢があるからだ。
    いつかメジャーになって、テレビや舞台で女優と呼ばれたい。
    そのために今はどんな仕事でも頑張って経験を積むのだ。
    ・・
    「恋々エイジェンシーの白沢さん?」後ろから声を掛けられて私は弾けるように立ち上がった。
    「はいっ。白沢あすかですっ。よろしくお願いします」直立して45度のお辞儀。
    「まぁまぁ、リラックスして下さい。僕、助監の原です。・・こちらへどうぞ」
    連れて行かれた先は、結婚式の披露宴をするような大きな部屋だった。
    ずらりと椅子が並び、前方には大きなパネルに書いた看板が立てかけてあった。
    『中学生縄師 ザ・ムービー 製作発表会』
    そこに書かれている文字を見て、私は驚いた。
    「え?! 中学生縄師って映画になるんですか? 私、いつも見てますっ。大ファンです!」
    すごいや。じゃあ、YUMIKO さんも来るのかな?
    つい地が出て喜んでしまった。
    「ねえ君、もしかして何のイベントか知らずに来たの?」原さんが面白そうに言った。
    「あ、すみません」
    「じゃあ、仕事の内容も聞いてないのかな?」
    「一応、縛られるとは。・・私、いったい何をするんでしょうか?」
    「君の仕事はね」原さんは天井を指差した。「映画製作発表会であそこから吊られること」
    「はぁ、いつ吊られるんですか?」
    「この後すぐに、君の準備が出来次第」「はぁ」
    「発表会が終わったら、下ろしてあげるから」「はぁ・・」
    私の頭の中で、ようやく自分の運命が理解できた。
    「えぇ!? じゃ、あたし、イベントの間じゅう、吊られてるんですか?」
    「そう言ったでしょ」
    「ずっと縛られたまま?」
    「そうだよ」
    「あの、どれくらい・・の時間?」
    「2~3時間くらいかな」
    「ひぇ~っ」
    「面白い娘だね。君」
    ・・
    私は事務所に携帯電話を入れた。
    「・・ということなんですけど、構わないんでしょうか?」
    「当たり前でしょ!」電話の向こうで吉本さんが答えた。
    吉本さんはモデル出身で、私達の事務所の社長だ。
    「あすかちゃん、このお仕事はね『体力があって身体が柔らかくて我慢強い女の子』って条件で受けたのよ。あなたにぴったりなのよ!」
    「でも・・」
    「報道の人もたくさんいらっしゃるわ。こんなチャンスはないんだから、頑張りなさい!」
    電話はそう言って向こうから切れた。
    どうやら覚悟を決めるしかなかった。
    ・・
    衣装は会場の隅のつい立ての陰で着替えた。
    事務所から私のサイズが知らせてあったらしく、チアの衣装は私にぴったりだった。
    メイクさんが手早く顔を作ってくれた。
    「こちら、緊縛師の水無月さん」
    そう言って紹介されたのは背の高い男性だった。
    「えっと、貴女。縛られるのは初めて?」
    「あ、はい」
    「そう。・・失礼」
    水無月さんはいきなり私の右手を掴むと背中に捻り上げた。
    「きゃっ」
    私は動けなくなった。水無月さんはそのまま反対の手で私の太ももと脛を揉んだ。
    「ひゃ」
    「柔らかい人だね。肌の具合も分かりました。・・えっと、大丈夫?」
    水無月さんが手を離すと、私は床に座り込んで立てなくなっていた。
    「今から腰が抜けてたら困るよ」原さんが笑った。
    「す、すみません。びっくりしただけです」
    私は胸を押さえて立ち上がった。心臓が破裂しそうに鳴っている。
    「いいかい・・」水無月さんは私の様子などいっこうに気にすることなく説明を続けた。
    「俺はこれから貴女をモノに変える。貴女は自分では何もしないこと。俺が縛り易いようにとか余分な気配りも一切不要。ただ俺のすることに従って下さい」
    有無を言わせない気迫だった。
    私は何も言えず、ただ首をこくりと振るのがやっとだった。
    ・・
    製作発表会の看板のパネルが天井から吊り下げられている。
    その高さは私の頭より少し高いくらい。
    パネルからロープが何本か垂れていて、私はそこに縛られるようだ。
    「あすかちゃんだったね。縛るよ」水無月さんに呼ばれた。
    「トイレ済ませた?」原さんが聞く。
    「はい。大丈夫です」
    「途中で行きたくなっても行けないからね。オムツは用意してないよ」
    原さんはそう言ってげらげら笑ったが、誰も笑わなかったのですぐに黙った。
    「両手を頭の上にあげて、肘を曲げて」「はい」
    水無月さんが私を縛り始めた。
    縄を一本使って縛り終えると、また新しい縄を使って縛り続ける。
    いったい何本縄を使うのだろう。
    左足がぐいと吊り上げられた。続けて上半身も吊られて横向きになった。
    右足は膝で折ってそのまま縛られた。
    はぁ~、縛られるって、こんな感じか。
    水無月さんもスタッフも、皆とても真面目で真剣で、私も変な気持ちにはならなかった。
    縄は痛くなかった。
    ただ、私はまったく動くことができなくなった。
