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    クラスメート(1/2)

    1.
    その殴り合いのきっかけが何だったのか,覚えてはいなかった。
    どうせ肩が触れたとか触れなかったとか、そんな理由だろう。
    ともかく俺は、公園で二人を相手に戦っているところで、パトカーのサイレン音が聞こえて逃げだした。
    誰だ、110番なんかしやがったのは。
    あと少しで倒せるところだったのに。
    まあいいか。
    一人は前歯を折ってやったし、もう一人もしばらく病院通いだろう。

    コンビニで食い物を買ってアパートに戻ってきた。
    前の道に見覚えのある車が停まっていた。
    ・・やば。
    回れ右をして引き返そうとすると、後ろから肩をつかまれた。
    「おぼっちゃま」
    どこに隠れていたのか、黒服が二人現れて俺を取り押さえている。
    親父の用心棒兼秘書だ。すごい力だった。
    俺はそのままずるずるとアパートの中に連れていかれた。

    「また喧嘩か、辰彦」
    アパートの部屋には腕組みをした親父が座っていた。
    「ほっといてくれ。俺の勝手だ」
    無意識に額をぬぐうと、腕に血がべったりついた。
    おっと、ちょっと流血が過ぎたか。

    「ワシはお前が怪我をしても気にするものではない。ただ、そんな顔で街を歩くお前がワシの息子だと知れるのはマズいのだ」
    「ふん。アンタには世間体が一番大切だってことは知ってるさ」
    「ともかく、これ以上無茶をするならお前を連れて帰って、地下室にでも監禁する」
    「え」
    「どうせろくに高校へも行ってないのだろう?」
    「いや、学校はちゃんと・・」
    「今さら、勉強しなさいとは言わん。ただし、迷惑はかけるな。喧嘩して死ぬならどこか無人島で人知れず死になさい」

    俺は黙って親父を睨みつける。

    「おとなしく高校さえ出てくれれば、適当な仕事につけてやる。阿呆なお前でもできるような仕事だ」
    「・・」
    「それからいずれH氏邸に挨拶に連れて行く。そのつもりでいるように」

    親父はそれだけ言うと立ち上がり、秘書を連れて出て行った。

    2.
    俺は渋澤辰彦(しぶさわたつひこ)。4人兄弟の末っ子で高校2年だ。
    親父は会社をたくさん経営していて、家には滅多に戻らない。
    俺はそんな親父と折り合いが悪かった。
    兄弟の中で俺だけが勉強が苦手で、親父からは阿呆か馬鹿かと言われて大きくなったから、そんな親父を好きになれるはずがなかった。

    俺は中学を卒業すると家を出て、今のアパートに一人で住んで高校へ通うようになった。
    親父は学費と最低限の生活費は出してくれた。
    足りない金は適当にアルバイトをしたり、遊び仲間と出し合ったりしてしのいでいる。

    家を出て2年。
    仲間内で遊んでいるうちはよかったが、派手に暴れるようになると、親父から注意が入るようになった。
    どうやら俺の行動を監視させているらしい。

    それがうっとおしいから、俺はアパートにも滅多に帰らなくなり、学校に行くことも減っていた。
    親父が最後に言ったH氏ってのは、親父が懇意にしている金持ちの爺だ。
    叩き上げで会社を大きくした親父が、まだ個人商店を営んでいた時代にずいぶん世話になったらしい。

    H氏邸には小学校に入る前に一度だけ連れていかれたことがある。
    やたら大きな城みたいな屋敷で、メイド服のお姉さんに遊んでもらったことは覚えているが、今はどうでもいいことだ。
    親父に金持ちの友達がいようといまいと、俺には関係はない。
    おとなしく挨拶になどついていくつもりはなかった。

    3.
    久しぶりに学校へ行くと眼鏡をかけた女生徒が寄ってきた。
    クラス委員の内村水絵(うちむらみずえ)だ。
    優しくて面倒見もいいんだが、何かと煩い女だった。

    「渋澤くん、補習受けてないでしょう?」
    「あー、そうだっけ」
    「このままじゃ3年になれないって、先生が言ってたよ?」
    「んー」

    3年になれなくても構わないが、学費を止められたら困るなぁ。
    親父の顔をぼんやり思い浮かべた。
    やっぱり要るのは、金、だな。

    「ねぇ、聞いてる?」
    「あー、何だっけ?」
    内村はあきれた顔をして向こうに行きかける。

    「あ、そうだ。内村サン」
    「何?」
    「金、貸してくれないかなぁ」
    「お金?」
    「千円、いや500円でもいいんだけどさ。ちょっとピンチで」
    「知らないっ」
    内村は怒って行ってしまった。

    4.
    学校を午前でフケた後、ゲームセンターに行った。
    駅近くのゲーセンがいつもの仲間の溜り場になっているのだ。
    そこで遊んでいると「アイツだ」と声が聞こえた。
    品の悪そうな連中が俺を指差している。
    その一人は先日俺が前歯をぶち抜いた男だった。

    「おー、生きてたのか」
    俺が言うと、その男は顔を真っ赤にして叫んだ。
    「今日はダチがいるから違うぞっ」
    「何人いても同じだよ」
    「っるさい!! てめぇら、まとめてやってやる!」
    そいつはますます赤くなって、まるで茹でタコのようだ。
    「お前、よくそんなに赤くなれるなぁ」
    「殺す!!」
    「ならイロンの駐車場に行こうか」

    そのショッピングセンターは土日だけ解放される駐車場があって、普通の日は無人。
    その上、奥まった場所なので通りからも見えにくいという、喧嘩するには好都合の場所なのだ。
    俺たちはぞろぞろ歩いて、その駐車場にやってきた。

    「よぉーし、ここなら何をやっても・・」
    俺は話しながら振り向いて、すぐ後ろにいた男をぶん殴った。
    油断していたんだろう。そいつは1メートル近くふっ飛んで転がった。

    「こいつ!」
    別の一人が俺の腹にパンチを打ち込んできた。
    俺はそれを右足で掃い、半回転した左足でそいつを蹴り倒す。

    乱闘が始まった。
    言っちゃなんだが、俺たちは強い。
    素手で戦って俺たちに勝てるグループはこの街にはいないだろう。

    気がつけば、そこには俺たちのグループだけが立っていた。
    相手は倒れて転がっている何人かを残して、全員逃げていってしまった。
    「へへっ」
    俺は鼻の下を拳骨で拭いながら笑った。仲間たちも笑った。

    「きゃぁぁっ!!」
    女の悲鳴が聞こえた。
    駐車場の入口で、ウチの高校の制服を着た女が両手を口に当てて叫んでいた。
    「行くぞ!」
    警察を呼ばれるとマズい。
    俺たちは反対側へ走って逃げ出した。

    走りながら思った。
    あの女、クラスの内村に似てたような気がする。
    まだ授業時間のはずだから、アイツが来るはずはないんだけど。

    5.
    「これ」
    教室で内村が大学ノートを俺に渡した。

    「俺へのラブレター? だったら読めないよ、こんな分厚いの」
    「英語のノートよ。先生に頼まれたの。渋澤くんに勉強させなさいって」
    「は?」
    「期末試験の範囲、特訓するからね」
    「お前が? 俺に?」
    「そうよっ。放課後残って」
    「えええ~!?」
    「諦めなさい! これも私の仕事なんだから!」

    内村は本気で俺に英語を教えるつもりのようだった。
    迷惑だった。
    その日、俺は隙を見て何度も教室から逃げ出そうとしたが、内村はその度に前に立ちふさがって俺を逃がしてくれなかった。

    6.
    意外なことに内村が教えてくれる勉強は分かり易かった。
    内村のノートは字が綺麗で読み易く、説明も聞いていてよく理解できた。
    さすがに学年トップの成績だけのことはあると思った。
    俺は最後の練習問題を全部正解した。

    「やればできるじゃない、渋澤くん」内村が笑った。
    「・・ふん」俺は頬を掻きながら目を逸らす。
    「イテ!」
    前の喧嘩の傷跡を掻いてしまった。
    血が流れた。

    「あ~あ、褒めればこうなんだから」
    内村はすぐにカバンからバンドエイドを出して貼ってくれた。

    「・・ねえ、この間、駐車場で喧嘩してたの、渋澤くんでしょ」
    「やっぱりお前か、あれ」
    「うん。用事で早退して通りかかったの」
    「学校には言うなよ」
    「言わないわよ。・・でも、喧嘩はダメよ」
    「お前には関係ないだろ」
    「でも、いけないよ。喧嘩は」

    内村はそう言いながら、俺の頬に貼ったバンドエイドの両端を指で押さえた。
    俺は内村のするようにさせた。
    ちょっと不思議な気分だった。

    「・・明日は、数学をやるわ」
    校門の前で別れ際、内村は俺に言った。
    「まだやるのか!?」
    「渋澤君を落第させたら、私が叱られるの」
    「何だよそれ。ひでぇ先生だな」

    それから2週間の間、居残り勉強は毎日続いた。

    7.
    期末試験が済んだ。
    どうやら俺は3年に進級できることになったらしい。

    んん~っ。
    俺は教室の自分の席で深呼吸する。
    こんなに毎日学校へ来たのは久しぶりだった。
    春休みになったら、遊びほうけてやる。

    窓際に目をやると、内村が女子グループの中で雑談していた。
    一応、礼は言っておくか。
    俺は立ち上がって内村に近づいた。

    「あ、内村、」
    「なあに?」
    「・・その、勉強、教えてくれて、助かった」
    「あ、いいのよ」

    「渋澤くん、顔赤い」
    女子の一人が俺の顔を指して言った。女子どもが一斉に笑った。
    「笑うな!」一括して黙らせる。

    「・・ま、ともかく礼は言う」
    「どういたしまして」
    内村は微笑んで応えてくれた。
    笑うとちょっと可愛いと思った。

    「ねぇねぇ、ならさ」別の女子が言った。
    「せっかくなんだから、渋澤くん、デートしてあげなよ。内村さんと」
    「で、でーとだと!?」
    きゃあ。
    女子どもが喜んでまた笑った。
    「いい、いい!」
    「水絵ちゃんも、彼氏いないんでしょ?」
    「渋澤くん、怖いけどカッコいいじゃないっ」

    お、お前らなぁ。
    内村も困ってるだろっ。

    「あ、じゃぁ・・」内村が小さな声で言った。
    「一回だけ、お願いしよう、かな」

    きゃあああ~!!
    騒ぎ立てる女子どものせいで、その場は収集がつかなくなった。
    俺には拒否する権利は一切なく、内村とデートすることになってしまった。

    8.
    春休みの初日。
    待ち合わせの駅前に現れた内村を見て驚いた。

    ひらひらした水色のスカートと白いブラウス。
    肩の下まで伸ばした髪。
    いつもの眼鏡は同じだったけれど、化粧が違うのかその下の目鼻だちはくっきりと整って見えた。
    こいつ、美人じゃねぇか。

    「お前、そんなに髪の毛、長かったか?」
    「学校じゃ括ってるから」

    俺は自分の着ている服を見る。
    いつもと同じTシャツに皮ジャン、薄汚れたジーパン。
    つり合ってねぇな~。

    「今日はどこへ行くの?」
    「そうだなぁ」

    内村に聞かれて俺は困った。
    デートの行き先なんて全然考えていなかった。
    適当にお茶でも飲んで、すぐに別れるつもりでいたのだ。

    でも内村を見てその気はなくなった。
    今日は内村と過ごしたい、一緒に楽しく遊びたい、と思ったのだ。

    「ゲーセンにでも行くか?」
    俺が言うと内村は一瞬驚いた顔をして、それからすぐに「うん!」と笑って返事をしてくれた。

    9.
    ゲームセンターで遊ぶのは初めてという内村に、俺はまず『バトルシューター』でプレイして見せた。
    オートリプレイを2度繰り返して合計スコアは68万点。まあまあだな。
    「やってみる?」「できるかしら」
    「初心者なんだから、スコアは気にしないで楽しんだらいいんだよ」「そうね」

    内村がプレイを始めた。
    たちまち3基あるシューターの2基が撃ち落とされてた。
    「真ん中の赤い点を目標に合わせてるか?」「赤い点? 青い三角じゃあないの?」
    「それはチャージするときのポイントだよ」「そっか」

    内村が操作するシューターの動きが変わった。
    敵の攻撃をすべてかわしながら、敵機にビームを命中させてゆく。
    フィールドじゅうに敵機が溢れても、内村は撃ち落とされなかった。

    「やられちゃった!」

    ゲームオーバーになったとき、スコアは97万点。
    本日のハイスコアだった。
    「すげーじゃないか!」「本当っ。自分でもびっくりです」
    「次、こっちをやろう」「うん!」

    次は『アーバン・レーシング』。
    2台並んだコックピットにそれぞれ座ってハンドルを握った。
    「アクセルとかブレーキとか分かるよな?」「分かります」
    「そっちのスピードに合わせて走ってやっから」「ありがとうございます!」

    スタートした。
    右側に内村の赤い車が併走している。と、急加速して前方に走っていった。
    俺も慌てて加速して後を追う。
    「おーいっ、飛ばしすぎ!」「大丈夫ですっ」

    内村の車はぜんぜん減速しないで、ぎりぎりのラインを走りながらカーブを抜けて行く。
    もうすぐヘアピンだぞ。・・あーっ、曲がれない!

    次の瞬間。赤い車は車体をカーブの内側に向けて、そのまま滑るように流れていった。
    ドリフトー!?
    見とれていると、俺の手の中でハンドルが激しく振動した。
    俺はヘアピンカーブでコースアウトして止まり、画面の遠くに走り去る内村の車をぽかんと見つめたのだった。

    10.
    内村はどのゲームも何なくこなして、俺を驚かせた。
    「本当に初めてか? すげー才能だよ」
    「うふふ。私もそう思います」内村は嬉しそうに笑って応えた。

    「何か食うか。腹ペコだな」
    「あ、それなら。お弁当作ってきました」
    「え、弁当」「ここは食べにくいですね。外に行きましょう!」

    俺たちは公園のベンチに並んで座って、内村が作ってきた弁当を開いた。
    手渡してくれたおにぎりを口に運ぶ。
    「うまいよ」
    「ありがとうございます! 心を込めてお作りしましたから。次はから揚げ、どうですか?」
    「お前、何かさっきからバカ丁寧な喋り方してねーか?」

    内村はしまったという顔をした。
    「申し訳・・じゃなくて、ごめんなさい! 渋澤くんと一緒にいるのが嬉しかった、から、つい」
    「それって、俺のこと、好きってこと?」

    内村はますます慌てる。
    「あ、あのその、わたくし、決してそのような訳では」
    しどろもどろになった内村を見るのも珍しい、と思った。

    俺を見る内村の目が突然大きく見開かれた。
    「後ろ!」
    「?」

    後頭部に衝撃を受けた。
    突然のことで何も分からなかった。
    俺はそのまま意識を失った。

    11.
    気がつくと薄暗い場所にいた。
    床はむき出しのコンクリート。木箱がたくさん詰まれている。
    どこかの倉庫の中のようだった。

    頭が疼くように痛かった。そういえばさっき後ろから殴られて。
    起きようとしたら、起きれなかった。
    俺はうつ伏せに転がっていて、誰かに背中を踏まれていた。

    「よぉ、お目覚めか」
    「お前っ」
    先の喧嘩で2回倒した男だった。
    他にも5~6人はいるようだ。

    「卑怯だぞっ」
    「何が卑怯だ。不意打ちはてめえの得意技だろうが」
    「俺と再戦するつもりか」
    「再戦だと? そんなフェアなことはしねえ。お前を一方的に痛めつける」
    「何ぃ?」
    「見ろ」

    正面にライトが点いた。
    そこには鉄の柱があって、半裸の女が立ったままロープでがんじがらめに縛り付けられていた。
    「内村っ!!」

    内村は両方の目を大きく開いてこっちを見ていた。
    泣きはらしたような目だった。
    眼鏡は飛んでしまったのか、かけていない。
    口にはガムテープの猿轡。
    ブラウスもスカートもぼろぼろに破れていた。
    フロントホックのブラジャーがはだけて、乳が片方見えていた。

    レンタルDVDで見たWシネマみたいだなと思った。
    女を無茶苦茶にいたぶるシーン。
    いけねえ。そんなことを考えてる場合じゃねえぞ。

    「てめーら、その子に手を出したら、ただじゃすまさねえぞ!!」
    「残念だな、もう手は出させてもらったぜ」
    「な」

    内村の脇にいた男が、スカートを捲り上げた。
    内村はスカートの下に何も穿いていなかった。
    黒い茂みとその下に伸びる白い太ももがはっきり見えた。
    太ももの内側には赤い血が流れてついていた。

    「皆で堪能させてもらったよ」
    男はそう言って笑った。
    「処女を無理矢理いただくってのはイイもんだねぇ。お前の彼女だと思うといっそう味わい深かったぜ」

    ぐおぉ~っ!!!
    俺は叫びながら起き上がろうとしたが、四人がかりで押さえつけられてどうにもできなかった。

    「落ち着けよ。俺たちはもうこの女に用はない。用があるのは、お前だ」
    男は俺の顎を指で持ち上げた。
    「おとなしく殴られるなら、女は解放してやるぜ」
    「・・」
    「抵抗するなら、女はこの先も俺たちのモンだ」
    「・・」
    「へっへっへ。どうする?」

    俺は抵抗するのを止めた。
    ゆっくり身を起こしてその場に胡坐をかいた。
    「好きにしろ。その代わり、この子にこれ以上何かしたら、コロス」

    俺は四方から一斉にキックをくらった。
    そのままサンドバッグのように殴られまくった。
    床に倒れかけると、すぐに引き起こされて反対方向に殴られる。
    その方向に倒れると、別の方向に殴られる。

    内村が猿轡の下で何か叫んでいるような気がしたが、何も聞こえなかった。
    口の中でコロコロする石コロみたいなモンは俺の歯か。
    内村の姿も、男たちの姿もはっきり見えなくなった。

    どすん。
    胸を蹴られて俺は床に倒れた。
    意識はあるが、どうにも動けなかった。

    続き




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    クラスメート(2/2)

    12.
    「へっへっへ」
    男は俺を引きずって、内村の足元に転がした。

    「見てな、大切な彼女がとことんヤラれる様をな」
    そう言って楽しそうに内村の片足を持ち上げた。
    「こういうの御開帳~っていうんだぜ」
    アホか。俺だって知ってるわ、それくらい。

    持ち上げた片足を膝で折らせ、脛とまとめて縛った。
    その膝をロープで高く吊り上げて、自分では絶対に足を閉じられないようにした。
    内村の股間が晒される。
    普段だったら俺だっておおっ~と思うかもしれないが、今は血まみれになった内村のあそこが可哀想で見ていられなかった。

    男はしばらく内村のそこをまさぐっていたが、やがて指を入れた。
    五本全部差し込んで、さらに手首を捻りながら押し込む。

    「んん~っ!」
    内村は必死にもがくが、手も足も固定されていてどうにもならない。
    やめろっ、約束が違う。
    手首なんて、入る訳ねぇ!

    「オラ、オラ、オラ」
    しかし男は強引に内村の中に手首を入れてしまった。

    「うきゃきゃっ」
    猿のような嬌声を上げると、男は腕を上下に動かした。
    内村が激しく首を振って苦しんでいる。

    内村の中で男の手首がピストン運動しているのだ。
    股間から透明な液体が噴出し、男の肘を伝って流れ落ちた。
    やがてその液体は薄いピンク色に変わる。

    内村が、壊れる・・!!
    激しい自責の念にとらわれた。
    俺のせいだ。
    俺がこんな奴らと喧嘩したせいで、内村は・・。

    そのとき気がついた。
    内村は、俺に何かを合図していた。
    激しくもがきながら、俺の顔を何度も見、それから背中で縛られた自分の手首に視線を向ける。

    別の男が爪を立てて内村の乳房を揉んだ。
    「~っ!!!」
    内村は声にならない悲鳴を上げる。
    男の爪はたちまち肌に食い込み、血がにじんだ。

    内村はそれでも、視線の合図を止めない。
    縛られた手首からロープが俺の前に垂れていた。
    蝶々結びになったロープの端だった。
    ようやく俺は理解した。

    右手を伸ばしてロープを掴もうとした。しかし右手は思うように動かなかった。
    くそぉっ!
    身をくねらせて内村が縛られた柱ににじり寄った。
    目の前に垂れたロープを口に咥えた。

    「てめえ、何やってる!」
    気付いた男が叫んだ。
    しかし、俺は止められるよりも早く、ロープを咥えたまま回転してロープを引き下げた。
    内村の手首を縛っていたロープが解けて落ちた。

    13.
    内村は自由になった両手で、胸を揉む男の手と、股間に押し込まれた男の手をはらいのけた。
    それから右足、左足と腰のロープを自分で緩めて完全に自由になった。

    唖然としている男たちの前に歩み出ると、言った。
    「許しません! 辰彦さまになんてひどいことを」
    内村の目が怒りに燃えていた。

    驚くべき速さで放たれた正拳突きが正面の男の顔面を打った。
    息つく間もなく、後ろ回し蹴りが隣の男の顎に正確にヒットした。
    あんまり早くて、ぴんと伸びた内村の足しか見えなかった。
    さらに内村はその横で腰が引けた男の足を払って床に転がし、その腹に全体重をかけて肘を打ち込んだ。

    俺は鬼と化した内村の姿を呆然と見ていた。
    内村は逃げ回る男たちを追いかけて一人ずつ仕留めていた。
    全部で6人を倒すのに、2分とかからなかった。

    「辰彦さま!!」
    内村が俺のところに駆けてきた。
    ほとんど全裸だった。胸や股間も隠そうとしない。

    「内村、・・お前、何か武術やってるのか」
    「空手と合気道の黒帯を持っております」
    「そうか。強いはずだ。俺でも敵わねぇじゃないか。・・げ、・・げほっ」
    「無理に喋らないで下さいませ。肋骨にひびが入っているかもしれません」

    内村はその場に座って膝の上に俺の頭を抱いた。
    柔らかいお腹と下乳に頬が挟まれて、ちょっと気持ちよかった。

    「あぁ、わたくしが不甲斐ないために、このような怪我を。・・本当に申し訳ございません!」
    「謝るのは俺の方だ。俺のせいで、お前はひどい目に」
    「わたくしめのことなど、お気になさらないで下さいませ」
    「んな訳いくか。お前、あんな奴らに犯されたんだぞ」

    内村はようやく気がついたように言った。
    「・・そうでございました」
    「はぁ? バージンは大切だろ、女にとって」
    「その、」内村は少し言いにくそうに話した。
    「わたくしは処女ではございません」
    「え」
    「わたくしの下(しも)の出血は、辰彦さまの高校に編入される前に施された再生手術の結果によるものです」
    「再生って、処女膜か」
    「・・はい」

    俺は内村の顔を見上げた。
    1年の終わりに転入してきた上村。
    抜群の成績と人当たりのよさで、たちまち教師連中と同級生の信頼を得て、クラス委員になった上村。
    乱暴者の俺にも声をかけて普通に接してくれた上村。
    何週間も学校に行かなかったときは心配してアパートまで来てくれた上村。
    好奇心で一度だけ吸った煙草が学校にばれたときは必死に弁明してくれた上村。
    そして進級が危なくなると、無理にでも俺に勉強を教えてくれた上村。

    俺は上村のことを、ただ、誰にでも優しくて面倒見のいいクラス委員だと思っていた。
    でもよく考えたら、上村は俺のことをとても気遣ってくれていたのだった。

    俺は聞いた。
    「お前、何者だ?」

    14.
    俺と内村は、走り続けるセダンの後部座席にいた。
    親父の車よりずっと高価なドイツ製の超高級車である。
    こんな車を内村はスマホで一言二言話しただけで呼びつけたのだった。

    内村は車に備え付けられていた服を着ていた。
    フリルのついたエプロン。黒いミニスカートとニーソックス。

    「それが本当の姿なのか」
    「はい。私はお屋敷でお仕えするメイドにございます」
    「お屋敷ってのは、もしかしてH氏邸か」
    「はい」
    「やっぱりな。何となく覚えがあるぜ、そのメイド服」
    「わたくしがこうしておりますのは、辰彦さまのお父様のご依頼によります」
    「親父の・・?」

    親父は、家を出てグレ始めた俺のために、膨大な謝礼を払ってH氏に世話役を依頼したのだった。
    そこで俺と同じ歳のメイドが選ばれ、同じクラスに編入されてきた。
    俺のアパートの近くに一人で住み、学校でも日常でも俺を見続けた。
    その役目は、俺に無茶をさせないこと、とりかえしのつかない事態を未然に防ぐこと。俺を無事に卒業させること。
    今日のように俺に危機が生じたときは、自らは犠牲となっても俺を守ること。

    ストーカーみたいだと思った。でも腹は立たなかった。
    上村は、俺のために、あらゆる気配りをしてくれていたのだ。
    こんなに綺麗で賢い女の子が、俺みたいな者のために。

    「いつも俺を見てたのか。俺が喧嘩するときに警察呼んだりもしたのか?」
    「はい。出すぎた真似をするとお喜びにならないとは存じておりましたが、辰彦さまに前科がつくようなことがあれば、お父様に申し訳がたちません」
    「余計なことして、逆に俺に襲われでもしたらどうするんだ」
    「あらゆる事態を受け入れる覚悟にございます。辰彦さまにでしたら、わたくしは何をされても構いません」

    やがて車は、広大な敷地に建つ邸宅の前に停まった。
    「こちらがお屋敷にございます。心から歓迎申しあけます」
    上村が言った。

    15.
    俺は春休みの間じゅう、H氏邸の個室に滞在した。
    上村はずっと俺の世話をしてくれた。

    俺になら何をされてもいいと言ったのは本当だった。
    俺がベッドの中に内村を引きずり込んだとき、内村は拒まなかった。
    メイド服を脱がされ、身体を触られたとき、とても色っぽい声で喘いでくれて俺を興奮させてくれた。
    内村によると、H氏邸のメイドは皆15~6才からセックス技術を仕込まれ、客を喜ばせる訓練をしているという。
    客はあてがわれたメイドを自由に楽しむことができる。
    縄で縛ったり、拷問したりしてもいい。

    俺は内村を拷問したいなど、少しも思わなかった。
    ただ内村とのセックスにおぼれた。
    内村はいろいろなテクニックで俺を楽しませてくれた。
    俺は毎日のように内村を抱いた。日に二度三度抱くことも珍しくなかった。

    親父から手紙が届き、そこには怪我が直ったら真面目に暮らせと書かれていた。
    もちろんそのつもりだった。
    俺は勉強して、高校を卒業する。
    もちろん喧嘩して上村を危険な目に合わせることは絶対にしない。
    何かあれば、俺が内村を守るのだ。

    やがて俺の怪我はすっかり治り、それと同時に春休みも終わった。

    16.
    俺がH氏邸からアパートに戻る日。
    部屋に迎えに来た内村が言った。

    「3年生になったら、お勉強の方も頑張って下さいませ」
    「ああ、また勉強を見てもらえれば大丈夫さ」
    「ダメですよ。人にばかりお頼りになっては」
    「それより、またゲーセンで遊ぼうぜ。お前、すごい才能あるじゃねぇか」
    俺は浮かれていた。
    新学期になったら内村と堂々と付き合うつもりだった。

    「そうだ、俺のアパートに住まねぇか。どうせ一人暮らしなんだろ?」
    しかし内村は俺が何を言ってもそれには応えないで静かに微笑むだけだった。

    「そろそろ参りましょう。・・どうぞこちらへ」
    内村は俺を導いた。玄関とは違う方向だった。
    「どこへ行くんだ?」
    「お帰りいただく前にご覧いただきたいモノがございます」
    「?」

    17.
    その部屋は、俺達が入ると同時に明るくなった。
    !!

    スポットライトの中に、メイド服の少女が縄で縛られて椅子に座っていた。
    栗色の髪の毛をしていて、テレビで見るアイドルなんかよりずっと美少女だった。
    両手を背中で縛られ、きっちり合わせた両足の足首から膝、腰、胴体に何重にも縄が巻きついて、一切の自由が奪われていた。

    少し奥には別のメイドが浮かんでいた。
    後ろ手に縛られた身体を頭から爪先まで逆海老に反り返らせ、まるで輪っかみたいな形にされて天井から吊られている。
    その奥にも何人ものメイドが縛られて、転がされたり、吊られたりしていた。

    俺が黙って見ていると、内村が隣に立って教えてくれた。
    「ここは、ギャラリーでございます。当館のメイドを緊縛して常設で展示しています」
    「・・」
    「庭の方にもギャラリーがございますが、別のお客様がいらっしゃいますので、ただ今はこちらでお楽しみ下さいませ」
    「この子らは、一日中縛られてるのか?」
    「はい。一日、あるいは数時間が限界の緊縛もありますし、数日間継続できるものもあります」

    内村は最初の椅子縛りのメイドを指差した。
    「あちらの緊縛はちょうど三日目でございます」
    「三日!?」
    「栄養補給と排泄の管理は適切に行われているので問題ありません」
    「いくつなんだ? この子」
    「あれは先月16才になったばかりでごさいます」
    ほんの1学年下じゃねぇか。そんな子を三日も縛りっぱなしにするのか。

    「こちらへどうぞ」
    内村は部屋の奥に置かれた白い板の前に俺を導いた。
    それは厚さ30センチほどで、2メートルほどの高ふ石の板だった。
    内村が脇のスイッチを操作すると、石板が白く光った。

    「内部に照明が埋め込まれています。・・よくご覧下さいませ」
    白い板の中に、人間のシルエットが見えた。
    若い女のシルエットだった。
    たくさんのパイプに繋がれて、石板の中に女が浮かんでいるように見えた。

    「まさか本当の人間じゃないよな」
    「本当の人間にございます」

    内村は石板の構造を説明してくれた。
    「これは、石膏にガラス粒を混入させて固めた素材に、メイドを封入した品物にございます」
    「生きてるんだな?」
    「もちろん生命維持のための機能も組み込まれてございます。このメイドはこの状態で既に3ヶ月ほど生きながらえています。まもなく解放されると聞いておりますが」
    「3ヶ月ぅ!?」
    さすがに驚いた。
    こんな中で人間が生きているということより、こんな行為が現実になされていることに驚いた。

    「誰が喜ぶんだ、こんな実験」
    「当館にお越しのお客様にお喜びいただくためです。それにこれは実験の段階ではありません。多くのメイドたちがこのように固められております」
    「俺は、こんなものは趣味じゃない。・・可哀想じゃねえか。人だろ? 人間だろ? メイドだって」
    「・・そうですね。メイドも人間です」
    内村はゆっくり自分に言い聞かすように言った。
    「しかし、人間であると同時に、女なのです」
    「女・・?」
    「まだ辰彦さまにはご理解いただけないかもしれせん。ただ、わたくしどもメイドは、女として被虐の身分であることを感謝しております」

    それってドMだってことじゃねえか。
    俺は少し考えたが、それ以上、内村が言う意味は分からなかった。
    まあいい。
    今は内村と一緒に帰ることだ。帰ってセックスすることだ。

    18.
    「もういいだろう? さあ、帰ろうぜ」

    「まことに残念ですが、辰彦さまとはお別れでございます」
    「え、どうして」
    「わたくしは必要がなくなりましたから」
    「俺と一緒にいて、俺を卒業させてくれるんじゃなかったのか」
    「もう大丈夫です。辰彦さまはご自身で卒業する強い意志をお持ちです」
    「でも俺には内村が必要なんだ」
    「実は、わたくしも辰彦さまと一緒にお過ごししたいと願いましたが、認められませんでした」
    「じゃ、じゃあ、こんな屋敷辞めて、来いよ。俺んとこに来いよっ」

    内村は少しの間黙って微笑んでいた。
    やがて両手を揃えて深々と頭を下げた。

    「申し訳ございません。わたくしには務めがございます」
    「そうか」
    無理を言うと内村が困るのだと理解した。
    こいつを困らせるのは俺の本意じゃあない。

    「俺が帰った後、内村は何をするんだい?」
    内村は少し困った顔をした。
    「話せないことならいいんだ。無理に聞かなくったって」
    「・・いいえ、お話しします。わたくしはこちらの石板になります」
    それはあのメイドが生きたまま埋め込まれた石膏の板だった。

    「これはわたくしへの懲戒を兼ねた処置です。わたくしは辰彦さまに大怪我を負わせてしまいました」
    「だからそれはお前のせいじゃないって、何度も言ってるだろう!?」
    「いいえ。いかなる事情であっても、メイドが関係した事故はメイドが罰を受けるのです。・・当前のことでございます」
    「・・」
    俺は黙った。止められないと思った。

    「・・内村も生き埋めになるのか、3ヶ月」
    「1年間でございます」
    「!!」
    「実験的なプロジェクトになるそうです。1年もの間生きたメイドを固めるのは初めてですから。わたくしはそれに志願いたしました」
    「本心か? 本当にそうしたいのか?」
    「わたくし、ドMなのですよ」

    内村はそう言って笑った。
    俺はその目が潤んでいるのに気付いた。・・こいつ、無理しやがって。

    俺の胸の中で何かが弾けた。
    この屋敷に来てずっと考えていたことを今伝えるべきだと思った。

    「内村。1年経って、俺がちゃんと進路を決めて卒業して、お前が生き埋めから解放されたら、また会いにきていいか?」
    「それは、主人の許しがないと・・」
    「お前の主人の許しがなくても、俺はお前に会う。それで、その後、」
    ごくりと唾を飲み込んで、深呼吸した。
    「俺と結婚してくれないか」

    内村の目から大粒の涙が流れた。
    ぽろぽろ流れた。
    「あ、・・よろしいのですか? ・・わたくしのような者と」
    「お前だからいいんだ。返事は1年後に聞かせてくれたらいいよ」

    内村はぷるぷる首を振った。
    「あぁ、1年後なんてイヤ。・・今、・・今、お返事したいっ」
    「いいのか? ゆっくり考えなくて」
    内村はまた首を振った。
    「言ってしまって、後悔するかもしれないぞ?」
    またまた首を振った。
    「じゃあ、返事を聞かせてくれるか。そんな堅苦しい喋り方じゃなくて、クラスで話してたみたいな言い方で」

    「はいっ、・・じゃあ、」内村は少し間を置いて応えてくれた。
    「渋澤くんっ、とっても嬉しい! ・・でも、イジワル!」
    「え、どうして?」
    「私、私、1年間、渋澤くんのことばかり考えちゃう」
    「おおっ」
    「いっぱい、いっぱい、渋澤くんの姿を思い浮かべて、きゅんきゅんするんだから。きっとものすごく苦しいんだからっ」
    「内村・・」
    「本当に、本当に、・・イジワル。渋澤くん、大好き!!」

    内村は自分から俺に抱きついてきた。
    俺たちはその場でキスをした。

    19.
    H氏邸から戻って3ヶ月が過ぎた。
    俺は前と変わらずアパートに住んで、毎日きちんと高校へ通っている。

    学校では、上村は家族の仕事の都合で急に転校したことになっていた。
    誰も上村の引越し先をしらなかった。
    上村がどこで何をしているのか、知っているのは俺だけだ。それを口外するなんて絶対にないが。

    勉強は真面目にしているつもりだ。もちろん喧嘩は一度もしていない。
    親父とは直接会って和解した。
    俺が大学に行きたいと言うと「嫁さんの面倒をお前が自分でするなら、認めてやるわい」と言われた。
    親父め、どこでその話を聞いたのか。

    夏休みになったら、親父は俺を連れてH氏邸に挨拶に行くつもりらしい。
    そのとき、上村を埋めた石膏板も見せてやると言われた。
    もし見せてもらえたなら、俺は頑張れよと声をかけようと思う。
    中にいる上村に俺の声が聞こえるかどうかは分からないがね。

    上村はきっと頑張っている。
    身動きひとつできない、1秒1秒が何時間にも感じられる空間の中で、たった一人頑張っている。
    俺も、上村ほどではないにせよ、そこそこ頑張っているつもりだ。

    結婚したら、俺は上村を縄で縛る練習をしようと思っている。
    それが上村を立派なメイドに育ててくれたH氏邸への感謝になるような気がするからだ。
    そしていつか、俺自身の手で、あのギャラリーで緊縛されていたメイドたちのように、上村を美しい『作品』にしてやりたいと思う。



    ~登場人物紹介~
    渋澤辰彦: 17才。高校2年生。家を出て喧嘩三昧の生活をしている。
    上原水絵: 17才。高校2年生。辰彦のクラスメート。
    親父(渋澤正造): 辰彦の父親。

    H氏邸シリーズの第14作です。

    H氏邸のメイドは、美少女揃いというだけでなく、皆とても優秀で、お客によく尽くすことで有名です。
    ですからH氏の元には世界中からメイド借用の依頼があります。
    その中から、H氏の事業に貢献するもの、将来有望なもの、あるいはただH氏が面白がった依頼が取りあげられ、メイドの派遣が決まります。
    多くは『被虐派遣』のような、被虐陵辱を受けるお仕事ですが、そうでないものもあります。
    今回は、高校生2年生の少年を無事に卒業させるという、一風変わった依頼のため、17才のメイドが頑張ります。

    それにしても、17~8才という女の子が人生で最も輝く期間を、たった一人のお客のためすべて捧げさせる贅沢。
    辰彦くんの親父さんが払った謝礼はどれくらいなんでしょうねww。

    最後に登場した石膏固めは、『異国のクリスマスパーティ』のものと同じです。
    栄養補給や排泄、各種センサーなどの機能も同様とお考え下さい。
    固め期間1年は今までにない長期間です。
    筋肉の痩せを防止するたのEMS筋運動装置は必須でしょうね。
    そういえば生理のときはどうするんだろう?
    薬品を使うのは好きではありませんので、超協力な吸引機でも装着しているとしましょうか^^。

    さて、FC2ブログにおける作品発表はこれで最後になります。
    残念ながら、挿絵を描く余裕はありませんでした。

    新ブログは引き続き準備中です。
    今までのSS/小説群は財産ですからすべて移行するつもりです。
    いざコンテンツを表示させてみると、手直ししたいところが続出してなかなか進みません。

    移転が完了したら改めてご案内します。
    今しばらくお待ち下さい。
    ありがとうございました。




    若きH氏の反省(1/2)

    [Part.1]
    1.
    ここはH氏邸。午前8時。
    とある物置部屋の前に、一人のメイドさんがお掃除道具を抱えてやってきました。
    彼女は今年お勤めを始めたばかりの新人さんでした。歳はまだ15才。
    栗色の髪をショートボブにまとめ、大きな瞳も栗色。
    身長は少し低めですが、街ですれ違えば誰もが振り返って見てしまうような美少女でした。
    もっともH氏邸のメイドさんは誰もが美女・美少女なんですけどね。

    今日のお仕事はこの物置部屋のお掃除でした。
    この時期、まだお客様の接待をしない新人メイドのお仕事はもっぱらお掃除やお洗濯なのです。

    メイドさんは、ミニスカートとフリルのエプロンの可愛い制服のポケットから鍵束を出しました。
    それで扉を開け、そっと中を覗き込みます。
    この物置に入るのは初めてでした。
    お屋敷全体で何百あるか分からない物置を順にお掃除するのですから、同じ場所に二度来る方が珍しいのです。
    入口から見渡すと、中には大きな箱や包みがところ狭しと置かれていて、奥まで見通すこともできませんでした。

    ・・夕方までに終われるかしら。
    少し心配になります。
    彼女が命じられたお掃除の刻限は午後6時でした。
    少しでもぞんざいにすると先輩のメイドさんによる点検で必ず見抜かれて、厳しい罰を受けなければなりません。
    どれほど大変でも手を抜かずに頑張るしかないのです。

    ・・よーしっ。
    心を奮い立たせました。
    シューズとニーソックスを脱いで裸足になります。
    メイド服の上から割烹着(かっぽうぎ)を着ました。
    ヘッドドレスを外して掃除頭巾をかぶり、大きなマスクもつけました。
    誰もいない物置の中に向かってぺこりと頭を下げます。

    「失礼します。お掃除させていただきます!」
    柄の長いハタキと小箒(こぼうき)を持ってお部屋に入りました。
    フローリングの床にうっすら積もった埃が足の裏につくのが分かります。
    このお部屋、もう何年もお掃除されていないみたい。

    小柄な身体を精一杯伸ばし、爪先で立って天井にハタキを当てました。
    お掃除は高所から行うのが基本です。
    頭から埃まみれになりながら、天井・棚と荷物についた埃を落としました。
    床に落ちた塵埃を塵取りで集めます。
    掃除機などは使いません。
    すべて人の手だけで綺麗にするのがお屋敷のルールでした。

    汚れた手足を冷水で綺麗に洗い、割烹着と頭巾マスクも新しいものに交換します。
    それからあらゆる箇所を雑巾で拭いてまわるのです。

    床に膝をつき、顔面をこすりつけるようにして、丁寧に拭きました。
    どんな汚れも見落としてはなりません。
    ときどき自分の膝や足の裏を見て少しでも黒ずんでいれば、洗ってまた拭きます。
    こうしてある程度の範囲を拭き上げたら、袖をまくり上げて、腕の内側で床を撫でてチェックします。
    少しでもちくちくしたり、汚れがついたりしたら、その箇所はやり直しです。
    これがもし客間の床のお掃除でしたら、さらに気持ちを込めるために、頬で床を撫でてチェックしなさいと言われています。
    H氏邸の床はメイドの肌で磨かれるなんて言われますが、あながち間違いではありません。

    メイドさんは丹念に心を込めてお掃除をしました。
    地味なお仕事ですが、お掃除は大切なご奉仕です。
    お掃除をすることで肉体と精神が鍛えられます。
    一人前のメイドに近づくのです。
    先輩のメイドさんたちのように、何でもできる素敵なメイドさんに近づくのです。

    お屋敷に入って4ヶ月。新人メイドさんにその日が近づいていました。
    それは、初めてお客様の接待をする日です。
    彼女はバージンでした。
    その日、彼女はお客様に使われて、15年間守ってきたバージンを失くすのです。
    メイドになったときから覚悟していることでした。

    でも、やはり不安でした。
    お客様にお喜びになってもらえるだろうか。ご満足いただけるだろうか。
    そのときのことを考えると、夜も眠れなくなるほどでした。
    ドキ、ドキ。
    胸が高鳴って、不思議な気持ちになります。

    不安はそれだけではありませんでした。
    この新人メイドさんの手足の肌には縄目がついていました。
    昨夜の訓練の痕跡でした。
    H氏邸のメイドとして、緊縛はとても大切なおもてなしです。
    ただし、縄で縛られるだけで終わってはいけないのです。
    緊縛された上で、さらにお喜びいただくことが必要なのです。

    昨夜の訓練を思い浮かべました。

    2.
    メイドさんの訓練室。
    新人メイドさんたちが輪になって座り、その真ん中に指導役の先輩メイドさんが二人立っていました。

    二人のうちの一人が縄束を手に持つと、もう一人が腕を背中に回しました。
    緊縛の実演でした。
    縛られ役のメイドさんは、メイド服の上から縄でぎちぎちに縛られてゆきます。
    手のひらを背中で合わせて拝むようなポーズで縛られ、さらに豊かな胸が縄で絞られていっそう盛り上がりました。
    そのまま後ろから胸を揉んでいただくのにはぴったりの緊縛です。

    メイドさん同士の緊縛はお客様がお喜びになるアトラクションでした。
    H氏邸のメイドさんは、縛られる方はもちろん、縛る方も一流であることが必要なのです。
    大抵の場合、縛った方のメイドさんもすぐにお客様から縛られることになるのですけどね。

    「では始めます」
    縛り終えたメイドさんが新人メイドさんたちに向って言いました。
    縛られたメイドさんは小さく頷くと、縄の状態を確かめるように身を捩りました。
    肌に縄が食い込んで痛々しく見えます。
    と、その肌がうっすらピンクに染まりました。

    メイドさんは両目をぎゅっと閉じて、何かを我慢するような表情になりました。
    よろめくように何歩か歩いて、その場に崩れ落ちました。
    ゆっくり天井を見上げます。いつの間にかその目が涙でいっぱいになっていました。
    「あ、・・ふぅ」
    息に小さな声が混ざります。とても苦しげで、切なそうな声でした。

    床に転がって、もがきました。
    最初はゆっくり、やがて激しく。
    もちろん、その程度で縄は緩みません。
    ぎちぎちに縛られた腕は決して自由にならないのです。
    何度も、何度も、もがきました。
    髪は乱れ、可愛いメイド服がよれよれになってゆきます。
    絶対に逃れられないと分かっているのに、それでも諦めきれずにもがきます。

    仰向けに転がり、両足をまっすぐ伸ばして閉じました。
    「んっ!」
    筋肉に力が入って爪先までぴんと伸びました。
    「ん~~~っ!!」
    歯を食いしばり、身体を弓なりに反らしてふるふると震え、やがてぐったりと動かなくなりました。

    無力感と絶望感が伝わります。
    見守る新人メイドさんたちも同じ気持ちになっていました。
    ほとんどの者が顔を赤くして、何人かは自分の胸を押さえ、はあはあと息をしておりました。

    やがて縛り手のメイドさんは縛られて転がったメイドさんの膝を割って立たせました。
    ちょうどアルファベットのMの字の形です。
    「こちら側からご覧なさい」
    そう言われて新人メイドさんたちは縛られたメイドさんの下半身の側に集まりました。

    !!
    皆が息をのみました。
    開脚させられた股間はしとどに濡れていたのです。
    薄いショーツはまるで匂いまで感じられそうにぐしょぐしょになっていて、その下のアンダーヘアや女性器まで透けていました。
    縛られてからまだ10分と過ぎていないのに、これほど濡れることができるものでしょうか?