    「OK。・・上げて」
    「せーのっ」
    左右に別れたスタッフが数人がかりでロープを引いてパネルを天井まで引き上げた。
    私もそのままいっしょに上昇する。
    「あと10センチ。・・下手側、も少し上げて。はい、OK!」
    スタッフがロープを固定して、パネルの設置は完了。
    これで、映画制作発表会が終わるまでの間、床から2メートルの空間が私の居場所だ。
    私はもはや大道具の一部だった。
    ・・
    開場まであと15分。
    スタッフがあわただしく走り回り、照明や音響が調整される。
    もはや誰も私に構う人はいない。私はぽつんと吊られて、開場を待つだけだ。
    予定を少し遅れて、会場のドアが開放された。
    最初に入ってきた記者さんが私を見ている。あ、写真を撮られた。
    次々と入場してくる人たちは皆、私を指差して驚いているようだ。
    そりゃそうだよね。こんなところに女の子を縛って飾ってるんだから。
    何人かの記者さんから話しかけられたが、私は応えなかった。
    何もするな、反応するなと指示されていた。
    私は発表会を盛り上げるためのディスプレイなのだ。
    ディスプレイはお客様とお話ししたりするものでは、ない。
    ・・
    「大変長らくお待たせしました。ただいまより DID Channnel 配給、中学生縄師ザ・ムービーの製作発表会を行います」
    始まった。
    あっ、YUMIKO さん、哲平くんに咲ちゃんもいる!
    役者さんをほんの1メートルの距離から見られるなんて、ここは特等席だな。
    後ろ姿しか見れないけれども。
    監督さんと出演者の挨拶が進む間には、私も吊られていることに大分慣れてきた。
    何もするなと言われていたけれど、私は仕事をすることにした。
    私なりに中学生縄師の世界にふさわしい女の子を演じようと思ったのだ。
    私は・・、そう、チアリーディング部に入ったばかりの大学1年生。
    緊縛とかの世界は経験ないけれど、興味は深々。
    ある日、急に縛られて吊るされてしまった。
    新入部員のつとめと言われて我慢しているけれど、心の中は不安でいっぱいだ。
    生まれて初めて縛られたみじめさと恥ずかしさに顔がこわばる。
    やがて、自分がセクシャルな興奮を感じていることに気づく。
    縛られた身体で感じる肉体的な快感。自由を奪われたまま見られることで感じる精神的な快感。
    その気持ちは次第に高まり、やがてせつなさにさいなまれる。
    そんな女の子、マゾっ気たっぷりの女の子を演じようと私は決めた。
    ・・
    出演者のインタビューが続いている。
    私はときどき目をぎゅっと閉じて何かに我慢しているような表情をしていた。
    あぁ。思わず深呼吸。
    「はぁ・・」
    いけない。声が少し出てしまった。
    何人かの記者さんが私を見たようだった。
    気をつけなきゃ。出演者より目立ってしまったらディスプレイ失格だ。
    控え目に、さりげなく。
    私は、囚われのチアリーダーになりきってゆく。
    ・・
    哲平くんによる YUMIKO さんと咲ちゃんの緊縛実演。
    一斉に光るフラッシュの光に目も開けていられないほどだ。
    後ろ手に縛られて微笑みながらポーズをとる YUMIKO さんと咲ちゃんは、女の私から見ても妖しくて綺麗で素敵だ。
    でも、今はそれに見とれてしまってはいけない。
    私が演じるチアリーダーはドMのさなかにある。乱れる一歩手前でかろうじて耐えている状態。
    手足の筋肉に力を込めて、収縮させては緩める。
    本当は身体じゅうをがくがく痙攣(けいれん)させたいけど、そこまでやったら目立ち過ぎるのでNGだ。
    はぁ、はぁ。
    自分の中で爆発しそうな感情を押さえ込んで、一瞬一瞬をしのいでいる。
    まるで私自身が本当のマゾになったみたいだ。
    あれ、私、どうしてこんなにマゾの気持ちが分かるんだろう?
    ・・
    発表会が終わり、最後まで残っていた記者さんがいなくなって、ようやく私は解放された。
    縄を解いてもらって、しばらく身体を動かすことができなかった。
    ぐったりと床に座り込んで、手足の縄の痕を撫でる。
    うん。・・私、頑張ったよね?
    「きっといい女優になれるよ」水無月さんが言ってくれた言葉は嬉しかった。
    帰るときに原さんに食事に誘われたけど、やんわりと断った。
    原さんが私を見る目も少し違っていたようだった。
    へへ、私だってやるときはやるのよ。
    ちょっとは見直してくれた?
    ・・
    4日後、吉本さんに呼び出された。
    中学生縄師の映画でキャストのオファーがあったという。
    「大抜擢よっ。小池監督が製作発表会であすかちゃんのこと、気に入って下さったんだって!」
    やったぁ~っ!!!
    皆でバンザイをして喜んだ。
    こうして、私は中学生縄師ザ・ムービーに木瀬明日香というチアリーダーの役で出演することが決まったのだった。

    あすか、頑張る



    映画製作発表会で、会場に緊縛展示されていた女の子のSSです。
    好きなネタは骨までしゃぶります(笑)。
    映画で彼女が演じた明日香がどんなだったかについては『中学生縄師ザ・ムービー』をお読み下さい。

    ドラマなどで緊縛された女優さんを見て、どんな気持ちでやっているんだろう、とよく思います。
    「ストーリー上、縛られるのが必然だから」「そういう女性を演じているから」「それが仕事だから」などの答えが普通だと思いますが、もう少し積極的な思いでやったらどうかな、と考えたのがこのSSです。
    あすかちゃんは自分のことをマゾだとは思っていません。(少なくとも、今は)
    でも、女の子が縛られることは抵抗なく受け入れていますし、緊縛された女性の美しさも理解しています。
    そんな彼女がイベントの仕事で縛られることになり、素敵なM女を一生懸命演じてくれました。
    これはもう誰が監督でも、彼女を抜擢してあげるのは当然ですよね^^。

    さて次の更新は、かねてより予告の中学生縄師最終回です。
    できるだけ早くアップできるように頑張りますので、お待ち下さい。
    ありがとうございました。




    MEIKO 酔った勢い

    酔っ払い MEIKO

    ただいまの酒量。
    MEIKO ・・ ビール1本、缶チューハイ3本、テキーラのコーラ割り2杯、テキーラストレート1杯。
    カイト ・・ アルコールは駄目なので、コーラと麦茶だけ。



    「へっへっへ、あっという間に抜けてみせるわよ」
    めーちゃん、ちょっと飲みすぎてるんじゃない?
    「平気よ。これくらいジュースよじゅーすっ。はい、縛って」
    ならいいんだけど。
    「んっ、あん。・・カイト、あんた、縛るの上手ねぇ」
    だって、めーちゃん、緊縛ライブの練習だとか言って、僕に縛らせてるじゃないの。
    「そうだっけ? ・・あ、そこ、やだぁ。もう、カイトのえっちぃ」
    あのね、そんなに胸はだけさせてるから、いろいろ当たっちゃうんでしょ。
    「だって、暑いんだもん」
    はい、できたよ。高手小手。
    「わお、すごいっ。足も縛って」
    足も?
    「うん。あぐらに組むから、足もちゃんと縛って」
    はいはい。これでいい?
    「うん!!」
    めーちゃん、嬉しそう。
    「さあ、MEIKO さんの世紀の縄抜けショーだよ。お客さんはカイトひとりだけどね!」
    無理しないで。駄目だと思ったら言うんだよ。
    「何言ってるのよ。あたし、もう緊縛ライブ10回のベテランだよ」
    ライブで縄抜けなんてやってないでしょ。
    「似たようなもんよ。じゃ、始めるからね!」
    はいはい。期待しないで待ってますよ。



    「くっ・・。このこのぉ~!」
    ねぇ、そろそろ解こうか?
    「何言ってるのよ。まだ5分も経ってないでしょ」
    だって、やっぱり抜けられないんじゃ。
    「抜けて見せるわよ。・・そうよ、ガソリンが足りないんだわ」
    ガソリン?
    「ほら、そこのワンカップ。飲ませて」
    めーちゃん、もうお酒は。
    「ぐだぐだ言わないで、飲ませるの!」
    大丈夫かなぁ。
    「ん、ごきゅごきゅごきゅ・・。ぷふぁ~っ。やっぱり、ここという時はポン酒よねぇ!」
    うわ、お酒の匂い、僕苦手。
    「そりゃっ、エンジン全開!!」
    あっ、痛いっ。めーちゃん!
    「ほらほら~っ。近くにいたら蹴飛ばすわよぉっ」
    ねぇ、そんなに激しくもがいたら、お酒がよけいにまわっちゃうよ。
    「うりゃぁっ!!」
    あ~ぁ、そんなに床をごろごろ転がって。



    「きゃはは」
    元気だねぇ、めーちゃん。
    「だってぇ。カイト、アイスクリーム食べてるぅ」
    いいでしょ、ヒマなんだから。アイスクリームのどこがそんなにおかしいの。
    「だって面白いんだもん。・・きゃあ。カイト、あたしのお尻見てるぅ。すけべー。ぎゃははは」
    あのねぇ、僕の方にお尻を突き出してるのはめーちゃんでしょ。
    「きゃは。ねぇ、ショーパン(ショートパンツ)だから、ぱんつ見えなくて寂しい?」
    何言ってるの。それより縄抜けはどうしたの?
    「あ、それは。・・えへへ、ちょっと休憩中」
    もう諦めたら。
    「駄目、諦めない。あたし、絶対に抜けるんだから。解いたら許さないよぉ」
    仕方ないなあ。
    「ねぇ、目の前でこんな美女が縛られてもがいてるんだよぉ。むらむらしない? きゃはは」
    ふぅ。



    「ひっく」
    めーちゃん、もう眠いんでしょ?
    「だ、だいじょーぶ。眠くなんかないもん」
    もうお布団に入って寝ようよ。
    「でも、まだ解けてないもん・・」
    解けなくても、いいんだよ。
    「だって、絶対に縄抜けするって、決めたんだもん。ぐすん。あたし、頑張るんだもん・・」
    あ~あ、今度は泣き上戸?
    「あ、え、・・ひっく。泣いてなんかないもん。カイトがあたしを信じてくれないのが悲しいだけだもん」
    信じてるよ。信じてるから、ね。めーちゃんは今、ちょっと調子が悪いだけなんだよね。
    「ぐすん、ひっく」
    はいはい。抱っこ抱っこ。
    「えーん」
    落ち着いた?
    「・・もっと、ぎゅうっとして」
    はいはい。ぎゅう。
    「頭も撫でて」
    よしよし。
    「・・」
    めーちゃん?
    「・・あたしね」