    「自分がどのように見えているか常に意識することが必要です」
    先輩メイドさんが言いました。
    「お客様がお喜びになる姿を心がけなさい。多くのお客様は、メイドが苦しむ姿、そして悦ぶ姿を望まれます」
    言いながら濡れたショーツの上に指を置きました。
    「時と場合によっては、このように下着を濡らしてさしあげることも重要です」
    そしてその指を強く押しこみました。
    「ひあっ!」
    緊縛されたメイドさんは小さく叫んで跳ねました。
    「あぁ、んんっ・・。はぁ、はぁ、」
    乱れた息をしながら、それでもとても色っぽい表情で悶えています。
    「念のために言っておきますが、これは見せかけではありません。本当の姿をお見せすること。浮ついた演技はすぐにばれると思いなさい」

    ああ、すごいっ。
    新人メイドさんたちは感動して見ていました。
    この先輩はお屋敷に入って2年目だといいます。
    ほんの1年先輩なだけなのに、こんなに綺麗でセクシーになれるなんて。
    自分たちもあと1年経ったら、こんな風になれるのだろうか?

    「質問があればどうぞ」
    「あの、」一人が手を上げました。
    「メイドが苦しむ姿、悦ぶ姿。お客様はどちらを強く望まれますか?」
    「あなたはどちらがいいと思いますか?」指導役のメイドさんが逆に聞きました。
    「わたしは・・、その、」
    「あなたが感じたことを素直に答えて」
    「わたしは、苦しむ姿がよいと思いました」
    「では、あなたは苦しんで差し上げなさい。歓喜がよいと思った人は、悦びの姿をお見せしなさい。どんなお客様もメイドの素直な反応をお喜びになるのですよ」
    「はい」
    「優れたメイドは、お客様の嗜好に合わせた感情が自然にほとばしるといいます。淑女、淫女、そして奴隷。お客様が女性の場合はときに支配者。・・最後の感情は、わたしもまだ苦手」
    そう言って笑いました。
    新人メイドさんたちも笑い、雰囲気が柔らかくなりました。

    「では、皆さんも縛ってあげましょう。あなたたちには全員適性がありますよ。自信を持って感情を表現するように心がけなさい」
    「はい!」

    3.
    広い物置部屋のお掃除がようやく済みました。
    あたりは薄暗くなっていました。
    命じられた時刻には間にあいそうです。

    栗色の髪の新人メイドさんは、お部屋の一番奥の古い荷物に囲まれた場所でほっと一息つきました。
    手首に刻まれた縄目を無意識に撫でます。
    ・・これがわたしの進むお仕事。わたしの選んだ身分。
    ドキ、ドキ。
    再び胸の鼓動が高まり、あの気持ちがよみがえります。

    実のところ、H氏邸のメイドは被虐の身分なのです。
    お屋敷にお越しになるお客様の多くは男性で、女性に対して嗜虐の趣味をお持ちです。
    メイドさんたちは、陵辱され、あらゆる責めを受け、ときには命すら弄ばれます。
    メイドになる前、彼女は礼儀見習いとしてお屋敷に来て、それを知りました。
    とても驚き、女の身として怒りすら覚えました。

    でも今は違います。
    メイドはすべてを捧げてお尽くしする崇高なお仕事と理解していました。
    メイドに選ばれたことに感謝していました。

    わたしはすべてを捧げる。女として、被虐メイドとして。
    弄ばれる。責められる。
    わたしはそれを受け入れている。望んでいる。
    ドキ、ドキ、ドキ。

    H氏邸に入った新人メイドさんたちは、同世代の女の子たちと比べるととても聡明です。
    たくさん本を読んでいて、人間同士や男女間の感情に感心があります。
    多くは自分の中にある被虐の適性をも理解しています。
    とても大人びた少女たちです。
    わずか15才ですがら経験は不十分ですが、H氏邸という特殊な環境では、普通の女性が一生かけても経験しないことをわずか数年で知ることになります。
    その重さに耐えかねて、心身に異常をきたす者もいると聞いています。

    ドキ、ドキ、ドキ。
    わたしはどうなるんだろう?
    被虐を受け入れた果てに何が待っているのだろう?

    落ち着かない気持ちを払いのけるように両手を思い切り広げました。
    その手を上にぶんと振り上げました。
    がたん。
    手が何かに当たる音がして、大きな箱が倒れ掛かってきました。
    !!
    身をのけ反らせながらも、どうにか身体で受け止めることができました。

    やっちゃったっ!!
    新人メイドさんはその箱を床に寝かせて置きました。
    大事な品物を壊しでもしたら、生半可なお仕置きではすみません。

    箱の蓋を開けました。
    透明な彫刻らしいものが入っていました。等身大の女性像のようです。
    像の中に黒い影が見えました。
    暗くてはっきり見えません。
    メイド服のポケットからいつも持っているペンライトを出して照らしました。

    骨格標本-1

    「きゃ」
    小さく叫びました。
    女性像の中には骸骨が入っていました。
    とてもリアルで、人間の骨にそっくりな、もしかしたら人間の骨そのものが入っていたのです。

    薄気味悪い気持ちを抑えて、両手で女性像を抱えて起こしました。
    意外と軽く感じました。
    ペンライトで隅々まで調べました。どうやらどこも破損していないようでした。
    ・・よかった!
    胸をなでおろしました。

    像を箱に戻そうとして、頭部に白いものがあるのに気付きました。
    ペンライトで照らすと、ぽっかり空いた眼窩を通して頭蓋骨の内側に貼られたラベルが見えました。
    そこには次のように書かれていました。

    『 ヒト 全身骨格標本 (15才 日本人♀)
     謝辞  貴重なヒト素材を提供して下さったH氏、そして
     自らを捧げてくれた美しいメイドの少女に深く感謝します 』

    ああ、やっぱりこれは本物の人骨。
    お屋敷のメイドで15才だなんて、自分と同じだ。

    恐る恐る声をかけました。
    「あ、あなた。旦那様に命じられてこうなったの?」
    もちろん返事はありません。
    新人メイドさんは、じっと透明像の頭蓋骨を見つめました。

    突然、その骸骨が本物の人間に変化しました。
    目の前に、栗色の髪をした自分そっくりなメイドが微笑んでいました。

    「きゃああああ!!!」
    大きな悲鳴が部屋の外まで響き渡り、人々が集まってきました。

    4.
    物置部屋にひっそり置かれていた人体骨格標本。
    骨盤の形状や恥骨・頭蓋骨の状態などから、ラベルに書かれていた通り15才前後の女性の骨格と推定されきました。
    透明像の素材はガラスではなくアクリル樹脂で、右手に何かを持っているような造形でした。
    骨格標本が収められていた箱の中には、本物のモップが入っていました。
    それを持たせると、まさにモップを手に持つメイドさんの形になりました。

    骨格標本-2

    問題は、お屋敷の所蔵品簿にこの骨格標本が記録されていないことでした。
    いったい、いつ、どのようにして製作されたものでしょうか?
    本当にお屋敷のメイドの骨なのでしょうか?

    事情を知っている者はいませんでした。
    ラベルにH氏の名前が書かれていることから主人のH氏はご存知のはずですが、安易にお伺いする訳にはいきません。
    由来の分からない品物があったと報告したら、逆に叱責されることになるでしょう。

    かつてお屋敷に関わった使用人や業者・職人に内密でヒアリングが行われました。
    その結果、20年以上も昔にメイド長を引退し、今は修道院にいる女性が覚えていました。

    謎の人体骨格標本。
    それが作られたのは、先代の主人がお亡くなりになり、H氏が当主となって間もない頃のことでした。

    続き




    若きH氏の反省(2/2)

    [Part.2]
    5.
    夏の日の夜。
    「わっはっはっ!」
    若きH氏が豪快に笑っておられました。

    ここはお屋敷で一番小さな晩餐ホール。
    小さいといっても百人は揃ってお食事ができる広さですが、そこにH氏とお客の男性がいました。
    お二人のために、10人以上のメイドさんがお酒やお料理を次々と運んでくるのでした。

    「どうですか、このワインは。ボルドーの100年物ですぞ」
    「お、美味しいと思いますが、よく分かりません」
    H氏の問いかけに男性はどうにか答えました。
    不慣れな場所に招かれて超高級なお酒を飲まされても、味など分かるはずがありません。
    そもそも、ワインのテイスティングすらどうやればよいか知らないのです。

    「正直でよろしい。実は儂にもさっぱり分からんのです。うわっはっは!」 H氏はそう言ってご自分でお笑いになりました。
    「所詮は金があれば手に入るものです。しかし貴方の作品は違います。これは芸術品ですぞ、崎村さん」
    「そんな、芸術と呼ぶようなものでは」
    「とんでもない。これほど躍動感のある標本を儂は見たことない」

    H氏が指差された方に、崎村さんと呼ばれた男性の作品が並べられていました。

    『眠るイヌ』。
    長毛種の大型犬が身を丸くして眠った姿でした。
    思わず撫でたくなるような造形です。

    『ボールと子ネコ』。
    転がるゴムボールにじゃれついて飛びつこうとする子ネコです。
    前肢を上げて身を伸ばした姿は今にも動き出しそうでした。

    『駿馬』。
    サラブレッドが全力で駆ける姿です。
    実物大のサイズで作られていますから、見上げるような高さがあって、大変な迫力でした。

    これらはどれも透明なアクリル成形で作られていて、内側にその動物の骨格が埋め込まれているのでした。
    崎村さんは、博物館で動物の剥製や標本を作る職人でした。
    これらの作品は、崎村さんが趣味で作ったものでした。

    「ただの標本が、どうしてこれほど真に迫ってくるのですかな?」
    「そ、そうですね・・、彼らが生きている姿を見てから、標本にしているからかもしれません」

    崎村さんは、標本にする動物を死骸ではなく、生きて元気な状態で入手していました。
    その動物と触れ合って理解してから、作品のイメージを決めるのです。
    先ほどのイヌは、ペットとして購入してしばらく飼ってから標本にしました。
    サラブレッドは何ヶ月も牧場に通って仲良くなった馬を標本にしたものでした。

    アクリル透明像の制作も手間がかかっていました。
    動物から取り出した骨格をアクリ樹脂に封入して専用の型で固めて作るのですが、特殊な形状の型は高価で個人では作れません。
    このため単純な四角い形で固化させた後、外形を手作業で削って作りました。
    それから表面を研磨しバフ仕上げで透明にするのです。
    とても時間がかかる作業です。
    とりわけサイズの大きいサラブレッドの透明像は完成まで1年以上要していました。

    「大変な熱意と情熱で作られたのですな」
    「い、いえ。それほどでは」
    崎村さんは先ほどから落ち着きません。
    額の汗をハンカチで何度も拭いては、できるだけ遠くを見ないようにしているのでした。

    「あれが気になりますかな?」
    H氏はホールの反対側を指差して聞かれました。
    そこには崎村さんのとは別の 『作品』 が飾られていました。

    「はい。いささか」 「ふははは!」

    それは緊縛された少女たちでした。
    もちろんマネキンなどではなく、すべて生きた人間を使った緊縛です。
    いったい何人縛られているのでしょうか。
    テーブルの上に置かれたり、壁に掛けられたり、天井から吊られたりしている少女たち。
    厳重に身動きを封じた上でさらに装飾や灯具をあしらって豪奢なインテリアに仕立てられた少女もいます。

    どれもお屋敷のメイドさんだとH氏はおっしゃいました。
    「幸い、こういうことに使っても、困らない程度の人数はおりますからな」
    「す、すごいですね」
    「いやいや、素人の趣味です。・・ま、ゆっくり見てやって下さい。客を退屈させん程度には躾ておりますからな」

    確かに、どの少女も厳しく縛られていましたが、品なく泣きわめいたり暴れたりする者はいませんでした。
    かといって、死んだように動かない者もいません。
    表情、呼吸、空を掴む手指の動き、そして動かせない手足に力を入れて精一杯もがく姿。
    少女たちは、苦しさ・恥ずかしさ・むなしさ・みじめさ、そして切なさを全身で表現していました。
    無駄な露出のひとつもない着衣の緊縛ばかりなのに、十分にセクシーな極上の『作品』ばかりでした。

    6.
    H氏はいろいろな人を招いてお話を聞かれるのがお好きでした。
    そのお相手は、著名な政治家や経済人、スポーツ選手や文化人のこともありますが、それよりも一芸に秀でた人や趣味を貫く人とお会いになるのを好まれました。
    どこからかそのような人を見つけてきては、夕食に招待なさるのです。

    たいていお客様はお一人かお二人。
    そうしたお客様はお屋敷に来ると、緊縛して飾られたメイドさんに度肝を抜かれます。
    ときにはお給仕のメイドさんがいきなり縛られてしまうこともあります。

    「どうですかな?ご自分で縛ってみては。そこのメイドから適当に選んでもらって結構ですぞ」
    H氏が楽しそうにお聞きになりました。
    「い、いいえ。とんでもありません」
    崎村さんは慌てて首を振りました。そんなことができるはずはありません。

    かちゃん。
    慌てた拍子にフォークを取り落としてしまいました。
    近くにいたメイドさんがさっと拾ってくれました。
    栗色の髪を後ろでくくり、大きな瞳も栗色の、とても可愛いメイドさんでした。

    「すみません」
    「いいえ。新しいフォークをお持ちいたします」
    そのメイドさんは微笑みながらフォークを持ってきてくれました。
    同僚のメイドさんが何人も緊縛されているのに、とても落ち着いてきびきびと動いているのが分かりました。

    「わっはっはっは!! 無理は申しますまい」
    H氏は笑っておっしゃいました。
    「それより、透明骨格標本の作り方をご教授願えますかな?」
    ああ、それなら。
    崎村さんは安心して喋り始めました。

    「元々、透明骨格標本とは動物の筋肉をトリプシンというタンパク質分解酵素で透明化して作ったものを指します」
    「ほう」
    「筋肉組織の構造がよく分かり学術的にも有効ですが、大型の生物では難しく・・」

    H氏は聞き上手でした。
    崎村さんは、問われるままに、動物の解剖の方法、骨格の取り出し方、アクリル削り出しの手順まで話していました。
    いつか、緊縛少女たちのことはあまり気にならなくなっていました。

    「・・なるほど、大変勉強になりました」
    H氏は満足したように言われました。

    「ところで、人間の骨格標本をお作りになったことはありますかな?」
    「ありません。倫理的な理由もあってヒトの標本は模型ばかりですね。以前は中国製などであったようですが」
    「本物の人体が手に入れば、それで作りたいとお思いですかな?」
    「是非やってみたいですね。・・でも難しいでしょう。献体の数は増えていると聞きますが、すべて医学用ですから」

    「ふむ」
    H氏は少し考えて、居並ぶメイドさんたちに聞こえないように小さな声でおっしゃたのです。
    「いかがですかな? ここにいる娘を使っては」

    7.
    その夜。
    お屋敷の客間に泊まった崎村さんは、寝付くことができませんでした。
    H氏の言葉は衝撃でした。
    メイドさんの身体で骨格標本を作るなんて。
    いくら何でも冗談だろうと思いました。

    あのとき驚いてメイドさんたちを見ていたら、一番端に立つ栗色の髪のメイドさんと目が会いました。
    落としたフォークを拾ってくれたメイドさんでした。
    主人が恐ろしいことを口にされたというのに、あろうことかそのメイドさんは崎村さんに微笑みかけてくれたのでした。
    隣のメイドさんが黙ってそのメイドさんの肘を突きました。
    彼女は、いけない、という顔をして笑うのを止め、元のすました表情に戻りました。

    H氏はその様子をにやにや笑いながら見ておられましたが、それ以上は何もおっしゃらず晩餐会の終了を告げられたのでした。

    ・・コンコン。
    客間の扉がノックされました。
    「もし」
    小さな声。そしてもう一度ノックの音が聞こえます。

    ベッドから出て扉を開けると、そこに一人のメイドさんが立っていました。
    あの栗色の髪のメイドさんでした。

    「伽に参りました」
    「トギ?」
    「はい。・・伽にございます」
    はっとした。それは夜伽のことか?

    「き、君が?」
    そのメイドさんは、ほんの少し頬を赤らめて答えたのでした。

    「当家から心ばかりのおもてなしにごさいます。お客様、どうぞ、わたくしめをお使い下さいませ」
    「し、しかし」
    「失礼いたします」
    そう言うと、メイドさんは唖然としている崎村さんの横を抜けて客間の中に入ってしまったのです。

    8.
    小柄なメイドさんでした。
    メイド服を脱ぐと、胸やお尻はまだ十分成熟していませんでしたが、とても柔らかくて抱き心地のいい身体をしていました。

    崎村さんは、標本好きが高じすぎて、40才近くになった今も独身でした。
    女性との経験もなく、このときが初めてのセックスでした。
    メイドさんは不慣れな崎村さんをよく導いてくれました。

    最初に放出したとき、控え目に声を出して震えながら、ちゃんと一緒に達してくれました。
    二度目のときは、自分から両足を開いて崎村さんを招き入れ、甘い声で鳴きながら絶頂を迎えてくれました。
    そして三度目は、バックから激しく胸を揉まれ、全身をがくがく揺らせながら、大きな声を上げてイッてくれました。

    その後、栗色の髪のメイドさんは崎村さんの胸に抱かれて眠りました。
    うっすら汗をかいていましたが、とてもいい匂いがしました。

    9.
    朝の光と香ばしい匂いに目が覚めました。
    きちんとメイド服を着たメイドさんが、ポットでコーヒーを淹れたところでした。

    「おはようございます、お客様。よくお休みいただけましたか?」
    「おはとう。よく眠れたよ」

    目をこすりながら起きようとして、シーツの汚れに気が付きました。
    昨夜、メイドさんと濃厚なセックスをした場所です。
    そこにははっきりと処女の痕跡が残っていました。

    「!!」
    「いかがなさいましたか?」
    メイドさんが寄ってきてシーツを見ました。
    「いけない! ・・これは見苦しいものを、申し訳ありませんっ。すぐにシーツを代えます」
    慌てて謝ります。

    「まさか、初めてだったのか?」
    「・・はい」
    「君はいくつなんだ?」
    「15、でございます」
    「15才!!」
    驚きました。
    何と若いメイドさんなのでしょうか。

    「15の女の子が、こんなサエないオヤジと初めてだなんて、そんな」
    「いいえ、お客様はとても素敵でございました」
    「見え透いたお世辞はいいよ」
    「お世辞なんかじゃありません!」
    メイドさんが叫ぶように言いました。初めて聞くメイドさんの大声でした。

    「・・」
    「あ、ごめんなさいっ」メイドさんの顔が赤くなりました。

    「その、昨夜はとってもよくしてもらって、初めてなのに、その、」
    「・・その?」
    「すごく感じて、エッチな気持ちになって、な、中に、いっぱい出してもらって、」
    ますます赤くなります。
    「・・ぞくぞくして、後ろからも、挿れてもらって、」
    「もう、いいよ」
    「・・嬉しくて、本当に、すごく嬉しくって」
    涙が流れました。ぽろぽろ流れました。
    「だから、あたし、あたしっ、・・えっ、・・えっ、」

    崎村さんは、上品なメイドさんの中にいる普通の15才の女の子を見ました。
    とても可愛いと思いました。
    彼女の手を持って引くと、メイドさんは崎村さんの胸の中に倒れ込みました。

    「・・・あぁぁん!!」

    栗色の髪のメイドさんは大声で泣き出しました。
    崎村さんはその背中を抱いてて、ゆっくりさすってあげました。
    さすりながら、いい肩甲骨だなと思いました。

    ・・この子の骨格を調べてみたいな。

    10.
    しばらくして落ち着くと、メイドさんは崎村さんから離れました。

    「申し訳ございません。大変な粗相をいたしました。・・お客様の前で感情を爆発させるなんて、メイド失格です」
    「気にしなくていい」
    「いいえ。わたくし、告解して罰を受けなければなりません」
    「言わなければいじゃないか」
    「それは許されません」
    「こういうことを言うと怒るかもしれないけど、僕には君が泣いてくれたことが最高に嬉しかったよ」
    「?」
    「君はとても素敵な方法でお客を満足させたから、いいことをしたんだ。罰を受ける必要はない。・・屁理屈かな?」
    「ぷっ、もうっ」

    メイドさんは小さく吹き出して笑ってくれました。
    栗色の髪が揺れて朝日に輝いてとても綺麗でした。

    崎村さんは服を着て、メイドさんの出してくれたコーヒーをゆっくり味わいました。
    それから、メイドさんに頼んだのです。

    「君の身体をもう一度見せて欲しい」
    メイドさんはすぐに頭を下げてお応えしました。
    「はい、お客様。お望みのままに」

    メイドさんはメイド服と下着を脱いで全裸になってくれました。
    崎村さんはそれをまぶしそうに見つめます。
    明るい光の中で見るメイドさんの身体は、昨夜以上に綺麗でした。
    崎村さんの片手の中に納まりそうな乳房の乳首や、控えめな陰毛の下の性器は、美しいピンク色をしていました。

    「身体に触っていいかい?」
    「どうぞ、ご随意に」
    崎村さんはメイドさんの肩から鎖骨、胸骨を確かめました。
    頭蓋骨の形から背骨のラインまで確かめました。上腕骨や大腿骨も強く押さえて確かめました。
    最後にベッドに寝かせて骨盤を調べ、指を淹れて尾骨や恥骨まで確認しました。

    小柄ですが、健康で綺麗な骨格でした。
    将来、献体の人体を使えたとしても、これほど若くて良い骨は望めないでしょう。

    ・・この骨格を標本にしたい。
    そう思いましたが、さすがに口にはしませんでした。

    「ありがとう。いい骨だった」
    お礼を言ってメイドさんから離れました。

    「お客様、本当に骨格がお好きでいらっしゃるのですね」
    「ああ。好きだね」
    「うふふ」メイドさんはおかしそうに笑いました。
    「どうしたんだい?」
    「だって、難しい顔をなさって触っておいでだから」
    「?」

    彼女は両足の間に自分の中指を差し入れて、それから出して見せました。
    「わたくし、こんな風になって震えておりましたのに、気にもして下さらなくて」
    「あ・・」

    初めて気付きました。
    その指は、ねっとりとした液体に覆われておりました。
    透明な糸がつぅっと伸びていました。
    メイドさんはとても色っぽい顔をして笑っていました。

    「ごめん。君に恥をかかせるつもりは、」
    「いいえ。15の小娘に恥も何もございません。・・それよりも、」
    メイドさんは、一旦息をついでから言いました。

    「どうぞ、この骨をお使い下さいませ」
    え?

    「わたくしを骨格標本になさって下さいませ」
    「・・知っていたのか?」
    「直接は言われておりませんが、旦那様のお考えは承知しております」

    あのとき、晩餐の場にいたメイドは全員がH氏の意向を察したといいます。
    そして、もし命じられれば、すべてを捧げて標本になることも覚悟したのでした。

    「お客様がわたくしをお気に召して下ったのでしたら、それはわたくしが骨格標本になる、ということです」

    11.
    それからの話は、とても早く決まりました。
    報告を受けて、H氏は栗色の髪のメイドさんの提供をお決めになりました。
    社会的に絶大な力を持つH氏ですから、お屋敷で何があっても当局が立ち入ることはありません。
    メイドさんが生まれ育った実家の両親もあらゆる事態を覚悟して娘をお屋敷に出しているのです。
    何の問題もありませんでした。
    あとは崎村さん自身が了承するだけです。

    その崎村さんはなかなか決められないでいました。
    ヒトの骨格標本を作るのは崎村さんの夢です。
    そして素晴らしい骨格を持つ少女が、使って欲しいと言っているのです。
    でもそんなことを神様が許してくれるだろうか。
    人間の少女をイヌやウマと同じように標本にすることを。
    わずか15才の少女の命を、自分のために使うことを。

    崎村さんの心を決めさせたのは、栗色の髪のメイドさん本人でした。
    彼女は自分の顔面に焼きゴテを当てたのです。
    無残に焼けただれた顔では、もはやメイドとしてお役に立つことはできません。
    崎村さんはその覚悟に心を打たれて、標本作成を決心しました。

    12.
    崎村さんはお仕事を辞めてH氏邸にやってきました。
    敷地内に作業室が建てられて、そこには解剖のための設備やアクリル成形に使う大型オートクレーブまで設けられました。

    崎村さんは、そこにメイドさんと一緒に住んで準備を始めました。
    メイドさんのいろいろな姿を記録し、スケッチを描いて作品のイメージを決めるのです。
    約一ヶ月の間、二人は濃密な時間を過ごしました。
    崎村さんはメイドさんを愛し、メイドさんも崎村さんを愛しました。
    その姿はまるで夫婦だったといいます。

    やがて作品のポーズが決まり、メイドさん本人も了承しました。
    それはモップを持って立つ、ごくシンプルなポーズでした。
    一番メイドらしいと二人の意見が合ったポーズだったのです。

    栗色の髪のメイドさんは、仲間のメイドさんたちから贈れた花に囲まれ、崎村さんの薬品注射で天国に旅立ちました。
    そして崎村さんはその身体を解剖しました。
    体毛を剃り、皮を剥いて内臓と筋肉を除去します。
    胴体と四肢を切り離し、部位ごとに骨を取り出して炭酸ナトリウム溶液に漬けて弱火で煮詰めます。
    骨表面についた筋肉組織をこそげ落とし、脱脂、漂白してよく乾燥させます。

    作業中の崎村さんは鬼気迫る様子でした。
    ほとんど食事もとらず、睡眠もとらず、わずかに休むときはメイドさんの骨の側で過ごしました。

    骨格のパーツが完成したら、ポーズを組み立ててアクリル型に設置します。
    お屋敷のエンジニアからは人体形状の型で作る提案もありましたが、崎村さんは手馴れた削り出しで作ると決めました。
    骨格を収めた型に溶融アクリル樹脂を流し込み、クレーブのチャンバーに入れて真空処理と熱処理を行います。

    骨格入りの無垢のアクリル塊が出来上がると、削り出しの工程です。
    骨格のポーズと完成図面をチェックしながらグラインダーで荒削りします。
    さらにヤスリとナイフで細かい造形を施すのです。
    気の遠くなるような作業でした。
    少しでも削りすぎたり、内部の骨格と位置がずれたりすると終わりです。
    崎村さんは驚くべき集中力で、少女の外観を浮かび上がらせてゆきます。
    アクリルの粉まみれになりながら、まる1日働き、まる1日眠る生活を繰り返しました。

    秋が終わり、冬も終わろうとする頃、骨格標本が完成しました。
    モップを持って立つ透明なメイドさんの中に、人体骨格が浮かんでいました。

    13.
    完成した骨格標本としばらく一緒に過ごした後、崎村さんは屋敷で引き取って欲しいと書いた手紙を残し姿を消しました。
    しばらく行方不明になった後、残雪の山中で首を括って死んでいるのが見つかりました。
    若い少女の命を奪った自責の念か、愛する彼女の後を追ったのか、誰にも分かりませんでした。

    14.
    お屋敷の執務室。
    若きH氏は椅子に座って、じっと人体骨格標本を眺めておられました。
    片手にモップを持って立つ透明な美少女。
    目を閉じると、あの栗色の髪のメイドさんが同じポーズで微笑んでいる姿が浮かぶのでした。

    「まさに逸品だな。・・しかし、残ったのはこれだけだ」
    力なくつぶやかれました。

    「どうやら儂は調子に乗りすぎたようだ」
    一人だけ同席させたベテランのメイドさんに向って自嘲するようにおっしゃいました。

    このメイドさんはH氏のお気に入りでした。
    H氏は、このメイドさんにだけは他の使用人の前では決して見せない本音もお話しになるのでした。

    「メイドの骨格をダシに甘言をささやいた結果、貴重な才能を失ってしまった」

    ・・おやおや、あのお客様を惜しまれるだけで、死んでしまったメイドのことはお気になさらずですか?
    そのメイドさんは思いましたが、もちろん口に出しては言いませんでした。

    「二度と軽々しいことはせん」

    ・・そうです。先代の旦那様はとても思慮深い方でしたよ。
    しっかりお屋敷を導いて下さいませ。信じてついて参ります。
    メイドさんは優しい目を向けて願うのでした。

    ・・ああ、もちろん、これからも、メイドの命は旦那様のお心のままです
    十分に心得ております。
    そのように扱われるのがメイドです。女です。
    わたくしどもの喜びです。
    メイドさんは、H氏に気取られないようそっと自分の胸を押さえ、心の中で繰り返すのでした。


    [Part.3]
    15.
    物置部屋で発見された人体骨格標本。
    それは廃棄されるはずだったものを、当時のメイドさんたちがこっそり残していたものでした。
    棄てよと命じたものが残っていたと知っても、H氏はお怒りになりませんでした。
    「そうか、では大切に保管しなさい」
    短くそうおっしゃっただけでした。

    事情を聞いたメイドさんたちがメイド部屋に置かせて欲しいと願い出ました。
    その中には、この骨格標本を物置で見つけた栗色の髪のメイドさんも含まれていました。
    彼女は、標本になったメイドさんが他人には思えなかったのです。
    自分が生まれるずっと前、15才で命を捧げたメイドさん。
    もしかしたら、いつか自分も・・。
    それは、とても恐ろしく、そしてほんの少し憧れる未来でした。

    こうして人体骨格標本はメイド部屋の入口に置かれ、お屋敷のメイドさんたちに大事にされました。
    この年の新人メイドさんたちがお客様に処女を捧げたときも、数年後に一人が天国に召されたときも、さらに歳月が過ぎて皆ががお勤めをまっとうして辞めた後も、ずっとそこにいて、お勤めするメイドさんたちを見守ったのでした。



    年2回の執筆が恒例になったH氏邸シリーズです。
    今回は15才のメイドさんを人体骨格標本にするお話。
    もちろん私の小説ですから、嫌がる少女を無理矢理・・ という展開にはなりません。
    心なしかアンバードールシリーズのネタと被ってしまった気もしますが、まあいいでしょう~^^>。

    骨格標本とアクリル成形の手順に関してはネットの情報を参考にしました。
    挿絵の骸骨もネットの人体骨格図を参考に、肋骨の数など適宜省略して自己流で描いたものです。
    何か誤まりがあった場合はご容赦下さい。

    修道院に入った元メイド長とは、もちろん『桔梗の定期便』に登場したシスターです。
    Part.2 の最後のシーンでH氏の執務室にいたベテランメイドさんも同じ人。
    この頃から主人の相談役や、ベッドのお相手として務めていたのでしょうね。
    考えてみれば、若い頃のH氏と彼女の間にはいろいろな秘話がありそうです。
    いずれ書いてみたいですが、メイドさんが死ぬ話ばかりになりそうな気が・・(笑)。

    ありがとうございました。




    異国のクリスマスパーティ(1/3)

    1.
    金属製のベッドに金髪の白人女性が仰向けに寝かれていた。
    筋骨隆々とした肉体で、レスリングの選手という彼女。
    試験の前には一日中だって平気と自信満々だったくせに、ほんの2時間過ぎただけでもう涙目になっている。
    猿轡のせいで喋れないから、目だけで必死にもう許して欲しいと訴えていた。
    もちろん、これは本人の同意を得て合法的に実施している試験である。
    被検体である彼女に試験中止を決定する権限がないことは、契約書をよく読めばちゃんと書いてあるのだ。

    私はベッドの装置を確認する。
    被検体の全身を完全拘束する枷とベルト。
    額の真上には、2フィート(約60cm)の高さから水滴を垂らす機構。
    滴下のペースは1分間に5回。
    つまり彼女は12秒毎に一滴、額に水滴を受けるのである。

    様々な女性を被検体にテストしてきた結果、この種の試験に彼女のようなアスリートは意外と耐性が低い。
    学者や教師など知識層と呼ばれる職業の女性もすぐに限界に達する。
    強靭なのは、独自の感性を持つ芸術家タイプ。例えば、画家、彫刻家、演奏家、ダンサーなどだ。
    今まで一番成績が良かったのは、公園でパントマイムのストリート・パフォーマンスをしていた27才の女性だった。
    彼女は水滴試験を24時間受けた後も意識を平然と保っていて驚かされた。

    私は、今、さらに過酷な試験を計画している。
    被検体として肉体と精神の両方をバランスよく鍛えた女性を使いたい。
    例えば、ヨガの達人、瞑想家、武道家、戦場で死線をくぐった人。
    男性ならともかく、女性でそういう人は簡単に見つからないだろう。
    でも財団の力を持ってすれば可能だ。
    私が十分満足できる程度にタフで、そして万一のときは壊してしまって構わない女性を見つけることなど。

    考えていると、内線電話のベルが鳴った。
    「クレア、所長がお呼びよ。すぐ来てちょうだい」
    秘書課のマギーからだった。
    いいところなのに。
    「・・ジミー、しばらく席を外すわ。彼女が失神するか精神異常の症候を示すまで継続してね」
    「はい。分かりました」
    私は実験助手の男の子に声をかけて、トーチャー・ラボ(拷問試験室)を出た。

    2.
    「やあ、エルトン博士。掛けたまえ」
    チャールソン所長は私に椅子を勧めた。
    「ここの仕事には慣れたかね?」
    「ええ。いろいろ驚くことはありましたが、今はやりがいをもって働いています」
    「それはよかった。・・実は君に担当して欲しい仕事がある」

    所長はカレンダーをペンで差して説明を始めた。

    ・・キャンベル家のクリスマス・パーティが24日の夜に開催される。
     さぞかし豪華なパーティになるだろうな。
     もちろん我々の仕事はパーティの運営ではない。
     そんなことは財閥傘下のイベント・エージェンシーが大張り切りで担当するだろう。

     重要なことは、パーティの主賓として日本のH氏が招かれることだ。
     氏は "手土産" を持参される。
     評判高い、H氏邸のメイドだ。
     彼女はパーティの3日前には届けられて、キャンベル家と懇意のお客に "ゴホーシ" するそうだ。
     君は "ゴホーシ" の意味は知っているかね? 面白い概念だよ。

     我々の仕事は、彼女の受け入れと滞在中のケアだ。
     クレア、君はその主担当だ。
     女性でないとできない事も多いだろうから、しっかり世話してくれたまえ。

    3.
    ここ、アリゾナ州のキャンベル人間工学研究所は、ちゃんとした研究もしているが、決して公表されない仕事も行なっている。
    それは、性奴隷あるいは被虐的立場にある女性の拘束・拷問の研究開発だ。
    研究所そのものが持ち主であるキャンベル財閥の税金逃れのためにできたようなものだから、その運営は財閥の意向に強く依っている。
    セオドア・チャールソン所長は、イギリス人で、電子工学と経営学の Ph.D (博士)でありながら、キャンベル家の元・執事でもあるという経歴の持ち主だ。