    「やっぱり、縄抜け、できなくてもいいかな」
    へ?
    「こうやって縛られたまま抱っこしてもらうの、大好きなんだもん」
    あのねぇ。



    ・・つきあっとれんわ。
    そう思った皆様、すみません^^。

    緊縛ライブ顛末記に続いて MEIKO さんの2回目の登場です。
    最近、人様にイラストをさし上げる機会があり、彼女の着衣緊縛絵を描きました。
    今回その絵をこのブログ用に手直ししてSSをつけました。
    緊縛ライブで縛られて歌うことにもだいぶ慣れてきた頃、プライベートでパートナーのカイトと過ごす MEIKO という設定です。

    MEIKO はお酒が好きで、pixiv などでは飲みすぎて暴走するシーンをよく見るので、私もそれに乗ってみました。
    きりりと凛々しく、それでいてM女という MEIKO が私は好きですが、ここでは酔っ払って甘々になり果てためーちゃんになってしまいましたね。
    ま、たまにはこういうお話もアリということでお許し下さい:P。





    夕陽の部屋

    「電気、点けておく?」
    あたしは黙って首を横に振った。
    「わかった。・・じゃ、行くね」
    ヤスモトはあたしのおでこにキスをした。
    あたしは何も言わずに彼女を見上げる。
    涙がぼろぼろこぼれているのが自分でもわかった。
    「駄目だよチーダ。せっかくのお化粧が流れちゃうじゃない」
    彼女はあたしの目にハンカチをあてた。
    そしてあたしの背中に腕を回してぎゅっと抱きしめてくれた。
    彼女の髪があたしの顔にかかり、あたしは甘い香りに包まれた。
    ああっ。
    あたしは目を閉じて彼女の香りを胸一杯吸い込んだ。
    この香りを決して忘れないように。
    何十秒かの後、彼女はそっと離れ、そして黙って出ていった。
    あたしは目を開けなかった。
    カチャリ。
    安アパートのドアの閉まる音、そして外から鍵が掛かる音。
    一人きりになると、ヤスモトと過ごした2年間の思い出がぶわっとよみがえって、あたしはまたわんわん泣いてしまった。
    ・・
    「チーダは彼と一緒になった方が幸せだよ」
    タカユキとの恋を選ぶか、ヤスモトとの恋を選ぶか、悩んでいるあたしの背中を彼女は押してくれた。
    そして彼女は自分の荷物をまとめて部屋を出ていったのだ。
    あたしをたった一人残して。
    ・・
    あたしは目を開けた。
    泣きながら眠ってしまったようだった。
    西日が窓から射し込んで部屋の中を照らしていた。
    ヤスモトは出て行ったんだ。もうこの部屋にはいない。
    あたしの顔、涙でぐちょぐちょだろうな。
    無意識に右手を頬にやろうとして、できないことを思い出した。
    そう、あたしは全身を拘束されてお布団に寝ている。
    しっかりと合わせて縛られた両手と両足。口の中に含ませ布と猿轡。
    首に巻いた首輪からリード(紐)が枕元の柱の根元に繋がれている。
    長丁場に備えて前手で縛り、寝返り程度はできるように配慮された緊縛。
    あたしを縛ったのは、もちろんヤスモトだ。あたしは自分から縛って欲しいと頼んだのだ。
    タカユキが来るのは早くても明日の午後だろう。
    それまであたしはこのまま待ち続けるのだ。
    囚われのあたし。
    そう考えると、あそこがじゅんと濡れる気がした。
    やっぱりローター頼んだらよかったかな。
    あたしを縛るときヤスモトはあそこにローターを当てるか聞いてくれたけど、さすがにタカユキが来たときに恥ずかしいから止めてもらったのだった。
    その代わりヤスモトは別の気配りをしてくれている。
    あたしの両手は左右の足の付け根に固定されていて、その縄が太ももの間を通る部分には、大きな結び目を作って瘤(こぶ)にしてあるのだ。
    腕を手前に引けば、縄の瘤があたしを刺激してくれる。
    あたしは身体をのけぞるようにして、両腕に力を入れて引いた。
    きゅ。
    あたしはしばらくの間その行為に没頭した。