    私、クレア・エルトンは29才の心理学者だ。
    去年までシカゴの大学で研究助手をしていて、転職してきた。
    研究所の応募集要項には "裏" の仕事は記されていなかったし、普通に面接を受けて採用されたら、こんな実態を知って驚いた。
    私自身はカルチュラル・フェミニズムに賛同する女性ではあるが、特に BDSM の分野に嗜好がある訳ではない。
    ただ、被虐に臨む女性の心理を専門に研究していて、学位論文のテーマは中世魔女裁判で拷問を受ける女性の精神状態だった。
    この研究所では様々なM女性を観察することができるので、とても有益であり、自分に合った職場だと思っている。

    4.
    ・・にしても、日本人メイドの世話をさせられるなんて。
    所長に命じられた仕事は、正直、不満だった。
    そんな仕事は、庶務か秘書課でやって欲しいわ。
    面倒くさい仕事を新人の研究員に任せて、査定の材料にしようという魂胆だろうか。
    とりあえず、適当にほどほどに、こなすしかないわね。

    それから私は、日本側と連絡をとって受け入れの準備を進めることになった。
    先方からは、ホテルの手配などは不要と言ってきた。
    研究所の一室で過ごせるようにしてもらえばよいとの希望だった。
    そうね。
    どうせ着替えと寝るだけの部屋だろうし。
    私は応接室の一つを借り切って、ベッドと簡易クローゼットを置くことにした。

    彼女の名前が分からなかったから、私は勝手に "ミク" と呼んでいた。
    もちろん、あの有名なヴァーチャル・シンガーの名前だ。
    ミクは、昼間この部屋で休憩し、夜にキャンベル家の屋敷へ出向いて "ゴホーシ" することになる。

    5.
    ミクが研究所にやってくる当日。
    私は研究所の玄関の車寄せに立って待っていた。
    アリゾナの冬は暖かくて、ブラウスとタイトスカートの上に白衣を羽織っただけの格好でも寒くはなかった。
    時刻はそろそろ14時。約束の時刻だ。

    正門から大型トレーラーが進入してきて守衛室の前に停まるのが見えた。
    トレーラーはすぐに動き、私が待っている前まで来て停車した。
    運転席の窓が開いて、ドライバーが顔を出した。
    「クレア・エルトンさん? あんたに届け物だぜ」
    そう言って、後ろに引いてきたコンテナを指差した。

    それから大変だった。
    ミクのお迎えは秘書課のマギーに頼んで、私はコンテナを資材倉庫の片隅に搬入させた。
    それは長さ40フィート(約12m)もある海上輸送用の国際コンテナだった、
    荷札を見ると宛先は確かに私。そして送り元は日本だった。
    ミクの携行品? 何て量なのか。
    こんな物をわざわざ送ってくるなんて。

    秘書課に電話したら、ミクはまだ到着していなかった。
    もう16時を過ぎている。フライトが遅延したのかしら?
    遅れるなら遅れると連絡して欲しいものよね。

    コンテナの扉にはダイヤル式の錠前がついていた。
    ダイヤルの横に、太い文字でプリントしたラベルが貼られている。

    『警告 : 施錠機構を不正に破壊すると、内容物が損なわれます』

    大げさな警告ね。
    工務の知り合いに頼んで無理矢理開けてやろうか、と考えた。
    でも、これは重要品だ。
    日本から来る女の子一人の荷物だからではない。
    その小娘の主人が、超重要なのだ。
    万一のことがあれば所長に叱られるだけではすまない。
    とりあえず、自席に戻って過去の受信メールを確認した。

    『to:キャンベル人間工学研究所担当者様
    from:H管理事務所
    スケジュールが確定しました。
    到着予定日時は、12月21日14時です。
    よろしく願います。R12-L45-R39』

    見つけた。
    ナンバーをメモしてコンテナの前に戻る。
    ダイヤルを回す。右に 12、左に 45、それから右に 39。
    カチャリ。
    ロックが開く音がした。
    錠前を外し、ハンドルを回して扉を手前に引いた。
    私はそっと中をのぞき込む。

    6.
    コンテナの中は狭かった。
    狭い小部屋に、天井まで届く高さの白い石板が据えられていた。

    「ご苦労様でございます」

    大きな眼鏡を掛けた小柄な少女が石板の横に立っていた。
    この子、どこから出てきたのかしら。
    もしかして、コンテナの中に、いた?
    私は少女をまじまじと見る。
    髪は黒、瞳の色も黒。くるりとした瞳が可愛い。
    でも、この丸っこい顔と低い鼻は、明らかに日本人の特徴ね。
    彼女は黒いロングスカートにフリルのついた白いエプロン。白いキャップ。黒のストッキングと編み上げブーツを履いていた。
    なんとまあ、仰々しい。
    これはビクトリア調のメイド服だわ。

    少女は微笑みながら言った。
    「キャンベル研究所のクレア・エルトン博士でいらっしゃいますか? お届け物にございます」

    完璧なイギリス英語だった。
    驚いた。日本人がこんなに綺麗な英語を話すとは。
    私は前の仕事で日本人と働いたことがあるけれど、連中の英語ときたら聞けたものではなかったのだから。

    「あ、えっと、あなたがミクなの?」
    「ミクとは、どなたかのお名前でございますか?」
    「ごめんなさい。日本から女の子が来るっていうから、こっちで勝手に呼んでたニックネームなの」
    「分かりました。・・そういうことでしたら、私はミクの世話役にございます。ミクは、」

    少女は隣の石板を右手で示した。

    「こちらでございます」
    「このモノリスが、実は魔法で姿を変えられたお姫様だっていうのかしら?」
    「少々お待ち下さい。バックライトをお点けいたします」

    少女は石板の後ろに回り、何やら操作した。
    次の瞬間、コンテナの中に白い光が溢れた。石板の向こう側で高輝度の照明灯を点灯させたのだ。

    「どうぞ、よくご覧になって下さいませ」

    石板にライトの光が透けて、中に黒い人影が見えた。
    細い腕。胸のふくらみ。くびれたウエストとゆるいカーブを描くヒップライン。
    若い女性のシルエットだった。

    最初はマネキンでも入っているのかと思った。でもマネキンのはずがないとすぐに考え直した。
    人影の頭部と股間からたくさんのパイプが伸びているのが見えた。
    これらは、きっと、生命維持に必要なものだ。
    やはり、この中にいるのは人間。生きた女の子。
    私は生唾をごくんと飲み込んだ。

    「・・この子が、ミクなのね」
    「はい」メイド服の少女が答えた。
    「私どもの主人からキャンベル様のパーティに提供される娘でございます」

    7.
    その夜。
    ミクのために用意した部屋に、チャールソン所長と私、そして眼鏡を掛けたメイド服の少女がいた。
    あの石板もコンテナから運び出して壁際に立てかけられていた。

    石板は高さ6フィート(183cm)、幅3フィート(92cm)、厚さ1フィート(31cm)ほどの直方体だった。
    焼石膏にガラスの微粒を混合して固化させ、その表面をポリカーボネート樹脂の保護層で覆われている。
    ガラス粒が含まれるおかげで石膏層に光が透過して、内部のミクの姿をシルエットで見ることができる。
    ミクはH氏邸に勤めるメイドの中から選ばれた17才の少女だという。
    全身ラバースーツを着せられて、石膏層の中に生きたまま埋められた。
    身体中にチューブやセンサを接続され、呼吸の確保と栄養供給、排泄物処理ほか、完璧に管理されている。

    衝撃的だったのは、ミクが約2週間かけてコンテナで航送されてきたことだ。
    船積みまで1日、船上で10日、ロスのコンテナ埠頭で荷揚げと通関に1日、さらに研究所まで陸送2日。
    (人間の入ったコンテナがどうやって通関できたのかしら?)
    たとえ世話役がついて常時ケアを受けられるとしても、ミクにとっては絶望的な長さだろう。
    身動きはもちろん、視覚や会話の自由も一切ない、完全な閉所空間なのだ。
    はたして、十代の少女が精神を健全に維持できるものなのか。

    私がその疑問を口にすると、メイド服の少女はタブレット端末を出してミクの脳波を表示してくれた。
    その波形は、心理学者の私には容易に理解できるものだった。
    彼女は覚醒していて、落ち着いて私たちの会話を聞いている。
    試しにミクに話しかけると、その脳波のグラフは穏やかに反応し、私の英語を理解していることも分かった。

    「・・驚くべきことね。こんな環境でも平静でいられるなんて」
    「私たちは精神的にタフであるように訓練を受けています。もちろん限界はありますから、多少の工夫も準備されています」
    メイド服の少女は説明した。
    「工夫?」
    「ありきたりとお思いになるかもしれませんが、彼女の身体にはバイブレーターと電極パッドが装着されています」

    なるほど。私は理解する。
    女にとって、適度な性的刺激は精神の安定にとても有効だ。
    「じゃあ、コンテナの中で、あなたは」
    「はい。この者に定期的に喜びを与えることは、私の重要な仕事でした」

    「・・これは私の個人的な興味だが」チャールソン所長が口をはさんだ。
    「今ここで、バイブと電極パッドの機能を試してもよいかね?」

    その瞬間、ディスプレイに表示されていた脳波がゆらりと揺れた。

    「ご随意に。これがリモコンでございます」
    少女が小さな装置を所長に渡した。
    「ふむ。出力を最大にしたらこの子はどうなるかね」

    脳波の揺れが大きなった。がくがくと何かを恐れるように激しく揺れた。

    「バイブと電極の両方を最大にされた場合、まず数分で意識を失うかと存じます」
    「構わないのかね?」
    「はい。彼女はそのような用途のために運ばれてきました。如何様になさっても構いません」

    脳波のグラフは、激しく乱れながら、まるで心臓の鼓動のように一定周期で振幅を変化させていた。
    それは処刑を受ける囚人の絶望だろうか、それとも至極の快感への期待だろうか。

    「いや、もう結構だ」所長は笑って手を振った。
    「ここで彼女を消耗させる訳にはいかないからな。・・この中には確かに生きた少女が入っていて、私の言葉に感じてくれている。それが確認できたから十分だよ」

    脳波のグラフがゆっくりと落ち着いた。
    ほっと落ち着きはしたけれど、まだときおり、びくんびくんと動いている。
    ミクの心理状態が手に取るように分かって面白かった。

    8.
    「さあ、次はあなた自身について答えてもらうわよ」
    私はメイド服の少女に聞いた。
    彼女は大きな眼鏡を指で上げて直すと、両手を前で合わせて静かに微笑んだ、
    この子、眼鏡を外したら結構な美少女ね。

    「あなたの名前は? 歳は?」
    「私に名前はございません、エルトン様。どうぞ皆様のお好きにお呼び下さいませ。それと、私はミクと同じ17才でございます」
    「わぉ、あなたまで17なの?」
    17才といえばハイスクールの生徒の年齢じゃない。
    自分が17だったとき、こんなに落ち着いて礼儀正しくしてたっけ?

    「では、私から質問させてくれたまえ」
    所長が言った。
    「君の役目は、はたして付き添いだけかね?」
    メイド服の少女は、ずっと微笑みながら所長の顔を見ていた。

    所長は石板を片手で撫でて話を続けた。
    「17才の娘を生き埋めにした壁。クリスマスパーティの引き出物としては立派なものだ。皆が驚くだろう。・・ただし、驚くだけで満足することもないだろう」
    「お察しの通りでございます」
    少女は静かに答えた。
    「・・私の役目は、お客様にお使いいただくことでございます。心からご満足いただくためであれば、命を失うことも覚悟せよ、と命じられております」
    「やはりな。最初に分かったよ。君の格好は、その衣装といい、眼鏡といい、見れば見るほどキャンベル卿の好みだ。それも君の主人の計らいなのか」
    「はい」

    私は所長の推理と少女の返答に言葉がなかった。
    いったい何なの? この女の子は。
    彼女は、キャンベル家に行けば、間違いなく拷問と陵辱を受ける。
    この子はそれを理解している。理解していて、ここに赴いてきたのだ。
    これがゴホーシということ?

    「助言しておこう」所長が少女に言った。
    「キャンベル卿は嫉妬深い人だ。あの屋敷には日本から来たメイドに興味を持つ男が他にもいる。君の主人の真意は知らないが、つまらないことで疑われないように注意しなさい」
    「他意はございません。精一杯務めさせていただきます。・・ただ、ご忠告には感謝申し上げます」
    「ふむ。空気のように軽いものでも、嫉妬する者には聖書の本文ほどの証拠になるという諺は、知っているかね?」
    「あら、」
    少女の眼がきらりと光った。
    「聖書など、悪魔が目的を遂げるために使うものではないですか?」
    所長が驚いた顔になった。
    「これはやられた。・・君は、イギリス古典文学に詳しいのかね?」
    「はいっ」
    少女が嬉しそうに笑った。
    「"オセロ" も "ヴェニスの商人" も、シェイクスピアはどれも大好きです!」
    そう言ってすぐに、言いすぎた、という表情を浮かべた。
    「申し訳ございません。余計なことを口にいたしました」
    慌てて頭を下げる。その頬が少し赤くなっていた。

    今のは、シェイクスピアだったのか。
    いつも難しいことを言って私たち所員を煙に巻く所長が、17才の女の子に一本とられたのは痛快だった。
    同時に、シェイクスピアが好きと言ったときに見せた彼女の爛漫な笑顔も素敵だった。
    彼女は、利口で礼儀正しいだけのメイドではない。とても素直な少女なのだ。
    ・・いい子なのね。
    私は彼女のことが大好きになった。

    私は言った。
    「では、あなたのことは "リズ" と呼ぶことにしましょう。理由は、何となくよ」
    言うまでもなくリズはエリザベスの略称だ。
    彼女から感じる知性と美しさのきらめきは、そう呼ぶのがぴったりだと感じたのだった。

    「女王陛下のお名前ですね。光栄でございます」
    少女は再び落ち着き払って、静かに微笑みながら頭を下げた。

    9.
    次の日のお昼、キャンベル家から迎えの男たちがピックアップバンに乗ってやってきた。
    彼らはミクの石板をバンの荷台に載せ、リズを連れて去っていった。

    私はそれを見送ってから席に戻ったが、彼女たちのことが気になって仕事にならなかった。

    続き




    異国のクリスマスパーティ(2/3)

    10.
    翌日の早朝。
    二人は研究所に返却されてきた。
    私は出勤してすぐに、彼女たちの部屋に駆け込んだ。
    そこにはミクの入った石板が置かれていたけれど、リズの姿はなかった。
    見回すと、部屋の奥にスーツケースが置かれていた。スーツケースの上には茶色い封筒。
    封筒の中にキーが入っていた。
    まさか。

    キーをスーツケースの鍵穴に挿すとぴたりと入った。
    そのまま開錠してスーツケースを開けると、中には全裸のリズが丸くなって押し込まれていた。
    「リズ!」
    彼女を引き起こした。意識がなかった。
    黒髪はぐちゃぐちゃ。眼鏡もどこかに失くしたようだ。

    私はリズをベッドに寝かせて、身体を調べた。
    ああ、やっぱり。
    全身に鞭の痕が刻まれ、ところどころ内出血していた。
    細い背中にも、可愛い乳房にも、小さなお尻にも。
    両足の間には、明らかに男性に侵入された痕跡。
    可哀想に・・。

    と、リズが両目をぱちりと開けた。
    「リズ!」
    「エルトン様。ご心配をおかけして申し訳ございません!」
    彼女はすぐに起き上がろうとした。
    「だめっ、寝てなさい」
    「いえ、至急の用事がございますので」

    リズは身を起こして、両足を床についた。
    「立てるの?」
    「問題ございません」
    そう言って床に立ち、裸のままで、とことこ歩き出した。
    と、そのまま壁に正面衝突した。

    「きゃん!!」
    それは私が初めて聞いた彼女の悲鳴だった。
    「大丈夫!?」
    「あの、恐れ入りますが、眼鏡を・・、そこの衣装箱から予備の眼鏡を取っていただけますか」
    「あなた、本当に眼が悪かったの?」

    私は、彼女の眼鏡はキャンベル卿の好みに合わせるためのフェイクだと思っていたのだ。

    「元々は悪くないのですが、お客様にお喜びいただくため、視力を低下させるコンタクトレンズを付けています」
    「呆れた。ここでは外しなさいよ、そんなもの」
    「あいにく、それはできません。眼球に接着されているものですから」
    「!!」

    彼女は両手に眼鏡を持って掛けると、にっこり笑った。
    「ご心配なく。・・これで、ちゃんと見えます!」

    リズはタブレットを出してミクの石板に接続し、表示される様々な数値をチェックし始めた。
    「よしっ」「あれ?」「ふむふむ」
    ディスプレイを見ながら、ぶつぶつと何かつぶやいている。
    「じゃあ、おしっこ、交換しましょ」
    石板の裏にしゃがみこみ、小蓋を開けて中から薄黄色の液体でいっぱいに膨れたバッグを出し、代わりに新しい空のバッグをセットした。
    「次は、お尻ぃ~」
    チューブの一本にぬるま湯をポンプで注入した。一定時間待って逆流する液体をボトルに回収する。
    「よしよし。便秘はすっかり解消したようですね!」

    大きな眼鏡をかけ、全裸でミクの世話をするリズ。
    どことなく可愛らしく、それでいて頼りがいのある保育士のようにも見えた。
    視力を下げるレンズを眼球に接着されているという衝撃が、少しずつ薄れるのが分かった。
    それにしても、彼女の喋り方。
    もしかして日本から輸送される間、コンテナの中でたった一人、こんな風にミクの世話をしていたのだろうか。

    リズはタブレットを操作して何かを計算している。
    それから、ボトルから白い液体をバッグに注ぎ、さらに別の液体と粉末を何種類か入れて攪拌した。
    そのバッグを石板から出る別のチューブに接続してゆっくり注入した。

    「それは何?」
    「これはミクのご飯です」
    「流動食ね」
    「はい。昨夜はよく頑張りましたからカロリーを15%アップして、それからご褒美にバニラエッセンスの香りも足してあげました。あとは感染症の予防と発汗を抑制するお薬。お通じのお薬は便秘が治ったので終わりです」
    「よく頑張ったって言ったけど、ずっと動けないんでしょ? 何が違うの?」
    「バイブと低周波で明け方まで責められました。おそらく、彼女は人生で最も多くの回数、意識を失ったと思います」
    「・・」

    いちいち驚くのはそろそろ終わりにしなきゃ。
    でないと、こっちの心臓がもたないわね。

    私はできるだけ明るくリズに声を掛けた。
    「さ、ミクが片付いたら、次はあなたよ!」
    「あぁ、私のことはどうぞお構いなく」
    「ダメ!」
    私は、棚からバスタオルを取って彼女の頭から被せた。
    「まず熱いシャワーを浴びなさい。それから怪我の手当てとお肌のケアよ。栄養のあるものも食べないとね」
    「でも・・」
    「ごちゃごちゃ言わないっ」
    「きゃっ」

    私はリズを肩に担ぎ上げた。
    こんな小さな女の子、・・ちょっと重いけど、大丈夫!

    「やんっ、下ろして下さい!」
    「だーめ!」

    研究所の中をバスルームに向かって歩いた。
    途中ですれ違った同僚の男性に、リズを代わりに担いでもらった。
    バスタオル1枚を巻いただけの美少女を担いで歩いても、この研究所では不審な目で見られないのである。
    リズは、ずいぶんきゃあきゃあ騒いでいたけれど、バスタブの中に放り込まれてようやく静かになった。

    しばらくして様子を見に行くと、彼女はお湯の中でこんこんと眠っていた。

    11.
    夕刻、再び男たちがやってきた。
    私とリズは並んで立って彼らを迎える。
    リスは新しいメイド服を着てかしこまっていた。

    「あなた、ピルは飲んでるわね?」
    私は、聞き忘れていたことを小声で聞いた。
    「そのようなお薬は主人が嫌いますから飲んでません。ただ、排卵日を管理していますから、妊娠の心配はありません」
    「そう、よかった。元気に帰ってきてね」
    「それは、私には決められないことです」
    「・・」
    「クレアさん、もうお分かりのはずなのに」
    「ごめんなさい。じゃ、Do Your Best!」
    「はい!」

    私はリズの背中を軽く押して送り出した。
    リズは深くお辞儀をすると、男たちについて出かけていった。

    12.
    彼女たちの帰還は、やはり無残だった。
    リズはまたしてもメイド服を脱がされ、がんじがらめに縛られて麻袋に詰められていた。
    ミクの石板にもロープが巻きついて縛られていた。

    「ご心配なく。すぐに元に戻ります!」
    リズは口だけは元気に返事したけれど、手足が痺れて動けなかった。
    まるでスモークハムのようにぎちぎちに縛られていたのだ。
    医者を呼んで診てもらった。
    幸い深刻な障害はなく、1時間ほどマッサージを受けて痺れはなくなった。

    仕事を済ませて倉庫の部屋に行ったら、リズはもう部屋の中を立ち歩いていた。
    ビスチェとドロワーズの下着だけを着け、衣装箱から出したメイド服にアイロンをかけている。
    「あぁ、クレアさん。こんな格好で失礼します」
    「リズ! あなた大丈夫なの?」
    「問題ありません。それに怠けるわけにまいりません」

    私は黙って彼女の腕をとって撫でた。ドロワーズの裾を上げて足も確認した。
    どちらもロープの痕が刻まれていた。
    ところどころが紫色に変色している。
    昨日の鞭の痕もまだ残っているというのに。

    「ひどいわね・・」
    「お医者様には、数日間は消えないだろうと言われました」
    リズはさらりと言った。
    「内出血の部位は、衣装で隠せますから、お務めに差し支えありません」
    「ねぇ、リズ。もう今日は休みなさい」
    「・・」
    「悪いことは言わないから」
    「あいにくですが、それはできません」
    「でも、」
    「今夜はキャンベル様のクリスマス・パーティです。私の主人はそのゲストです」
    「主人に恥はかかせられないのね」
    「はい」
    「リズ。あなた、どうしてそこまで尽くすの」

    私はリズを後ろからぎゅっと抱いた。
    いつの間にか、この女の子がとても愛おしくなっていた。

    「あぁ、・・クレアさん。仕事ができません」
    私の呼び名が "エルトン様" から "クレアさん" に変わっていることに、私はようやく気づいた。
    いったいいつから変わっていたのかしら。
    でも、よそよそしい名前で呼ばれるよりも、ファーストネームで呼ばれる方がずっと嬉しかった。

    「ごめんなさい。あなたが辛い目に会うのが、たまらないの」
    「心配なさらないで。ちっとも辛くはありません。・・でも、こうして安心を感じて下さるのでしたら、どうぞ心ゆくまで抱きしめて下さいませ」
    「ごめんなさい。私の方が子供みたい」
    「いいえ」

    リズは小さくて、可愛くて、抱き心地がよかった。
    私は彼女の身体をゆっくりと撫でた。
    日本の女の子の肌は、なんてきめが細かくすべすべしているのかと思った。

    しばらくして、リズは私の腕の中でするりと回転すると、私に向かって微笑みかけてくれた。
    女の私がどきりとするほどセクシーな微笑みだった。
    「失礼します」
    そして背伸びをすると、私の口に自分の唇を当てた。

    思いもよらない行動だった。
    私は心理学者として女性の心理に興味があるが、女性そのものに興味はなかった。
    ない、と思っていた。
    リズにキスされるまでは。

    彼女の唇が私から離れると、私は膝の力が抜けて、立っていられないような気がした。
    リズのキスはそれほどに、甘美だったのだ。

    「クレアさんのお気持ち、大変嬉しく存じます。・・これはメイドの分を超えたことですが」
    耳元にささやくように言われた。
    「お気持ちに応えさせて下さいませ」

    リズは荷物をがさがさと調べて、ロープを出した。
    しなやかで柔らかそうなロープだった。
    「これは、日本製の麻縄です」
    リスはそう言ってにっこり笑った。

    13.
    私は椅子に座って、リスの仕事を見ていた。
    リズはアイロンのかかったメイド服を着て、ミクの世話をしている。
    ときどきこちらを見て、笑いかけてくれた。

    私は動くことができない。
    白衣の胸の上下と背中で組んだ両手に麻縄が巻きついて自由を奪っていた。
    タイトスカートの膝と足首も合わせてきゅっと縛られている。
    もちろん、私を緊縛したのはリズだ、
    彼女は、まるでそれがメイドとして当たり前の仕事であるかのように、さらさらと私を縛り上げてしまったのである。
    本来拘束される側であるはずの彼女が、どうしてこんな技術を持っているのか。

    最も驚いたのは、気持ちいいことだった。
    私は全身を縛られて快感の中にいた。
    身体を締め付ける縄、捻り上げられた腕、ぎゅっと閉じて密着させられた左右の足。
    あらゆる自由が奪われているのに、どうしてこれほど悦びがあるのか。

    私は、研究で様々なM女性を観察してきたが、彼女たちが被虐の性感を得るのに恥辱と苦痛は切り離せないものだった。
    これらは正に快楽の入口だったのである。
    しかしリズの緊縛は違った。
    拘束感だけは十分にあって無力であることを思い知らされるが、そこに苦痛はないのである。

    何だろう、この感覚は。
    この幸福感は。
    女に生まれて緊縛されたことが、これほどに嬉しいと思える感覚は。
    私は今までの研究が不十分だったと思い知った。

    「クレアさん、綺麗です」
    リズがそう言ってくれた。
    ああ、たったそれだけで、幸福感が倍増した。
    「リズ。いったいどんな魔法を使ったの? 縛られているのに、どうしてこんなに気持ちがいいの?」
    「これは、私たちメイドが女性のお客様にお尽くしするときの作法の一つです。ただ、喜びだけを感じていただく緊縛です」

    何て子だろうか。H氏の屋敷には、こんなメイドがいるのか。
    リズに私の研究の助手を務めてもらうことはできないかしら。
    私は真剣に考えてしまいそうになった。

    リズに縄を解いてもらったのは1時間以上も過ぎてからだった。
    自由の身に戻ることがこれほど嫌に感じるとは、自分でもあきれるほどだった。
    もしかして、私はすっかりM女になってしまったのだろうか。
    椅子から立ち上がるとき下着がぐっしょり濡れていることをリズに気付かれないか心配したけれど、彼女はずっと微笑んでいるだけだった。

    14.
    夕刻。
    キャンベル家からやってきたのは、昨日までの男たちとは違って、スーツとネクタイを着けた物腰の柔らかい男性だった。
    男性は「失礼します」と一言挨拶して、リズを後ろ手に縛り始めた。
    私がリズから受けた緊縛と同じ、荒々しさのない丁寧な緊縛だった。

    リズの手首は背中で高く吊り上げられて、左右の指の一本一本まで固定された。
    胸の上下に掛かる縄は彼女の乳房をしっかり持ち上げ、首の両側から取り回した縄と合わせて、芸術的な美しさを感じさせた。
    そう、緊縛されたリズは美しかった。

    「世話してくれた方にご挨拶を」
    「はい」
    男性に言われて、リズは縛られたまま私の方を向いた。

    「クレアさん、親身にお世話いただいたこと、一生忘れません」
    え?、この挨拶、何よ。
    「メイドの最後の務めを果たしてまいります」
    「・・ちょ、リズ。まるで生きて帰ってこないみたいな」
    「お願いがごさいます」
    え?
    「もし、私の身に何かございましたら、ミクを破棄して下さいませ」
    「あなた、何を言ってるの」
    「石板の足元に赤いバルブがあります。それを回しますと青酸性の薬剤が注入され、苦しまずに死にます」
    「リズ!」
    「あれは、誰かの世話なしでは生きられない存在なのです」
    「・・」

    この子の覚悟は本物だ。そしてミクの覚悟も。
    私は黙った。

    リズは深くお辞儀をすると、彼女を縛った男性に伴われて出て行った。
    ミクの石板も運び出され、部屋には私だけが残った。

    15.
    チャールソン所長に呼び出された。
    「君は、誰かとイブの夜を過ごす約束があるかね?」
    「いいえ。残念ながら」
    「じゃあ、今すぐ帰って着替えて着なさい。セミフォーマルでいい。1830に集合だ」
    「どこへ行くんですか?」
    「我々もキャンベル家のパーティに出席するんだよ。さっき、許可が下りた」
    わお!!

    16.
    キャンベル家の屋敷は広大な敷地の中にあって、会場の大広間には1000人近いお客が集まっていた。
    きっと世界中の富豪が集まっているのだろう。
    女性たちのほとんどは派手でセクシーな衣装を着ていて、私のような地味なドレスは少なかった。
    半裸に近い格好で手錠や首輪を掛けられ、連れの男性に引かれている女性も珍しくなかった。
    彼女たちはセレブなのだろうか、それともペットだろうか?

    パーティのオープニングでは、今年のグラミー賞受賞歌手、セレーネ・ギャレーが登場してヒットメドレーを歌った。
    イブの夜にこんなトップ・アーティストを招くなんて、さすがにキャンベル財団だと思った。
    サプライズはその後に起こった。
    歌い終えて観客の拍手に応える彼女を、突然現れた男たちがピンクのステージ衣装のまま縛り上げ、頭上に高く吊り上げてしまったのだ。
    喝采の中、みじめに宙吊りにされてしまったロックの歌姫。
    これは、セレーネ自身も承諾しているアトラクションだという。
    このクリスマス・パーティでは、例年、話題となった女性歌手や女優、スポーツ選手が招かれてサプライズ・ボンデージを受けるのが恒例なのだ。
    こんな有名人の緊縛が、どうしてメディアやネットに暴露されないのか。
    私が質問すると所長は「金持ちは口が固いのだよ」と教えてくれた。

    大広間に続く廊下はギャラリーになっていた。
    たくさんの彫刻や写真、絵画、そして "オブジェ" が展示されている。
    オブジェは世界中の若い女性たちだった。
    白人・黒人・黄色人種。様々な肌の色の女性が鎖に繋がれたり、檻に入れらたり、あるいは何かの造形物に複雑なポーズで拘束されたりしていた。
    女体を美しく飾ることを目的としていて、美しければ、モデルの女性の苦しさは関係がない。
    どれも著名な美術家やデザイナーによる作品だという。
    ひとつひとつに凝ったタイトルを記したプレートが添えられていた。

    私は "Verbena" と名付けられたオブジェの前で足を止めた。
    それは、まさにバーベナの花のように赤い髪をポニーテールに括った少女だった。
    一糸纏わない、少年のように華奢な肢体は、どう見ても11~2才くらいだった。
    両手を手枷で拘束。その手枷を鎖で吊り上げて爪先立ちにさせ、さらに全身に小さな赤い花の絵をペイントされている。
    ふくらみかけた乳房、薄いピンクの乳首、無毛の股間。
    まるで等身大のお人形だった。
    まだエレメンタリー・スクールに通うような子をこんな目にあわせてもよいのか、という批判は、この美しさの前にすべて吹き飛ぶと思った。
    こんなオブジェなら手元に置いて飾りたい。
    そう願ったのは私だけではないはずだ。

    ギャラリーの一番奥には、ミクの石板が展示されていた。
    反対側から明るい光を透過させて、中に埋まった彼女のシルエットを見せている。
    隣にモニタパネルを設置して、石板製作の様子を上映していた。
    黒いラバースーツを着た少女が四角い型の中に固定され、石膏を流し込まれている。
    こんなビデオがあったのか。
    観客たちは映像を見て驚き、そして目の前にある石板がまさにそれであることを知って再び驚くのだった。

    ・・そうだ! リズは?
    私は展示されている女性の中にリズがいないか探したけれど、彼女を見つけることはできなかった。

    続き




    異国のクリスマスパーティ(3/3)

    17.
    大広間に戻ると、来賓の紹介が行われていた。
    私は、キャンベル家の総帥クリストファー・マーク・キャンベル卿と、日本からのゲスト、H氏の姿を初めて見ることができた。
    一方は、若く気高いハンサムで、そしてもう一方は、老練で底知れない雰囲気だった。

    H氏の後ろに、眼鏡を掛けた黒髪の小柄なメイドが立っていた。
    リズだ!
    背中で固定された手首。すべての指の動きまで封じる緊縛。
    研究所で縛られたときのままだった。
    リズの縄を引いているのは、彼女を迎えにきて縛った男性だった。
    その男性がリズの足元に屈んでブーツを脱がせた。
    さらにスカートをめくりパニエの中に手を入れ、ドロワーズとストッキングを脱がせた。

    大きな十字架が運ばれてきて、観客からよく見えるように斜めに置かれた。
    リズは一旦縄を解かれ、十字架の上に両手を広げて横たえられた。
    そうして再び手首と足首、腰のまわりを十字架に固定された。

    メイドの磔刑!
    リズには気の毒だけど、私はちょっと楽しみな気持ちになる。
    実は、私が学位論文のテーマに中世魔女狩りを選んだ理由の一つは、磔に掛けられた魔女の美しさに惹かれたことだった。
    磔は拷問ではなく、処刑の手段だった。
    魔女と認められたか、または拷問で自白させられた女性は、磔にされて火で焼かれたのだ。
    哀れな女性を架けた磔柱が群集の前ですっと立ち上がる瞬間。
    まだ幼稚園も出ていなかった私は、映画でそんなシーンを見て衝撃を受けた。
    その残酷さにではない。その美しさに驚いたのだった。

    ・・あの女の人は、これから殺されるというのに、どうして泣き叫ばないの?
    ・・どうしてあんなに綺麗な顔をしているの?

    私の中に、殺される女性、拷問を受ける女性のイメージが刻み込まれた。
    成長するに従い、被虐を受け入れる女性の心理に興味を抱くようになった。
    それが、今の私の職業を決めた。

    十字架に架けられたリズも美しかった。
    長袖のメイド服を着ているから、上半身の露出は顔面と手首だけ。
    下着まで脱がされてしまった下半身も、ロングスカートとパニエのせいで足首から先しか見えない。
    リズは顔をやや横に背け、眼鏡の目を閉じている。
    もはやリズは動けない。逃げられない。
    彼女はすべてを受け入れている。
    もし本当に火あぶりにされたとしても、リズはきっとその運命を受け入れるだろうと思った。

    何て魅力的な情景なのかしら。
    私は半ばうっとりと十字架のリズを見つめ続けた。

    18.
    男性が金属製の工具箱を持ってきた。
    中から釘と金槌を出した。
    銀色に輝く釘は4本。長さが10インチもありそうな大きな釘だった。
    男性はその1本を持ち、先端をリズの右の手のひらに当てた。
    躊躇することなく、金槌でその頭を打った。

    一瞬静かになった会場に、悲鳴、拍手、口笛がわき起こった。
    どよめきのせいで、釘を打つ音は聞こえなかった。
    ただ、何度も打ち込む姿だけが見えた。
    あっという間に釘は手のひらを貫通し、十字架の横梁に打ち込まれてゆく。

    リズの右手が釘で縫い付けられた。
    左手にも釘が打ち込まれる。
    そうして、次に揃えて伸ばした左右の足の甲。

    「あぁっ」
    右足の甲へ釘が打たれたとき、リスは初めて声を悲鳴を上げた。
    声を聞いたのはそれ一回だけだった。
    あとは、ただ、釘が少しずつ沈むのに合わせて、くしゃくしゃになった顔を振り、歯をくいしばって耐えるだけだった。

    男性は左右の足にも釘を打ち終えると、4本の釘頭をもう一度細かく打って調整した。
    それから、彼女のずれてしまった眼鏡をまっずぐに直した。

    十字架がすっと立ち上げられた。
    両手を広げて固定されたリズも一緒に立ち上がる。
    会場から割れんばかりの拍手と喝采が起こった。
    その前で、キャンベル卿とH氏が立って握手をする。
    釘打ちされた十字架のメイド少女は、H氏からキャンベル卿への贈り物なのだ。

    釘打ちの磔

    19.
    「リズ!」
    飛び出して行こうとする私の腕を所長が掴んで止めた。
    「バカなことをするものではないっ」
    「釘で打つなんてっ。死んでしまいます!!」
    「心配ない。あの釘は見た目よりずっと細いから、出血はすぐに治まる」
    「でも、でも」
    「落ち着きなさい!」

    私は涙をぼろぼろ流して泣いていた。
    リズしか見えなかった。
    彼女の手足から血が流れていた。真っ赤な血だった。
    私も血を流しているような気がした。
    生身の身体を釘で打たれる。その痛みを私も感じていた。
    ずきずきと心臓をえぐられるような痛みだった。

    どうしてリズが磔に架けられるのか。
    罪を負うべきは、私ではないか。
    実験の名目で、数多くの女性を苦しめてきた私こそ、あそこで処刑されなければならないはずなのに。

    パーティは朝まで続き、十字架に掛けられたリズもずっとそのまま飾られた。

    20.
    リズとミクが研究所に戻ってきたのは、午後になってからだった。
    リズはもう拘束されておらず、車椅子に乗っていた。

    「リズ!! 生きていてくれた!」
    私はリズに抱きついて、しばらく涙を流した。
    「・・痛かったわよね、辛かったわよね」
    「ありがとうございます。クレアさん、私のために泣いて下さっているのですね」
    彼女の手と足は白い包帯に巻かれていた。
    その包帯は血がにじんで赤くなっていた。
    「あの釘は特殊な細い物ですから、骨にも神経にも異常はありません。傷がふさがれば、元通りに動けるようになります」
    「よかった。もしあなたが一生歩けないことになったら、どうしたらいいのかと思ってたの」
    「お願いがあります。クレアさん」

    リズの依頼は、ミクのことだった。
    彼女が動けるようになるまでの間、私が替りにミクの世話をするのだ。
    クリスマス・パーティは終わったけれど、ミクは石板から解放されないらしい。
    設備の整ったH氏邸以外の場所で石板を無理に解体すると、中のミクの命に関わるという。

    「・・じゃあ、あなたたち、またあのコンテナで帰るつもりなの?」
    「はい」
    リズはそれが当たり前というふうに笑って答えた。
    「彼女は、ミクは、大丈夫なの? 2ヶ月近くも閉じ込められたままになるわ」
    「ご心配なく。その程度でしたら、この子に問題はありません」
    「そ、そうなの!?」

    21.
    こうして、リズとミクは、引き続き研究所内で過ごすことになった。
    私はリズの指導を受けてミクの世話をした。

    「・・違います。真ん中は尿タンパクです。ブドウ糖は下側。いい加減に覚えて下さい」
    「うるさいわねっ。まだ慣れてないんだから仕方ないでしょ」
    私はミクの排尿を取り分けたカップと尿検査キットの試薬棒を持ってあたふたしている。

    「それにしても、クレアさん、不器用ですねぇ」
    「はっきり言うわねぇ、あなた」
    「はい。見てられません」
    車椅子に座ったリズがすまして返事をする。
    「じゃあ、見てなくてもいいんだから」
    私はそう言うと、手を伸ばしてリズの眼鏡を外してしまった。
    「ああっ、そんな。クレアさんの意地悪~!」
    彼女は眼鏡がないと近くにいる私の顔すら見えなくなるのだ。
    もちろん、眼球に接着されたコンタクトレンズのせいである。
    両手を振り回して慌てているリズを見ると、彼女が本当に優秀なメイドなのか疑わしくなる。

    私はリズの頬を両手で押さえた。
    リズはすぐにおとなしくなって目を閉じてくれた。
    そのまま唇を寄せて、長めのキス。彼女の唇は、とても柔らかくて甘かった。

    「あの、クレアさん」
    「何?」
    「その手、おしっこがついたままでしょう?」
    「あら、ごめんなさい」
    私たちは声を合わせて笑った。
    もう一度、こんどは短いキスを交わして、リズに眼鏡を返してあげる。

    「ね、ミクも笑ってる?」
    「はい。ころころ笑っていますよ」
    テーブルに置いたタブレットのディスプレイにはミクの脳波が表示されていた。
    その脳波がさざなみのように揺れている。
    ミクの世話をするようになって、私も彼女の感情が読み取れるようになっていた。

    「検査結果も良好でしたね。じゃあ、久しぶりにプレゼントをあげましょうね」
    リズが石板に話しかけた。
    ミクの脳波がごく短い間、激しく揺れて、それから一定周期の強い波に変わった。
    私にも分かった。
    ・・これは、"期待" の感情ね!

    「クレアさん、お願いします」「OK!」
    私はタブレットを操作してリズの股間に装着されたバイブの電源を入れた。続いて静電気パッドも起動する。
    女の子にとって一番気持ちのいい、"弱"~"中"のレベルに設定してあげる。
    ディスプレイの脳波表示を呼び出すと、ミクの脳波がびくびくと揺れていた。
    それから、細かい振動になって、夜空の星のようにきらめいた。
    ミクの歓喜が、静かに伝わってきた。

    「・・じゃあ、私たちも」
    「え、さっきキスしたところですよ? クレアさん」
    「あれはオードブル。メインディッシュはこれからよ」

    私はそう言いながら、リズのスカートをたくし上げる。
    車椅子に座るリズはドロワーズを穿いていなかった。
    私は彼女に下着を許していないのだ。
    どうしてかって?
    それはもちろん、リズの可愛い身体を楽しむためじゃないの。

    22.
    リズは彼女自身のバックグラウンドを教えてくれた。
    彼女は日本の外交官の娘で、ずっとロンドンで育ったという。
    クィーンズ・イングリッシュは本場仕込みだったのだ。
    幼いころからマザーグースとシェイクスピアに親しんで育った。
    私立のインディペンデント・スクールを飛び級で卒業し、15才のとき日本のH氏邸に入った。
    「それからのことは、内緒です」
    リズはそう言って笑った。
    「ただ、お屋敷のお勤めは、私を人間としても、女としても成長させてくれました」

    「あなたは将来どうするの? 学者になるの?」
    「それは私自身では決められません。命じられて研究や教育の道に進む者、芸術家になる者もいます。どなたかの妻になる者もたくさんおりますし、あるいは・・」
    「・・あるいは?」
    「勤めの半ばで命を失う者もいます」
    「それでも、幸せなのね?」
    「はい」

    日本の大富豪H氏の屋敷。
    いったい、どんなところだろうか。
    アメリカの金持ちと日本の金持ち。
    そこまで考えて、私はキャンベル家のことすらほとんど知らないことに気づいた。
    所詮、私には縁のない世界だろうか。

    23.
    やがてリズの傷は癒えて、ミクの世話を自分できるようになった。
    二人が日本に発送される日が来た。

    コンテナ内部の巨大なバッテリーには、彼女たちが1ヶ月は生きられるだけの電力が充電された。
    ミクの石板が運び込まれて固定された。
    食糧その他の物資も積み込まれた。

    「ダイヤルのナンバーを設定して下さい。そのナンバーはクレアさんだけが覚えておいて、後で日本に連絡して下さい」
    「わかったわ」

    私はリズに言われて、コンテナ扉のダイヤル錠の番号を新しくセットし直した。

    『警告 : 施錠機構を不正に破壊すると、内容物が損なわれます』

    あのラベルの文字が目に入る。
    「脅かしにしても、大げさな警告ね」
    「脅かしではありません。ナンバーを3回間違えるか、器具などを使って不正に扉を開けようとすると、耐タンパー機構が起動します」
    「え。いったいどうなるの?」
    「この錠前は永久に固定され、内部には神経性のガスが充填されます」
    「まさか」
    「私もミクも、30秒以内に死亡します」

    ああ、もう二度と驚くまいと思っていたのに。
    もしあのとき、私が強引に扉を開けようとしていたら。

    「ご心配なく。きっと無事に帰れます」
    リズはにこやかに笑って、コンテナの中に入った。

    コンテナ内の居住スペースにミクの石板を設置すると、リズが過ごせる空間は20インチ(51cm)ほどの幅しかない。
    窓もないこんな場所で、彼女は2週間暮らすのである。
    ・・寂しいでしょうね。
    そう言いかけて止めた。
    彼女の心は強いはずだ。私よりも、ずっと。

    私は二人に別れを告げて、そしてコンテナの扉を閉じた。

    24.
    こうしてリズとミクは日本に帰っていった。

    私は、再びM女の人体実験を繰り返す日々に戻った。
    様々なスキルの女性を集めては拷問試験を行なう。
    たくさんの女性たちが、私の前で苦しみ、泣き、そして悦んだ。
    私はそれを記録し、考察して、次の被検体と試験方法を検討する。
    今までと何も違うことはない。

    ただ少し変わったのは、その被検体の一人に私も含まれるようになったことだ。
    被虐女性の心理を客観的に研究するために、私自身は、被虐でも加虐でもない第三者の立場に自分を置くように努めてきた。
    しかしリズを見て、そしてリズに縛られて考えを変えたたのだ。
    女である私は、あの強烈な感覚を味わうことができる。
    それを知らずして、被虐心理の何が分かるというのか。

    こうしてある日、私は私自身を完全拘束して拷問にかけるよう実験助手に指示したのだった。
    するとあの助手の男の子、ジミーは何と言ったか。
    「俺、エルトン博士のこと、ドSだと思ってましたけど」
    ああ、神様。
    私は今まで、そんなにひどいことをしてきたのでしょうか。

    リズとミクの消息は分からなかった。
    決して日の当たらない仕事をしている彼女たち。
    きっと無事に生きて、頑張っているのだろうと思った。

    25.
    所長室に呼ばれた。
    リズとミクが日本に帰って半年後のことだった。

    ・・またH氏が招かれる。もちろんあの二人もやってくる。
     前回のパーティで評判が良かったので、再び呼ばれることになったらしい。
     クレア、あの子たちのケアを頼むよ。

    わーお!!
    わーお!!

    私は再びリズとミクに会えることになった。
    またもや海上輸送されてくるという。
    二人がやってくるのは来週。
    ・・ということは、彼女たちはもうコンテナの中だ。
    誰かが無理に扉を開けようとしたら、命を奪われてしまう運命。
    想像するだけで胸がきゅんと鳴った。

    そしてその日。
    倉庫にコンテナが届いた。巨大な40フィートコンテナ。
    この中にあの子たちが入っている!
    私が扉を開けるのを待っている。
    そう考えるだけで、興奮して心臓が止まりそうだ。
    どき、どき、どき。
    はやる気持ちを抑え、ダイヤル錠を慎重に回して扉を開けた。

    狭い空間に白い石板があった。
    そしてその横にメイド服の少女が立っていた。

    「リズ!!」
    「ご苦労様でございます」
    少女が両手を前で揃えて、頭を深く下げた。
    彼女の衣装は、この前のようなビクトリアン・メイドではなかった。
    胸元まで大きく開いたワンピース。そのままでお尻の形まで分かりそうなマイクロミニスカート。
    この扇情的な格好は、フレンチ・メイド。
    男に見せつけて、性的劣情を誘うための衣装。

    メイドは頭を上げて私を見た。
    長い髪をツインテールに括った、背の高い少女だった。
    「ミクでございます。その節は大変お世話になりました」
    「ミク? あなたはミクなの? ・・じゃあ、リズは」
    「お待ち下さいませ」

    少女は石板の後ろに回って、スイッチを操作した。
    まさか。
    コンテナの中にまぶしい光が溢れ、石板の中の人影がシルエットで浮かび上がった。
    見覚えのある小柄なシルエット。
    まさか。
    頭の左右に膨らんで見えるのは、眼鏡?!
    眼鏡を掛けたまま、石膏の中に固められているのは。
    まさか。

    「これが、リズでごさいます」ミクが言った。

    その瞬間、私は自分の中に強烈なオーガズムを感じた。
    大好きなリズ。賢くて、可愛くて、素直で、シェイクスピアを愛するリズ。
    彼女が受ける扱い。彼女の運命。
    いろいろな想いが通り過ぎ、私の心をかき乱し、そして下半身を刺激した。
    我慢しきれずに、その場に膝をついた。
    私は白衣の上から両手を股間に押し当て声を出して喘いだのだった。



    今年最後のお話です。

    H氏邸シリーズでは『架刑鑑賞会』以来の釘打ち磔になりますね。
    あのときはニーソックスの上から釘を打つのが作者の美意識上許されず、手だけの釘打ちになりましたが、今回はロングスカートで素足の上に釘を打ちつけました。
    主人のため、お客様のため、苦しんでくれる彼女の姿をお楽しみいただければと思います。

    リズとミクが海上輸送されたコンテナの仕様はいろいろ考えましたが、本文ではあまり書けなかったので、ここに記しておきます。
    40フィートコンテナの規格寸法は、長さ12.2m、幅2.4m、高さ2.6m。
    内部には、二人の居住スペース、物置、空調装置、そしてリチウムイオンバッテリーの蓄電システムが設けられています。
    コンテナ容積の8~9割近くを占めるのが蓄電システムです。
    元来は災害時などの停電に備えるためのコンテナ形蓄電システムは、ネットで調べると容量2.8MWhくらいのものがあるようです。
    これだけあれば、二人の生存環境を30日間維持するには十分でしょう。

    蓄電システムが大きいため、居住スペースはわずかで、長さ1.2m、幅2.1m、高さ2.1m。
    ここにミクの石板を設置するので、リズが過ごす空間はさらに狭く0.5m×2.1m×2.1m。・・監獄ですねww。
    物置には水・食糧・衣類・最低限のサニタリー品が置かれます。
    お風呂やトイレは、もちろんありません。
    リズさんは、お風呂の替りに身体を拭くだけ、排泄は携帯トイレを使います。
    排泄物は外に捨てる訳にいかないので、水分を再利用のため回収して、残りは真空パックで保管されます。

    ・・

    さて、拙サイトは先月満5年を迎えました。
    たくさんの方にお読みいただいたことに感謝申し上げます。
    次回の更新は1月の後半になります。
    寒い毎日が続いていますが、皆様、風邪など引かぬようお気をつけて、穏やかな新年をお迎え下さいませ。




    未来の帝王(1/2)

    1.
    小さな男の子が屋敷の中を探検していた。
    カーキ色のチノパンと白いTシャツを着ている。
    身長は120センチもなかった。小学1~2年生くらいだろうか。
    広い廊下の両側に並ぶ部屋を順番に覗いては、立ち働くメイドたちと目が合うと逃げるように走って行く。

    「お客様っ、お待ち下さいませ」
    後から呼び止められて、少年は振り返った。
    栗色の髪のメイドが微笑んでいた。
    紺色のメイド服。白いヘッドドレスとエプロン。ミニスカートと紺ニーソックス。
    こちらは背が高い。身長170センチに近かった。
    年齢もメイドたちの中では年嵩に見えた。もう20才近くではないだろうか。

    「お屋敷をご案内いたしましょうか?」
    「・・あ、僕は」
    「お客様は、お父様と一緒にご滞在でいらっしゃいますね」
    「う、うん。夏休みはここで遊べるって言われて来たけど、退屈で・・、パパは誰かに会いに行って戻ってこないし」
    「お父様は当家の主人とご懇談中のようです」
    「僕、3◯Sがやりたいんだけど、持って来るのを忘れたんだ」
    「ご用意いたしましょうか?」
    「あるの!? スマズラだよ?」
    「はい、ございます。お部屋にお持ちしますか? それとも娯楽室においでになられますか?」
    「娯楽室って?
    「ゲームコーナーでございます」
    「ゲームコーナーに行く!」
    「ではどうぞ、こちらへ」
    少年は喜んでメイドについて行った。

    2.
    誰もいない娯楽室で少年は遊んだ。
    ゲーム機に飽きると、少年を案内したメイドと一緒にエアホッケーゲームをして遊んだ。
    メイドは強かった。でも少年といい勝負になるように、わざと腕を合わせて戦ってくれた。
    優しくて、よく気がついて、明るい人だった。
    少年はこのメイドのことが大好きになった。

    「ねぇ、お姉さんは僕のこと、ボクって呼ばないんだね。他の人みたいに」
    「お客様にそのようなことは申しません」
    「僕、3年生なんだよ。でもみんな1年と間違えるんだ。確かにチビだけどさ、そんなに年下に見える?」
    「いいえ。お客様は立派な紳士でいらっしゃいますよ」
    「シンシって?」
    「男の方という意味でございます」
    「そんなの当たり前じゃない」

    メイドは微笑んだ。今まで見たことのない不思議な微笑みだった。

    「私どもメイドは、どんなお客様にもお仕えいたしますが、特に紳士のお客様にお喜びいただくよう躾られております」
    「何のこと? 分からないよ」
    「難しいかもしれませんね。でも、今はそれでよろしいです。お客様は何でもできる、とだけご理解下さいませ」
    「じゃあ、じゃあ、もっと遊んでもいい? お姉さんとずっとゲームをしたいってお願いしてもいい?」
    「はい。喜んで」
    「やった!」

    少年は再び嬉しくなった。さっきみたいに、ゲームができるからという理由ではなかった。
    このメイドと一緒にいられることが嬉しいのだった。

    3.
    目が覚めると少年はソファで寝ていた。
    頬の下に柔らかいものがあった。あのメイドが膝枕をしてくれていた。
    「たくさん遊ばれて、お疲れになったようですね」
    メイドが優しく言った。
    いけない、寝ちゃった!
    慌てて身体を起こそうとする。赤い顔をしているのが自分で分かった。

    「そのままお休みいただいて、よろしいのですよ?」
    少年はメイドの顔を見上げた。
    「いいの?」
    「はい。お望みの通りになさって下さいませ」
    少年は寝返りをして、メイドの膝に手を乗せた。
    スカートとニーソックスの間に、つるつるする素肌が出ていた。
    胸がどきどきした。
    もっと触っていたい衝動にかられ、ソファから転がるように床に降りた。
    正面からメイドの腰に両手をまわすと、膝の間に顔を埋めた。
    ・・あれ。
    少年は自分が勃起しているのに気付いた。
    少年のそこは、同じ年頃の他の男の子よりも大きかった。
    チビのくせにおちんちんだけ大きいなんて、知られるのが恥ずかしくて、腰をむずむずさせた。

    メイドが少し笑ったような気がした。
    自分でミニスカートの裾をたくし上げると、膝を開いた。
    え?
    少年が驚く暇もなく、顔面が太ももの内側に沈み込んだ。
    額が白いものに突き当たる。
    お姉さんのパンツだ!
    ぎゅうんと股間が膨らんだ。さっきよりずっと固くなっていた。
    柔らかい太ももに挟まれた顔は動かせなかった。
    どうしたらいいか分からなくなって、ただ、左右にまわした手でメイドの足をぎゅっと押さえた。
    息が苦しくなった。
    大きく空気を吸うと、甘酸っぱい匂いが胸一杯に満ちた。

    未来の帝王

    「お客様」しばらくしてメイドが言った。
    「ご覧になりますか? 女の身体を」
    「・・うん」
    ようやく少年は答えた。

    4.
    メイドは少年の前でメイド服と下着を脱いだ。
    「粗末なものではございますが、ごゆっくりご覧下さいませ」
    向かい合わせに正座して、頭を床につけた。
    粗末だなんて思わなかった。お姉さんの裸はものすごく綺麗だった。

    呆然と見ていると、メイドは少年の手を取り、自分の胸に導いた。
    「どうぞ、お手で触ってお確かめになって下さいませ」
    おっぱいくらい知ってるぞ。少年は考えた。
    小学校に上がるまで、ママとお風呂に入ってたんだ。
    パパにお風呂くらい一人で入れないと駄目だと言われてそれから入ってないから、ぼんやり覚えているだけなんだけど。
    でも今、目の前にあるおっぱいは、明らかにママのとは全然違った。
    ママのは大きいけれど、乳首がもっと黒っぽくて、それに下に向って垂れていた。
    お姉さんのおっぱいはピンク色で、何も支えてないのに自分で斜め上を向いているんだ。

    少年は恐る恐るメイドの乳房を撫でた。
    それはまるでマシュマロみたいに柔らかかくて、爪を立てたら破れて中身がこぼれるんじゃないかと思った。
    女の人のおっぱいって、お母さんになって赤ちゃんにお乳を飲ませたら垂れちゃうんだろうか。
    そう思っているうちに、少年はメイドの乳首を咥えたくなった。ものすごく咥えたくなった。
    でも、そんなことをしたら自分がお乳を飲みたがっていると思われてしまう。
    そう考えて我慢した。

    少年はメイドの腹へと指を辿らせた。
    どこもすべすべしていて、触り心地がよかった。
    細くくびれた脇腹を触り、それからおへその下まで触った。
    そこには栗色の毛が控えめに生えていた。髪の毛と同じ、細くて柔らかい毛だった。
    はっきりとは覚えていないけど、ママの毛はずっと量が多くて、それに固くてごわごわしていたような気がする。
    少年は右手をアンダーヘアに触れたまま、メイドの顔を見た。
    ・・この下も、見ていい?
    メイドが微笑んだ。
    正座していた膝を崩すと、ゆっくり足を開いて中を見せてくれた。
    うわあっ。
    少年は心の中で大きな声をあげた。
    栗色の毛とお尻の穴の間、そこに見たことのない不思議なモノがあった。

    「ここはご存知でいらっしゃいますか?」
    少年は首を振る。ママにだって見せてもらったことのない場所だ。
    「では、ご説明申し上げますので、よくお勉強下さいませ。お客様にはとても大事なことでございます」
    メイドは自分の人差し指と中指でそれを広げてくれた。
    「左右にヒダのようになっている部分がお分かりになりますでしょうか?」
    「うん」
    「これを小陰唇と申します。その中にあるのが膣口、赤ちゃんが出てくる穴でございます」
    「これ、穴なの?」
    「はい。・・どうぞ、指を入れてお確かめ下さいませ」
    少年は人差し指を差し込む。それは指のつけ根までずぶりと入った。

    「暖かい。それに、濡れてぬるぬるしてる。これ、おしっこ?」
    「おしっこではございません。それは男性を受け入れ易くするために分泌された液体です。おしっこの穴は、少し分かりにくいかもしれませんが、膣口の上にございます」
    「これ?」
    「はい。それが尿口でございます」
    すごいや!!
    少年は感心する。女の人のおまんこって、何て複雑なんだろう。
    ただ割れ目があるだけって思ってたのに。

    「上の方に小さな豆のように見える箇所がございます。これを陰核、あるいはクリトリスと申し・・、はぅ!」
    メイドは突然びくりと震えて、声を上げた。
    その突起を少年が無造作に突いたのである。
    「そ、そこは、もっとも敏感な、器官、で、・・んっ、・・はぁっ」
    「あ、ごめんなさいっ」
    自分が触れたせいだと分かって、少年は慌てて指を離した。
    「も、申し訳ございませんっ。つい、声を上げまして」
    「痛かった?」
    「いいえ。ここは女が快感を感じる部分でございます。
    「快感って、触ったら気持ちいいってこと?」
    「・・はい」
    メイドは顔を赤らめて答えた。さっきまでのすました表情ではなかった。
    そうか。気持ちいいのか。
    「じゃあ、もっと触ってあげるよ。お姉さんを気持ちよくしてあげる」
    「はい?」
    メイドは一瞬驚いた顔をして、それから笑って深呼吸をした。
    「・・では、覚悟いたします。それで女がどうなるのか、よくご観察下さいませ」
    カンサツ? 気持ちよくしてあげるだけなのに、難しい言い方するんだなぁ。
    少年は二本の指でクリトリスを挟んだ。
    「はぁっ、・・ん、 ・・あああぁっ」
    メイドが声を上げた。
    首をのけ反らせ、膝から爪先にぴんと力が入った。
    それは、さっきのように押さえた声でなくて、自分の性感を自然に表現したものだった。
    「・・はあっ、・・はぁん! ・・ああっ」
    少年が与える刺激に同期して、メイドは声を上げ、身体をがくがくと震わせた。
    膣口から透明な液体がどくどくと溢れ、部屋の中に酸っぱい匂いが広がった。

    ・・すごい!
    少年はメイドを刺激しながら、自分も刺激されていた。
    自分の指の動きのわずかな変化が、何倍もの増幅されて彼女の反応に現れた。
    これ、スイッチなんだ。女の人のスイッチなんだ。

    少年はクリトリスへの刺激を止めなかった。
    メイドは少年の指の動きに合わせて喘ぎ続けた。その喘ぎ声は次第に大きく、狂乱的になっていった。
    ただし、メイドは、いくら乱れても自分で腰を動かしたり両足を閉じたりすることは決してなかった。
    それは少年が触り易いように気遣う配慮だったが、少年がそれに気付くことはなかった。

    5.
    どれくらい時間が過ぎただろうか。
    「あ、んっ・・・、あああああぁぁっ!!」
    がくがくとメイドの身体が揺れて、力が抜けた。
    二人はそのまま床に倒れこんだ。
    「はぁ、はぁ・・。お姉さん、ごめんなさい」
    「はぁ、はぁ・・。お客様」
    少年はメイドに抱きついて、その胸に顔を埋めた。
    つんつんに尖った乳首が少年の頬を突いた。

    「僕、最初は、本当に喜ばせてあげたいって思ってた。それだけ、だったんだよ。・・でも、お姉さんがいろいろ動くのが面白くなって、遊んじゃったんだ。こんなに小さなスイッチで女の人をコントロールできるなんて、すごいって思ったんだ」
    少年は真っ赤な顔で言った。
    「ごめんなさいっ」
    メイドは少年の頭を撫でた。
    「・・女をコントロール、でございますか」
    彼女自身も赤い顔をしていて、栗色の髪はばらばらに乱れていた。
    「まだ8才でいらっしゃると伺っておりましたが、さすがでございますね」
    「何のこと?」
    「いいえ、お客様。本来でしたら、このように御髪(おぐし)に触れるなど許されないことでございますが、お許し下さいませ」
    「どうして謝るの?」
    「いずれ、お分かりになられると存じます」
    メイドは少年を抱いたまま言った。

    「・・お願いがございます」
    「?」
    「これからは、私や他のメイドに "お姉さん" とお呼びかけになるのはお止め下さいませ」
    「なら、どう言ったらいいの?」
    「ただ、"お前"とお呼び下さいませ」
    「それは言っちゃいけないんだよ。男が女にお前なんて言い方したら、ダンソンジョヒになるんだよ」
    「よく分かっておいでですね。普段は口にしてはいけない言葉です。もし学校で女の子に向って使ったら、引っ叩かれるかもしれませんね」
    メイドはそう言って微笑んだ。
    「・・でも、このお屋敷に限ってはそうお呼び下さいませ。男尊女卑でよろしいのです。紳士であられるお客様は、それだけで、私のような女よりも偉いのです」
    「そうなの?」
    「では、お呼び下さいませ」
    「えっと、じゃあ、お前」
    「はい、お客様」

    照れくさそうに少年は笑った。
    女性に向かってお前と呼ぶのは悪い気分じゃあなかった。
    「・・あの」
    「何?」
    「大変申し訳ございませんが、そろそろお降りいただいてもよろしいでしょうか?」
    あ、いけね。
    少年は全裸のメイドの上に乗って、抱きついたままだった。

    メイドは起き上がると、少年をソファに座らせた。
    「私めから、お客様にお仕えしたく存じます」
    「?」
    メイドは少年のズボンの前を開けた。
    「え!? 何をするの]
    「どうぞ、そのままおくつろぎ下さいませ」

    メイドは前にひざまずくと、少年のペニスを出して胸の間に挟んだ。
    うわぁっ。
    少年のペニスは既に包皮がめくれて、大人と同じ形をしていた。
    それが柔らかいおっぱいに包まれて、一気に固くなった。
    メイドは少年を座らせたまま、自分の身体を上下させて、ペニスを刺激し続けた。

    何なんだろう、これは!?
    今までも自分でおちんちんを触って気持ちよかったことはあるけれど、こんな感じは初めてだった。
    意識がそこに集中する。
    メイドのお姉さんは、腰を曲げたり伸ばしたりしながら、自分のおっぱいでおちんちんを擦ってくれていた。
    乱れた髪が上下していた。
    無意識に下半身に力が入った。
    腰が浮き気味になると、メイドはそれに合わせて自分の身体を引いて、おっぱいに挟んだ状態を保ってくれるのだった。

    少年のペニスが勃起して十分に固くなったことを確認すると、メイドは一旦離れて部屋の隅のテーブルから金属の器具を出してきた。
    それは手錠だった。
    「どうぞ、これで私めの自由を奪って下さいませ」
    そう言って手錠を少年に渡し、後ろを向いて両手を背中に揃えた。
    少年はメイドの求めを理解した。
    ごくり。
    つばを飲み込むと、手錠をメイドの手首に掛けた。
    「鍵はあの引き出しの中にございます。私めをお好きなだけ弄んだ後、手錠を外して下さいませ」

    全裸で後ろ手になったメイドは、再び少年の前に膝をついた。
    身を屈めて少年のペニスを口に含んだ。
    それはもう、ほとんど大人のサイズまで怒張していた。
    舌と歯で刺激を受ける間、少年は我慢できずに、両足をメイドの腰に絡めた。
    十分に時間をかけて快感を味わった後、少年は生まれて初めて射精を経験した。

    6.
    翌朝。
    少年は父親から、今日もこの屋敷に留まると言われた。
    屋敷の主人との打ち合わせが増えたからだという。
    「昨日は、誰か一緒に過ごしてくれたのかい?」
    「うん。メイドのお姉さんが遊んでくれた」
    「楽しかった?」
    「うん」
    「じゃあ、また遊んでもらいなさい」
    「うん!」

    部屋に昨日のメイドが来た。
    メイド服ではなく、白いタンクトップとショートパンツを穿いていた。
    ショートパンツから伸びる長い足がまぶしかった。
    「今日はセ◯ウェイで遊びましょう」
    「うわぁ~。乗りたかったんだ!」
    屋敷の庭には専用の走行コースが設けられていた。
    少年はすぐに操縦方法をマスターして、軽快に走り回るようになった。
    二人で並んで走ったり、競争するのは楽しかった。
    やがて少年はセ◯ウェイに乗ったままコースの外に飛び出した。
    「外へ行こうよっ。追いかけてきて!」
    「あ、そちらは」
    メイドは少年を止めかけたが、すぐに考え直してついて行った。
    ・・いずれお知りになること。構わないでしょう。

    個人の屋敷の庭とは思えない、うっそうとした森が広がっていた。
    その森の小道を人々が散策している。
    と、そこにセ◯ウェイが突っ走ってきて、人々は慌てて避けるのだった。
    「危ないよーっ」と叫びながら運転していたのは、小柄な男の子だった。
    そしてすぐ後から別のセ◯ウェイが走ってきて人々たちを追い抜いていった。
    今度はショートパンツの若い女性が「申し訳ございませんっ。申し訳ございません!!」と謝りながら運転していた。
    ・・ひゅ~っ。
    道端に立った中年の男性二人組が口笛を吹いた。
    ・・いい足してるなぁ。
    ・・してるなぁ。
    ・・それで、今のは、何だ?
    ・・さあ。

    少年は有頂天だった。
    森の道はカーブとアップダウンが続いていて、ジェットコースターみたいだった。
    自動車もいない。危ないって叱るパパもいない。
    お姉さんは?
    ちらりと後ろを見る。はるか後ろからついてくるセ◯ウェイが見えた。
    よぉしっ。
    少年はいっそう加速しようとした。
    そのとき。

    ようやく追いついたメイドのセ◯ウェイが隣に止まった。
    少年は口をぽかんと開けて、前方のオブジェを見つめていた。
    そこには金属製の十字架が立っていて、メイド服を着た少女が両手を広げて縄で縛り付けられていた。
    黒髪をポニーテールに括った美少女だった。高校生くらいに見えた。
    A◯Bにだってこんなに可愛い人はいないんじゃないかと思った。
    メイド服の上から縄が強く食い込んで、すごく苦しそうだった。
    少女の足は地面についていなかった。

    「この人は何なの?」少年が聞いた。
    「これは、私と同じ、当屋敷のメイドでございます」
    「何か悪いことをしたの?」
    「そうではございません。この娘は、森をご散歩の皆様のお慰みに、このようにして飾られているのでごさいます。お気づきにならなかったかもしれませんが、ここに来るまでの間にも、幾人も飾られておりました」
    「いったい、どうして」
    「昨日おっしゃられた通り、ここは男尊女卑でございます。皆様にお楽しみいただくために、女はこのように扱われるのでございます」
    「じゃあ、お姉さんも、そうなの?」
    「・・はい」
    「え? やっぱり、ひどい目に合うの? こんなふうに」
    「私も、15~6の頃はこの森の展示品でございました。今は、お客様ご直々に縄を頂戴しております。大変な幸せ者と感謝しております」
    メイドは少年を見て微笑んだ。
    「ご案内いたします。この先は急がずに参りましょう」

    二人は並んでゆっくりと進んだ。
    「あの枝の下をご覧くださいませ」
    「ホントだ」
    そこには、後ろ手に縛られた少女が太い枝から吊られて揺れていた。
    少し進むと、小さなベンチの脇に白くて太い柱が立っていた。見上げると、柱の上面に裸の少女の上半身だけが見えた。
    その少女は下半身を石膏の中に埋められて、そのまま二日も置かれているという。
    さらにその先では、小川に水車が据え付けられていて、その横に半裸の少女が大の字に縛り付けられていた。
    少女は水車と一緒にゆっくり回転していて、頭が真下になると、顔の上半分まで水の中に沈むようになっていた。

    少年の中にどろりとした気持ちが生まれていた。
    どの少女も美しかった。
    綺麗な女の人が、森の中で縛られている。吊られたり、苦しんだりしている。
    男はそれを見て楽しむんだ。ダンソンジョヒなんだ。
    次々と見ているうちに言葉は少なくなり、その代わりに興奮が増して行くのだった。

    続き




    未来の帝王(2/2)

    7.
    そこは小さな広場になっていた。
    中央に両手を鎖で吊られた少女がいた。
    鎖の反対側は高い木の梢に繋がっていて、彼女は爪先だけでかろうじて立っているようだった。
    少女はメイド服を着ていたが、ずいぶんぼろぼろに破れていた。
    破れた服の下にのぞく肌には黒い線が何本も刻まれていた。

    「ここは、あの娘を鞭で責めることができます」
    セ◯ウェイから降りたメイドは、脇の台の上に置かれた鞭を取り上げてみせた。
    50センチほどの棒の先から皮の鞭が伸びた、いわゆる追い鞭というタイプの鞭である。
    「なさいますか?」
    少年は慌てて首を横に振った。
    興味はあったけれど、自分にできるとは思えなかった。
    「僕の代わりに、やってくれる?」

    メイドが鞭を構えた。
    「お尻を向けなさい」
    「はい」
    鎖で吊られた少女は小さな声で応え、おどおどと背中をこちらに向けた。
    その背中が小さく震えているのに少年は気付いた。

    ばちん!
    「あぁっ」
    想像していたより、ずっと強い音がした。
    少女は一回悲鳴を上げた後、ぎゅっと目を閉じている。
    ばちん!
    「ああぁ!!」
    再び鞭が打たれた。
    ミニスカートが飛んで、少女んのお尻がむき出しになった。
    下着は穿いていないのだろうか?

    少年は勃起していた。
    目の前で美少女が苦しむ姿にはっきりと興奮していた。
    ばちん!
    「きゃあっ」
    少年はそっとズボンの前を押さえた。

    「如何でございますか?」
    鞭を持ったメイドが少年を見て言った。
    タンクトップにショートパンツの姿が凛々しかった。
    「・・うん、ありがとう。もういいよ」

    8.
    ぱちぱちぱち。
    拍手が鳴って少年は振り返った。
    そこには中年の男性が二人立って手を打っていた。

    鞭を持ったメイドは男性たちに向かって頭を下げた。
    「・・これは、お客様を差し置きまして、誠に申し訳ございません」
    「いや。面白いものを見せてもらいましたよ」男性の一人が言った。
    「さっきは勇ましく走っていったが、やはりあんた、この屋敷のメイドだったのか」
    もう一人の男性も言った。
    どうやらさっき二人がセ◯ウェイで追い越した客のようだった。

    「・・それで、君が彼女の主人かね」
    いや、僕はそんなのじゃない。
    少年が言う前にメイドが答えた。
    「はい。私はこちらのお客様に仕えております」
    「はっはっはっ。ずいぶん立派なご主人様だな」

    男性たちは、メイドが持っていた追い鞭を受け取った。
    「せっかくだから、私らも打たせてもらうよ」
    「はい。ご存分に打ち据えて下さいませ」

    ぱん!!
    「ぎゃっ」
    鞭の音と少女の悲鳴が流れた。
    さっきメイドが打った鞭よりも、はるかに激しい音だった。
    少女はバランスを崩して、爪先立ちのまま半回転したが、手首を吊られているので転倒することはない。

    ばんっ!!
    「やあぁ!」
    メイド服の前が飛んで、左右の胸が露出した。
    その乳房を狙って、再び鞭が鳴る。

    ばぁん!!
    「ぎ」
    少女は一瞬白目を剥いて、意識を失った。
    膝が曲がり、両手吊りの身体がだらりと動かなくなった。

    「何だ、もう終わりか」
    男性の一人がつまらなそうに言う。
    「申し訳ございません。この娘は今年お屋敷に入ったばかりで、まだ耐性が十分ではございません。・・そのまま打ち続けていただいても、よろしゅうございますが」
    「反応のないマグロを打っても面白くないだろう」
    「ふむ」もう一人の男性が、メイドに目を向けた。
    ショートパンツの生足を舐めるように見る。

    「代わりにあんたを打ってもいいかね。痛めがいのありそうな足をしているじゃないか」
    「それは・・」
    メイドはちらりと少年を見た。
    「そうか。こっちの許しが要るのか。・・どうだね、ご主人。このメイドを少し貸してもらえるかね」
    「あ、僕は」
    少年は少し躊躇する。
    自分を見るメイド。すっと伸びた長い足。
    僕もこの足が苛められるのを見たい。
    お姉さんだってメイドなんだ。苛めてもいいんだ。
    「いいよ。おじさんたち。この人を鞭で打っても」
    メイドは少年の言葉を聞くと、すぐに男性たちに頭を下げた。
    「お許しをいただきました。どうぞ鞭打って下さいませ」

    9.
    男性たちはどこからか縄を取り出すと、メイドをするすると後ろ手に縛りあげた。
    その手際のよさに少年は驚く。
    背中で捻り上げられた両手にはぎちぎちに縄が食い込んでいる。
    タンクトップの腕が何箇所もハムのようにくびれて痛々しかった。
    「く」
    縛られながら、メイドが小さい声を出した。
    目を閉じ、眉間にわずかなしわができている。
    恥辱、そしてどうしようもない切なさに耐える表情。
    何て色っぽいんだろう。
    ぞくぞくした。

    男性たちはメイドを広場の端に立たせた。
    下半身はどこも拘束されていない。
    やや内股加減に立つメイドを挟んで、男性二人が向かい合った。
    揃って追い鞭を構えた。
    「よっしゃ、行こう」
    「おうさ。せーの、」

    ばん!
    二つの鞭が同時に鳴った。
    メイドの両方の太ももに黒い線が刻まれた。
    ばん!!
    ばん!!
    連続して鞭が鳴る。

    ばん!!
    ばん!!
    ばぁん!!
    太もも、膝、脛。
    黒い線が無残に刻まれてゆく。
    男性たちの鞭は執拗にメイドの足、特に太ももを狙っていた。
    メイドは大きくふらついたが、まだ倒れないでその場に立っている。

    彼女は声を上げなかった。
    ただ、歯を食いしばり、首を振りながら、激痛に耐えている。
    目じりにわずかに光るものが見えた。
    ときどき許しを乞うような表情で男性たちを見るが、すぐに諦めて、再び鞭の激痛に顔をゆがませる。
    お姉さん!
    少年は叫びかけて我慢する。
    もしかして、わざと色っぽく苦しんでいるんじゃないか。
    そんな風にすら思える苦しみ方だった。
    まさか、そんな演技ができるはずはないんだけど。

    「足を開いて、前に屈みなさい」
    男性の一人が命じた。
    両足を大きく開き、前屈したメイドに近づくと、ショートパンツの裾を持ち上げて尻に食い込ませる。
    Tバックのようになった尻を何度かぺちゃぺちゃと叩いた。
    「いい餅肌だ」
    「そうだな」
    二人はメイドの後ろに立つと、再び鞭を振るった。

    ばぁん!!
    ばぁん!!
    ばぁん!!
    むき出しの尻が集中的に攻撃された。
    「あああっ!!」
    ついにメイドは悲鳴をあげた。
    膝ががくがくと揺れ、その場に倒れた。

    男性たちはメイドに近づき、その前髪を掴んで顔を上げさせた。
    涙にまみれた顔でメイドが男性たちを見上げた。
    「も、申し訳、ごさいません。・・ど、どうぞ、続けて、打って下さいませ」
    「いや、これくらいにしておこう」
    「そうだな。あんたの主人も困っているようだしな」
    メイドの縄が解かれた。

    男性の一人が少年に近づくと、その頭をぽんぽんと叩いた。
    「楽しませてもらったよ、ボク」
    その一瞬、少年は怒ったような顔をしたが、男性はそれに気付かずに行ってしまった。

    10.
    少年はメイドに駆け寄った。
    膝をついて、地面に倒れたままのメイドの顔をハンカチで拭いた。
    「大丈夫?」
    「あ、ありがとうございます。・・恐れ入りますが、少しだけお待ち下さいませ」
    メイドは何度も深呼吸をして、やがてゆっくり立ち上がった。
    「血が出てるよ!」
    太ももの内側に赤い血がにじんでいた。
    「あぁ、申し訳ありません! ご心配をお掛けしまして」
    「どうして謝るの。お姉さんは何も悪くないのに」
    「お客様、」
    メイドは少年を見て言った。傷だらけなのに、笑みを浮かべていた。
    「お姉さんではありません。お前、だったでしょう?」
    「あ、ごめん。・・お前っ」
    「はいっ。・・練習です。もう一度お呼び下さいませ」
    「お前!」
    「はい、 お客様!」
    二人は顔を見合わせて、笑った。
    それから少年はメイドがセ◯ウェイに乗るのを助け、揃って屋敷に戻った。

    鎖につながれたまま気を失った少女は、そのまま広場に放置された。
    メイドによると、監視カメラでチェックされているから、意識が戻りそうにない場合はちゃんと回収されるという。
    そして替りの少女が連れてこられて、鎖につながれるのである。

    11.
    メイドは医務室に行き、少年は一人で部屋に戻った。
    さっきの光景を思い浮かべた。
    鞭打たれるメイド。
    男が楽しむために、女は縛られて鞭を打たれる。
    ダンソンジョヒなんだ。
    考えるだけで、むくむくと股間が持ち上がった。
    僕、女の人を苛めたいって思ってる。変だよ。
    どこかおかしくなっちゃったのかな。

    ドアが開いて父親が入ってきた。
    「どうだ。楽しいか? 女を責めるのは」
    「知ってるの!?」
    「知ってるさ。これはお前の勉強なんだからな」
    「勉強?」
    「そうさ。この屋敷に来たのはお前自身のためなんだ」
    「どうして」
    「お前はH家の後継者候補の一人なんだ」

    日本経済の何分の一かを握ると言われるH家一族。
    その当主H氏は、自分の後継者を探していた。
    将来、帝王となる男子。
    女性に対する優しさと無情さを兼ね備える男子。
    候補となる10才未満の男の子が、H家の家系には拘らず、数十名選ばれた。
    それが何段階にも分けて数名まで絞られた。

    少年は最終選考に残った一人だった。
    正式に後継者が確定するのは、候補者たちが成人した後のことである。
    それまでの間、彼らは専門の教育を受け、帝王学を学ぶのである。

    「これはもう決まったことだから、断ることはできない。パパもママも了解していることなんだ」
    「もし・・」
    少年は聞いた。
    「もし、このまま勉強を続けたら、あのメイドと会えるの?」
    「もちろんだ」
    「僕、続けたい。もっと勉強したい」
    「よし、頑張るんだ」
    父親は笑ってそう言った。