    夕陽の部屋

    ・・
    二人で過ごした2年間、あたしはずっとヤスモトの縄に縛られてきた。
    あたしの身体が縄なしでは我慢できなくなったのは、彼女のせいだ。
    タカユキと付き合って3ヶ月たったとき、あたしは自分の性癖を彼にカミングアウトした。
    タカユキは驚いたような顔をしたけど「僕は君のすべてが好きだよ」と言ってあたしを普通に抱いてくれた。
    あたしはその言葉を信じた。
    ヤスモトは「それは本心じゃないよ、きっと」と言った。
    あたしはヤスモトとそのことで喧嘩をした。
    今にして思えば、あたしは少しばかり意地になっていた。
    でも、それはもういい。
    結局ヤスモトはタカユキを信じるあたしを信じ、そして別れを選んだのだ。
    ヤスモトは部屋の鍵を封筒に入れて、駅前のポストからタカユキ宛に投函してくれることになっている。
    封筒には『待っています』と書いた手紙と部屋の鍵、そしてあたしの写真が同封されている。
    今のあたしと同じ、縄でぎちぎちに縛られた写真だ。
    ・・
    長い夜が開け、日が昇った。
    あたしはずっと横たわったまま、眠るか、ぼうっとするか、または股間の縄瘤で自分を慰めて過ごした。
    そして再び夕方になり、部屋の中はオレンジ色の光に満たされていた。
    この部屋は小高い丘の斜面にあって、西向きの窓から街に沈む夕陽が綺麗に見える。
    ヤスモトとあたしが大好きだった光景だ。
    昨日投函した手紙は、もうタカユキに届いているだろうか。
    ヤスモトはあまり血行を妨げないように配慮して縛ってくれたが、それでも両手と両足は痺れて感覚がなくなってきている。
    おしっこは、とうに我慢できずにそのまま出してしまった。
    うんちは、縛られる前にヤスモトが綺麗にお浣腸してくれてたから、まだ大丈夫だ。
    喉も渇いているが、口の中の布と猿轡が息で湿っているお陰でずいぶん助かっている。
    あたし、いつまでこのままだろうか。
    「2日過ぎたら危険だね」ヤスモトはそう言っていた。
    大丈夫。もうすぐタカユキは来てくれる。
    きっと今夜。それが駄目でも朝には来てくれる、
    あたし、信じてる。
    ・・
    夜になり、朝になった。
    タカユキはまだ来ない。
    もしこのまま、ずっと、ずっと、このままだったら?
    あたしはここで終わりを迎えて、何週間か何ヶ月かの後、誰かに発見されて新聞の片隅に小さく載る。
    それもいいかな。
    ・・
    自分が眠っているのか、起きているのか、よく分からなかった。
    気がつくと、あたしはまた夕焼けの光の中にいた。
    いったい何度目の夕陽だろう。
    タカユキ、早く来て。あたし、待ってるから。



    自分から破滅的な行為を選択する女性のお話です。
    彼女は縛められて恋人の到着を待ちます。本当に来るかどうかわからない恋人を。
    待ち続ける自分への陶酔。
    この後の彼女の運命ですが、腐乱死体で発見され『SM女 変死』(笑)なんて週刊誌のネタにされるのは作者の好むところではないので、ぎりぎりのところで様子を見に来たヤスモトに助けられたということにしておきましょう:P。

    さて、今回の緊縛は珍しく両手を身体の前で縛っています。
    前手で縛る場合、手首だけでなく肘まで縛って締めると二の腕がYの字になります。
    前手緊縛は後ろ手と比べて拘束感や嗜虐感は劣りますが、この形は女性の身体のしなやかさを感じさせるので好きです。

    ありがとうございました。




    MEIKO 緊縛ライブ 顛末記

    ★ MEIKO 緊縛ライブ発表!! ★
    一流緊縛師とのコラボレーションで実現した新境地。
    ダイナミックに踊り、歌いながら縄で縛られて行く MEIKO!
    「女性にこそ見て欲しいライブです。縛られるなんて、あたしもドキドキですけど、皆さんもドキドキしながら楽しんで下さいね ♥」
    発表会見でそう言って妖しく微笑む MEIKO。


    ・・・・

    その3ヶ月前。
    「き、きんばくライブですか~!?」
    MEIKO が素っ頓狂な声を上げて聞いていた。

    デビューして5年。
    浮き沈みの激しいこの業界で彼女は何とかやってきた。
    セクシーなボディと歌唱力、それに愛嬌のある笑顔は、固定ファンをつかみ、今でもリリースする楽曲は必ず50位以内に入るし、ライブも高い集客力を誇る。
    それでも。
    そう、この世界では変わり続けなければいつか必ず飽きられるし、変わるなら人気を維持している今なのだ。

    戦略プランを依頼している芸能シンクタンクからは『明るいM(マゾ)系、女性向け』という答申が返っていた。
    確かに彼女は女性に人気がある。
    今までの『エロ格好いい』路線の延長上に明るいドMキャラを打ち出せば新たな人気が出るだろう。
    企画会議で幹部層の承認を得て MEIKO 緊縛ライブプロジェクトは正式にスタートした。

    「あの、これからあたし、どうすれば・・」
    MEIKO はプロデューサーの私に聞いてきた。
    「詳細はこれからだけど、多分、縄で縛られる訓練だろう。拘束衣なんかもありかもしれない。・・ボンデージ系はもう一般的になりすぎたから、ないだろうな」
    「そうですか。やっぱり縄で縛られるんですね、あたし」
    ぼんやりとつぶやく MEIKO の声にかすかに浮ついたモノを感じた。
    これはもしかしたらマズイ。
    「セクハラと思わないで欲しいけど、MEIKO、そっちの経験は?」
    「?」
    「その、つまり、今まで、ボーイフレンドに縛られたりしたことはあるのかな」
    「ありませんっ。そんなこと」
    「じゃあ、そういうことに興味ある?」
    「え、まぁ・・、ちょっとは」
    「じゃ。MEIKO は自分でMだと思う?」
    「やだぁ。・・でも、そういうところもあるかしら」