    12.
    翌日。
    少年はあのメイドのことが心配だった。
    今朝は遊びに来てくれなかった。
    あれだけ鞭で打たれて怪我をしたから、動けなくなっているのではないか。
    すぐに部屋を飛び出してメイドを探しにいきたかったけれど、父親が一緒にいて出してくれなかった。
    今日は大事な儀式があるから、部屋から出るなと言われた。

    やがて、少年は父親と共に呼ばれて別の大きな部屋に行った。
    居並ぶメイドたちの中に、あのメイドがいた。
    栗色の髪で、背が高いお姉さん。
    その人が少年に笑いかけてくれていた。

    「このメイドはお前の世話役だ。家に来て、ずっとお前と一緒にいてくれるよ」
    「本当!?」
    少年は喜んだ。
    「でも注意しなさい。この人はお前の恋人じゃないし、家族でもない。お前より目下の使用人だ」
    「分かってるよ」
    「いや、分かってない。お前はこの人を鞭打てるか?」
    「できるよ。やれって言われたら鞭で打つよ。縄で縛ったりもするよ」
    「よろしい。では、儀式だ」
    「?」

    メイドたちが、人の背丈より大きな巨大な円盤を運んできた。
    ダーツの的だ。すぐに分かった。
    少年は父親に教わってダーツをしていた。
    小学生としてはかなりの腕前になっていた。

    あのメイドが引き出された。
    メイド服を脱がされて、ブラとショーツだけの下着姿にされた。
    栗色の髪に白いヘッドドレスだけが残されている。
    そして、両手と両足を大の字に伸ばして、ダーツの的の円盤に固定された。
    長い足には昨日の鞭打ちの痕が無残に刻まれていた。

    「的に向ってダーツを投げなさい」
    そんな、危ないよ!
    パパだって、ダーツは絶対に人に向って投げちゃいけないって言ってたでしょ!?
    「できるだけたくさん、あのメイドに当てるんだ。致命的な傷を与えるまで」
    ええ!!
    「殺しても構わないそうだ。もし本当に死んだら、そのときはまた別のメイドで同じ儀式をすることになっている」
    そんなっ。

    少年はダーツを持ってメイドの前に立った。
    普通のダーツより大き目で、先端の針は長くて鋭かった。
    「始めなさい」父親が言った。
    ダーツを構えた。
    じっとメイドを見たまま、動けなかった。
    その人は少年の目をまっすぐ見つめていた。
    自分を受け入れる目をしていると思った。
    ・・どうぞ。立派になって下さいませ。
    ・・でも。
    ・・お気になさらずに。私の命など、取るに足らないものでございます。
    ・・本当にいいの?
    ・・心からお尽くし申し上げます。

    何度も深呼吸した。
    大好きなお姉さんにダーツを投げる。
    ものすごく痛いだろう。苦しいだろう。
    でもお姉さんは、僕を受け入れてくれた。
    僕は、応えてあげないといけない。
    お姉さんを、綺麗に、大切に、傷つけてあげないといけない。

    少年はダーツを投げた。
    それはメイドのむかって右の太ももに刺さった。
    ぐっ!!
    メイドは顔をゆがめたが、声は出さなかった。

    「次」父親が言った。
    次のダーツを放った。
    はぅ!!
    メイドの左の脇腹に刺さった。血が流れる。
    ・・そう。それでいいのです。
    メイドが笑いかける。

    「次っ」
    右の腕に刺さった。
    「次っ」
    左の乳房に刺さった。

    「頭を狙いなさい」
    右の耳の外側に刺さった。
    くそっ。外した!
    少年は再びダーツを構える。
    息を整え、狙いをつけ、そして投げた。

    「あぁっ!!」
    メイドが初めて声を上げた。
    少年が投げたダーツは右の眼に刺さっていた。

    「よぉしっ。よくやった!」
    父親が少年の背中を叩いた。
    少年はメイドに駆け寄って抱きついた。
    「お姉さん!!」
    身体が震えて涙がぼろぼろ流れた。
    「えっ、えっ、えっ・・」
    嗚咽がこぼれる。
    「お、お客様、」
    メイドがかすれる声で言った。
    「紳士たるお客様が、女のことで、お泣きになるものでは、ありません」
    「えっ、え、・・でも」
    「それに」
    少し笑ってくれた。
    「お姉さんでは、ありません。お前、でごさいます、でしょう?」
    「そ、そうだったね。・・お前っ、大丈夫か?」
    「はい。私めごときを、責めていただき、こ、心からお礼、申し上げま・・す」
    メイドの首が落ちた。意識をなくしたのである。
    少年はついに大きな声で泣いた。

    13.
    少年の家にメイドがやってきた。
    鞭やダーツの怪我はすっかり治っていたけれど、片目は失われて眼帯をつけていた。
    彼女はH氏邸のお勤めを辞めて、もうメイドではなくなっていた。
    これからは少年の教育兼お世話役として、少年の成長に付き添うのである。
    少年のために自分の人生を捧げるのだ。

    少年がH氏邸の当主として選ばれるかどうか、それが分かるのは、まだはるか未来のことだった。



    ついにH氏が自分の後継者を考え始めました。
    本話の少年は後継者候補として屋敷に招かれ、ダーツの儀式で世話役となるメイドの命を預かりました。
    この少年に限らず、すべての候補者はそれぞれの方法で儀式を強要され、覚悟を試されたはずです。
    彼らは、自分が殺そうとした(そして生き残った)メイドから、お世話を受けることになります。

    当初のプロットでは、主人公の少年は高校生で、世話役のメイドも同年齢とすることを考えていました。
    遠い親戚で幼馴染、中学ではクラスメート。いつも成績トップを競い合っていた彼女。
    その彼女はなぜが高校に進学せず、どこかのお金持ちの家に奉公務めに入ってしまった。
    さらに2年経ち、少年は巨大な屋敷に招待される。
    そこで彼は後継者候補であることを告げられ、世話役としてあてがわれたメイドは幼馴染の少女だった。
    実は二人が小学生の頃、少年が候補者に選ばれると同時に、彼女も世話役として指名され、メイドとしてすべてを捧げることを承諾していたのだった。
    ・・こんな感じですね。
    とても魅力的なシチュエーションですが、止めました。
    それは、二人が相思相愛の関係になることが確実だからです。
    そんな計画にH氏が同意するはずはありません。

    H氏邸では、メイドたちは絶対的被虐層です。
    一般男性が彼女たちに恋愛するのは自由ですし、財力があれば身請けすることもできます。
    しかし、それを一族の当主や後継者が行ってはいけません。
    支配者はあくまで無情でないと、秩序を保てないのです。

    さて本話は、PCではなく、出先でタブレットで書くはめに追い込まれました。
    (何て書き難いんだ!)
    ここのところ、月に1回の更新がデフォルトになりつつあります。
    当面、このペースがいっぱいいっぱいの状況です。
    こんなペースでも、毎月多くのPVをいただいていることに感謝申し上げます。

    ありがとうございました。




    氷結少女

    1.
    H氏は頭を抱えていた。
    6ヶ月前に買ったバルト海沿岸某国の通貨が大幅に下落していた。
    ずっと安定していたのに、先月突然発生した政情不安により急落したのだ。
    損失額は100万ドルを越えている。
    もちろんその程度の金額は、H氏の事業全体から見れば大したことはない。
    問題は別のところにあった。

    2.
    「おぉ~っほっほっ」
    執務室にやってきたS夫人が高笑いしていた。
    「お歳をめしてモウロクなさったんじゃありません?」
    S夫人の買った中米某国の通貨は乱高下を繰り返したあげく、先週から高値で小休止していた。
    半年前に申し合わせた賭けの期日は本日。
    「止むを得ん」H氏が苦々しげに言った。
    「賭けはあんたの勝ちだ。負けた方は何でも言うことを聞くのだったな」
    「そうですわ」
    「望みは何だ?」
    「うふふ」
    嬉しそうにH氏の執務室を見回すS夫人である。
    彼女は資産家の夫人で、歳の頃は30をいくらか過ぎたあたり。
    あり余る金を使って骨董品を買い漁ったり、あきらかに怪しい企業に投資したりしている。
    骨董は大半が偽造品だったし、投資した企業は経営者が逮捕されたりしてロクなことにはなっていない。
    「この子がいい♥」
    夫人は壁際に並ぶメイドの一人を指差した。
    明るい茶色に染めた髪をツインテールに括った、やや小柄なメイドだった。
    「あなた、お歳はいくつ?」
    メイドは困惑してH氏の顔を伺う。
    「構わん。直接返事しなさい」
    H氏に指示され、メイドは礼儀正しく頭を下げてから答えた。
    「18才でございます」
    「お仕事は?」
    「はい、使用人の勤労、経費の管理、それから教育などをしています」
    「若いのに偉いのねぇ」そう言ってにんまり笑う。
    「じゃあ、いなくなったら、あなたのご主人は困るかしら」
    「?」
    夫人はH氏に向いて言った。
    「・・バートリ伯爵夫人ってご存知かしら?」
    「16世紀の人物だな。ハンガリーだったか」
    「さすがにご存知ね。ずいぶん残虐な人で、とても寒い日に若い侍女を裸にして、湖の水をかけて氷漬けにしたってエピソードがありますわ」
    「うむ」
    「あたくし、それを知ったとき全身が震えましてよ」
    「同じことをしたいのか」
    「うふふ」夫人は再び笑った。
    「ウチの別荘がアラスカにありますの。まだまだ酷寒ですわ。人間の氷漬けなんて簡単に作れましてよ」
    「品の悪い趣味だ」
    「どうせ似たことをなさってるんでしょ? それにこの屋敷ではメイドのすべては主人の自由と聞いていますわ。その生死を含めてね」
    「一応、そういうことになっておる」
    「ならOKね。この子を頂戴。用が済んだら持って帰ってもいいですわ。生きているかどうかは保証しませんけどね」
    H氏は渋い顔をしたが、賭けに負けた以上、断ることはできなかった。
    「止むを得ん。・・お前、覚悟して務めてくれるか」
    そのメイドはすぐさま頭を下げて答えた。
    「旦那様の命でしたら、いかようにもなさって下さいませ」

    3.
    吹雪が続いていた。
    厳冬期は過ぎたとはいえ、気温はマイナス30度近くまで下がっていた。
    息を吐くと、それが空中で凍ってきらきら光った。
    その場所は凍りついた川の畔だった。
    モミの木の林に囲まれているはずだが、周囲は吹雪で何も見えなかった。

    「おぉ~っほっほっ。げほげほ」
    S夫人が高笑いしながらむせた。冷気をいきなり喉から吸い込んだらしい。
    すぐ側で使用人が働いていた。その数、十数人。
    大きな穴を掘る者。
    凍った川面を割って、分厚い氷の下の流水を汲む者。
    汲んだ水はバケツに入れて並べられていたが、その水の表面は早くも凍り始めていた。

    「どんな気分かしら?」
    夫人は脇に立つ少女に聞いた。
    他の者は万全の防寒服姿だが、少女だけは日本と同じメイド服で、手袋すらつけない両手に後ろ手錠を掛けられていた。
    足元にはさすがにスノーブーツを履かせてもらっているものの、その上はニーソックスに生足、ミニスカート。
    少女はこの格好で夫人の別荘から連れてこられたのである。
    全身に粉雪がこびりつき、まつ毛や髪の先が白く凍っていた。
    「あなた、可愛いわ」
    夫人は笑いながら少女を後ろから抱きしめた。
    無遠慮に胸や腰を揉みあげ、あげくにスカートをたくし上げて太ももを撫でる。
    少女は気丈な表情でじっと耐えていた。

    「さあ、この娘を裸に剥きなさい」
    夫人に命じられて使用人が少女の手錠を外そうとしたが、鍵穴がすっかり凍って開錠することができない。
    解氷スプレーを使ったりライターの火であぶったりしても、内部まで結氷した鍵穴はどうすることもできなかった。
    「服の方を切っておしまい!」
    少女は背中に回した手首を手錠で拘束されたまま、メイド服を切り裂かれた。
    袖はハサミで開いて脱がされ、下着もストラップを切り取って外された。
    下半身もすべて脱がされて、少女は吹雪の中で全裸になった。
    「うふふ、本当に可愛い」
    夫人は再び少女を抱くと、その乳房や下腹部を撫で回すのだった。
    「肌もすべすべね。乳首だってこんなに綺麗なピンク色」

    真横から雪まじりの風が吹き付ける。
    少女は唇を噛んで、がたがた震えていた。
    わずかな間ピンク色に見えた乳房や下腹部も、色あせて白くなっている。
    ずっとむき出しの手指は既に赤から紫色に変わりかけている。

    「あらあら可哀想に。こんなに震えて」
    S夫人が楽しそうに言う。
    「助けてとか、寒いとか、少しは可愛いこと言ってくれたら嬉しいんだけどなぁ」
    少女が振り返った。その目が大きく見開かれている。
    「助けて下さるんですか?」
    「うふふ。そうねえ」
    夫人は少女の髪をかき上げて、耳を噛んだ。
    「んあっ」
    少女は身をよじらせて声を上げる。
    「お、お願いです。・・何か、着せて、下さい」
    「寒いの? こうして抱いてあげてるのに」
    「さ、寒くて、死にそうです」
    「そう」
    夫人はいきなり少女の肩を強く押した。
    「きゃぁ!」
    少女はたちまちよろけて、掘られた穴の中に転がり落ちた。

    4.
    「水をかけなさい」
    バケツの冷水が少女の上に注がれた。
    汲んで置いてあった間に表面に氷が張り、その氷の破片も一緒に注がれた。
    「・・やあっ!!」
    穴の中で転がり回って逃げる少女を狙って、さらに冷水が浴びせられる。
    「あっ、・・がぁ!!」
    顔面に水をかぶった。
    濡れた髪がそのまま白く凍る。

    「あ、あたし、・・ど、どうなるんですか」
    少女が夫人を見上げて聞いた。
    「死ぬのよ。あなた、何も悪いことはしてないけれど、ここで凍って死ぬの」
    「あああああ!!」
    少女が首を左右に振りながら大きな声で叫んだ。

    ばしゃ。
    その間にも冷水が次々と浴びせらた。
    汲み置きのバケツが空になると、新しい水を川から汲んでまた浴びせる。
    ばしゃ。
    弾けた水が雪をザラメ状に凍らせ、さらにその上に水が溜まり、層をなして凍ってゆく。

    少女の動きが小さくなった。
    夫人は右手で合図して、作業を止めさせた。
    使用人に手を取られて穴の中に降り、少女の脇にしゃがみこんだ。

    少女は全身が薄紫色になっていた。
    目元から流れた涙の途中で頬で凍っている。
    よく見ると、濡れたまぶたも凍りついて、十分開かなくなっているようだ。

    夫人は手袋を外して指で少女の肌に触れた。
    「おお、冷た!」
    大げさに悲鳴を上げてから、少女の顔を叩く。
    「あなた、氷漬けになるまで、死んじゃったら駄目よ」
    「あ・・」
    少女が虫の息で訴えた。
    「死にたく、ない。・・助けて、くだ」
    「うわぁっ。まだ命乞いできるなんて、若いんだぁ。もう愛(いと)し過ぎて、ぞくぞくしちゃう!」
    夫人は少女の顔に自分の顔を近づけて、唇にキスをした。

    夫人は再び手を取られて穴から出た。
    途中で2度ほど滑って転んだが、何とか這い上がった。
    「おぉ~っほっほっ」
    再び高笑い。
    「かけなさい!」
    ばしゃ。
    少女は動かなくなり、周囲に溜まった水が次第に厚い氷となっていった。
    ばしゃ。ばしゃ。
    濡れた少女の肌も氷に覆われる。その氷が厚くなり、少女の姿が氷の中に埋もれてゆく。
    ばしゃ。ばしゃ。ばしゃ。

    氷結少女

    30分後、大きな氷の塊の中に、横たわった全裸の少女の姿がうっすらと見えるだけになった。
    「ほぉ~っほっほっ。とうとうやったわ!」
    夫人は小躍りして喜ぶ。
    氷漬けの少女をバックに記念写真。
    それから夫人は上から雪をかけて穴を埋めるように命じた。
    「春になって雪が解けたら、ちゃんと埋葬してあげますわよ!」

    5.
    雪穴を埋めるとS夫人の一行は別荘に戻っていった。
    雪原は無人になり、それからしばらくして吹雪が止んだ。
    モミの林の中から様子をうかがっていた集団がこちらにやってきた。
    その数、十数人。
    メイド服の上にアノラックを着込んだメイドたちだった。

    「ここです」
    先頭のメイドが指差した場所を、続くメイドたちが掘り始めた。
    他のメイドたちは、雪原にビニールシートを広げ、その上に毛布、防水シート、さらに丈夫なアザラシの皮の絨毯を敷いた。
    「出ました!」
    雪穴の中に氷の塊が現れた。
    メイドたちは、それを折損しないように慎重に運んで絨毯の上に置いた。
    小さなハンマーで少しずつ表面の氷を割って落とす。
    やがて、白い少女の裸体が露わになった。
    それは後ろ手錠の姿勢のまま、固く動かない。
    メイドの一人が首筋を手で融かして生死を確かめる。
    「まだ脈があります!!」
    わあっ。
    メイドたちの中に喜びが広がった。
    すぐに絨毯にこぼれた雪と氷を掃う。
    手錠の鎖をボルトカッターで切断し、手首から先と足首から先をアザラシの皮で作った袋で包んだ。
    その横で、二人のメイドがアノラックとメイド服を脱ぎ始める。
    酷寒の中でまったく躊躇することなく下着まで脱いで全裸になると、凍りついた少女に身をつけて横たわり、前後から抱きしめた。
    メイドたちは絨毯を端から巻き込み、そのまま三人をアザラシの皮の中に巻いてしまった。
    上下端を折り込んで、全体を縄で10センチ間隔に縛る。
    さらに防水シートと毛布で包み、ビニールシートとロープで梱包して円筒形の荷物が出来上がった。
    荷物をソリに乗せて固定し、雪穴を埋めた。
    「さ、行きましょう」
    メイドたちはS夫人の別荘とは反対の方角にソリを押して行った。

    雪原を2時間ほど進むと、スノーモービルが待っていた。
    その後ろにソリを連結する。メイドの一人がゴーグルをつけてスノーモービルに跨った。
    ここまで来れば、かん高いエンジンの音も夫人の別荘には届かないだろう。
    手を振る仲間たちを残し、スノーモービルは雪煙を上げて走り出した。
    これで近くのヘリポートまで1時間。
    さらに高速へりと自家用ジェットを乗り継いで、H氏邸の屋敷まで約8時間。

    6.
    2ヶ月後。
    S夫人は自宅の書斎で頭を抱えていた。
    例の中米某国の通貨が暴落したのだ。
    H氏との賭けに勝ったことで調子に乗り、ずっと保有していたのである。
    損失は3千万ドルに達する。
    さすがにこれは困った。
    夫に黙って買った通貨だから、ばれたら只ではすまないだろう。
    「お客様です」
    「今は忙しいわ。約束もなしにいったい誰?」
    「Hさまです」
    「通しなさい」

    客間に現れたH氏を見て夫人は驚いた。
    H氏の後ろに従うのは、あの少女だったのだ。
    以前と同じメイド服を着て、髪を茶色に染めていたが、あの長いツインテールではなくショートヘアになっていた。
    「あなた!!」
    「その節は大変お世話になりました」少女はそう挨拶して頭を下げた。
    「お世話をしたつもりはないだろう、こいつは」H氏が言う。
    「まさか幽霊じゃあないわよね?」
    「いいえ。何とか生きながらえました」
    少女は自分の手を広げて見せた。
    「!」
    彼女の右手は中指・薬指・小指がなかった。左手には親指以外の四指がなかった。
    そして手首から先全体に広がる、一生消えることのない凍傷の痕。

    「ど、どうして・・」
    「言っておくが、儂は何も命じておらんぞ」
    H氏がぶすりと言った。
    「まあ、用が済んだら持って帰ってよいと言ったのはお前で、それを覚えていたメイドたちがその通りにしただけだ。何の問題もないと思うがな」
    「あなた、あの中から助けてもらったの?」
    「はい。ただ、私を体温で暖めてくれた者が一人、肺炎をおこして死にました」
    「そ、それはお気の毒だったわね」
    「メイドたちが勝手にやったことだ。そのことは問わん」
    「当然ね」
    「・・それよりも、お前、為替で損を出しているだろう」
    「か、関係ありませんでしょ?」
    「それはそうだが、数千万ドルは被ったのではないかな。・・どうするつもりだ?」
    「心配してもらわなくても結構です」
    「そうか。それならお前の夫に伝えてもよいな」
    「や、いや、それはちょっ」
    「やはり困るのではないか。・・血は繋がっていなくても大切な妹のことだ。儂が融通してやってもよいが」
    「え、今何と? お義兄さま」

    S夫人は、H氏の先代、つまり父親が多く抱えた妾の一人が産んだ娘だった。
    H氏とはずいぶん歳が離れているが、義理の兄妹の関係である。

    「その何千万ドルかをお前の口座に補填してやろう」
    「よろしいのですか?」
    「もちろん条件がある」
    「・・」
    「お前は一族の者としてわきまえが足らん。蒙昧でありながら傲慢だ。儂はH家の当主としてお前の夫に申し訳ない」
    「いったい、どういう」
    「簡単だ。しばらく預かって性根を叩き直す。嫌ならお前の夫に今回のことを告げるから、どちらか選びなさい」
    「そ、そんな」
    「心配せずともよい。儂の仕事を手伝うと言えば、こちらの家の者は誰も反対せんだろう」
    H氏はメイドの少女を呼んで隣に立たせた。
    「お前の躾はこのメイドが受け持つ。逆らうことは儂が許さん」
    少女が両手を前に揃えて深く頭を下げた。
    「主人から容赦するなと命じらました。精一杯、務めさせていただきますので、どうぞ覚悟して下さいませ」

    7.
    H氏邸。
    「あぁっ! ・・ひぃ!!」
    S夫人が悲鳴を上げていた。
    メイド服を着せられて、麻縄で高手小手に縛られている。
    背中に繋いだ縄を吊り上げられて爪先立ち。
    スカートは後ろでめくりあげられて、ショーツを膝まで下げられ、むき出しの尻を鞭で打たれていた。
    ぴしり!
    「きゃあ!!」
    鞭を振るうのは、もちろんあの指導役の少女である。
    「・・ですから、お手洗いの掃除は裸足でするものと、説明しましたでしょう?」
    「だ、だって」
    「抗弁は許しません」
    ぴしり!
    「あああっ!!」
    夫人は尻を打たれる度に身をよじって悲鳴を上げた。
    ぴしり!
    ぴしり!

    少女は手袋をした手に器用に鞭を握っていた。
    凍傷で指を切断けれど、失った指を惜しいとは思わなかった。
    これからもお勤めを続けることができる。
    主人に、お客様に、お尽くしすることができる。
    それ以上、何を望むというのか。

    両手を吊る鎖を外すと、夫人はその場に崩れ落ちた。
    尻には鞭打たれた痕が無数の赤い筋となって残り、その一部からとろりと血が流れていた。
    H氏からは多少の傷を残した方が本人のためだと言われている。
    主人の意向は絶対である。
    少女は、これからも同じ箇所だけを狙って鞭を打つつもりだった。
    傷ついた箇所を何度も繰り返し打てば、そこだけ肉が盛り上がって二度と消えない痕となるだろう。

    S夫人がゆっくり顔を上げて自分を見上げた。
    その目が涙ぐんでいた。
    鞭打たれた身体の痛み、そして理不尽に責めを受ける悔しさ。
    「躾をいただいた人に対して、申し上げる言葉がありましたでしょう?」
    「・・あ」
    夫人はしばらく躊躇して、それから言った。
    「ありがとうごさいました。・・これからも粗相があれば、どうぞこの身に、ば、罰を与えて下さい、ませ」
    そう言いきった夫人の目。
    涙が溢れた目の中に、妖しく燃える炎を少女は見逃さなかった。
    「よく言えましたね」
    少女はその場に膝をついて、夫人の頭を抱いた。
    「あ、・・ああぁ~ん!!」
    夫人は自分よりはるか年下の少女の胸に抱かれ、大声で泣き出した。

    ・・メイドが接待するお客様は、優しい方ばかりではない。
    メイドを嗜虐的に扱うことを好むお客様もいる。いや、むしろそんなお客様の方が多い。
    それでもメイドは自分の身よりもお客様の満足を優先してお尽くしする。
    それがH氏邸のメイドが果たすべき職務であり、喜びである。

    あの吹雪の中、S夫人は少女が命をかけて尽くしたお客様だった。
    夫人の好みに合わせて全力で泣き叫び、死の淵まで行って、ご満足いただけた。
    自分は夫人を少しも恨んでいない。
    それどころか、他の誰も経験しない責めをいただき、ご奉仕する機会を与えてもらったことに感謝していた。
    それがH氏邸のメイドなのだ。メイドの精神なのだ。

    ・・S夫人にその精神を理解してもらう。
    少女は考えていた。
    主人の期待を超えていると分かっている。
    でも、自分の直感が正しければ、この人は自分と同じ『女』だ。
    お育ちのせいで少し尊大だけど、本来は責めるより責められる方。
    尽くされるより、尽くす方。
    きっと分かってもらえると確信していた。

    少女は夫人の顔に顔を近づけた。
    そしてあの吹雪の中で夫人が自分にしたように、夫人の唇にキスをした。



    H氏邸シリーズもついに10作目です。
    年に2回の掲載ペースがすっかり定着してしまったようです。

    「H氏邸のメイドは、その命も自由」
    ようやくこの設定をお話に書くことができました。
    死地?に赴くのは、『ハンガー』『被虐派遣』の彼女です。
    登場時は16になったばかりだった彼女も18才。
    救いのないお話にはしなかったつもりですが、いかがでしょうか。

    バートリ伯爵夫人は、侍女の氷漬けよりも、若い娘をさらってはその生き血を浴槽にためて入ったと言われることで有名ですね。
    私はかつて桐生操さんの本で読み、血生臭いお風呂より美しい氷漬けの方に惹かれたものでした。
    今ではネットで様々な情報が簡単に見れますから、興味のある方は調べてみて下さい。

    酷寒地の描写はイメージで描いています。
    さすがにマイナス30度の世界は知らないので、たぶん正確ではないと思いますが、お許し下さい。
    私自身は、かつて2月の釧路で明け方マイナス17度まで経験したことがあります。
    そのときの印象は「慣れれば普通」でした。
    日中でもマイナス5度以下の気温でしたが、街行く人々は内地と変わらない格好。
    コンビニの正面には、制服JKの皆さんが超ミニスカ生足で座り込んでいます。
    あの女の子たちはたとえ地球全体が氷河に覆われてもずっと同じ格好なんだろうなぁww。

    ありがとうございました!




    桔梗の定期便

    1.
    「シスターにお客様です。可愛いメイドさんですよ」
    その朝、北の谷のルルド(泉)で祈っているときに、私が密かに桔梗(ききょう)の定期便と呼ぶ来客があった。
    ああ、もうそんな季節なのね。
    私はルルドのマリア像に目礼してから、修道院の本館に向った。

    応接室にはメイド服の少女が一人で座っていた。
    「修道女さま、ご機嫌麗しゅうございます」
    少女は立ち上がると私に向かって頭を下げた。
    「お屋敷の庭に桔梗が咲きましたので、主人の命でお届けに上がりました」
    そう言って、青い花の入ったバスケットを差し出す。
    「まぁ、綺麗な桔梗。・・いつもありがとうございますとお伝え下さい」
    「はい、修道女さま」
    「堅苦しい呼び方をしなくても、私のことはただシスターと呼んで下さればいいんですよ」
    「あ、はい。・・シスター」
    少女はそう言って微笑んだ。
    私は目を細めて彼女を見つめる。
    色白できめの細かい肌。大きな瞳。サイドテールに括った栗色の髪。
    メイド服のミニスカートからすっと伸びるニーソックスの足。
    そして何よりも少女自身のはじけるような若さ。
    あなたこそ、桔梗の花のようよ。
    「あなた、今年の新人さん?」
    「はい。まだまだ役立たずです」
    「そんなことはありませんよ。こうしてちゃんとお使いしているじゃないの」
    「恐れ入ります」
    そう言って再び頭を下げる。その仕草だけで彼女がきちんと躾られていることが分かった。
    少女の主人の顔が浮かんだ。
    お屋敷の中は変わらずにきっちり回っているようですね。

    「急がなくてもよろしいんでしょう? 今、冷たい飲み物を入れますから、お待ちになって」
    私は給湯室に行ってお湯を沸かした。
    氷を入れたグラスに濃い目のアップルミントティーを注ぎ、ハチミツを添える。
    お茶受けには、レーズンクッキー。
    銀のお盆に載せて応接室に戻ると、少女は目を閉じていた。

    ソファに背筋を伸ばして座り、両手を膝にそろえ、でもその頭は、こっくり、こっくり。
    あら、まあ。
    さっき、きちんと躾られてるって評価したのは取り消しかしら。
    私は少女の前に座って、にこにこしながら彼女の寝顔を眺める。
    毎日しごかれて疲れているんでしょうね。
    それにしても、本当に無垢で可愛い子。
    あの人が桔梗を持たせたのだから、まだ乙女。
    そして、今年はこの子、ということか。

    少女がはっと目を開けて私を見た。
    その顔がみるみる赤くなる。
    「・・あ、その、私。・・失礼いたしました」
    「いいのよ。お屋敷に帰ったら忙しいんでしょう? 誰にも言いませんから、ゆっくりしてらして下さいな」
    「い、いいえっ。本当に申し訳ありません!」
    その慌てぶりが可愛らしくて、私は彼女を抱きしめてあげたくなった。

    2.
    新人メイドが応接室で居眠りしたその次の週。
    夜の祈りを捧げて宿舎に戻ろうとしたら、お御堂(みどう)の出口に人影があった。

    「旦那様!!」
    「儂はもうお前の主人ではないから、その呼び方はせんでよい、と何度も言ったはずだが」
    「お忍びでお越しですか?」
    「うむ。これほど蒸し暑い夜には涼しいところで過ごしたいと、ちょっと思い立ってな」
    「何をおっしゃいます」
    確かにこの修道院は郊外の高台にあるから、都会と比べたら涼しい。
    でもちょっと思い立っただけで、わざわざお屋敷から2時間の道のりを来るはずがない。
    「お前は変わらず元気そうで何よりだ」
    「旦那様も」
    「それで、儂をいつまでここに立たせておく気かな?」
    「失礼しました。すぐに客間を用意させます」
    「いや。ここの者には何も言わんでよい。儂はお前の部屋に行こう」
    「・・かしこまりました」
    最初から私の部屋に来るつもりだったのだろう。
    私は半ば呆れながら、その人を自室に招いた。
    「去年もこの部屋にお越しになりましたわ。旦那様」
    「そうだったかな」

    旦那様は部屋に入ると、当たり前のように私の椅子に座った。
    私は苦笑しながら、お茶の用意をする。
    作り付けの小さな食器棚には、私がいつも使うマグカップ、そしてやや大きい金縁のマグカップが置いてあった。
    この金縁のマグカップを使うのは、去年、旦那様がお越しになったとき以来だ。
    「先日は綺麗なお花をお届けいただきまして、ありがとうございました」
    お茶を淹れながら、桔梗のお礼を言う。
    「うむ。放っておいても勝手に咲くものだからな」
    ・・それは違いますわ、旦那様。
    私は心の中で反論する。
    あの桔梗はお屋敷の庭園でメイド達が心を込めて育てたものですよ。
    旦那様も桔梗はお好きで、今の時期はいつも書斎に飾っておいでではないですか?
    「そういえば花を届けさせたメイドは、お前の前で居眠りをしたそうだな」
    「ご存知でしたか」
    「本人が自分から告解したわ。やはり恥ずべきことをしたと思ったようだ」
    「では罰を?」
    「うむ。棺桶に詰めてセメントの中に二日ほど埋めてやったかな。・・歯を食いしばって耐えたようだが」
    可哀想に。あんな初々しい子を生き埋めですか?
    「・・どうぞ、粗茶です。マグカップで申し訳ありませんが」
    「構わんよ」
    旦那様はそう言ってお茶を啜(すす)られる。
    どんなに暑い季節にも、旦那様は冷たい飲み物より熱いお茶を好まれる。
    「うむ、やはりお前が淹れた茶は美味いわ。屋敷でこの味を出せる者はおらん」
    「ご冗談を」
    「冗談ではないぞ。お前がメイド長を引退して20年、今でも儂にはお前の茶が一番だ」
    「旦那様、それで御用は?」
    「うむ。今年も一人、協力してくれるか」
    「・・」
    「再来週の木曜に客を寄こすから、部屋を用意してもらいたい」
    「・・」
    「接待するのは先ほど話題になったメイドだ。・・なに、誰を相手させてもよいのだがな、間が抜けたメイドを使うのも一興じゃからな」
    「旦那様、私は神に仕える身です。若い娘の操を売るような罪深いことは、そろそろ勘弁していただけませんか」
    「何が罪深いものか。お前も屋敷に入って初めて男に抱かれたのは、見ず知らずの客にではなかったか」
    「・・先代の旦那様のときでした」
    「それからお前は不幸か? 誇りを失ったか? 毎晩のようにその身体を弄ばれたはずだが」
    「あぁ、もうお止めになって」
    「縄で縛られたときのお前の狂いぶりは、今でも目に焼きついておるぞ」
    「旦那様。お願いですから、もう」

    旦那様はポケットから縄束を出した。
    それを見ながら、私は自分の胸を押さえる。
    「儂にはいつでも縛れる女が100人はおるが、縛ることで安らぎを感じる女はお前だけだ」
    「私はもう45の年増なのですよ。縛られるのでしたら、もっと若くて美しい娘を」
    「何を言うか。それなら儂は60を過ぎた爺だ」
    ああ・・。
    私は旦那様の前で動けなくなった。
    年に一度、お忍びでお越しになる旦那様に縛られるとき、私は自分がまだ女なのだと思い知る。
    縛られることを覚えている身体が欲情に打ち震える。
    ああ、主よ。お許し下さい。この女は、まだ被虐の心を捨てられないでいるのです。
    私は自分から両手を背中に回した。
    その手首に旦那様が縄を巻きつける。
    びくん。
    「ひぁっ・・」
    一年ぶりの被縛に全身が震えた。
    「まるで初めて縛られる生娘のような反応をするではないか。どうだ、何か言うことはあるか」
    「あぁ、旦那様。お務め、させていただきます」
    私は修道服のまま、かすれるような声で言った。

    3.
    その日が来た。
    私の前にあの少女が立っている。
    大きな目。色白の肌。そしてサイドテールに括った栗色の髪。
    まだほんの15才の瑞々しい新人メイド。
    「修道女様、いえ、シスター。本日はよろしくお願いいたします」
    「しっかりお務めして下さいね」
    「はい」
    この日がどういう日なのか、もちろん彼女も理解しているはずだ。
    昨夜は緊張で眠れなかったかもしれない。
    「お客様は夕食を済まされてからおいでになるそうです。時刻は22時頃と」
    「はい。伺っております」
    「汗をかいているでしょう? お風呂を入れましたから、身体を綺麗に磨き上げましょう」
    「あ、はい。・・ありがとうございます」
    少女は少し恥ずかしそうに言って頭を下げた。

    旦那様がお迎えになるお客様は、ビジネスのお相手とは限らない。
    国内外の政界や経済界の重鎮、外国の王室、著名な芸能人や文化人、共通する趣味のご友人や、ただ気に入ったというだけの一般の人までいろいろな方がいらっしゃる。
    そんな中で、処女のメイドをお使いになるのは旦那様が特別に認められたお客様だけだ。
    その特別なお客様が今夜この修道院へお泊りになる。
    こうしたことを修道院の者はほとんど知らない。
    知っていても、この修道院は旦那様のなさる献金で収支が成り立っているようなものだから、知らないふりをする。

    修道院はホテルではないから、お風呂も狭くて質素なものだ。
    そのお風呂に行くと、少女がお湯の中に入っていた。
    「エッセンシャルオイルとハチミツを持ってきましたよ」
    「オイルですか?」
    「ローズの香りよ。肌がしっとりするわ」
    私はそう言って、オイルとハチミツを手の上で混ぜてお湯の中に入れた。
    「ああ、本当。いい香り」
    「少しでもくつろいで下さいね」
    「ありがとうございます。・・あ、あの」
    少女がお湯の中から私を見上げた。
    「はい?」
    「お屋敷で聞いたんですけど、シスターは、昔メイド長をなさっていたとか」
    「ええ。あなたが生まれるずっと前のことですけどね」
    「お願いがあります!」
    少女はバスタブの中から出てきて、私の前に直立した。

    肌についたお湯が玉になって転がり落ちる。
    ぴちぴちして弾力のある肌。
    色白の肌が今は薄いピンクに染まっている。香り立つ若さが羨ましい。
    バストはちょっと大き目のおわん形。乳輪は大きすぎず綺麗な色をしている。
    つんと尖った可愛らしい乳首。
    揉んでも摘んでも、舌で転がしてもよさそうね。きっとお客様はお喜びになるわ。
    女の裸を見るとチェックしてしまうのは、メイド長をしていた頃からのクセだ。

    バストと比べると下半身はまだまだ未成熟だった。
    太ももは細すぎるし、お尻の張りも腰のくびれも十分でない。
    とはいえ均整の取れていないアンバランスな美しさがこの歳頃の少女の魅力でもある。
    あと2年も務めたら、きっと男好きのする身体になるだろう。
    未成熟といえば、アンダーヘアがほとんど見えないのが気になった。
    旦那様は無毛はお好みでないから、そういう子は採用しない。
    きっと今夜のお客様の嗜好に合わせて処理されたのだろう。

    「お願いって?」私は少女に聞いた。
    「あの、私の下(しも)を見てもらえないでしょうか」
    「お屋敷でお手入れしてこなかったの?」
    「してもらいました。・・でも、心配なんです。ご満足していただけるか。喜んでいただけるか」
    少女は胸の前で両手を拝むようにして私を見た。
    毎年ここで新人メイドのお世話をしているが、こんなお願いをされるのは珍しい。
    「いいですよ。あなたがそれで安心できるなら」
    私は微笑みながら答えた。

    お風呂の床にバスタオルを敷き、そこに少女を仰向けに寝かせた。
    「開いて」
    短く命じると少女は素直に両足をMの字に開いた。
    タオルを当てて水滴を拭う。
    ・・やっぱりね。
    少女は恥丘の周辺部を脱毛されていた。残った中心部分も梳(す)かれて薄くなっている。
    私は脱毛部位を指で撫でて確認する。元はかなり濃い目だったはずだ。
    「いつ脱毛されたの?」私は優しく撫でながら聞く。
    「今朝です」
    「痛かったでしょう」
    「少し。・・でも大丈夫です」
    「そう。今夜は何をされても大丈夫。でも明日からはちゃんとケアするのですよ。お薬はもらっていますね?」
    「はい」

    性器は美しいピンク色だった。
    まだ侵されていない場所。
    処女膜も綺麗に広がっている。これなら最初の性交で確実に出血して、お客様を安心させるだろう。
    クリトリスの包皮をそっと押さえてめくった。
    「あ・・・」少女が小さな声を出した。
    私は構わずに包皮の内側が清潔に洗浄されていることを確認する。
    小陰唇のヒダも広げて隅々まで確認した。どこも綺麗だった。
    続いて膣口から中指を挿し入れる。
    「は、あ、・・」少女は細かく震えている。
    同性の私に検査されることが恥ずかしいのだろうか。それとも刺激されて感じているのだろうか。
    指で探る内部はよく濡れていた。お湯の残りではない。ちゃんと少女自身が分泌したものだ。
    粘度も匂いも、十分。

    「大丈夫。立派にお相手できますよ」
    「あの、私」
    「どうしましたか?」
    「・・実は、まだちゃんと締めてさしあげることができません」
    そうか、それがあなたの悩みなのね。本当に可愛い子。
    「大丈夫ですよ。あなた、口でもおっぱいでも、ご奉仕できるのでしょう?」
    「はい、それはできます」
    「なら心配いりません。あなたにできる範囲で心からお尽くしすれば、きっと喜んでいただけますよ」
    「あぁ、よかった。・・ありがとうございます」
    少女は心から安心したように礼を言った。

    ・・膣で締めるなんて、誰も期待してないのよ。
    元メイド長の私には分かっていた。
    あなたはバージンであるというだけで十分だし、それが今のあなたの価値。
    明日になれば何もかも変わるはずよ。
    あなたの次の段階は、きっと明日からの調教カリキュラムに計画されているわ。

    私は少女のアナルに指を当てた。
    「あぁっ。そこは・・」少女が喘ぐような声を出した。
    「お尻の調教はまだなの?」
    「あ、はい。一緒に入った子はみんな受けてるんですけど、私だけ、何も」
    「そう」
    ようやく理解した。
    旦那様、あなたは、この子のことを間が抜けたメイドなどとおっしゃって、実は最初から目をかけておいでだったのですね。
    きっとこの子は、同期のメイドの中で一番優しくて感受性が豊かな女の子だ。
    あの方はときどきこんな悪戯をする。
    今夜、この子は前と後ろを同時に失う。そのことの心の準備もさせてあげずに。
    可哀想に。
    ・・どろり。
    私の心に中に、ある感情が浮かび上がった。
    それは先週旦那様がお越しになったときに意識した女の感情だった。
    私は、この歳になってこの少女が羨ましいのだ。
    同じ女として、妬ましい程に羨ましく思ったのだ。

    4.
    修道院に一室だけある客間に少女を連れて入った。
    少女は、下着を新しいものに替えて、クリーニングしたてのメイド服を着ていた。
    乳首はオリーブオイルを塗り込んで柔らかくし、下はジャムウ系のオイルソープで洗った後に、ラベンダーの香りのフレグランスをアンダーヘアに少量使った。
    お化粧はごく薄めのナチュラルメーク、サイドテールに括った髪は無香のヘアスプレーだけ。
    「綺麗ですよ」
    「ありがとうございます」
    「お客様はあと1時間ほどでお着きになるそうです。トイレはもう行けませんが大丈夫ですね?」
    「はい」
    「では、最後の仕上げをしましょう」
    「最後の、ですか?」
    「こちらのベッドに腰掛けなさい」
    私は少女をベッドに座らせると、一緒に持ってきた携帯金庫を横に置いた。
    金庫を開けて中から麻縄の束を出す。
    この縄はメイド長の頃から使っていたもので、とても古いけれど、手入れは怠っていないから十分に綺麗で柔らかい。
    「あぁ、そうですね」
    少女は縄を見ると、自分から両手を背中に回した。
    「どうぞ、綺麗に縛って下さいませ」
    私は黙って彼女に縄を掛けた。
    少女の身体は柔らかくてしなやかだった。
    高めの位置で手首を縛り、左右の腕が直角に交わるように固定する。
    処女といえども緊縛されるのは、H氏邸のメイドがお客様をお迎えするときの作法だ。
    ときには性行為よりも嗜虐行為を好まれるお客様もいらっしゃるけれど、どんな場合でもお客様のご満足を第一に考え、決して失礼のないように振舞うのがメイドとして当然のわきまえなのだ。

    「サイドテーブルにナイフと鋏を置きます。お客様があなたを裸にしたいとお望みになったとき、ご自身でうまく解けないようであれば、使ってもらって下さい」
    「はい。でもこれ、大切な縄ではありませんか」
    「構いません。お客様があなたにご満足いただけることなら」
    「あぁ、ありがとうございます。シスター」
    私は彼女の膝と足首も縛った。
    こちらは早く両足を開かせたいお客様への心配りとして、緩め代を大きめに作る。

    お迎えの準備

    「さあ、目隠しをしますよ」
    「はい」
    「あなたに神様の祝福がありますように。・・お客様が心からご満足し喜んで下さりますように」
    白布を折って目隠しをかけた。
    最後の瞬間、少女は少しだけ微笑んだ。
    この日初めてみた彼女の笑顔だった。
    私は残った縄束を片付けて、客間の電灯は点けたまま部屋を出た。

    お迎えの準備
    お迎えの準備

    5.
    予定の時刻より10分ほど遅れて黒塗りのセダンが到着した。
    セダンは修道院の構内をそのまま抜けてきて、客間のすぐ近くの中庭に停車した。
    後席のドアが開き、背の高い白人の男性が降りてきた。
    すぐにその回りを3人のSPが取り囲む。
    まあ、これは相当なVIPね。

    "ご準備は整っております。どうぞあちらへ"
    私は英語で挨拶して、中庭から客間に入る扉を示した。
    「ドモ、アリガト!」
    男性は片言の日本語で答え、客間に入っていった。
    しばらくして客間の灯りが暗くなった。

    私はそれから明け方近くまで庭に立っていた。
    ご苦労なことに、3人のSPも周囲を警戒しながら立ったままだった。
    私が横目でそちらを見ると、SPの一人がウインクしながら親指を上げた。
    ・・まったく仕方ないぜ、ウチの若旦那は。
    そういう顔だった。

    客間が明るくなって、やがてあの男性が出てきた。
    私が黙って頭を下げると、一言 「ファンタァ~スティック!!」と大げさに言ってセダンに乗り込んだ。
    修道院の門からセダンが完全に出て行くまで、私は頭を下げたままだった。

    客間に入ると中はずいぶん乱れていた。
    ベッドのシーツは床に落ち、その横に解けた縄とメイド服と下着がちらばっていた。
    少女はベッドの反対側に全裸で転がっていた。

    いくら声をかけても少女は目を開けなかった。
    私は少女の胸と口元に耳をあて、彼女が熟睡していることを知ってひとまず安心する。
    少女の足を開いて股間を確認した。
    そこにはまごうことのない破瓜の印、そしてアナルにも陵辱の痕があった。
    私は彼女のために短く祈り、それからお湯に浸したタオルで彼女の身体を拭いた。

    6.
    明るくなってから少女は目を覚ました。
    自分で起きてくると、シャワーで髪と身体を綺麗にし、そして服を着た。
    用意された朝食を食べると、世話になった礼を言ってお屋敷に帰っていった。
    私は何も仔細を質問しなかったし、少女も何も言わなかった。
    ただ、帰る間際になって、彼女は「お客様は何かおっしゃってましたか?」と聞いた。
    「とても喜んでいらっしゃいましたよ」と教えてあげると、実に嬉しそうに微笑んだのだった。

    少女はほんの一晩の間に見違えるように綺麗になっていた。言いようのない妖艶さを纏っていた。
    もちろん、どんな処女も男性の精を注がれたら一様に美しくなることを私は知っている。
    それでもこの少女の美しさは、際立っていた。
    外観だけではない。内なる自信のようなものが生まれていた。
    彼女は一人のお客様に全力でお務めして、ご満足いただいたのだ。
    純潔をなくし、その代わりにお尽くしする喜びと自信を得たのだった。

    毎年、こうして新人メイドのお世話をする度に、私ははるか30年前の自分を思い出す。
    元気だった先代の旦那様、若かった今の旦那様。そして私を抱き、縛り、愛して下さった多くのお客様。
    ときには無慈悲な責めを受けて心身を傷つけられたりもしたけれど、幸い務めをまっとうして今の私がある。
    H氏邸のメイドとして務めることは、すべてを捧げることに等しい。
    お屋敷で務めた10年の間には、二度と回復しない障害を受けたり、神様の元に召された仲間もいる。
    メイド長を引退した私は、そんな彼女達の御霊(みたま)を慰るために、自分の幸福を捨てて修道院に入ったのだった。

    今日、娘から女になったあの子は、無事に務めをまっとうできるだろうか。
    今の私にとっては、せめて彼女がこれから多くの人に愛されることを祈るしかない。
    ときには縛られ、責められ、女の業に苛まれながら、お客様に喜んでいただこうと心から尽くす少女達。
    そんな彼女達の幸福を祈る私自身、シスターの身でありながら縛られることを悦ぶ女なのだ。
    毎年、桔梗の定期便が届く頃になると、私は自分の運命について考え込んでしまう。
    はたして私は神の元に行けるのだろうか、それとも地獄の烈火に焼かれ、それでも悦ぶのだろうか。



    『H氏邸の少女達』には似つかわしくない、ロマンチックなタイトルになりました。
    桔梗の花は秋のイメージでおりましたが、調べたら本当は6~9月が開花時期のようです。
    H氏邸の桔梗は9月に咲く遅咲きの桔梗、ということにしましょう^^。

    今回は、前回の後書きで触れた処女メイドのおもてなしとそれをお手伝いする修道女のお話です。
    H氏邸に入る新人メイドはバージンであることが絶対の条件であり、そして所定の調教を終えた彼女達は屋敷のお客様に供されることになります。
    毎年10人もいない超貴重枠の接待です。その時期は例年、夏から秋の頃。
    場所は屋敷の中だけでなく、本話のように屋敷外の施設が使われることもあります。
    昔、H氏邸のメイド長だったシスターは、どうやらその手伝いを毎年させられているようです。
    口は嫌々ながらも、悪い気持ちではない。
    少女達の一夜を深い愛情をもってお世話しています。

    さて、元来、H氏邸シリーズではすべてを男性の視点で描き、被虐側女性の心情は一切顧みない方針でした。
    しかしそれが次第に崩れ、前話で完全に女性視点になってしまいました。
    今回は反省して、男性視点で新人メイドを無慈悲にww苛めようと考えましたが、まったくペンが(キーボードが)進みません。
    (ちなみに主人公は、ファンタァ~スティック!な思いをしたあの白人男性でした)
    あきらめてお世話役である元メイド長のシスターを主役にすると、これが面白いように書けるではありませんか。
    ・・読者の皆様、ごめんなさい。方針を変えます。
    今の作者にM女の気持ちをまったく描かないで進行せよというのは無理でした。
    これからH氏邸シリーズでも積極的に女性観点で書きます。
    まだ、次のお話はぜんぜん考えてませんけどね。

    それではまた。
    ありがとうございました。




    行儀見習(1/2)

    1.
    父さまと母さまから2週間の行儀見習に行くよう言われたのは、中学2年生の終わりの春休みに入る前だった。
    「突然のことで驚いたかもしれないけど、しっかり学んできなさい」父さまが言った。
    「あなたにとって、とっても大事なことなの」母さまも言った。
    2週間といえば、それだけで春休みが終わってしまう長さだ。
    でも私は素直に従った。
    自分を深く愛して育ててくれた父さまと母さまが大好きだったから、逆らうなんて考えもしなかった。
    学校の友達には、両親のことを父さま母さまと呼ぶなんて、どんなお嬢様よ、とよくからかわれる。
    別にうちはお金持ちでも何でもなくて、父さまは普通のサラリーマンだし、母さまも普通の専業主婦だ。
    でも、私はずっと父さま母さまと呼んできたし、これからもそれを変えるつもりはない。

    2.
    そのお屋敷はとても大きくて驚いた。
    綺麗なメイドさんがたくさんいて、私は目を離すことができなかった。
    フリルのエプロンをあしらったミニスカートのメイド服はとっても可愛いくて、自分もあんな格好ができたらいいなって、ちょっと憧れた。

    行儀見習に集まった女の子は、私を入れて8人だった。
    さっそく、支給された制服に下着まで全部着替えさせられた。
    白いブラウスと紺のロングスカートはメイド服じゃなくて残念だったけど、上品で清潔感に溢れていた。
    「ようこそ」
    私達の前に背の高いメイドさんが立って話をした。
    「私が皆さんの教育の責任者です。私のことは、ただ『メイド長』と呼んでもらえば結構です」
    「素敵なお姉さま・・」
    隣の子がメイド長をうっとりと見ながらつぶやいた。
    確かにメイド長は目が大きくて鼻筋の通った綺麗な人で、美人揃いのメイドさん達の中でとりわけ美人だった。
    百合っ気のある子がコロリといっても不思議はなかった。

    「ここには、立派なご家庭に育ち、学校の成績も優秀な人が集まっています」
    メイド長はそう言って私達をぐるりと見回した。
    「とはいえ、皆さんのことは厳しく指導しますので、そのつもりで。・・さっそくですが、そこでつまらないことを口にしたあなた」
    「え」
    メイド長は私の隣の子を指差した。さっきメイド長を見て素敵とつぶやいた子だった。
    「あなたに名誉ある最初のお仕置きを受けてもらいます。前に出なさい」
    おどおどと前に出た子を皆の前に立たせた。
    「これが行儀見習に来る人の爪ですか」
    「あっ」
    右手を捻り上げて、伸ばした爪とマニキュアを皆に見せた。
    「それから、この髪も、せめて括るならまだしも、こんなにだらしなく伸ばしたままでは、埃を舞い上げながら歩くようなものです」
    背中まで伸ばした髪をわしづかみにして言った。
    メイド長はどこから出したのか大きなハサミを持つと、その子の髪をばさりと切り落としてしまった。
    「や、やぁっ!!」
    「髪は肩に掛からない長さに。他の皆さんにも従ってもらいます。さあ、立って、こっちに来なさい」
    その場に泣き崩れた子の腕を掴んで立たせた。
    部屋の隅に、アルファベットの "T" の字の形をした柱が立っていた。
    それは私達の胸くらいの高さで、"T" の横棒には中央と両端に丸い穴が三つ開いてる。
    閂(かんぬき)を外すと横棒が上下に別れ、丸い穴がそれぞれ半分になって開いた。
    「ここに手と首を乗せなさい」
    穴の中にその子の手首と首をはめ込み、その上から再び横棒を乗せて閂を掛けた。
    これでこの子は、前屈みになったまま手と頭を固定されて動くことができなくなった。
    「これはピロリー。首枷台です」
    私達に向かってスカートのお尻が突き出されて小さく震えている。
    メイド長はそのお尻を2~3回軽く叩くと、スカートを背中までめくり上げた。
    「あぁ!」
    白いTバックショーツとレースのストッキング、ガーターベルトが丸出しになる。
    これは、制服と一緒に支給されて全員が着用している下着だ。
    同じ14才とはいえ、お尻に食い込むTバックの下着とガーターベルトはセクシーで挑発的だった。
    私も同じものを穿いてるんだ。
    私は思わずスカートの上から自分のTバックを押さえた。
    他に何人も自分のお尻に手を当てている。

    首枷台

    メイド長は丸見えになったガーターベルトを外して、その上ショーツも膝まで下ろしてしまった。
    「あ・・」
    首枷台に固定された子はもはや何をされても抵抗できない。
    「今日は初めてですから、鞭は10回だけにしましょう。皆もよく見ているように」
    メイド長は細い皮の鞭を出すとそれを片手でしごいた。
    まさか、あれでお尻を?
    そのまさかだった。
    メイド長はその子に向かって鞭を振り上げ、むき出しになったお尻を打った。
    ぴしり。
    「きゃっ!」
    ぴしり。
    「いやぁ!!!」
    白い肌に鞭の痕が刻まれる。
    ぴしっ。
    「ぎゃああ!!」
    ぴしっ。
    「あああぁ!!」
    メイド長は同じ場所を続けて打たないように、注意して鞭を使っているようだった。
    まんべんなくあちこちに赤い筋が刻まれて、お尻全体が一様に赤く染まって行く。
    ぴし!!
    「やあぁっ!! はぁ、はぁ・・」
    ぴし!!
    「ああぁん! も、もう、止め・・」
    ぴしっ!!
    「はぁああ・・ん!!」
    「あと3回」
    メイド長はムチを持ち替えて言った。
    「もう、許して。・・お、お願い」
    「勘違いしないように。あなたを罰するために打っているのではありません」
    ばちんっ。
    「あぁん! あああ」
    「ここでは、あなた達は鞭を受ける立場であることを思い知ってもらうために、打っているのです」
    ばちんっ。
    「はあん、あああっ」
    「さあ、最後です。特に強く打ちますから覚悟なさい」
    「・・はい」
    ばちっ!!
    「あああああ!!!」

    最後の鞭の音と女の子の悲鳴が部屋に響いた。
    「あ・・、はぁ・・、はぁ・・ん、」
    「これから毎日、全員に鞭を打ちます。それはあなた達の務めと心得なさい」
    私達は自分の胸に手を当てたまま、何も言えなかった。
    「さあ、鞭打ちが終わったら、必ずお礼を言うのです。あなたのために鞭打ってくれた人への感謝の気持ちを忘れないように」
    「あ、」
    「はい?」
    「あ、あり・・」
    「聞こえませんよ?」
    「ありがとう、ございましたっ。・・あぁっ、ああああっ」
    その子はお礼を言うと、大きな声で泣き出した。
    メイド長は優しく微笑むと、その子を首枷台から解放して、床にうつ伏せに寝かせた。
    「そこの、あなた。この子に薬を塗ってあげて」メイド長は私に向かって言った。
    「あ、はい!」
    私は慌てて駆け寄り、渡された軟膏をその子のお尻に塗った。
    そのお尻は、りんごのように真っ赤で、蒸し上がった饅頭のように暖かくなっていた。
    「はぁっ・・ん!」
    鞭打たれた子はお尻を触られて身を震わせた。
    「はぁ・・ん」
    まさか。
    私は思った。
    この子、気持ちいいの? こんなに打たれて気持ちいいの?
    両足の間に透明な液体が流れていた。
    おしっこだろうか? それとも。

    私達は一人ずつ髪を点検されて、ほとんどの子がその場で短く切られた。
    それからあの首枷台に拘束されてお尻に鞭を受けた。
    生まれて初めて打たれた鞭は、刺すように痛くて熱かった。
    どうしてこんな目に合うんだろう。
    その夜、合同の寝室では皆が泣いて、そして寝入ってしまった。

    3.
    翌日から本格的な行儀見習が始った。
    毎朝、私達は二人ずつ組になって、お屋敷のお掃除をさせられた。
    お掃除といってもお部屋や廊下ではなく、もっぱらトイレ、しかも従業員用のトイレのお掃除が私達の仕事だった。
    辛かったのは、必ず裸足でお掃除しなければならないことだった。
    私達はスカートが濡れないようにたくし上げて括り、ストッキングを脱いでから、お掃除にかかった。
    あてがわれた道具もバケツと雑巾だけだったから、床に膝をついて、冷たい水で絞った雑巾で床や便器を磨いた。
    お掃除が済むと、点検されて、少しでも磨き残しがあればやり直しを命じられた。
    そしてその後、お掃除の結果にかかわらず、全員が首枷台で鞭を打たれた。

    午後は礼儀作法の訓練だった。
    何も知らない私達は、まず挨拶の仕方だけを徹底的に教えられた。
    両手を前で合わせまっすぐ前を見て立つ。目上の人が来たら頭を下げる。
    たったこれだけのことが、きちんとできるようになるまで3日かかった。
    礼儀作法訓練の後は、またお尻に鞭を受けた。
    「お尽くしする気持ちを持ちなさい。あなた達はまだお尻を打たれるしか能がないのだから、それで精一杯尽くすのです」
    そう繰り返し言われた。

    こんな生活が7日間続いた。
    どの子のお尻も猿のように腫れ上がっていた。
    ずきずきする傷みは常に消えることなく、自分が奴隷のような存在だと思い知らされた。

    逃げ出す子が一人もいなかったのは不思議だった。
    いいえ、後になって思えば、逃げ出さないのは当然だった。
    そこには「適性」のある者だけが集まっていた。
    健康で知的で美しく、素直で従順な女の子。
    代償を求めず身を捧げる献身性、そしてどんな責めも受け入れる被虐性。
    私達は注意深く観察され、選ばれていたのだった。

    数限りなく鞭打たれる中で、皆が気づいた。
    お掃除でも礼儀作法訓練でも、よく頑張って上手にできたときは、お褒めの言葉を受けてから、強く、たくさん打たれる。
    失敗したときは、叱咤されるだけで、鞭は緩く、場合によってはひと打ちもいただけない。

    メイド長は誰も分けへだてせず、えこひいきもしなかった。
    厳しいけれど、私達が頑張ったときはそれを理解して、笑顔で褒めてくれた。
    褒めてもらえた後の鞭打ちは、痛くても辛くなかった。
    それどころか、額に汗を光らせて鞭を振るってくれるメイド長に感謝の気持ちを感じた。
    逆に、叱られた後に鞭を打ってもらえないと、寂しさすら感じるのだった。

    4.
    8日目から衣装が変わった。
    上着のブラウスとスカートは同じだけど、下着が変わった。
    Tバックのショーツの代わりに、皮でできた貞操帯を穿かされた。
    それは鍵を掛けると自分では外せない、下半身の拘束具だった。
    鍵はメイド長が管理して、許しがないと外してもらえない決まりだった。
    貞操帯は前後に穴が開いているので、トイレは問題なかった。
    でも、それ以外の箇所は自分で触れることができなくなった。

    どの子も貞操帯の機能と目的は知っていた。
    それは、女性のセックスの自由を奪うだけでなく、自分を慰める自由も奪うのだ。
    私達は全員バージンだった。貞操帯を初めてつけた夜に告白し合って確認した。
    オナニーは皆が知っていた。
    ここに来てから、大っぴらにはできないけれど、トイレやベッドの中で行為をした子は何人かいた。
    私自身は一度もしなかったけれど、それでも貞操帯をつけてから後はエッチな気分に悩まされるようになった。

    その日から私達の日常が一変した。
    午前のお掃除と午後の礼儀作法訓練は何も変わらない。
    でも私達の頭の中にはいつでも貞操帯があった。
    自分では外せない貞操帯が、私達の自由を奪っていた。
    私達はスカートの上から貞操帯を押さえては溜息をつくようになった。
    お風呂には入れてもらえず、毎晩絞ったタオルで身体を拭くだけになった。
    毎日の鞭打ちもお休みになって、私達は、少し安心したような、物足りないような毎日を送った。

    5.
    がちゃん!
    大きな音がした。
    廊下の飾り台に飾ってあった花瓶が落ちて割れたのだ。
    「あぁ、・・申し訳ございません!!」
    それは、メイド長のことを「素敵」と言って最初に鞭打たれた子だった。
    「どうしましたか!?」メイド長が飛んできた。
    「あ、あたし。・・いえ、わたくし、ぼうっとしていて、ぶつかって」
    「悪いのはこの子だけではありません! わたくしも、注意していませんでした!」
    「わたくしもっ」「いえ、わたくしも」
    皆がその子を弁護した。
    貞操帯のせいで注意が散漫になった己を責めていた。
    「どうぞ、罰して下さい!」「あぁ、わたくしも罰を」「わたくしも!」
    「・・分かりました。では、連帯責任として皆さんに罰を与えます」
    あぁ、罰って、もしかして鞭打ちかしら?
    「実は今夜にも、皆さんの貞操帯を外すことを予定していましたが、それを最後の日まで延期します。もちろんお風呂も鞭打ちの再開も延期です」

    それからは、私達の態度が少し変わった。
    貞操帯を意識しないのは無理だけど、お掃除や礼儀訓練はそれを忘れるくらいに頑張るようになった。
    トイレのお掃除は雑巾で拭くだけでは足りなく思えて、便器の中を指で擦って磨くようになった。
    自分達ができるのはトイレの掃除しかないけれど、それでお屋敷が綺麗になることが嬉しかった。
    行儀作法訓練でも、ちゃんとお客様をお迎えする挨拶とお見送りする挨拶ができて、メイド長に褒めてもらえるようになった。

    6.
    行儀見習の最後の夜になった。
    メイド長から、お屋敷の旦那様が会ってくれるからお風呂で綺麗にするようにと言われて、皆が髪と身体を洗った。
    貞操帯は外せないから、隙間をスポンジで洗い、届かないところはお互いに指を入れて洗った。
    ほんの2週間前まで見ず知らずの仲だったのに、今はお尻の穴まで洗い合っている。
    おかしいね、と皆で笑った。

    広い廊下をメイド長について歩いた。
    ここは私達が過ごした従業員用のエリアではなくて、お客様をお招きするエリアだった。
    私達は行儀作法訓練で教わった通り、無作法にきょろきょろすることなく、両手を前で合わせて歩いた。
    ときどきすれ違う他のメイドさんに頭を下げると、相手もにっこり笑って会釈を返してくれる。
    きちんと振舞えることが、とても嬉しくて誇らしかった。

    広い部屋、といってもこのお屋敷では多分普通の部屋に入って、私達は息をのんだ。
    そこはまるで結婚式の披露宴の会場みたいに大きな丸いテーブルが並んでいて、それぞれのテーブルの上に縄で縛られたメイドさんがいた。
    一番近くのメイドさんは、両手を背中で拝むように合わせて縛られていて、胡座(あぐら)に組んだ足首が胸につくまで小さく折り畳まれていた。
    その隣のテーブルでは、身体を逆海老に反らせたメイドさんが自分の足で頭を挟んで縛られている。
    さらにその隣では、体操選手みたいに180度開脚で縛られたメイドさんがそのまま前屈してぺちゃんこになっている。
    どうしてこんな目にあってるんだろう。
    どんな悪いことをしたんだろう?
    「この子達は、この春、中学を出て屋敷に入った新人、つまりあなた達より一つ上の先輩です」
    私達は驚きのあまり何も言えなかった。
    このメイドさん達はこの間まで中学3年生だったのか。
    「このような姿をお楽しみいただくことも、大事なお務めのひとつです」
    そうか。
    私は理解した。これは罰なんかじゃない。
    私達の鞭打ちと同じだ。
    縛られることでお尽くししてるんだ。
    当然のお務めなんだ。

    「あぁ・・」
    目の前の胡座で縛られたメイドさんが小さな声を出した。すごく可愛くて色っぽくて、同性でもぞくぞくする声だった。
    その人の顏は反対を向いていて、表情を伺うことはできなかった。
    でもきっと素敵な表情をしているはずだと思った。

    「皆さん、並んで」
    私達は慌てて一列に並んだ。
    初老の男性が、お供を何人か連れて部屋に入ってきた。
    威厳があって、ちょっと怖そうで、それでいてどこにでもいそうな普通のおじさん、それが旦那様だった。
    「今年の新人メイドと行儀見習、合わせて14名です」
    私達は一斉に頭を下げた。
    「うむ」
    旦那様はぽつりと言って、テーブルで縛られたメイドさんを順に見て回った。
    それから私達を見ながら前を通り過ぎて、お供の男の人が置いた椅子に黙って座った。

    7.
    「さて、皆さんはとても優秀でした。願わくば、皆さんとの縁がこれからも続くよう祈っております」
    メイド長が私達に向かってにっこり笑って言った。
    「それでは、私があなた達のために示してあげられる最後のお手本です・・」

    旦那様のお供の男性が二人、メイド長の側に歩み寄り、メイド服を脱がせた。
    黒いブラとショーツだけになったメイト長の手首に皮の手枷をつけると、その手首を天井からのロープで引き上げた。
    そして爪先立ちになったメイド長の正面と後ろに分かれて立つと、大きな鞭を手にした。
    その鞭は、まるで、サーカスでトラやライオンを打つための鞭かと思うくらい、太くて長かった。
    ・・え?
    男性二人がメイド長に向かって同時に鞭を振りかざした。
    あんな鞭で打たれたら、死んじゃうっ。
    教わった作法に反するけれど、私は顔を顔を背けて目を閉じてしまった。
    ばちんっ!!
    「ああっ!!」
    すさまじい鞭の音と、メイド長の悲鳴が聞こえた。
    ばちんっ!!
    ばちんっ!!
    「くっ! 目をそらさないで、・・こ、こっちを、見て」
    メイド長の声がして、私は恐るおそる目を開いた。
    ばちんっ!!
    メイド長は、今にも倒れてしまいそうになりながら耐えておられた。
    むき出しの肌に前後から鞭が当たり、その場所にくっきりと赤い傷が刻まれて行く。
    ばちんっ!!
    ブラがはじかれて、形のいいバストが露出した。
    ばちんっ!!
    「はぁっ!!」
    そのバストにも鞭に打たれて、横真一文字に赤い痕が刻まれる。
    ばちんっ!! ばちんっ!! ばちんっ!!
    鞭打ちのペースが速まった。
    とうとう膝が折れて、吊られた手首だけで体重を支える体勢になった。
    前後から鞭で打たれるのに合わせて身体が大きく揺れている。
    「やぁっ!」「メイド長さまっ」
    何人かが叫んだ。
    「うろたえないでっ。・・お尽くしする、気持ち。わ、忘れないで!」

    メイド長のお気持ちが伝わってきた。
    それは自分の身を捧げてお尽くしする気持ちだった。
    私達はメイド長を見ながら涙を流した。
    顔をゆがませて苦しみながら耐えておられるメイド長の姿は、心が震えるほど美しくて、一生忘れないと思った。
    「みんな、泣いてないできちんとしよう!」
    「うんっ」「そうねっ」
    私達は姿勢を正して並び直した。
    メイド長が鞭打たれながら微笑んで下さったような気がした。

    8.
    長い時間が過ぎて、鞭打ちの音が止んだ。
    たぶん100回以上鞭を打たれて、メイド長はぐったりと動かなくなっていた。
    身体は傷だらけ、髪もばらばらに乱れて、手首だけで雑巾のように吊られた姿は、綺麗だったメイド長とは思えなかった。
    でも、私達はその姿を感動しながら見ていた。
    あんな立派なメイドになりたいと思っていた。

    私達は乱れずにじっと前を向いて並んでいた。
    やがて、後ろの方で物音が聞こえて何かを運び込む気配がしたけれど、誰も勝手に振り返って見るようなことはしなかった。
    何の準備をしているのか、ちゃんと分かっていた。
    ずっと緊縛されている先輩のメイドさん達。
    すさまじい鞭打ちの見本を見せて下さったメイド長。
    次は、自分達の番だ。

    「さぁ、お前達の気持ちを見せてくれるか」
    旦那様がおっしゃった。
    私達は一斉に深く頭を下げ、それから振り返った。
    そこには、首枷台が私達の人数分並んでいて、その横にはそれぞれ鞭を持った男性が立っていた。
    私達は再び一礼して首枷台に歩み寄り、自分から頭と手首を差し入れた。
    がちゃり。
    閂がかかって、私達は固定された。
    スカートが背中までめくり上げられる。
    貞操帯が解かれてお尻が涼しくなった。
    私はぎゅっと目を閉じた。

    ぴしりっ。
    一斉に鞭が打たれて、私達は揃ってわなないた。
    「はあぁ・・!」
    久しぶりの鞭はとても痛くて、そして甘かった。
    それはメイド長が受けて下さった鞭と比べたら玩具みたいなものだけど、それでも私達の心と身体に痕を刻んだ。
    ばちん!
    ばちんっ!!
    最初は緩く。だんだん強く。
    「はぁ! あん!」
    今、自分達は、旦那様にお尻への鞭打ちをご覧いただいてる。
    私達は苦痛と喜びに包まれて、声を上げ続けた。

    続き




    行儀見習(2/2)

    9.
    家に帰って、私はお屋敷での出来事を何もかも話した。
    お尻を鞭で打たれたことも、貞操帯をつけたことも、父さまと母さまは驚かずに聞いてくれた。
    「行ってよかった?」
    母さまに聞かれ、私は、はい、とっても、と答えた。
    「やっぱり、君の娘だね」
    「あなたの娘でもあるんですよ」
    父さまと母さまはそう言って笑った。

    私は二人の会話の意味が分からない。
    「・・この子に知ってもらうときが来たかな」「ええ」
    父さまと母さまが教えてくれた。
    母さまは、かつてあのお屋敷に勤めるメイドだった。
    今よりずっと若かった旦那様から縄で縛っていただいたこともあった。
    父さまはお屋敷に出入りする仕事をしていて、メイドだった母さまを見初めた。
    そして旦那様にお願いして、母さまがメイドを引退すると同時に結婚したのだった。
    母さまはさらに秘密を教えてくれた。
    一昨年、亡くなったお婆さまも、先代の旦那様に仕えるメイド長だったという。
    私は歳をとっても凛として綺麗だったお婆さまの姿を思い出した。
    お婆さまの時代も、メイドは精一杯お尽くししたの?
    お尻を鞭で打たれたり、縄で縛られたりしたの?
    「ええ。誇りを持って務めたと言ってらしたわ」
    そうか。
    私は嬉しくなった。
    母さまの娘であること、お婆さまの孫であることがとても誇らしく思えた。

    「・・さて、実は、夏休みにも、次の行儀見習がある」
    父さまがおごそかに言った。
    どきん。
    胸が大きく鳴った。
    「ただし、次に集まるのは、中学校を卒業したら屋敷に入ると決めた者だけだ」
    え、それって。
    「そう。決めなければならないの。高校に上がって普通の女の子として生きるか、それともお屋敷のメイドになるか」母さまが言った。
    「あなたがどちらを選んでもに、私達は応援するわ」
    「よく考えて、決めなさい」

    どきん、どきん。
    胸の鼓動が高まった。
    毎日お尻を鞭で打たれる生活。
    ぎちぎちに縛られて転がされた先輩のメイドさん達。
    お屋敷での光景が頭の中をぐるぐる駆け巡った。
    あぁ、私は・・。

    私は自分の運命を決めた。
    父さま、母さま。
    私はお屋敷で勉強した通りに、まっすぐ立って両手を前に揃え、上体を90度に折って頭を下げた。
    高校には行きません。どうぞ私をお屋敷に入れて下さいっ。

    10.
    新しい3年生の担任の先生は、私が高校進学ではなく就職希望と知ると慌てて家に電話をかけてきた。
    本人の強い希望だからと父さまにきっぱり言われて諦めてくれたけど、しばらくの間は私なら絶対に有名進学校にに合格できるのにと未練がましく言われたのだった。

    私は家のトイレの掃除を毎日するようになった。
    お屋敷のトイレと比べるととても小さくてあっという間に済んでしまうのが残念だったけど、その分丁寧にぴかぴかに磨き上げた。
    それからお勉強も手を抜かず今まで通りに頑張った。
    5月の全国模試では100位内に入ることができて父さまに褒めてもらえた。
    成績上位者の名前リストには、行儀見習で一緒だった子の名前が何人も載っていた。
    みんな、頑張ってるんだ。
    きっと全員再会できると確信した。

    夏休みの少し前。
    母さまが私の全身のうぶ毛を脱毛してくれた。
    アンダーヘアも綺麗に整えて剃ってくれた。
    「もしかしたら旦那様にご覧いただくかもしれないからね」
    じゃあ、私、処女じゃなくなるの?
    私はもう、メイドとして務めることは自分の純潔も捧げることだと理解していた。
    「うふふ。まだそれはないわ。いったいお屋敷の誰が、まだ自分で下の毛の手入れもできない娘のバージンを奪いますか」
    あ~、ひどいなぁ。
    「心配しないで。そういうことは・・」
    母さまは私のあそこに優しく手を当ててくれた。
    温もりが私に伝わる。
    「これから勉強するの。いっぱい勉強して、心も身体も磨きあげて、一人前のメイドになったと認められたら、その時が来るわ」
    母さまの指先が私の中に入ってきた。
    それは自分でするよりもずっとよかった。
    あぁ。・・母さま、上手。
    「女の子にしてあげるのはお屋敷にいたとき以来。自分の娘にしてあげられるなんて、夢みたい」
    そうか、お屋敷では女の人のお相手もするの?
    「もちろんよ。大切なお客さまが男性だけとは限らないでしょ?」
    私の中の小さな芽が摘ままれた。
    ああぁっ!
    私は声を出してのけ反った。
    「母さまには分かるわ。あなたはもっと綺麗になる。優しくて器量のいいメイドになって、たくさんの人から愛される。・・だから」
    母さまは裸の私をぎゅっと抱きしめてくれた。
    あっ・・、ああああ。
    母さまの深い愛情が私を包んでいた。
    「あなたは、どなたにもすべてを差し出してお尽くしするのですよ」
    私は喘ぐばかりできちんと返事をすることができなかった。
    でも、母さまは全部分かっているみたいに、ずっと微笑んでいた。

    11.
    お屋敷には、春休みのときと同じ人数が揃った。
    皆、髪を短くして、お化粧もしていないのに、見違えるほど綺麗になっていた。
    「皆さん、自分を律して、高めているようですね」
    メイド長が私達を見て満足そうにおっしゃった。
    どの子も凛とした表情で立っている。
    メイドとして自分を捧げる、何があっても、どんなときにもお尽くしすると決めた顏だった。

    「さて、今夜、旦那様が時間をとって皆さんにお会い下さることになりました。とても光栄なことです」
    メイド長が言われた。
    「お目もじするにあたって、皆さんは何も身に着けてはなりません。下着も含めて一切です」
    あぁ、これって、母さまの言ってた・・。
    「あなた達は自分から余分なことはせず、貞淑に控えていればよいのです。ただ、旦那様がお望みになれば、そのときは何にでもお応えするように。いいですか?」
    「はいっ」
    全員が一斉に返事をした。
    メイドだから、女だから、裸でご奉仕するのは当然のこと。
    もちろん、それ以上のことだって。
    みんな、その覚悟をして、ここに集まっているんだ。
    母さまは、いきなりセックスを求められるようなことはないと言った。
    でも、もし、本当に求められたら、どうしよう。
    いきなり押し倒されたら、私は泣かないでお尽くしできるだろうか。
    とろり。
    甘くて、切ない気持ちが胸の中に溢れた。

    「・・この中に生理中の人がいたら申し出なさい。それから、下(しも)の手入れに自信のない人も相談するように。皆さんにとっては初めてのことですから、今日は特別に助けてあげましょう」
    メイド長のお話が続いている。

    私は横目で他の子の様子を見た。
    じっと唇を噛んで、こわばっている子。
    前で合わせた手をぎゅっと握って、何かに耐えているような顔の子。
    顔を真っ赤にして、性的に感じているのがはっきり分かる子。
    ・・そうか。やっぱり。
    私は思った。
    同じだ。みんな私と同じ、仲間なんだ。
    私達は互いの視線に気づくと、表情を緩めて微笑みを交わし合った。



    H氏邸のメイドのリクルートです。
    ここには、ただ外観が美しいだけでなく、学業が優秀で、被虐の素質も十分な少女が集められます。
    彼女達は屋敷に入る1年前から行儀見習いの名目で訓練を重ねます。
    屋敷に入ってからも訓練は続き、およそ半年後に正式なメイドとしてお披露目されるのです。

    ちなみに彼女達のバージンは当主のH氏自身が賞味することは少なく、ほとんどは極上のおもてなし品として賓客に供されます。
    そこらのJKなどとは違う、一級の躾と作法を身につけた接客メイドです。もちろん緊縛や拷問だって自由なので、お客樣には大人気。
    毎年新人メイドが登場する時期になると、屋敷にはVIPの来訪が増えるという現象が見られます^^。

    さて、ここのところ再び仕事が過酷な状況に陥っておりまして、今回は週末出張のホテルに個人のノートPCとペンタブを持ち込み、夜中に作業してようやく更新にこぎつけました。
    4月まではどうしようもない見込みです。
    この先さらに更新間隔が開くのは申し訳ありませんが、どうぞお待ち下さるようお願いします。

    ありがとうございました。




    侵入者

    1.
    その夜、大停電は突然やってきた。
    ビルの照明が消え、街灯が消え、信号が消え、そして街は大騒ぎになった。
    何で停電になったのか、理由(わけ)なんか知らないし興味もない。
    ただ、チャンスだと思った。
    俺は真っ暗になった街を走った。
    あの、長い塀(へい)が1キロ以上も続く道に来ると、走るのを止めた。
    静かな住宅街も灯りが消えて暗かったが、月明かりを頼りに歩いた。
    前から狙いをつけていたのは、塀の中から大きな木が枝を張り出している場所だ。
    そこは近所の誰かが駐めているのだろう、いつも塀に沿ってハイルーフのワゴン車が置いてあるのだ。
    ワゴン車の屋根に上がり、塀の上に手を伸ばした。
    「おっと」
    やっぱり有刺鉄線が張ってあった。
    俺は細引ロープを出して頭上の木の枝に投げた。
    何度か投げ直してうまく掛かると、ロープを辿って枝にしがみつく。
    へへっ。
    身の軽さが俺の身上だ。
    塀を越えて、反対側に降り立った。
    そこはまるで森のようになっていて、堀の外の住宅街とは別世界だった。
    月明かりも木々に遮られて、何も見えない。
    しばらく様子を伺ったが、警備員がやってくる気配はなかった。
    よし、うまくいったようだ。
    俺はポケットライトを点けて暗闇の中を歩き出した。
    ・・
    何ヶ月か前、俺はこの屋敷に別の場所から侵入しようとして捕まったことがある。
    何かを盗むためじゃなかった。
    ただ、このやたら広い屋敷にどんな金持ちが住んでいるのか見てやろうと思っただけだった。
    でもどこかの防犯センサーに引っかかってしまったんだろう、あっという間に警備員が駆けつけてきたのだ。
    いつかリベンジしてやる。
    俺は屋敷の周辺を歩き回って、チャンスを狙っていた。
    そしてそのチャンスは、停電という思わぬ形でやってきたのだった。

    2.
    いったいどこまで続くんだ、この森は。
    もう10分以上歩いているのに、まだ建物の影も見えなかった。
    真っ暗な中を勘を頼りに歩いてきたから、元の侵入地点に戻れるかどうか不安になってきた。
    あきらめて帰るか?
    そう思った頃、開けた場所に出た。
    小さな池の横にベンチ。そしてコンクリートの台とその上に白い彫像。
    そこだけ木の生えていない空間に月の光が照って明るかった。
    池の横には照明灯が立っていたけど、灯りは点いていなかった。
    俺はベンチに座った。ぎぃっと軋む音がした。
    静かだった。回りは真っ黒な森。空には満月。
    さあ、どうする?
    「あの、もし」
    最初、俺はその声に気づかなかった。
    「お客様」
    俺は飛び上がった。女の声だった。見つかった!
    身構えて周囲を見る。誰もいなかった。
    ただ、明らかに人の気配があった。
    「どこだ?」
    「こちらです」
    その声はコンクリートの台の上から聞こえた。
    見上げてポケットライトで照らすと、彫像が俺を見下ろしていた。
    !!
    その彫像は下半分が丸くて白い柱になっていた。
    上半分は人間の女だった。
    裸の女が、両手で自分の胸を隠していた。
    ・・逃げなくては。一瞬そう思ったが、雰囲気が異様だった。
    何だ、この女は? こんな高い柱の上で裸になって何をしてるんだ?