    緊縛ライブのリハーサルが始まった。
    私の不安は的中した。
    テストで縛られた MEIKO はそれだけで腰が立たなくなり、歌うどころではなくなったのだ。
    縛り方をゆるくして何とか歌えるようになったが、それはまるで下手なAV女優が喘ぎ方の練習をしているような声だった。
    「駄目駄目っ、もっとシャウトして」
    「は、はい。・・あぁ」
    もはや MEIKO は、ごくありふれたM女だった。
    目の前の我々を差し置いて、一人で感じて喘いでいる。
    これはいけない。
    我々が MEIKO に求めているのは、あくまで『ドMキャラ』であって、本物のドMではないのだ。
    客をエロエロに感じさせることが重要なのだ。自分がエロエロに感じてしまってはいけない。
    今の彼女はトレーニングウェアの上から縛られただけでこれだから、露出の大きいステージ衣装で肌に直接縄を受けたら、いったいどうなってしまうのか知れたものではなかった。
    「あの、」
    頭を抱えていると、緊縛師が声をかけてきた。
    「京都に、女性だけの事務所で、緊縛撮影会なんかをやってるところがあるんですが」
    「SM系はお断りだよ」
    「いえ、ちゃんとしたイベント事務所です。表ではイリュージョンショーなどもやってて、それなりに有名です」
    私は顔をあげて、彼を見た。
    「そこの女の子はよく躾けられていて、客を楽しませることについては定評があります」
    「ほう、それで?」
    「頼めば、彼女も調教してもらえると思うんですが」
    「それは、秘密裏にやってもらえるのかな」
    「大丈夫です。そこの主宰者も女性なんですが、信用できる人です」

    結局 MEIKO は普段の仕事の合間を縫って、週に2日京都に通うことになった。
    先方で何をされているのか詳しく聞くことはできなかったが、MEIKO は別に嫌そうでもない様子だった。
    やがて MEIKO の調教が終わる日が来た。
    緊縛ライブの日程も迫っている。
    事務所に大きなスーツケースを押した女性が現れた。
    「島と申します。大事な娘さまをお返しに参りました」
    女性はそう言って私に鍵を渡した。
    「どうぞ、スーツケースを開けて下さいませ」
    そう言って上目遣いに微笑むその女性は、芸能プロデューサーを務めるこの私ですらどきりとするほどの美女だった。
    「あの、もしかしてこのまま京都から?」
    「ええ。新幹線代の節約になりましたわ、ほほほ」
    がちゃり。
    床に寝かしたスーツケースの鍵を開けると、中に MEIKO が丸くなって入っていた。
    彼女はいつもの赤いステージ衣装を着て、その上から全身に縄を掛けられていた。
    「あ、ぷ、ぷろでゅーさ、どうも」
    MEIKO は縛られたまま、恥ずかしそうに会釈をした。
    以前のように乱れてはいなかったが、身体中の肌が桜色に染まっていて、なかなかセクシーだった。
    「MEIKO ちゃん、立てる?」
    島と名乗る女性は MEIKO の縄尻を持って、彼女を立ち上がらせた。
    「くっ・・」
    MEIKO が小さな声を出して身震いした。
    女性が手にした縄は MEIKO の股間に割り込んでいた。
    私はそれを見て、無意識に自分の股間を押さえそうになった。

    ・・・・

    MEIKO 緊縛ライブ

    ライブの翌月。
    「雑誌にこんなレポートが出てますよ」
    社員が持ってきた雑誌の読者欄を見て、私はほくそ笑んだ。

    めーちゃんの緊縛ライブに行ってきました!!
    会場のお客さんは8割以上が女性でしたよ。
    さて大声援の中登場しためーちゃんはトレードマークの真っ赤なセパレートの超ミニコスチュームにヘッドセット姿。
    まず1曲を軽快に踊りながら歌った後、2曲目の途中から作務衣姿の縄師さんが現れて彼女を後ろ手に縛ります。
    縄を掛けられている間も歌うことを止めないめーちゃん。
    歌声もなんだか艶っぽくなったように感じられます。
    音楽は3曲目、4曲目と続きます。
    めーちゃんは、縛られているのを感じさせないくらいに飛び跳ねながら歌っていました。
    会場のあたし達も一緒に飛び跳ねて、めーちゃんの代わりに両手を振り回します。

    めーちゃんは背の高い椅子に座って、ようやく一息つきます。
    めーちゃんはMCも上手でした。
    このライブイベントはめーちゃん自身が「女を磨くため」に決心したとのこと。
    いざやってみたら縄師さんが素敵で「緊縛モデルに転向しようかと本気で思った」だって。
    やがて、めーちゃんは両足も縛られ、椅子から立ち上がれなくなりました。
    ゆっくりとしたテンポのメロディが流れ、めーちゃんは目を閉じてしっとりと歌い始めました。

    スタイル抜群で格好よくて、セクシーで可愛いめーちゃん。
    そんなめーちゃんが目の前で縛られる姿はとっても色っぽくって、まさに眼福!という感じでした。
    あたしも縛られてみたい、って思った会場の女性は多いんじゃないかなあ?




    初の版権ネタです。
    作者は、Vocaloid の中では MEIKO がビジュアル的に大人の魅力があって好きです。
    男性をびしびと従わせる雰囲気がある MEIKO ですが、実はその内面の被虐性は高いと思っています。
    まあ、『いい女はすべからくMである』というのが、作者の『いい女』の定義な訳ですけどね:P。

    今回のSSは先に描いたイラストにあとからお話をつけたものです。
    最初は単純な MEIKO の被虐話でしたが、だんだん凝ってしまって、とうとう京都から洋子さんまで出張させてしまいました。
    MEIKO はKSでどんな調教を受けていたのか、私にも興味のあるところです。
    箱詰めで1日中放置とか、目隠しで顔は分からないようにして緊縛展示とかされていたのかもしれませんね。