    石膏オブジェ

    「誰だ、お前は」
    「オブジェです」
    「?」

    オブジェの少女

    「本来、お客様と直接お言葉を交わすことは、許されないのですが・・」
    大きな声ではないが、はっきりと通る声だった。
    「照明に不具合がありましたようで申し訳ございません。すぐに係の者が参りますから、しばらくお待ち下さい」
    「故障じゃないよ。停電だ。街中真っ暗になってるぜ」
    「停電・・でございますか?」
    「知らなかったのか?」
    「私は、ずっとここにいたものですから」
    「お前は何をしてるんだ? ヌードでサービスしてくれるのは嬉しいがな」
    「あの、失礼ですが、お客様は当館にご滞在の方では」
    「裏の塀を越えて入ってきた。たかが停電で俺を見逃すとは、ここの防犯システムも役立たずだな」
    女が驚くのが判った。自分の胸を隠す腕がぎゅっと締まった。
    「そうでございますか。では、泥棒様?」
    「俺は泥棒じゃねぇ。・・もう一回聞くが、そこで何をしてるんだ」
    「私は、オブジェとしてここに飾られております」
    「オブジェ?」
    「暗いのでよくご覧いただけないかもしれませんが・・」
    俺はポケットライトをかざして女を見る。外に出ているのは女の上半身だけで、ヘソから下は柱の陰で見えなかった。
    「お前、その中に座っているのか?」
    「いいえ。この柱は石膏でできておりまして、私の下半身はその中に固められております」
    「!!」
    「ここは、オブジェを展示する庭園です。この先、お屋敷までの小道に私と同じ石膏オブジェがいくつも置かれています」
    俺は言葉をなくした。
    この屋敷は、生きた女をこんなモノにして喜ぶ変態の巣だったのか。
    「あの、大変驚かれたとは思いますが・・」
    「驚いたよ」
    「オブジェは、私を含め、健康を損なわないように適切に管理されていますから、問題はございません」
    「あのな。問題って、そういう問題じゃないだろ」
    「はい?」
    「お前、いつからそこにいる?」
    「昨日の朝からでございます」
    「何で裸なんだ。雨でも降ったらどうする」
    「着衣か裸体かに決まりはありませんが、今の季節でしたら天候によらず概ねこのような姿が多ございます。でも、私どもをお気遣いになって下さるお客様から、カーディガンを掛けていただいたり、雨の日に傘を差しかけていただいて感激することもございます」
    「お前、年中、そこに立ってるのか」
    「はい。合間にはお屋敷の用事もいたしますが」
    「それで平気なのか」
    「それは先程も申しました通り、健康に問題は」
    「そうじゃない! そんなことは聞いてねぇ!!」
    俺はだんだん腹が立ってきた。
    女の気取った物言いのせいではなかった。
    ただ、自分のことなのに、まるで他人事のようにさらさらと話す様子が気に食わなかったのだ。
    「お前、モノじゃねぇんだぞ? 生きた人間なんだぞ! 何で人間をそんな風にして面白いんだ。自分で変だと思わねぇのか!?」
    女は一瞬真顔になって俺を見た。それからにっこり笑って言った。
    「それが私の務めでございますから」
    「な」
    「お分かりいただけないかもしれませんが、世の中には若い女をこのように扱って喜ばれる方がいらっしゃいます。そして私はそのような方にお仕えする身です」
    「・・分からねぇよ」
    「こういう姿でお仕えして喜んでいただけるのは、私にとりましても大変な・・」
    「分からねぇって言ってるだろ!!」

    3.
    俺は石膏の柱に飛びついた。
    柱を抱えて倒そうとしたが、柱はびくともしなかった。
    よほど頑丈にできているらしい。
    くそっ、それなら。俺は柱によじ登った。
    「危のうございます!」
    柱の上面は女の胴が生えている以外は平らだった。
    俺はそこに立つと、女の肩を掴んだ。
    「あぁっ、直接お手を触れることは、・・禁止、ですっ」
    女が身を屈めてわめいた。
    「うるせぇ!」
    俺は女の手首を握って力任せに背中に捻り上げた。
    細引ロープをポケットから出す。
    「くっ」
    縛り方なんぞ知らないから、女の両方の手首を合わせてまとめてロープをぐるぐる巻き、それから縄が緩まないように手首の間を直角に締めて縛った。
    女が無抵抗になると、俺は女の背中の側にしゃがみ、後ろから両手で女の胸を押さえた。
    「お前、変態金持ちの玩具にされて嬉しいのかよ!」
    力を入れて揉んだ。
    「ああっ!」
    そこは信じられないくらいに柔らかかった。
    俺はまだ女を知らなかった。俺の知らないところに、こんなに柔らかい生き物がいたのか。
    「い、痛い、です。・・もう少し、優しく、・・どうか優しく、お願い」
    俺は乱暴に押さえるのを止めた。
    力を緩めて手のひらをお椀のようにすると、女の乳房の形がよくわかった。
    それは大きすぎず、小さすぎず、俺の手の中に収まった。
    「そ、それで、・・イイ、です。・・ゆっくり、下から、持ち上げるように・・」
    俺は言われるままに女の胸をゆっくり揉み上げた。
    自分の股間がみるみる固くなるのを感じた。
    「はん、はぁん、はぁ、ん・・」
    「くそっ。はぁ、はぁ、はぁ・・」
    女と俺は揃って喘いだ。
    俺の手の動きが次第に遅くなって、そして止まった。
    女は両目を閉じたまま肩を上下させて喘いでいる。
    俺は自分の手を女の脇腹に移動させた。
    ゆっくりと、力を入れ過ぎないように注意して指先で撫でた。
    脇腹から腹の前。へその周囲も撫でた。
    女の身体は柔らかいだけでなく、どこもかしこもすべすべだった。
    「あぁ・・」
    女がゆっくり俺を見上げて微笑んだ。
    「お上手です。女の身体を初めて触ったとは思えないくらい」
    「分かるのか?」
    「一応、男の方にお尽くしする訓練を受けておりますから」
    俺は柱の上にしゃがんだまま、後ろから女を抱いた。
    「・・悪かった」
    「い、いえ」
    「お前、いくつだ」
    「17です」
    「俺と同じか」
    「では、泥棒様は高校生?」
    「んなもん、1年の1学期で中退したよ。それから、俺は泥棒じゃねぇって言ってるだろ」
    「じゃあ、何ですか」
    「その、ちょっと金持ちってのが、どんなもんか、見に来ただけだ」
    女が少し笑った。
    「おかしいかよ?」
    「あ、ごめんなさい。・・その、お金持ちの暮らしを見る代わりに、私のようなモノを見てしまったのですね」
    「違いねぇ。はは」
    「うふふふ」
    俺は女の髪を撫でた。
    「・・お前、笑ったら普通の女だな」
    「え? ・・あ」
    女が急に顔を引き締めた。
    「あ、あの。その。・・私は決して、そのような」
    「もういいじゃねぇか。泥棒の前で気どらなくても」

    4.
    それから俺は女の身体を抱いたまま、女から話を聞いた。
    女は中学を出てからこの屋敷にメイドとして住み込みで勤めているという。
    屋敷の主人は大変な金持ちで、この国の政治まで左右できる力を持っているらしい。
    女はその主人に選ばれて、オブジェとして飾られることになった。
    石膏柱に埋められて庭に置かれるのが2日間、それから休みが2日あって、屋敷でメイドとして2日働く。
    この繰り返しをもう8ヶ月も続けている。
    「お前、自分じゃ動けないんだろ?」
    「はい」
    「飯とかトイレはどうしてるんだ?」
    「栄養補給と給水は決まった時間にいただきます。お小水は、その、カテーテルで」
    「カテーテルって何だ?」
    「細いチューブを尿道から膀胱まで通しまして、それで柱の中のタンクに溜まります」
    「お前、しょんべんの穴に管を挿して垂れ流してるのか」
    女の身体が少し震えた。恥ずかしがっているんだと分かった。
    「・・その、垂れ流しという訳ではありません」
    「どういうことだ?」
    「普段は栓が閉まっていて、一定時間毎に自動的に流れます。食事や排尿のリズムを作ることで、長い間、耐えられるようになります」
    俺は女が埋まった石膏の柱を見下ろす。
    この中にそんな仕掛けが。
    「・・あの、」
    「何だ?」
    「私、いろいろお話ししていますが、絶対に誰にも明かさないで下さい」
    「ああ」
    話したって誰も信じないだろうぜ。
    「しかし、俺はお前にとっては泥棒だからな。黙ってるなんて約束はできないな」
    「そんな・・」
    「そうだな。約束してほしければ」
    「?」
    「その、もう一回、・・触らせてくれるか?」
    「は? うふふふ」
    女が急に笑った。今までにない明るい笑い方だった。
    「駄目か?」
    「いいえ。こんなモノでよろしければ、どうぞご賞味下さいませ」
    ・・
    俺は再び女の乳房に手をやった。
    手の中に収めてゆっくり揉んでいると、急に先端が固くなったように感じた。
    俺はその先端を両方の指で同時に摘み、それからきゅっと力を加えた。
    「あぁっ!」
    女が声を出した。
    さっきの押し殺した声ではなく、素直に感じたままに出した声だと思った。
    人差し指と中指の間に乳首を挟んで、左右の胸を同時に揉むようにした。
    「んんっ。・・あ、・・あぁん!」
    女が再び声を出した。その声は俺の下半身にずんと響いた。
    可愛い女だ。
    俺は女の顎に指を当ててこちらを向かせた。嫌がってはいないと確信した。
    俺はその顔に自分の顔をゆっくり近づけた。女が目を閉じた。

    5.
    突然明るくなった。
    「うぉ?」
    俺は暗闇に慣れた目を一瞬手で隠した。
    足元から眩しいライトが自分と女を照らしていた。
    小池に噴水がちょろちょろと流れる音が聞こえた。
    停電が復旧したのか。
    明るくなると自分の格好もよく分かった。
    俺は石膏の柱の上で猿みたいにしゃがみ込んで、女にしがみついているのだった。
    「カメラがあそこに!」
    女が目で指す方を見ると、照明灯に監視カメラがついていて、こちらを向いていた。
    慌てて柱から飛び降りた。
    逃げかけて、女を縛ったままだと思い出した。
    俺は柱に駆け寄ると、女の手の細引ロープを解こうとした。
    何度か手から滑ったが、どうにか解くことができた。
    「じゃな!」
    俺は後も見ずに走り出した。
    森の中を一直線に駆けた。きっとこの方向だったはずだ。
    侵入した地点にたどり着くと、木に登って振り返った。
    いくつかの懐中電灯の光が迫っていた。ヤバかった!
    俺は枝を伝って塀を越え、道路に飛び降りた。
    そこは家々の灯りが点る住宅街だった。
    へへっ。
    俺は住宅街の中を一目散に走っていった。

    6.
    オブジェの少女は、少年が走り去った方向を見ていた。
    外部からの侵入者。
    とりあえず屋敷への侵入を阻止できたことにほっとする。
    乱暴されかけたときは身体を傷つけられると覚悟したが、落ち着いてくれてよかった。
    きっと根は優しい子なんだろう。
    女の扱いには不慣れだったけれど、よく鍛えたら女を上手に感じさせてくれる男になるのではないか。
    それにしても。ふと、思う。
    停電くらいで、このお屋敷の防犯センサーが機能停止するものかしら?
    ・・
    さて。
    少女は何度か深呼吸して、落ち着きを取り戻す。
    こんな夜中でも、酔狂なお客様は庭園にお越しになる。
    速やかにオブジェに戻らなければ。
    乱れた髪を直そうとして、手首の縄の跡に気づいた。これはお客様の目に留める訳にはいかない。
    ポーズを変えることにする。
    両手を伸ばしたまま後ろに回して、あたかも手錠を掛けられているような姿勢をとった。
    ・・そう、こんな感じ。
    上体をやや捻り、頭を垂れてうなだれた。
    自分は石膏の柱に取り込まれた娘。何の自由もない、ただそこにあるだけの物体。
    精神がみるみる被虐の色に染まる。
    さっき揉まれた乳首が再び、つん、と尖った。
    誰もいない庭園でライトアップされた石膏のオブジェ。
    少女はじっとうなだれてモノになった。
    ・・
    ぷぅ~ん。
    え? 蚊?
    もしかして、超音波の虫避け機が停電で故障?
    やぁだぁ!!
    噴水の横に立つオブジェが少しだけ揺れたように見えた。

    7.
    俺はコンビニの駐車場の隅にダチと一緒にいた。
    今日も暑くなりそうだった。冷たいモノが欲しかったけど金もなかった。
    駅前のヅタヤが開いたらそこで涼もう。
    駐車場に黒塗りのセダンが入ってきて、俺達の前で止まった。
    後席のドアが開いて女が一人降りてきた。
    「ひゅうっ」
    ダチが口笛を拭いた。
    それはミニスカのメイド服を着た女だった。
    俺はこの女の顔をよく覚えていた。はっきり見たのは最後に照明が点いたときだけだが。
    そう。こいつは俺と歳が同じの、あの女だ。
    手の中に女の乳房の感触がまざまざと蘇った。
    「稲本征司様」女は両手を前で合わせて深くお辞儀をした。
    「お前・・」
    「お元気ですか? 泥棒様」女が微笑んでいる。
    「何で俺の名前を」
    「あのとき、稲本様は防犯センサーに検知されていました。私と一緒のときも赤外線カメラがお顔を記録していました」
    「・・」
    「以前、一度、当館にお越しでございましたね。稲本様のお名前やお住まいはすぐに調べることができました」
    「俺を捕まえにきたのか」
    「とんでもございません」女は首を振った。
    「私どもの主人が稲本様を夕食にご招待したいと申しております」
    「主人って、あの屋敷の主人か?」
    「はい。金持ちの変態でございます」
    女はその言い方がおかしかったのか、自分で右手を口に当ててくすくすと笑った。
    「どうして」
    「近頃は屋敷へ侵入を試みる無鉄砲な方もめっきりおられなくなりました。主人が申しますに、気に入った。これは大物になる、と」
    「・・」
    「それで、主人からも直接お話しすると思いますが、稲本様に当館で働いていただきたいと」
    「俺を雇う?」
    「はい。何しろ金持ちの変態ですから・・」
    よほどその言い方が面白いのだろう。女はもう一度右手を口に当てて笑った。
    「失礼いたしました。・・私どもは人様には説明しにくい作業をすることもございます。稲本様は豪胆でお身も軽いですから、是非お手伝い願えないか、と」
    「よほどの変態だな」
    「はい」
    俺は少し考えた。
    こいつらは俺にヤバイことをさせたいのだろう。この間みたいな、他所の屋敷への不法侵入とか。
    「屋敷に行ってもいいが」
    「では、ご了解いただけますか?」
    「俺は何が嬉しい? 金持ちの変態に仕えて、危ないことをする、俺のメリットは何だ?」
    「そうおっしゃるだろうと、主人も申しておりました」
    「・・」
    「主人は、稲本様にお気に入りのメイドをお付けすると申しております」
    「え?」
    「稲本様は、そのメイドをどのように扱っていただいても構いません」
    「ちょっと待て。そのメイドって」
    「はい。私でございます」
    女はにっこり笑った。
    「稲本様、心からお尽くし申し上げます。どうぞ私めをお使いいただけますか?」
    そう言って深く頭を下げた。
    ・・
    「おい、征司。この綺麗な姉ちゃんはいったい何を言ってるんだ」ダチが俺に聞いた。
    「うるせぇ。俺も分からなくて困ってんだ!」
    俺は目の前で頭を下げている同い年の美少女に困惑していた。
    あの夜、闇の中でこの女と出会ったことが、俺の運命を決めることになったのか。
    ・・きっと引き受けるんだろう、俺は。
    そう思いながらも、自分をどのように扱っても構わないと本人から言われて、まともに返事ができないまま、俺はいつまでも困っていた。



    庭のオブジェ』でH氏が構想を語った、石膏オブジェの常設庭園が実現しているようです。
    この庭園は24時間公開されていますから、屋敷に招かれた客であればいつでも美しい『作品』を鑑賞することができます。
    蒸し暑い夏の季節なら、ライトアップされた深夜のオブジェを楽しむのも悪くありません。

    少年が夜の庭園で出会った少女。
    屋敷のメイド達に序列があるとしたら、比較的下の方に属するはずです。
    彼女の務めは石膏柱に埋め込まれて飾られることでしたが、これからはこの少年に仕えることになりました。
    彼を男にすることが、きっと彼女の次の務めになるのでしょうね。

    お盆休みになって、ようやく時間をとって執筆・更新です。
    イラストはネットのポーズ集などを参考にして、久しぶりに自分のイメージに近いものが描けました。
    もっと月光の中に浮かび上がる雰囲気を出せたらいいのですが、自分の実力でそこまではいいますまい^^。

    次回の更新までまた何週間か開くと思いますが、気長にお待ち下さい。
    ありがとうございました。




    被虐派遣(1/2)

    [プロローグ]

    急にモデルが必要になった。
    モデル、というのは体のよい言い方で、実際のところは拷問的なプレイに供される女性だ

    貞淑で控えめで、常に男性を立てて従うという日本女性を求めたい。
    礼儀作法の教育を受けた16才までのミドルティーンを要望する。
    性行為ならびに肉体的精神的な嗜虐行為の対象として使用可能なこと。
    それらの行為により生じる影響に関して、当機関は一切免責されるものとする。
    以上は当機関と貴組織の間における合意事項であり、女性当人の承諾の有無を問うものではない。


    まったく、好き勝手言ってくれるものだ。
    いったい現代日本のどこにそのような女性がいるのだ。
    どこかのお嬢様でも誘拐してこさせるつもりか。
    頭を抱えてしまったが、断ることは許されなかった。
    相手は同盟国の政府高官。この国にとっては超重要人物である。
    ほうぼう手を尽くして調べさせたら、日本有数の実業家であるH氏の名前が見つかった。
    氏が屋敷に置いている何十人ものメイドは、よく教育された美少女揃いで、性的な接待や拷問プレイも可能だという。
    早速その筋を通じて交渉した。
    H氏側から提示された交換条件は、中央アジア某国におけるレアメタル採掘権の取得に政府として便宜を図ること。
    何を勝手なことをと局長は憤慨したらしいが、最終的にはこれが認められた。
    私は部下と二人でH氏邸に赴き、条件に適うメイドを借り受けることになった。


    [PART.1]

    「外務省の石田様ですね。便宜を図ってさしあげるようにと主人から申し付けられております」
    茶髪をツインテールにくくりミニスカートのメイド服を着用した少女が挨拶した。
    どう見ても16~7才くらいにしか見えないが、彼女が屋敷のメイドを管理しているという。
    こんな少女が責任者だというのか。
    「16才までということでしたら、ご提供可能なメイドはただいま3名おります。1名は職務中ですが他の者と交代できますので」
    少女はタブレット端末を操作しながら言う。
    「ただ、残念ながらそのうち1名は今週から生理に入りましたので、ご満足のいくサービスはできないと思います。従いまして2名のうちのいずれかを派遣することになります」
    「そ、そうですか」
    「今からお選びになりますか?」
    「できれば」
    「では、別室へ」
    「部下も一緒でよろしいか?」
    「どうぞ」
    何なんだろう。この娘の落ち着きぶりは。
    自分よりもはるかに大人の私達を相手に、まったく臆することなく応対している。
    昔の遊郭で客と交渉して女郎を割り当てる役をしていたという遣手婆(やりてばばあ)を思い浮かべた。
    この少女はこの屋敷の遣手婆のようなものかもしれない。
    ・・
    少女に導かれて屋敷の中を歩く。
    「何なんでしょうね、ここのメイドは。人数も半端じゃないが、可愛いのばかり」
    「黙ってろ、小西。どこで見られてるかわからん」
    部下に小声で注意する。
    確かに、すれちがうメイドはどれも美少女ばかりだった、
    皆、慇懃(いんぎん)に頭を下げ私達が通り過ぎるのを待ってくれた。
    どの娘も見たところ十代後半から二十歳くらいまでである。
    こんな若いメイド達が夜の相手をしてくれるとは信じられなかった。
    ・・
    「こちらへ」
    扉が開くと、真っ暗だった部屋に自動的に照明が点った。
    一瞬、肉屋の冷蔵庫かと思った。大量の肉の塊がぶら下がっているように見えたのだ。
    「ここは?」
    「ここは、手隙のメイドを収納する場所です」
    「!」
    私達は息をのんで立ち尽くした。
    そこに20人以上はいただろうか。手足を拘束されて、さらに目隠しと猿轡を施されれた少女達が、一人ずつ天井から吊り下げられているのだった。
    とても静かだった。
    こんなにたくさんの少女がいるのに、誰一人うめき声も出さず、もがきもせず、皆がただじっと吊られているだけなのだ。
    「もしかして、人形?」
    「人形ではございません。すべて生きた人間です」
    「人間を、こんな風に吊るしておくのか」
    「主人の方針ですので。それに、一人ひとり適切に管理しておりますから問題はございません」
    少女は壁の操作パネルに向かって何かを入力した。
    鈍い音がして、吊られたメイド達が一斉に動き出した。
    どうやら天井にレールがあって、カーテンのように動く仕組みらしい。
    何体ものメイドがゆらゆら揺れながら目の前を通り過ぎて行く。
    やがてその動きは止まり、一人のメイドが降下してきた。
    「候補の一人です」
    ・・
    そのメイドは金属の装置で身体を固定されていた。
    猿轡から透明なチューブが突き出して後ろに回っていた。
    よく見ると、股間からもチューブやケーブルが伸びている。
    少女はメイドの背中にあるレバーを操作した。
    「飛沫が飛びますから離れて下さいませ」
    股間から器具を引き抜く。周囲に水滴が落ちた。
    「んん・・ん」
    猿轡の下からうめき声が漏れた。初めて聞くこのメイドの声だった。
    「アヌス栓を抜きます」
    少女は手馴れた手つきで金属バットをメイドの股間にあて、落下する汚物を受けてすぐに蓋をする。
    不思議と異臭は感じなかった。
    拘束を解いてメイドを装置から解放する。
    その場に崩れ落ちる彼女を少女が肩で受けた。
    「小西」
    私に命じられるまでもなく小西が走り寄って支えた。
    「恐れ入ります」
    少女は礼を言って、そのメイドを椅子に座らせた。
    目隠しと猿轡を外す。
    黒髪をショートカットにした瞳の大きな少女だった。
    ・・
    そのメイドはまもなく立ち上がって我々に挨拶した。
    聞けば、彼女は前日からここに収納されていたという。
    「もう大丈夫なのか?」
    「はい。慣れておりますから。・・それにお客様がお立ちなのに休んでいる訳にはまいりません」
    ほんの15分前までまる1日吊られていたとは思えない元気さでメイドは答えた。
    「では石田様。この二人の中から、お選びいただけるでしょうか?」
    我々を案内してきた少女が聞いた。
    「ん? まだ一人しかいないが」
    「・・もう1名は、この私です」
    ツインテールの少女は、初めて恥ずかしそうに頬を染めて笑った。
    「君?」
    「はい。私もご希望の条件に適う16才です」
    そうか。この少女も客をもてなすためのメイドなのか。
    「しかし、君は髪が黒くないから、ちょっと」
    「髪の色などいくらでも変えられます。短く切っても構いません」
    「え、いいのか?」
    「そんなことよりも、私どもの身体をご覧になった上でお決めになられますか?」
    少女が隣のショートカットのメイドに目配せをすると、すぐに彼女は自分のメイド服のエプロンの紐に手をやった。
    「ちょっ、ちょっと待ってくれ」
    今すぐにも揃って裸になりそうな勢いの少女達を前に、私は手のひらを向けた。
    「選ばれたらどういうことになるのか、君らは分かっているのか?」
    「それは存じておりません。でも、」ツインテールの少女が言った。
    「当家にお越しになったということは、他所では受けられないご要望かと存じます」
    「・・」
    「性的なご奉仕だけでなく、拘束や緊縛をお楽しみになられるか」ショートカットのメイドが言った。
    「もし女性に苦痛を与えることをお好みになるお客様でしたら、何らかの拷問を受けるのかもしれません」ツインテールの少女も言った。
    「君達は構わないのか? それでも」
    「はい」二人は揃って答えた。
    「私どもは、そのようなお客様のために躾けられております」
    ・・
    「これはもう、勝てませんね」小西が苦笑しながら言った。
    「うむ、」
    「で、どっちを選ぶんです? 課長」
    うーん、どうしようか。・・そうだ。
    「これは条件になかったことだが、君らのどちらか、片言でもいいから英語を話せるかね」
    「英語、でございますか?」
    「そうだ。相手はネイティブのイングリッシュ・スピーカーなんだ」
    少女達は互いに顔を見合わせて笑った。
    ・・あなたのようね。・・そうね。担当、替ってくれる? ・・まかせて。
    目だけで交し合ってから、ツインテールの少女が私に向かって言った。
    「それでしたら、私が適任かと存じます。石田様」
    "じゃあ、君は英会話ができるのかね?" 私は英語で聞いた。
    "こちらの屋敷には外国のお客様もいらっしゃいますから、私達は何種類かの外国語の教育を受けています" ツインテールの少女が英語で答えた。
    え? 小西が驚いた顔をしている。
    "ただ、英語、ということでしたら、スキルとしては彼女が優れておりますので" ショートカットのメイドも英語で話した。
    "そういうことなので、今回は私めをお使い下さいませ"
    二人の英語は、まったく自然だった。
    ネイティブとはいかないまでも目を閉じて聞けばプロの同時通訳者と勘違いしそうなレベルだった。
    「いっぺんこの子らに TOEIC を受けさせてみたいもんだ」小西がつぶやいた。
    「あの、TOEIC でしたら主人に言われて受験しておりますが」
    「へ、そうなの?」
    「差し支えなけえば、君達のスコアを教えてくれるかい」私は聞いた。
    「はい。960です」「私は845です」
    小西が口笛を吹いた。
    私は真剣にこの少女達を外務省に雇いたくなった。
    ・・
    結局、私は彼女達の提案に従ってツインテールの少女を借用することにした。
    彼女には髪を黒く染めてストレートにしてもらい、水色の和服を着せて清楚な雰囲気とした。
    翌日、迎えの車に乗って少女は連れて行かれた。


    [PART.2]

    某国大使館地下室。
    身体の大きな白人男性が部下を連れて入ってきた。
    "これか"
    "はい。16才だそうです"

    貸し出された少女

    水色の着物を纏った少女が後ろ手に縛られて椅子に座っていた。
    顔面にはガムテープの目隠しと猿轡が貼り付けられている。
    男性は黙ってそれらを一気に引き剥がした。
    「!!」
    少女が顔をゆがませて悲鳴をあげる。しかしその声が聞こえない。
    "ん、どうした?"
    "声帯に薬を打って声が出ないようにしてあります"
    "俺はこの娘の泣き叫ぶ声を楽しめないのか?"
    "外に聞こえたらどうしますか。大使に知られたら強制帰国ですよ"
    "そうか。止むを得まい"
    男性は人差し指を少女の顎にあてて持ち上げた。
    少女は怯えた表情で男性を見上げる。
    "まったく東洋人の女は幼く見えるものだ。13~4才くらいにしか見えないではないか"
    ぱしり! 男性はやおら少女の頬を叩いた。
    "しかし、その方が俺は好みだ"
    少女はぎゅっと目を閉じて耐えている。その目から涙がこぼれた。
    "こんな娘を用意できるとは、日本の役人もやればできるではないか"
    "無茶はしないで欲しいと、要望されていますが"
    "何を言うか。この俺だって21世紀の日本にヤマトナデシコがいるとは信じちゃいないさ。キモノを着せてそれらしく見せかけているが、どうせ金で釣られた商売女だろう?"
    少女の髪を掴んで顔を上げさせた。
    "おい。お前は本当は何歳だ? 何と言われて騙されたのだ?"
    少女はぼろぼろ涙を流しながら男性を見るだけだった。
    "俺の言うことが分かるか? 分かるなら声に出さなくていいからイエスと言え"
    男性の剣幕に少女はますます怯える。首を左右に振ってイヤイヤをする。
    "この無能め"
    再び頬を叩いた。二度、三度、叩き続ける。
    "そんなに怖がらずに、どうせなら怒った顔をしてくれないか。俺は気が強い女が好きなんだ"
    椅子を足で蹴った。椅子と一緒に少女も床に転げる。
    少女の顔が苦辱にゆがんでいる。
    "ふん"
    男性は少女の脇腹に片足を靴のまま乗せた。
    その靴で胸や腹を突きまわす。
    少女は苦しげに顔を上げて、男性をきっとにらんだ。
    口の端から血がにじんでいた。
    "ほう、そんな目もできるのか"
    男性は少女の脇にかがむと、少女の顔にぺっと唾を吹きかけた。
    少女はますます目を吊り上げて男性をにらむ。
    "ふふふふ"
    少女の顔面を右手で押さえ、着物の裾の中に左手を入れた。
    そのまま太ももの間をまさぐる。
    "わ"
    小さな悲鳴をあげて男性は少女から離れた。少女が男性の指を歯で噛んだのだ。
    "案外、見込みのある娘だ。・・代償は受けてもらうぞ!"
    男性は立ち上がると少女の腹を蹴った。
    何度も、何度も蹴り続ける。
    少女は口から透明な液体を吐いて動かなくなった。
    "鞭をよこせ" 部下に言った。
    "気を失ったようですが"
    男性は少女の着物の襟(えり)を広げて、肩から胸まではだけさせた。
    小ぶりな乳房がこぼれる。
    男性はにやりと笑って、その胸を強く揉んだ。
    爪が肌を掻き、血が一筋流れた。
    "水をかけろ。意識が戻ったら存分に鞭で可愛がってやる"
    "わかりました"
    "バケツを俺によこせ"
    ざば。わざと顔面を狙って水をかける。
    "もう一杯だ"
    ざば。
    少女がわずかに身動きした。
    すかさず鞭を入れる。
    男性は巧みに鞭を操り、少女の肌の露出している部分だけを打った。
    少女は声にならない悲鳴を上げた。縛られた身体で芋虫のように這って逃げようとする。
    "ふふふ、逃げろ逃げろ。俺の鞭はお前の肌を狙って打つぞ"
    男がそう言った途端、少女はその場で滑って一回転した。
    着物の裾が割れて白い足が根元まで露わになる。
    慌てて起き上がろうとするように、むき出しになった二本の足をばたばたさせている。
    まるでそこを鞭打って下さいと言わんばかりに差し出された柔肌。
    "馬鹿め"
    その太ももにたちまち幾筋もの痣(あざ)と血筋が刻まれた。
    「~っ!!!」
    少女は床を転がって苦しんだ。身体を起こして逃げようとしては転ぶ。
    鞭のひと振りひと振りに合わせて大げさすぎる程に身体を捻らせ、顔をくしゃくしゃにして首を左右に振る。
    その様子が男性の嗜虐心をさらに高める。
    これはいい。実にいい。この娘、何と魅力的に苦しんでくれるのか。
    つまらない公務だと思って来日したが、こんな素晴らしい玩具が手に入るとは。
    "存分に苦しんで俺を楽しませてくれ。・・お前は逆さ吊りは好きか? 天井から裸で吊るして、乳房と性器を打たれるのはどうだ?"
    少女がびくりと震え、恐怖に身を縮こませた。しかしすぐに虚勢を張るように男性をにらみつける。
    わずかな反応だったが、それは男性をさらに歓喜させた。こいつ、可愛いではないか。
    少女は英語を理解しないはず、という認識はもはや頭から消えていた。
    "ははははっ"
    笑いながら鞭をふるう。
    お前とセックスを楽しむのは一番最後だ。
    まず十分に鞭を打ったら、次は膣に蝋を流し込んでキャンドルスタンドにしてやろう。
    ナイフでその肌を傷だらけにして、火で炙るのはどうだ。
    腹の中も綺麗にしてやらねばな。
    胃洗浄して硫酸バリウムを10オンスほど飲ませる。固化したら尻の穴からグリセリンを注入しよう。
    お前はどんな顔をして苦しんでくれる?
    楽しくてしかたなかった。
    この少女を使って本国では許されない行為ができるのだ。
    "ふっ、ふははははははっ"
    笑い声の中に、狂気の色が現れ始めていた。

    続き




    被虐派遣(2/2)

    [PART.3]

    「課長、例の男が帰国しました」
    課長室に小西が来て報告したのは、あの少女を借用して2週間ほど過ぎた後だった。
    「いたって機嫌よく帰ったらしいです」
    「そうか。あのメイドの少女は無事なのか?」
    「情報はありませんが、多分屋敷に帰ったのでしょう」
    「そうだろうな」
    我々は呑気な会話をして、それでその仕事をクローズさせた。
    毎日は忙しく、過ぎたことにいつまでも関わっていることはできなかった。
    私はすぐに少女のことを忘れた。
    ・・
    4日が過ぎて、差出元不明の荷物が私宛に届いた。
    それは1辺が1メートルほどの立方体の木箱で、伝票には『Doll』とだけ書かれていた。
    手に持とうとするとずっしりと重い。まるで中に人間が入っているかのように。
    まさかと思った。
    通常なら不審な荷物はテロの可能性があるからセキュリティスタッフに処分してもらう。
    しかし、今回はそういう訳にはいかなかった。
    少女の件は私と小西以外には局長しか知らないのだ。
    課長室に誰も入らないように指示して、小西と二人だけで荷物を開けた。
    釘打ちされた蓋を慎重に開封する。中にはおが屑がぎっしり詰まっていた。
    小西がおが屑の中に手を入れて中身を取り出した。
    そこには、はたしてあの少女が全裸の身体を小さく折り曲げて埋まっていた。
    背中で合わせた手首と足首にはガムテープが巻きつき、さらに口の上にもガムテープが貼られていた。
    腹部にはマジックで『GOOD DOLL, SATISFIED』と書かれていた。下手糞な字だった。
    「ひどいことしやがる」小西が少女を抱き上げてつぶやく。
    全身が痣と傷だらけだった。あちこちに火傷の痕。
    股間にこびりついた飴色の塊は蝋か?
    長く伸ばしていた髪は、刃物で切られたようにずたずたになっていた。
    「まさか、死んでは」
    「脈はあります」
    少女をソファに寝かせて拘束を解く。
    猿轡のガムテープを剥がすと、口の中にはハンカチのような布が大量に詰められていて、それを引き出すと少女は激しくむせた。
    「救急車だ」私は自分のジャケットを少女にかけながら小西に言う。
    「しかし、ここに救急車を呼ぶのは」
    「構わん。私が責任を取る」
    そのとき、少女が目を開けてこちらを見た。
    「おおっ」
    「君、大丈夫かっ」
    私はそのとき初めて、この少女の名前すら知らなかったことに気づいた。
    少女は私と小西を交互に見て、それからゆっくり喋った。
    「え?」
    そのとき、声は聞こえなかったけれども、少女は確かにこう言って微笑んだのだ。
    ご、し、ん、ぱ、い、な、く。
    ・・
    課長室から突然運び出された全裸の美少女に、庁舎の中は騒然となった。
    私は局長にひどく叱られたが、それ以上のお咎めはなかった。
    件の同盟国との間で長年の懸念となっていた安全保障条約の更新が成ったのだ。
    あの高官がそれを成し遂げるだけの実力者であったことは誰もが認めるところだが、たった一人の少女が重要な役目を果たしたからとは誰も思わないだろう。
    ・・
    私は病院にいた。
    少女がわずか3日で退院すると聞いて駆けつけたのだ。
    病室で彼女は既にメイド服に着替えて待っていた。
    切り刻まれた髪はセミショートに整えられていた。
    その横にはあのショートカットのメイドが控えていた。屋敷を訪問したとき、天井から吊るされていたもう一人の候補者だ。
    「石田様、お世話になりました」
    少女はそう言って深々と頭を下げた。
    「声が出せるようになったのか」
    「はい。後はお屋敷で休ませていただきますので大丈夫です。それに早く戻るように主人から言われておりますので」
    「そうか。辛い目に合わせて済まなかった」
    「辛い目など、とんでもございません。お役に立てて嬉しく思っています」
    少女はそう言って静かに微笑んだ。その表情は初めて会ったときと何も変わらない、不思議な落ち着きと自信に満ちていた。
    「ひとつ、君に聞きたいことがあるんだが」
    「はい。何でございましょう?」
    「あの男と一緒にいる間、彼は君に何か話さなかったかね? 条約のこととか、他の機密事項とか、何でもいいんだが」
    「まことに申し訳ございません」少女は再び頭を下げた。
    「お客様のプライバシーに関わることは一切お話しできません」
    「だが、あの男は君にひどいことを」
    「あのお方はお客様です。私は、お客様にご満足いただくためであれば、如何様に扱われても構わないメイドに過ぎません」
    「どんな目にあってもいいというのか、君は?」
    「はい。お客様のお望みの通りに苦しんでさしあげることは、私達メイドの大切な役目です」
    「あ、あれは、君を殺しかねない男だったんだぞ」
    「そのときはそれでも構いません。・・ただ、メイドの育成には費用が掛かっているものですから、本来、私どもの命を絶ってよいのは主人の許しが出た場合に限りますが」
    私は言葉をなくした。この少女達はいったい。
    ・・
    「あの、石田様」少女があらたまって私に言った。
    「これからすることは主人の指示ではありません。私達が独断で行うことなので、上にはご内密に願いたいのですが」
    「何だ、あれだけ主人が主人がと言っておいて」
    少女は微笑みを浮かべた。その脇でショートカットのメイドも小さくくすりと笑った。
    「私達は主人の命令があれば命までご提供するメイドですが、意思のないロボットではありません。誰かを愛することもあれば愛されたいと願いこともある、ごく普通の女です」
    「・・」
    「この度のことでは、石田様はお立場上、大変ご苦労されたとお察しします。私の派遣につきましても、主人はおそらく法外の対価を請求したのではないでしょうか」
    おいおい、どうして君はそんなことまで気を遣えるんだ。あんな目にあったというのに。その辺の高校生と同じ歳に過ぎないというのに。
    「そういうことは君らは気にしなくていいんだ」
    「そうかもしれませんが、私としましては、せめて石田様に心からお尽くしすることでご満足いただければと存じます」
    「君の仕事にはもう十分満足しているよ」
    「そういう意味ではございません。お尽くししたいのは、石田様ご自身に、です」
    「何を言ってるんだ?」
    「少々お待ちを」
    少女が目配せすると、ショートカットのメイドが鞄から縄の束を取り出した。
    少女は腕を背中に回して組んだ。
    「!?」
    私は唖然とするばかりだった。
    それは単に手首を背中で括るというような簡単な縛り方ではなかった。
    女体を上半身まるごと固め上げる本格的な緊縛術だった。
    少女の手首はかなり高い位置まで捻り上げられて、Xの字の形に交わった状態で固定された。
    これは、かなり身体が柔らかい女性でないと耐えられない緊縛ではないだろうか。
    その上から、肩や胸はもちろん、指の一本一本にまで縄が絡み付いた。
    少女の胸が縄で上下から締め付けられて盛り上がるのがメイド服の上からでも分かった。
    ショートカットのメイドは黙々と同僚を縛り、それが終わると「失礼します」と言って病室から出ていった。
    「い、いったい・・?」
    「あれは席を外したのです。石田様は人に見られてお喜びになる方ではないと思いますので」
    少女は膝をつき、私を下から見上げて言った。
    「私の気持ちでございます。・・どうぞ、そのまま動かないで下さいませ」
    「き、君っ!!」
    ・・
    夢のような時間だった。
    少女は口だけで私のズボンの前を下ろすと、驚くべき器用さでそれを外に出した。
    つつましく出した舌で周囲をほんの少し舐められただけで、私のそれは一気に立ち上がった。
    少女はそれを口にふくみ、様々に刺激を与えてくれた。
    浅い位置で舌と歯を使うかと思うと、根元まで深く咥え込んで唇を締めて吸引した。
    「く、」
    私は我慢しきれずに彼女の後頭部を両手で押さえる。
    少女は強く押さえ付けられながらも、なお作業を止めなかった。
    見下ろす少女の背中には両手が固く縛られて密着していた。
    そう。今、少女は身体の自由を奪われているのだ。彼女は自らの意志でこの状態になって私に奉仕してくれているのだ。
    少女の口の中のそれはさらに怒張して、先端が喉の奥に突き当たった。
    「んんっ!」
    少女は口に咥えているだけで私の高まり具合が分かるのか、私をすぐに果てさせるようなことはしなかった。
    といって直前で寸止めを繰り返すような無神経なことも決してせずに、ゆっくりと確実に導いてくれた。
    わずか16才の少女が、どうしてこのような性戯を身につけているのだろうか。
    そして最後の瞬間、少女は絶妙な力加減で私を締め付け、私は自分でも驚くほど大量の精を彼女の口内に放ったのだった。
    これほどの快感は何年ぶりだろうか。いや、もしかして女性の中に本当に挿入する行為よりも心地よいのではないかと思った。
    少女は私の衣服や床を一切汚すことなく、すべてを舐め取って飲み込んだ。
    「もし私を汚したいとお望みでしたら、次は顔面でお受けいたしますが」
    「はぁ、はぁ・・、いや、もう満足だ。十分に」
    「そうでございますか? では、お拭きさせていただきます」
    少女は自分の髪で私のそれを拭い、もう一度、頬と首筋で綺麗に拭くと、再び口だけを使ってズボンの中に収納してジッパーを上げた。
    「大変お粗末様でございました」彼女はそう言ってにっこり笑った。
    それは純真無垢な少女の笑みであり、妖艶な娼婦の笑みでもあった。
    ・・
    小西が遅れて病院にやってきたとき、私は病室に一人だけでいた。
    あの少女達がいつ姿を消したのか私はまったく覚えていなかった。
    小西に言わせると、私は放心しきった顔で面会者用の椅子に座り込んでいたという。
    私は何も説明しなかったが小西は何があったのか察したらしく、役得とはいえ課長はずるいといつまでも言われたのだった。


    [エピローグ]

    長年このような仕事をしていると、国家公務員といえども所詮はやっかい事の処理に右往左往させられる小役人だと痛感する。
    ある日、小西が持ってきた機密文書に私は目が点になった。

    ◯月△日からの外交部長訪日にあたり、貴国の十代半ばの少女を提供されたし。
    少女の出目は問わないが、健康で美しく、あらゆる陵辱行為に耐えられることを条件とする。


    「またかっ。いったい何なんだ、これは」
    「分かりません。どうやら、あの男から各国の機関に情報が流れたのではないかと」
    「こんな要求はもう相手にするな」
    「しかし、今回は大陸棚の権益問題で一触即発の状況での来日ですし、むげに断って刺激する訳には」
    「き、局長に会ってくる」
    私は頭を抱えながら、課長室を出た。
    またあの屋敷に行ってメイドを借りなければならないのか。
    次はH氏に何を吹っかけられるのだろうか?
    まさか、あの政商が裏ですべてを仕組んでいるのではないだろうな。
    胸の中をあらゆる疑心が渦巻いた。
    そして突然、あの少女の笑顔を思い浮かべた。
    またあの子に会える。私はそのことに心を躍らせている自分に気づくのだった。



    約半年ぶりの『H氏邸』シリーズです。
    このシリーズでは一切が男性の視線で描かれ、被虐の女性は徹底的に受動的な存在です。
    女性の気持ちはまったく顧みられないのがお約束ですが、ここのところその心の中が少しずつ見えてきたようです。
    本話では初めて少女が自分の意志で行動するシーンがあります。
    作者がつい興奮して^^このシーンに力を入れ過ぎたせいか、Part.3 が長くなり、ブログの記事2ページに跨ってしまうことになりました。

    今回の主役は前話『ハンガー』で実験台にされた少女です。
    彼女は無事に生き延びて、メイド達の勤務スケジュールを管理する立場に昇進しています。
    屋敷の少女は全員が接待メイドとしても被虐M女としてもよく教育されていますが、とりわけ彼女は優秀です。
    お客様のご満足とお喜びのため、自らの身体と生命の安全は二の次で(時としてお客自身にもそうと知られることなく)すべてを捧げてくれます。
    もちろん客の嗜虐心をくすぐる苦しみ方や、様々な性戯のテクニックも一流。周囲への細かい気配りも怠りません。
    それにしても、ちょっとスーパーガール^^すぎたかもしれないですね。
    もはや三千院家の◯リアさんにも負けないレベルかも(笑)。

    Part.1 のハンガーは元々わーどなさんが考案されたオリジナルの器具を私が改変して取り込ませてもらったものです。
    わーどなさんのブログ(注:18禁) は色々なアイディアの宝庫でして、いつも刺激をもらっています。
    その中でも最近のお気に入りは、この 人間シャンデリア です。
    実は今回、ハンガーの続編を書こうと思ったのも(ネタ的にはまったく異なりますが)このシャンデリアの少女を見て鬼畜な願望が燃え上がったためでしたw。
    当サイトの『庭のオブジェ』のようなネタがお好きな方でしたらきっと楽しめると思いますので、是非わーどなさんのブログをご覧になって下さい。

    ありがとうございました。




    ハンガー

    広い屋敷をH氏について歩く。
    当主みずから案内してくれることなど本来はあり得ないのだが、今日はH氏自身の指示により供をつけていない。
    「正面の廊下はセキュリティの工事中でな。今日は裏から回る」
    「わかりました」
    長い廊下を進んで、突き当たりの扉を開けた。
    「この先はうちのメイド達のプライベートエリアだ」
    プライベートと言いながら、遠慮する気配もなく氏はずかずかと入って行く。
    角を曲がったところで出会い頭にぶつかりそうになった少女が、H氏の顔を見ると慌てて頭を下げた。
    「だ、旦那様!? ・・こんな格好で、申し訳ありません!」
    どうやら彼女達にとって、ここで主人と会うのは珍しいことであるらしい。
    シャワーでも浴びていたのだろうか、少女は胸から下にバスタオルを巻いただけの姿だった。
    まだ乾ききっていない髪からシャンプーの香りがしていた。
    「いや、こちらこそ、ちょっと近道させてもらっただけだ。お前達のそういう姿を見物に来た訳ではないから勘弁してくれるか」
    H氏の弁明に、少女は一瞬ほっぺたをぷうっと膨ませて怒った顔を見せ、そしてすぐににっこり笑って再び頭を下げた。

    シャンプーの香りのする少女

    私はその愛嬌たっぷりの仕草に驚いた。
    この屋敷のメイドは確かに美少女揃いだが、私にはつんとすましたお人形のような娘ばかりに思えていたのだ。
    こんなに生き生きと明るく笑う娘もいるのか。
    振り返って見とれていると、氏に「あれが気に入ったか?」と聞かれてしまった。
    「い、いいえ。そんなことは・・」今度はこちらが慌てて口ごもることになった。

    地下に降りて『クローゼット』にやってきた。
    ドアが開くと照明が自動的に点灯した。肌に感じる冷んやりとした空気が心地よい。
    2ヶ月前までは無骨なコンクリート張りだった地下室に、大々的な改装工事を施したのがこの部屋である。
    約40畳の天井の左右には、太めのカーテンレールのような金属の枠が二つの巨大な長方形の形で設置されている。
    「・・すべて使用可能です」
    私は説明を始めた。
    「左右のレールには、自走式の『ハンガー掛け』がそれぞれ25基あります」
    レールを指差しながら、ちらりとH氏を見る。
    氏は私の差す方向ではなく私を見ていた。
    ひやり。背中を冷たいモノが流れるような気がした。
    まったく、この人に見据えられて落ち着いていられる人間がいるのだろうか。
    「こ、この壁の操作盤で、任意のハンガーを呼び出すことができます」
    振るえる指で番号をタッチすると、小さな駆動音とともに右側のレールのハンガー掛けが一斉に動き出した。
    「そんな事なら、君達がくれたカタログで分かっている」
    H氏が静かに言った。
    「今日はハンガーの使い方を見せてくれるのだろう?」
    「は、はい。失礼しました」
    私は急いで壁の収納庫からハンガーユニットを1式引き出した。
    ハンガーの柄には、わがWAD社のロゴマークが誇らしげに刻印されている。
    そう、このクローゼットはわが社の製品である。
    この日、私はWAD社の技術主任として、設置工事が完了した製品のご説明に伺ったのだ。
    「掛け降ろしは、すべてお一人で可能です」
    「ふむ」
    「では、実際にダミーを使ってご説明します・・」

    タイプⅡのハンガーは、主にウエストと股間で女体を支える構造である。
    首と腰のベルトは高さを自由に調整できるので、身長150~179センチの女体を固定することができる。
    股間のアームは『フォーク』と呼び、中央にスリットが設けられていて、種々のアタッチメントをセットすることが可能である。
    今回設置したハンガーは調教や懲罰ではなく女体の収納を目的とすることから、アタッチメントにはアナル栓と尿管カテーテルが標準でセットされ、さらにオプションで膣バイブレーターのアタッチメントを追加している。
    頭部には目隠しと猿轡または全頭マスクを施すことができる。
    猿轡と全頭マスクには口腔内ノズルがついていて、給餌器内の水筒にチューブで接続される。
    四肢の拘束は自由に行えるが、今回の品物では背中で手首を吊る手枷を取り付けている。

    ハンガー構造

    そして、わが社のハンガーの最大の特徴がハンガーユニット毎に独立して組み込まれた制御モジュールである。
    カテーテル・バイブ・給餌器などはこのモジュールから自動制御される。
    自動制御の目的は、快楽あるいは苦痛を単純に与えることではない。
    女体の損傷を最小限に抑え、長時間の吊下放置に耐えさせることが目的なのである。
    実際、定期的な刺激(1時間に1回60秒程度のバイブ、2時間に1回程度の排尿と給水)は、拘束状態にある女体の特に精神面の健全性維持に画期的な効果をもたらすことが判っている。
    我々は、被験体として無作為に抽出した20代日本人女性10名をハンガーにかけて、上記制御を付加する連続破壊試験を実施した。
    その結果、24時間経過して心身に致命的な損傷が認められた被験体はわずか1体。48時間後でも2体。そして72時間過ぎてようやく6体という好成績を得ているのである。
    このような試験はいささか非人道的でないかという指摘があることは、もちろん承知している。
    しかし、安全で高性能な製品の開発には欠かせないプロセスであり、過酷な試験を経た製品であるからこそ、我々は絶対の自信を持ってお客様におすすめすることができるのだ。

    「素晴らしい。よく考えられているようだ。・・しかし、」
    H氏はぎろりと私を見た。胸がどきりと鳴る。
    「機能は理解したが、人形では効果が分からないな」
    「それは・・」
    「早速だが、実際の人間を使って実演してもらいたい」
    「今からですか?」
    「そうだ。メイドを一人連れてこよう。何か問題があるか?」
    「いえ。大丈夫です」
    しかたない。客先の女性に手をかけるのは社則違反だが、やるしかなさそうだ。
    「・・お呼びでしょうか」
    まもなくやってきたメイドを見て驚いた。
    メイド服を着用し髪もツインテールにくくっているが、それは先ほど上階で出会ったあの少女だった。
    少女も私を見てすぐに気づいたようで、はにかむように微笑んで、会釈をしてくれた。
    「非番のところ呼び出して済まなかった」H氏が少女に言った。
    「いいえ。私こそ急いで支度して参りましたので、何か落ち度がありましたら申し訳ございません」
    「構わん。実はこちらの客がお前を気に入ったようでな」
    「まぁっ、ありがとうございます♥」
    「いえ、そんな、私は」私は慌てて言いかけたが、H氏に笑いながら右手で制されてしまった。
    「お前はこの春から屋敷に入っていたな。歳はいくつだったかな」氏は楽しそうに少女に質問する。
    「はい。先月16になりました」
    「そうか。では、一通りの調教は済ませているな」
    少女の顔が少し赤くなったようだった。
    「・・はい」
    「新しい設備のテストをする。今から3日間、お前をここに吊るすから従うように」
    少女の返事は、ほんの1秒だけ遅れた。
    「かしこまりました。どうぞ、私をご自由にお使い下さいませ」
    少女は両手を前で合わせて深々とお辞儀をした。
    一体何なのだ、このメイドは。1秒で覚悟を決めたのか。それとも常に覚悟して仕えているのか。

    私は、少女に彼女が受ける扱いを簡単に説明した。
    バイブとかアナル栓とかの言葉を聞いても彼女の表情は変わらなかった。
    「トイレでお腹を空っぽにしてきて下さい。おしっこは導尿しますが、大きい方は72時間出せませんから。・・もし便秘ぎみなら、下剤を差し上げます」私は少女に言った。
    「あの、旦那様」少女がH氏に聞いた。
    「ん?」
    「おつとめが終わって私を解放していただくとき、旦那様は立ち会って下さるのでしょうか?」
    「それは分からん。来れないときは、お前の様子は部下から聞くことにしよう」
    「そうですか。もしお越しになったとしたら、そのときは私が苦しんでいる姿をご覧になりたいですか?」
    「そうだな。その方が楽しかろう」
    「分かりました。・・お客様」少女は私に向かって言った。
    「私、朝からまだお腹の中のものは出しておりませんが、どうぞそのままで始めて下さいませ」
    「え? お尻に栓を挿しますから、かなり辛くなりますよ」
    「構いません。旦那様は私が苦しむことを望んでおられますから」
    「な」
    「それから、お小水も少なくして下さい。1日に2回、いいえ1回だけ。3日目のお小水は最後まで許さないでいただければ、旦那様がいらしたときにはきっと私、身体中から脂汗を流して苦しんでいることと思います」
    「わっはっはっ」H氏が大笑いした。「面白い。バイブはどうするのだ?」
    「それは、旦那様のご随意に」
    「ふむ。72時間動かしっぱなしもよいが、それではお前は壊れるだろう。まだ半年も奉公していないお前を壊すのはさすがに勿体無い。・・よろしい、バイブは止めよう。お前は生殺しだ」
    「まぁ。女としての喜びは与えて下さらない、ということですか。それでは、私は、切なさに壊れてしまうかもしれません」
    「わっはっはっ」氏は再び笑った。
    「お前を気に入った。3日経って無事でいられたら褒美をやろう」
    「ありがとうございます」
    おいおい。
    排尿や給水の処理をきちんと行ったとしても、データ上は72時間過ぎたら6割の女は正常ではいられないんだぞ?
    私は口を差しはさみかけたが、二人の様子を見てそれは止めた。
    この主人とメイドにとって、そのようなことはどうでもいいのだと理解した。
    この屋敷では何かが世間とは違うのだ。

    ショーツを脱がせ、股間にカテーテル・バイブ・アナル栓をセットした。
    少女の局部は傷ひとつなく艶やかなピンク色をしていて、美しく切り揃えられたアンダーヘアはほのかにラベンダーの香水の香りがした。
    しかし、その奥の空間はぐっしょりと濡れていた。いや、溢れているといってよい状態だった。
    私は表情に何も出さないように注意しながら、フォークを上昇させて股間に押しつけた。
    「くっ。あぁ・・」
    少女は小さな声を上げて、その刺激に耐えた。
    とろり。
    粘性質の液体がこぼれ、私の指に絡みついて糸を引いた。
    「あぁっ、申し訳ございませんっ。お客様のお手を汚してしまいました」
    「いや、気にしないで」
    「は、恥かしいです。旦那様には、私めの苦しむ姿をご覧いただかないといけないのに、こんな、感じてしまう、なんて」
    「そんなことは構わないさ。喜んでおれるうちは精一杯に喜べばよい」
    「申し訳ございません。・・あの、旦那様。先程のご褒美ですが、お願いがごさいます」
    「うん」
    「何もいりません。ただ、そのときは私を強く、ぎゅっと、抱きしめて下さいますか」
    「・・それがお前の望みか?」
    「はい」
    「分かった。約束しよう」
    少女は全身を拘束されたまま微笑んだ。
    その目は潤んでいて、まだ16才とは思えないほどの色気に満ちていた。
    私は少女の顔面に目隠しと猿轡を施した。
    操作盤をタッチすると、ハンガー掛けが上昇した。
    股間のフォークに体重がかかり、複数の異物が彼女を胎内から突き上げる。
    「んんっ!」
    少女の両足は爪先までぴんと伸び、床から離れて1メートルほど浮かび上がった。
    最後にその足に足枷を追加して、左右の足が開かないようにした。

    ハンガーに架けた少女 収納状態

    私はパネルを操作して、排尿と給水機能のタイマーをプログラムした。
    そのとき、H氏が私の肩越しに手を伸ばしてパネルに触れた。
    ぶぶぶぶ。小さな音がしてバイブが振動を始めた。
    「んあぁっ!!」
    少女が猿轡の下で悲鳴を上げた。
    「気が変わった。バイブを動かすことにする」
    「ひぃん!!、がっ、・・・んんん~っ!!!」
    バイブレーターは少女の胎内で振動の強弱を波のように変化させながら動いている。
    少女は鉄板の上で焼かれるイカのように、びくびくと全身を動かしてもがいた。
    それから、空中で屈伸運動をするかのように膝を引き上げて、そのまま全身の筋肉に込められるだけの力を込めて静止した。
    そのまま10秒ほど過ぎて脱力すると、今度は首を振り回し、風に吹かれる風鈴のように揺れた。

    「行こう」H氏が私を促した。
    私達は、揺れ続ける少女をそのままにして部屋を出た。
    ドアが閉まると部屋の照明は自動的に消えて、少女はひとり闇の中に取り残されることになる。
    これから72時間、あの娘は何を思って過ごすのだろう。
    もはや正常に思考することなど無理かもしれないが。
    「あいつめ、考えおったわい」H氏が頭を掻きながらつぶやいた。
    「?」
    「どうにかして儂にかまわせようとしおって。・・褒美に抱きしめろだと? 何で儂がわざわざ戻って来てそんなことをしてやらねばならんのだ!」
    氏は急に私に向かって聞いた。
    「君、分かるか?」
    「は?」
    「儂がどうしてバイブをセットしたか」
    「それは、」
    「ふん。小娘の分際でこの儂に言うことを聞かそうとするなぞ、100年早いわ」
    「では、あの少女の精神を壊すために」
    「そうだ。器量のよい娘だから処分するのは惜しいが、頭が回り過ぎる。だいいち、わきまえが足らん」
    「・・」
    「ま、あれで本当に3日耐えきれば、それなりの待遇を与えてやらねばなるまい。・・まさかとは思うがの」
    その、まさかが、本当になるのではないですか。
    私は心の中でつぶやいた。
    おそらくあの少女は、これから数え切れないくらい意識を失い、下腹部の痛みに地獄のような苦しみを味わうだろう。
    膣に裂傷、直腸・膀胱の炎症、拘束部位には重度の内出血。肉体的には相当の傷を残すだろう。
    しかし、心は、あの少女の精神は耐えるのではないか。
    何週間かして再会したら、はにかみながら、にっこり笑ってくれるのではないか。
    合理的な理由はまったくないが、そんな予感がした。
    これは実に貴重な事例だ。
    次に来たときは、是非モニタデータを持ち帰らせてもらわねば。



    H氏邸関係のSSが5本になりました。
    「埋められる少女の写真」の後書きで記したように、新しいカテゴリに分けることにします。
    私の作品の中では、女性が最も非人間的な扱いを受けるシリーズです。
    もし女性の読者の方がおられるとしたら、このカテゴリのSSはお読みになることをおすすめしません。
    ( と、後書きで書いてももう読んじゃってますね^^。スミマセン )

    主役の被虐少女も、奉公1年目16才の新人メイドさんに交代しました。
    にっこり笑う笑顔が可愛い、利発な美少女です。
    ただし、彼女が今後も登場するかどうかは分かりません。
    この少女が屋敷で働き続けるためには、主人の気まぐれで科せられた3日間の試練を耐え抜かなければならないのです。
    このお話を読まれた皆様は、少女のことを「可哀相。無事でいて」と思いましたか?
    それとも「生意気。壊れてよし」と思いましたか?

    少女を吊るした『ハンガー』は、わーどなさんが pixiv に投稿された『クローゼット用少女ハンガー』(http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=21084190)にインスパイアされたものです。
    ( URLは R-18 閲覧可のアカウントでログインしないと見れません。)
    ハンガーのデザインはいろいろアレンジさせてもらっています。
    足を床につけずに数日間は吊せる(少女の精神が維持できるかどうかは別として)ようにするために、両足の間にフォーク状のアームと、最低限の給水/排泄機能を追加しました。
    『ハンガー』を吊るす場所は、最初は普通のウォークインクローゼットを考えましたが、結局は50台の『ハンガー掛け』に少女を吊るして保管できる立派な地下室になりました^^。
    こんな空間にもの言えぬ少女達がずらりと吊られて収納されている情景は、私もぜひ見てみたいものです。
    このSS作成とハンガーのアレンジを快諾して下さったわーどなさんに感謝申し上げます。
    なお、大きな目の可愛い女の子のイラストが出迎えてくれる わーどなさんのブログサイトはこちら です。(どうやら別に アダルト限定サイト も立ち上げられたようですよ・・?)

    ありがとうございました。




    埋められる少女の写真

    さあ、この写真を見ろ。
    どうだい?
    そうさ、本物の人間の生き埋めだ。
    17才の娘が箱詰めにされてセメントで埋められるところさ。
    何で俺がこんな写真を持ってるかって?
    慌てるなよ。今から話してやるからさ。

    埋められる少女の写真

    今でこそ、こんなダンボールで暮らしているがな、俺も去年までは羽振りがよかったのさ。
    それで知り合ったのが、Hという事業家だ。
    知ってるかい?
    納税者番付で毎年3位以内に入っていて、S県の土地の6分の1はこいつの持ち物だって噂の男だ。
    まあ、俺はその男の屋敷に招かれたのさ。
    その屋敷は途方もなく広くて、メイドが何十人もいるんだよ。
    メイドはどの娘も見たとこ10代からせいぜいハタチってとこだ。
    アイドルもかたなしってくらい可愛い娘ぞろいで、いったいどうやってあんなに美少女ばかり集められるのか不思議だったね。
    そこで俺は晩飯をよばれたんだが、何と客間には縄でがんじがらめに縛られた娘がまるで置物みたいに飾ってあるんだよ。
    その上、給仕してくれているメイドの中から好きなのを選べと言うから、一番笑顔の可愛い子を指差したら、その場でその子まで縛り上げて飾ってくれるって按配(あんばい)なのさ。
    可哀相といえば可哀相なんだが、それでいてどの娘も平然としてるんだ。
    まるで、そんな風に扱われるのはこの屋敷のメイドとして当然の務めだ、とでも思ってるように。
    まあ、俺もそういうのは嫌いじゃないし、ありがたく緊縛ショーを鑑賞させてもらった訳だがな。

    さあ、ここからが本題だ。
    食事が済んで、H氏がメイドの拷問を見るかと聞くんだ。
    さすがに血なまぐさいのは苦手だから遠慮すると、では別のモノを見せようと連れて行かれた。
    庭に面したテラスで待っていたら、職人が何人かやってきて地面に穴を掘り始めた。
    さらに、その横で別の職人がセメントをこね始めたんだ。
    いったい何をするのかと思ったね。
    そのうちに運ばれてきたのが『棺桶』だった。
    まあ、死人を入れる本物の棺桶とは違うんだが、H氏は棺桶と言ってたし俺も棺桶と呼ばせてもらうよ。
    地面の穴は深さ1メートルくらいだったかな。そこに棺桶がぴたりと置かれた。
    ここまできて、ようやく俺も棺桶の中に誰かを入れるんだろうと分かった。
    H氏は振り返って、メイドの一人に向かって言ったんだ。
    「そうだな、お前だ。・・お前には今までにない絶望感を味合わせてやろう」
    そのとき後ろに控えていたメイドは3人だった。
    俺はその場にいたから分かるが、3人の誰も、これから起こることを知らなかったな。
    選ばれた娘はセメントの中に生き埋めにされると聞くと、一瞬、悲痛な顔になったよ。
    でも、すぐに普通の表情に戻って「はい。よろしくお願いいたします」と頭を下げるのには感心したね。
    聞いたところでは、この娘の歳は17で、この屋敷に来てまだ1年ほど、とのことだった。
    それだけの期間でここまで躾けられてるんだから、大したもんだよ。
    よほど厳しく教育されてるんだろう。いや『教育』じゃなくて『調教』だったか。

    後は写真の通りだ。
    娘をベルトで拘束して棺桶の中に入れた。
    普通の棺桶と比べて、結構狭いってのが分かるかい?
    それから、この白くて丸いのは発泡スチロールだ。
    これにどういう意味があるのかと聞いたら、保温の効果と、娘の被虐性を高める心理的効果があるとのことだった。
    心理的効果って、こんなものを隙間なくぎっしり詰められて喜ぶ女は少ないと思うけどな。
    その次の写真は天板を1枚ずつ釘で打っているところだ。
    ここを見ろよ、娘の身体から天井まで何センチもないだろう?
    息が詰まりそうな空間だ。閉所恐怖症でなくたって、こんなところに閉じ込められるのは勘弁して欲しいもんだぜ。
    中の娘は釘を打つ音を聞きながらどんな気持ちになったのかと同情するよ。
    それから次は全部の板に釘を打ち付けたところ。
    この後、セメントを流して埋めたのが最後の写真だ。
    即硬性のセメントだから、俺が帰るときにはもう固まっていたな。
    ここから棺桶を取り出すには削岩機みたいなもんが必要だろう。
    セメントに空気を通すチューブが生えているが、これだけがこの下に生きた娘が埋まっている証拠さ。
    そのチューブも、H氏は「抜いてみせようか」なんて言ってたけどな。

    箱の中の少女 箱の中の少女

    俺が見たのはここまでだ。
    もう夜も遅くなっていたし、俺は珍しいものを見せてもらったと礼を言ってH氏邸を辞することにした。
    最後にH氏に聞いたよ、この娘は生かされるのかと。
    すると氏は「ここは法治国家だよ。法律では、人を殺してはいけないことになっておる」なんて臆面もなく答えるんだ。
    「もっとも儂(わし)はこの子に今までにない絶望感を与えると約束したから、しばらくこのまま置いてやろう。なぁに人間は2~3日飲まず食わずでも死んだりはせん。糞尿まみれにはなるだろうがの」と言って笑っていたな。
    屋敷では絶対君主のH氏の言うことだ。あの娘が何日か放置されたのは間違いないと思うよ。
    もし、それで死んでしまったりしたら、不慮の事故で亡くなったなんてことにされるんだろうな。
    仮に生き延びたとしても精神に異常をきたしている恐れは十分にあるし、そのときは処分されてやっぱり事故死の扱いにされるんだぜ、きっと。

    俺の経営していた貿易会社が倒産したのは、それからしばらくしてからのことだ。
    棺桶の中の娘のことはずっと気になっていたが、H氏と会うことも叶わない今では、それを知ることもできないのさ。
    あの娘は俺をもてなすために生き埋めにされたんだ。これでも申し訳ないという気持ちは感じてるんだぜ。
    おい、あんた、何を笑ってるんだ。
    もしかして俺の話を信じてないだろう?
    せっかく写真まで見せたやったのに。
    今までもいたぜ、写真はフェイクだなんて言って、俺の話を信じない奴は。
    まあ、信じなくてもいいさ。
    言っとくがこの写真は俺が携帯電話のカメラで撮ったもんだ。いや別に撮ってはいけないと制止されなかったからな。
    何?
    俺の話したことが嘘でないことは分かっている、だと?
    あの娘は3日後に掘り出された。幸い気が狂うこともなく、今はまた元気にH氏に仕えている?
    あんた、何者だ。えっ、あの屋敷の人か。
    俺を探していたのか。
    え、俺が屋敷のことをあちこちで喋るのが困る?
    おい、ちょっと待て。俺をどこへ連れて行くんだ。
    あの屋敷か。まさか、口封じする気か。
    わ、助けてくれ。写真は渡す。もうべらべらと触れ回ったりしないから。
    もしかしてそのハンカチの下は拳銃か。え、拳銃ではない、麻酔銃。わ、わ、わ・・。



    女の子の気持ちをまったく無視して思いのままに扱う話を書きたくなると、H氏の登場です。
    まだまだ黒さが足りない気もしますが^^。
    H氏のシリーズはこれで4話目となりました。
    今後さらに増えるようだと、独立したカテゴリに分離させた方がいいでしょうね。

    今回生き埋めにされた少女は「H氏邸の晩餐」「架刑鑑賞会」と同じ少女というつもりです。
    pixiv では少女自身のモノローグの形でキャプション(絵の説明)を載せていますので、よろしければそちらも見ていただければ、また違う趣を楽しんでいただけるかもしれません。

    さて次回は、新しい小説のシリーズを始めたいと思います。
    今年もマイペースの更新になりますが作者の萌えにお付き合い下されば幸いです。




    架刑鑑賞会

    どういう理由でこうなったのか、はどうでもよい。
    大切なことは、本当に十字架に釘で打ち付ける磔が見れるということだ。
    犠牲になる少女は「うちで用意しよう」とH氏が言った。
    氏の所有するM女といえば、よく躾けられた美少女ばかりという評判だ。
    我々に異論のあろう筈がない。

    場所は都内某所。
    時刻は真夜中。
    連れて来られた少女はまだ16~7才に見えた。
    裸にしても構わないとH氏は言ったが、我々の中に女を裸に剥いて喜ぶ助平はいないし、むしろ可愛い衣装での刑を望んだから、少女はメイド服のまま磔に架けられることになった。
    十分覚悟して来たのか、あるいは拷問に慣れているのか、少女は落ち着いていてもの静かだった。
    彼女を十字架に横たえ、縄で手足と胴をしっかりと固定する。
    用意された釘は、長さこそ15センチほどあって釘頭も大きいが、本体は細目で先端は鋭く尖っていた。
    もともと掌の釘だけで体重を支えられるものではないのだ。そんなことをしたら手の皮が裂けて受刑者は落下するだろう。
    それ故、この釘は『飾り』と割り切って、見た目と打ち込み易さのバランスを工夫した釘である。

    いよいよ釘を打ち込む。
    最初は一気に掌を貫通させ、後は少しずつ打ち込んで行く。
    槌を打つ度に少女は顔をゆがませて声にならない声をあげた。その目に涙が光る。
    飾りの釘といっても、彼女が味わう痛みは本物なのだ。
    我々はそのことに感動しながら交代で釘を打ち込んだ。
    2本の釘を打ち終えると、出血量が増えないうちに釘の上から止血スプレーを噴いて傷口を固めた。

    架刑鑑賞会

    時計の針が深夜0時を指すのに合わせて十字架を立てた。
    両手を広げて釘留めされた少女の姿が闇の中に浮かび上がる。
    その美しさ、高貴さ。
    しばらくの間、誰ひとり言葉もなく十字架を見上げていた。

    架刑鑑賞会

    H氏によると、この少女は我慢強く、意識を失うまでの耐力も高いという。
    それは見方を換えれば、簡単に気絶することなく、長い時間苦しみ続けてくれるということだ。
    では架刑を鑑賞しながら、グラスを傾けて語らうことにしようか。
    掌に釘を刺した程度では少女の命に危険はない。
    大昔の磔刑のように槍で腹を刺して殺してしまうような野暮な真似も、もちろん行わない。
    ただ、ゆっくり朝まで、この美しい『作品』を愛でるだけだ。
    我々は紳士であり、フェミニストなのだ。



    とんでもない連中です(笑)。

    とうとう流血モノをやってしまいました。
    "無理矢理" はビンタひとつありませんが、"本人覚悟" だと流血どころか切断だって(しないけど)OK、というのがこの世界です。
    とはいえ、読んで感じるグロは難しいですね。
    せめてイラストで雰囲気を出せればよいのですが、綺麗な絵が描ける人が羨ましいです。

    足に釘を打たなかった理由は "ソックスを履いているから" という作者の美意識によります。
    ソックスの上から釘を打つのは気持ち悪いし、ソックスを脱がせるのはもっと美しくない。
    H氏邸の少女達には、いつか水着姿で磔に架けられるときにでも足に釘を打たせてもらいましょう:P

    ありがとうございました。




    H氏邸の晩餐

    そこにはメイド姿の少女が3人いて、食事の世話をしてくれた。
    彼女らはまだ16~7才くらいにしか見えなかったが、よく躾けられていて立ち歩きの姿は美しく、給仕の作法も申し分なかった。
    いまどきの若い娘には珍しいと褒めたら、どの子が一番気に入ったかと聞かれた。
    少し考えて、右側の色白の少女を指差した。
    「ありがとうございます。・・では、よろしくお願いいたします」
    その少女は少し恥ずかしげに微笑みながら、深くお辞儀をした。
    何だ?
    H氏が縄束を持って後ろに立つと、少女はごく自然に両手を背中に回した。
    氏はするすると彼女を縛り上げてしまった。思わず見とれてしまう手際のよさだった。
    広間の壁の一部はレンガを積み上げた体裁になっていて、少女はその前に横吊りにされた。
    照明を落とすと、スポットライトの中に美少女の姿が浮かび上がった。

    晩餐のもてなし

    「どうだい、凝っているだろう?」H氏はにやりと笑った。実に楽しそうだった。
    「これが当家のもてなしだよ。しばらくこのまま飾っておくから、ゆっくり鑑賞してくれたまえ」
    「どうぞ」 縛られなかった別の少女がワインを注いでくれた。
    そういえば喉がからからだった。私は黙ってグラスを受け取ると一気に飲み干した。
    「この子たちはお客をもてなすために調教されている。よろしかったら寝室にその子をよこそう。好きに扱ってもらって構わない」
    ・・長い夜になりそうだった。



    『庭のオブジェ』のH氏再登場です。
    氏の屋敷に招かれた幸運な客は、どんなもてなしを受けるのでしょうか。

    私個人としては女の子をエロエロぐちゅぐちゅな目に合わすのはあまり好みではないのですが、「好きに扱って構わない」とまで言われたら、やっぱりそうなってしまうのかなぁ。
    (何のこっちゃ)




    庭のオブジェ

    個人が所有するとは思えない広い屋敷と庭園。
    プラタナスの木立の手前にそれは展示されていた。※1
    白い柱の上に少女の上半身。心細げに裸の胸を両手で押さえている。※2
    彼女は生きたまま石膏柱に下半身を埋め込まれているのだ。
    美少女を石膏モールドした美術品があるとは聞いていたが、実際に見るとその美しさは噂にたがわず見事なものであった。
    生物と静物の中間の存在、とでも言えばよいだろうか。
    少女本来の儚い(はかない)美しさに、彫刻のような安定感のある美しさが加わって見えるのだ。

    庭のオブジェ

    もちろん生身の人間を使用している以上、美術品としての寿命はせいぜい数日である。※3
    少しでも長く状態を維持できるように、このオブジェには多くの工夫がなされている。
    尿口から膀胱までカテーテルを通して排尿させているので、水分補給を制限する必要がない。
    排尿管には遠隔操作可能なバルブが設けられていて、規則的な排尿制御ができる。※4
    また肛門には液体だけを通すフィルタ栓を装填しているので、モールド内に脱糞する恐れなく、多少の固形物の摂取も可能である。※5
    さらに太股の内側に取り付けたセンサーによって、少女の体調を常時監視するシステムとなっている。※6

    屋敷の主人であるH氏は被虐性の高い少女を十数人所有されており※7、オブジェの素材に供されたのはその一人である。
    今回は試験的に1体を製作して日中展示したが、ゆくゆくは「季節・気候を問わず4~5体を常設」(H氏談)して石膏少女の美術庭園としたい方針である。
    24時間の設置となると技術的な課題も大きいと思われるが、夢の実現のために強い意欲で取り組みたいとのことであった。※8
    まことに楽しみな構想であり、実現の際にはぜひ再訪してレポートしたい。

    ※1 コンクリート製の展示台に固定しているので強風や地震で倒れることはない。展示台は庭園内に複数設けられており、作品を適宜移動することができる。
    ※2 少女は、着衣や緊縛の有無で種々の形態をとることができる。従順に仕込んだ少女であれば両手をさし上げるなどのポーズを取らせることも可能であるが、多くの場合は短時間で疲労して弛緩するので身苦しい。このように手で胸を隠すポーズか、あるいは緊縛して身動きを封じてしまう方が作品としては美しいとされている。
    ※3 一般には1日以内(未調教の場合)、2~3日(調教済の場合)、数日(被虐性が高い場合)が限界と考えられ、この期間に達したら少女を拘束から解放する必要がある。より長期に渡って少女の肉体と精神が損傷してゆく様子を楽しみたい願望は誰しも感じるところであるが、それが可能なケースは稀であろう。
    ※4 今回は特別に、限界を越えるまで排尿を抑止しその後一気に開放する実験が披露された。尿意に苛まれ苦しんでいた少女が、突然全身をわななかせて脱力するという、大変貴重な姿を観察することができた。
    ※5 流動食や点滴だけでなく通常の固形食(菓子類を含む)を与えることが少女に好影響であることが、島・三浦の実験(1996)により判明している。ただし固形食は排泄されずに腸内に蓄積していくので、過剰な摂取は好ましくない。
    ※6 心拍・血圧・体温・呼吸数、さらに膀胱内圧と大腿筋・括約筋の緊張もセンスしているという。
    ※7 今回、筆者は庭園と石膏モールドの見学を許可されただけであるので、詳細は不明である。好事家の間では、邸内では趣向を凝らして緊縛した美少女がそこかしこに飾られており、招かれた幸運な客は拘束メイドのルームサービスを受けることができると、まことしやかに噂されている。
    ※8 例えば盛夏厳冬期は、空調付のガラス箱に収納して展示する等を検討されている。ただしH氏は「夜中、雪に埋もれて震える娘の姿は捨てがたい」、そのために「一人くらい壊すのも止むを得ないね」などの物騒な発言もされていた。




    これも昔描いたイラストにSSをつけたものです。
    KSでマナミさんが拘束された石膏モールドと同じものですが、KSとは別の世界のお話です。
    被虐側視点の説明は一切行わず、補足説明をたくさんつけてマニア向け趣味誌の記事のような書き方にしてみました。




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