    今回のお話で作者は MEIKO をいっそう気に入りました。
    もしかしたら、今後もどこかのSSで登場してもらうかもしれません。

    ありがとうございました。




    [アナザ・キョートサプライズ]エスケープショーのハプニング

    朝からナツキはスネていた。
    原因は僕が男と出かけて朝まで帰らなかったことだ。
    ナツキのパートナーになって1年になる。
    ずっと二人で一緒に過ごしてきた。
    仕事のときも、食事のときも、そしてお風呂に入るときも、ベッドに入るときも、だ。
    ところが、夕べのショーの後、僕は紹介されたファンの男性と意気投合してしまったのだった。
    ナツキに言わせると僕は男性への耐性が低いらしい。
    そうかもしれない。僕には女性との経験しかなかったのだから。
    どっちにしても、僕は二階堂さんというお客さんにちやほやされて舞い上がった。
    そのまま一緒に過ごして、朝になって気が付いたら二階堂さんの腕の中で裸だった。
    「いいのよ、カオリ。たまには羽目をはずしても」
    ナツキは笑って許してくれたが、その目は笑っていなかった。
    これで僕は今夜から3週間はベッドの中でナツキより先に寝入ってはいけないと思った。
    「それより二階堂さん、今日も客席にいるんでしょ? 浮かれて変なミスしないようにね」
    ・・
    今夜も舞台の幕が上がる。
    メインイベントのエスケープショー。僕とナツキはその花形だ。
    僕たちのショーは単に縄抜けしてみせるだけではない。
    僕はナツキに縛られて逆さ吊りにされる。
    そしてナツキは別のスタッフに拘束されて、ガラスの水槽の中に閉じ込められるのだ。
    水槽には水が注がれ、ナツキの身体は次第に水に沈んでゆく。
    僕はナツキが溺れてしまう前に、自分の縛めから脱出して、彼女を水槽から救出しなければならない。
    水槽の中で水面が上昇してナツキが呼吸できなくなるまで約5分。そして彼女が水中で息を止めて耐えていられるのが約3分。
    合計8分が僕に許された縄抜けのリミットだ。
    ・・
    舞台に立つとスポットライトが眩しくて客席はほとんど見えない。
    二階堂さんはどこにいるのかな。
    「きょろきょろしてないで、始めるよ!」
    ナツキに促されて僕は両手を背中に回した。
    エスケープは演者と縛り手の共同作業だ。
    縛り手は、縄の取り回しから結び目の位置に至るまで、計算され尽くした緊縛を施す。
    演者は、申し合わせた手順に則って結び目を辿り、順に拘束を解いて行く。
    もちろん観客には、その縛り方が特別に配慮されていることは分からない。
    ナツキが縄を引き絞ると、僕の胸の上下の縄がきゅっと締まった。
    背中で組んだ両手首もきっちり固定されていて、ゆるむことがない。
    うん、いつも通りの縛りだ。
    引き続いてナツキは僕の膝の上下と足首を縛り上げた。
    僕を座らせて足首にロープを掛け、吊り上げる。そのまま僕の目にガムテープを貼る。
    それから逆さ吊りになった僕をくるくる回して観客によく見せて、お辞儀をした。
    僕の緊縛が完成すると、次はナツキの番だ。
    スタッフが彼女を縛り、水槽に閉じ込める。
    ナツキは後ろ手に縛られて、口に猿轡をされているはずだ。
    そして水槽は南京錠で封印され、南京錠の鍵は僕のパンツのポケットに入っているという寸法だ。
    さあ、これで準備完了。合図と共に水槽への注水が始まった。
    僕は水の音を聞きながら、作業を開始した。
    最初のポイントは右手を左上に捻り上げた場所にある。
    縄の間に中指を差し込むことができれば、後は親指と人差し指でゆっくり結び目を緩めればよい。
    逆さに吊られた僕の身体が次第に前後左右に揺れ始める。
    揺れ過ぎて頭に血が上ってしまうと困るが、適度な動きはお客さんの目をまぎれさせる効果があり、「縄抜け」という地味な作業の見栄えをよくする意味からも望ましい。

    エスケープショー

    ・・
    異常は3番目のポイントで発生した。
    縄をつまもうとしたが、そこに結び目はなかった。
    ??
    手前の結び目から指で順に辿り直す。
    やはり本来あるべき箇所に結び目はなく、少し上の方で縄が締まっているようだった。
    背中を冷たいモノが流れた。
    ナツキ、ミスった?
    首を捻って自分の背中の方に顔を向けるが、目隠しをされているので何も見えない。
    ここまで手順の通りに進んできたから、約2分30秒経過している。
    水槽の水面はナツキの胸に達しているはずだ。
    今までナツキが本番でミスをしたことは一度もない。彼女はいつも落ち着いていて正確だった。
    だから僕はナツキを100%信頼してエスケープを成功させてきたし、ナツキもその僕を信頼して下手をすれば命にかかわる危険な役目を演じてきたのだ。
    本番前のナツキの表情を思い出す。
    いつも通りに静かで、それでいて何かを思いつめたような雰囲気。
    そうだ。僕は確信した。これはミスじゃない。ナツキは分かっていて縛り方を変えたのだ。
    水槽の中から僕を見つめるナツキの姿が浮かんだ。
    ・・へへへ、浮気の罰だよ。死に物狂いでエスケープしてね。そうでなきゃ、失敗して恥をかきなさい。
    ナツキの気持ちが伝わってくる。
    僕は焦って頭を振り回すように振った。そこにない結び目を求めて、指先が空をさまよう。
    たちまち頭に血が上ってくる。
    それでも僕は腕に力を入れて、むやみやたらにもがきながら全身で縄を振り解こうとした。
    ふと気がつくと水槽に注がれる水の音が止まっている。
    水槽の中が水でいっぱいになったのだ。もうナツキの回りに酸素は、ない。
    ・・無理? 仕方ないわね。もうすぐ私は死んじゃうから、二階堂さんと、お幸せに、ね。
    あぁ、駄目だ駄目だ駄目だ。そんなことはできないよぉっ。
    僕は動きを止めて静止し、目を閉じた。大きく深呼吸を3回繰り返して、それから戦いを再開した。
    うお~~!!
    心の中で叫び声を上げ、身体を細くして、指を伸ばして、遠い結び目をつかもうとしていた。
    ナツキを溺れさせたりしない。絶対に脱出して助けてみせる。
    ナツキが苦しげな表情で水中から僕を見つめている。
    ・・大丈夫、カオリなら絶対に成功するわ。信じてる、から、ね。
    僕はただナツキを救うこと以外は何も考えないで、縄に挑んでいた。



    キョートサプライズ第10話のイラストを描いたとき、典子をもっと苛めたくなって、彼女を水槽に詰めた絵も描いていました。
    このSSはその絵からイメージした、本来のキョートサプライズの香織と典子とは異なる、別の世界のカオリとナツキのお話です。
    ナツキは本来の典子よりも少しばかり悪女になりました。

    舞台で演じるショーであれば、このイラストのように縄だけで縛るよりも、金属の鎖や枷の類を組み合わせた方が見栄えがよいでしょうし、二人のコスチュームももっと華やかでセクシーな衣装にすべきでしょうね。
    そのようなイラストにならないのは、ひとえに作者の画力と根気のなさが理由です。
    いずれは、そんなイラストを別のお話の中で描いてみたいと思います。

    ありがとうございました。




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    SSではなくて、広告ですね(笑)。
    イラストは作成日付1998年11月という、残っている中で一番古いものです。
    少し迷いましたが pixiv に投稿しました。

    ルーレットに固定された美女はただ回されるだけの飾りモノにすぎません。
    それはそれで楽しいでのすが、インカムをつけて本人に司会をさせたらもっと面白いと考え、キョートサプライズの設定につながっていきました。

    ルーレットと共に届く美女は、普通のモデルではない、訓練されたプロです。
    常に笑みを絶やさず、表情豊かに反応して、お客様に楽しんでいただくように心がけます。
    自分で司会をするときには、当意即妙の会話で会場を沸かせます。
    彼女はもちろん、絶対に「下ろして」とか「休ませて」とかは言いません。
    多少の高速回転や上下逆の放置では簡単にダウンしない体力と意志の力を持ちます。
    最後まで明るく元気に振舞い、そしてもし限界を超えた場合は、静かに綺麗に "落ちます"。

    こんな設定が、私には萌えです。




    逆吊モデル

    少し遅れてスタジオに入ると、もう撮影は始まっていた。
    明るいライトに照らされて、女子高生姿のモデルが上下逆に吊られていた。
    片足吊りとでも呼ぶのだろうか。
    SMとか緊縛とかの世界には詳しくないが、なまじっかの素人が耐えられるポーズではないだろう。
    制服のスカートは剥ぎ取られ、天井に向かって伸びる生足が色っぽい。
    聞けばこのモデルは現役の高校生だという。
    ヌードなしで緊縛OKのモデル事務所があって、高校生のモデルも派遣してくれるそうだ。

    スタッフがモデルの体を回して縄をねじれさせ、そして横に揺れないように注意しながらそっと手を離す。
    わずかに縄の撓る音と共に逆さ吊りの少女がゆっくり回転する。
    「あぁ・・」
    苦しそうな表情だが、小さな声を出しただけでじっと耐えている。
    右回り、そして左回り。
    「もう一回っ」
    撮影は何度も繰り返され、私が来てから少なくとも20分間、彼女は吊られたままだった。

    逆さ吊り

    「今日はちょっとキツかったです・・。あたし、綺麗でしたか?」
    撮影が終わって彼女はインタビューに答えてくれた。
    横山郁子ちゃん、都内の高校に通う17才。
    小さい頃から囚われのお姫様に魅かれていたが、中学生のとき偶然SM雑誌のグラビアを見て衝撃を受け、自分が真性のMであることをはっきり意識したという。
    モデルになった今も、美少女の緊縛写真を見たりするのは大好き。
    「可愛い女の子が縛られた姿って、同性から見てもセクシーで素敵ですよね。
    あたしの緊縛も、できたら女性に見てもらって感じて欲しいです。
    ・・あ、もちろん、男の人のオカズにもどーぞ(笑)」
    趣味は可愛いイラストを描くこと。
    将来は優しい旦那様と子供達に囲まれて絵本作家になりたいと本気で思っている。
    「プライベートで縛られたことはありません。彼氏ですか? えへへ、募集中です」
    屈託なく笑うその手首には縄の跡が鮮やかに残っていた。



    昔に描いたアニメGIFです。
    元は1MB近くありましたが、FC2では容量制限が厳しいのでコマ数を減らしています。
    それでも pixiv ブログと比べロード完了までかなり重いですね。
    申し訳ありません。
    場合によっては、サムネイルに変更することも考えます。



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    女性の拘束に関わる小説/SSと
    落書きを書いてます。

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